過去の衝撃的な出来事が心に深い傷を残し、その影響が長期間にわたることがあります。このような体験は「トラウマ」と呼ばれますが、場合によっては、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に発展することもあります。本記事では、トラウマとPTSDの違い、共通する症状、そしてそれらの対処法について詳しく解説します。あなたや身近な人がこのような問題に直面している場合、適切な知識を持つことが重要です。
1.PTSDとは何か?
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、衝撃的な出来事や強い恐怖を感じる体験により、心に深い傷を負うことで発症する精神疾患です。この疾患は、過去の出来事が繰り返し思い出される、避けられない恐怖感、感情の麻痺、そして社会生活に影響を与えるほどの深刻な症状を特徴とします。PTSDは、トラウマ体験が長期間にわたって精神に影響を及ぼすことにより発症します。
2. トラウマとPTSDの違いと共通点
トラウマとPTSDの違いを徹底比較
トラウマとは
定義:個人が対処できないほどの強いストレスや恐怖を感じた出来事によって生じる心の傷。
症状:一時的な不安、睡眠障害、フラッシュバックなど。
持続性:時間の経過とともに軽減することが多い。
PTSDとは
定義:トラウマ体験後、1か月以上にわたり症状が持続し、日常生活に深刻な影響を及ぼす精神疾患。
症状:強烈なフラッシュバック、過覚醒、回避行動、感情の麻痺など。
持続性:適切な治療が必要で、放置すると慢性化する可能性がある。
トラウマとPTSDの症状について解説
トラウマとは、過去に経験したつらい出来事や体験が心に深い傷を残し、感情や行動に長期間影響を与える状態を指します。これには、地震や台風などの単回性トラウマと、日常的に繰り返される暴力やいじめといった慢性反復性トラウマがあります。
一方、PTSDは、トラウマ体験の影響が長期にわたり、通常の生活を続けることが困難になる状態です。具体的には、以下のような症状が見られます。
・過去の辛い出来事が突然思い出される:日常生活の中で突然、過去の恐怖や苦痛が思い出され、その時の感情が蘇ることがあります。これにより、不安や恐怖感が強まり、精神的な安定が崩れます。
・過敏な状態が続く:常に神経が張り詰め、リラックスできない状態が続きます。これは、睡眠障害や集中力の低下などを引き起こします。
・辛い体験を避ける:過去のトラウマを思い出さないよう、関連する場所や出来事を避ける行動をとります。これが社会生活に支障をきたすこともあります。
・感情や感覚が麻痺する:過去のトラウマ体験によって、感情が鈍化し、周囲に対する興味や関心を失うことがあります。愛情や信頼感の喪失もこの症状に含まれます。
3. PTSDを改善する治療法
薬物療法
・抗うつ薬
気分の落ち込みや恐怖感を軽減するために使用されます。
・抗不安薬
不安や緊張を和らげる効果があります。
・気分安定薬
感情の揺れを抑えることができます。
PTSDに対する薬物療法は、根本的な治療を目指すものではなく、症状に応じて適切に使用することで症状を軽減することを目的としています。場合によっては、薬物療法だけで症状が改善し、日常生活を取り戻すことが可能です。
しかし、薬物療法だけではすべての症状に対処できないこともあります。そのような場合には、心理療法を併用して治療を進めることが効果的です。
心理療法
認知行動療法
認知行動療法では、物事の捉え方や思考パターンを見直し、バランスの取れた考え方に導くことを目指します。PTSDによって認知の歪みが生じると、現実とのギャップが発生することがあります。この治療法では、そのギャップを解消し、現実に即した認知を形成することが重要です。
力動的精神療法
力動的精神療法は、患者が自分の感情や行動を深く理解し、自分らしい生き方を模索することを目的としています。セラピストとの対話を通じて、過去の経験や現在の問題に対する理解を深め、それが現在の感情や行動にどう影響しているのかを分析します。そして、患者がより自分らしい生き方を実現するための方法を共に考えていきます。
この療法は通常、週に1回程度のセッションで行われますが、問題が複雑な場合には、より頻繁にセッションを行うこともあります。
参照:こころの情報サイト「PTSD」
参照:日本女性心身医学会「心的外傷後ストレス PTSD」
4. 医療機関や薬の重要性、日常生活で気をつけるべきこと
PTSDの治療には、早期の専門医療機関への受診が重要です。診断を受けることで、適切な治療法が選択され、症状の悪化を防ぐことができます。また、薬物療法によって感情やストレス反応がコントロールされ、生活の質が向上します。
日常生活では、ストレス管理が不可欠です。適度な運動や趣味を取り入れ、気分転換を図ることが大切です。十分な睡眠とバランスの取れた食生活も、精神的な安定に寄与します。
5. PTSD治療における訪問看護の有用性
訪問看護は、PTSD患者に対するきめ細やかなサポートを提供します。看護師が定期的に自宅を訪問し、日常生活でのストレス管理や症状のモニタリングを行うことで、患者の回復を支援します。また、訪問看護により、患者が自宅で安心して過ごせる環境が整い、長期的な治療の効果が期待されます。
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