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【第10回社長エッセイ】患者さんが教えてくれたこと

2023.10.18 くるみの社長エッセイ精神科訪問看護とは誠子さんシリーズ

大阪市全域を訪問区域とする『訪問看護ステーションくるみ』の代表、中野誠子が綴る『社長エッセイ』第10弾!

 

今週もやってまいりました、社長エッセイ!

今日は誠子さんの「患者さんが教えてくれたこと」です!

最後まで楽しんでいただけるとうれしいです♡

 

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病院が大っ嫌いで、お医者さんや看護師さんも怖い、薬を飲むのが大っ嫌い

そんな私が今、どうして看護師を続けていられるのか。

それは間違いなく患者さんや利用者さん、学生にたくさんのことを教えてもらったから。

ここには書ききれないほど、たくさんの思い出がありますが、
今日は私の看護観の中心となった大切なエピソードを書いていこうと思います。

 

「看護はまず自分を知り、見つめて、対峙しなければ始めることができない」

この言葉を本当の意味で知ったのは、精神科で働きはじめて1年目も半年を過ぎた頃。

そのときは教科書で習ったこと以外のことが多すぎて、
私は学校で何を学んできたんだろう……と少し凹んでいました。
それでも! と、毎日必死になって頑張ってはいましたが、
今思い返すと「看護の真似事」をしていたように思います。

 

これからお話することは、
当時、私の受け持ちだったAさんとの関わりのなかでの出来事です。

Aさんは長期入院をしている患者さんで、体動が激しく精神状態もあまりよくありませんでした。

また、意思疎通が難しく、ベッドから転落の恐れもあり、
拘束衣という自分では脱ぎ着ができない衣服を着用する必要がある患者さんでした。

 

そんなAさんの受け持ちになり、Aさんのもとへ行く回数が増え、
もちろんお声かけもするのですが、何を話してもAさんはプイッと顔を逸らされてしまいます。

聞いてくれているのか、聞いてくれていないのかもわからなかったので
「意思疎通困難」というアセスメントをしていました。

何度行っても同じ。
Aさんにどう対応したらいいかわからない日が続きました。

しかし先輩の中にはAさんと笑顔で話をされている方が多かったのです。

「なんでだろう……」
考えてもわかりませんでした。

 

そんなある日、
Aさんを車椅子からベッドに移乗し、マグネット式の拘束をしていたときのこと。

車椅子を直そうと部屋を後にしたときに
Aさんから「看護師さーんのばーか」と言われました。

(え? どういうこと……?)

Aさんからの突然の言葉に驚き、
Aさんの言葉の理由がわからなかった私は
プリセプター(指導者)のところに行き、今あった出来事を話しました。

そうするとプリセプターから、
「あなたAさんのこと何知ってる? なんでそう言われたと思う?」
と言われました。

私は病名、既往歴、今の状態、薬について話しました。

そうすると、
「そうじゃなくて、Aさんの想いよ」
と言われ……

答えられませんでした。
わからなかった、知ろうとしてなかった。

「Aさんから逃げてました」と正直に伝えました。

 

その日プリセプターから、
「まずあなた自分のことわかってる? 自分のこと知らなすぎる」
と言われたのですが、
正直プリセプターの言っていることがわかりませんでした。

その日はずっとその言葉の意味を考え、
次の日にまたプリセプターのもとへ行き、自分の長所と短所について話しました。

プリセプターはしばらく黙って聞いたあと、
「そこなんじゃない。自分のこと見たくないんでしょ。嫌なこと認めたくないんでしょ?」
と。

そこでハッとしました。

自分はちゃんと観察してアセスメントしているのに、
意思疎通困難だから仕方ないと逃げていたことに気づいたのです。

 

それからは自分に対峙し、自分の傾向や、
やっていることの意味づけを行いながら毎日を過ごしました。

そうすると自分が少しずつわかるようになり、
「自分の態度は患者さんに反映される。鏡である」と考えるようになりました。

それがわかるまでかなりの時間がかかりましたが……。

 

その後のAさんとの関わりはというと、
Aさんの反応が少しずつ変わりはじめ、
「ねぇねぇ、看護師さん!」と呼んでいただけるようになりました。

その光景を見たプリセプターからは、「自分に向き合えたんやね」と言ってもらえました。

そして、
「今までは看護をしていた気分になっていただけだったかも」と言うと、
「今それがわかればいいのでは」と言ってもらえました。

 

前回のエッセイでも触れましたが、

私たち看護師は患者さんのことを観察します。
ということは、患者さんも同じくらい看護師のことを見ていらっしゃるのです。

本当にそう思います。

そして患者さんはそれぞれ、さまざまな経験をされているからこそ、
看護師が自分を本当の意味で見ているかどうかは、わかっておられるんだと実感しました。

 

このエピソード以来、自分の行動を振り返ることの重要性がわかりましたし、
そこがないと看護は続けられないと今でも思っています。

自分に向き合うことってかなりしんどいです。
自分を認めることって思いの外苦労します。

この歳になって、看護師23年目になっても今までわからなかった自分が出てきます。

もしかしたらわからなかったというか、わかりたくなかった、見えないふりをしていたのかもしてません。

それを知れたことはすごいことですし、すべては患者さんや利用者さんとの出会いがあるから気付けています。

感謝しかありません。

自分を知ることって苦しいけど楽しい。

やっとそう思えるようになってきました。

今だからこそ見える景色を大切に、今日も利用者さんのところへ行ってきたいと思います。

 

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