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ADHD女性の特徴|見逃されやすい症状と向き合い方

2025.10.23 精神科訪問看護とは

女性のADHDは「不注意優勢型」が多く、多動性が目立たないため見逃されやすいという特徴があります。仕事でのケアレスミス、家事や育児での困難、感情コントロールの問題など、日常生活のさまざまな場面で悩みを抱えながらも、「性格の問題」として片付けられてきた女性も多いのではないでしょうか。

実は女性のADHDは、社会的な期待に応えようとする過剰適応により症状がマスキングされ、成人になってから気づくケースが非常に多いのです。

本記事では、女性特有のADHD症状から、ホルモンとの関係、併発しやすい二次障害、そして診断・治療まで詳しく解説します。

女性のADHDが見逃されやすい理由と診断の難しさ

女性のADHDは、男性と比べて診断が遅れる傾向があり、成人になってから初めて気づくケースが多いという特徴があります。これには、症状の現れ方の違いや社会的な期待値の影響など、複数の要因が関係しています。

従来、ADHDは男児に多い発達障害として認識されてきましたが、実際には女性にも同程度の割合で存在すると考えられるようになってきました。しかし、女性のADHDは「不注意優勢型」が多く、多動性が目立たないため、周囲から気づかれにくいのです。また、女性は社会的に「おとなしく、きちんとしている」ことを求められる傾向があり、ADHDの特性があっても必死に適応しようとする「過剰適応」により、問題が表面化しにくくなっています。さらに、女性特有のホルモン変動により、症状が複雑化することも診断を困難にしています。月経周期、妊娠、出産、更年期などのライフステージによって症状が変化し、単なる「女性特有の不調」として片付けられてしまうことも少なくありません。このような背景から、女性のADHDは「隠れたADHD」とも呼ばれ、適切な支援を受けられないまま、二次障害のリスクを抱えながら生活している女性が多いのが現状です。

不注意優勢型が多い女性ADHDの特徴

女性のADHDでは、多動性・衝動性よりも不注意症状が前面に出ることが多く、これが診断の遅れにつながる大きな要因となっています。

不注意優勢型のADHDは、外見上は「おとなしい」「問題を起こさない」ように見えるため、子ども時代には見過ごされやすいです。授業中に立ち歩くような多動性はなくても、頭の中では常に別のことを考えている「内的多動」の状態にあることが多く、ぼんやりしている、うわの空、忘れっぽいといった特徴として現れます。これらは「天然」「おっちょこちょい」といった性格的な特徴として捉えられがちで、ADHDの症状として認識されないことがほとんどです。

女性の場合、整理整頓が苦手、時間管理ができない、約束を忘れるといった症状があっても、「女性なのにだらしない」という自己批判に陥りやすく、自己肯定感の低下につながります。また、学業成績が良い場合も多く、知的能力でカバーしているため、困難さが見えにくくなっています。

成人期になると、仕事での書類管理、家事の段取り、子育てのスケジュール管理など、より高度な実行機能が求められるようになり、初めてADHDの症状が顕在化することがあります。特に、複数のタスクを同時にこなすマルチタスクが苦手なため、家事と育児と仕事の両立に困難を感じる女性が多いのも特徴です。

過剰適応による症状のマスキング

女性のADHDが見逃される大きな理由の一つに、「過剰適応」があります。社会的な期待に応えようと過度に努力し、症状を隠してしまう傾向があるのです。

幼少期から、女性は「きちんとしている」「気配りができる」「協調性がある」ことを期待される社会的プレッシャーを受けています。ADHDの女性は、これらの期待に応えるために、人一倍の努力をして適応しようとします。例えば、忘れ物をしないように何度もチェックする、遅刻しないように極端に早く家を出る、ミスをしないように過度に慎重になるなど、膨大なエネルギーを使って「普通」を装います。

この過剰適応は、一見すると「しっかり者」「完璧主義」に見えるため、周囲からADHDだと気づかれることはありません。しかし、本人は常に緊張状態にあり、家に帰ると疲れ果てて何もできなくなることも多いです。また、完璧にできない自分を責め続け、慢性的なストレス状態に陥ります。

職場では、ミスを恐れるあまり確認作業に時間をかけすぎて効率が悪くなったり、人間関係では相手に合わせすぎて自分の意見が言えなくなったりすることもあります。このような過剰適応は、長期的には燃え尽き症候群やうつ病などの二次障害につながるリスクが高く、女性のADHDにおける深刻な問題となっています

ホルモン変動による症状の複雑化

女性特有のホルモン変動は、ADHDの症状に大きな影響を与え、診断をより困難にしています。月経周期、妊娠、出産、更年期など、ライフステージごとに症状が変化するのが特徴です。

月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)とADHDの症状が重なることで、症状が増幅されることがあります。月経前にはエストロゲンとプロゲステロンのレベルが低下し、これがドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質にも影響を与えます。その結果、集中力の低下、イライラ、衝動性の増加などのADHD症状が悪化します。多くの女性が「生理前だけ特にひどい」と感じるのはこのためです。

妊娠中は、ホルモンレベルの急激な変化により、症状が改善する女性もいれば、悪化する女性もいます。また、ADHDの薬を中断せざるを得ない場合が多く、症状のコントロールが困難になることもあります。出産後は、睡眠不足と育児ストレスが加わり、ADHD症状が顕著に現れやすくなります。

更年期には、エストロゲンの減少により、認知機能の低下、記憶力の問題、集中力の低下などが起こりやすくなります。これらの症状は更年期障害として片付けられがちですが、実はADHDの症状が悪化している可能性もあります。このような複雑な相互作用により、女性のADHDは「ホルモンのせい」として見過ごされることが多いのです。

大人の女性ADHDに見られる具体的な症状と特徴

大人の女性のADHDは、仕事、家庭、人間関係など、さまざまな場面で特徴的な症状が現れます。これらの症状は、単なる性格の問題ではなく、脳の機能的な特性によるものです。

女性のADHDの症状は、男性と比べて内面化されやすく、外から見えにくいという特徴があります。多動性は「頭の中の多動」として現れ、常に複数のことを考えていたり、思考が止まらなかったりします。衝動性も、衝動買いや感情の爆発といった形で現れることが多く、対人関係でのトラブルにつながりやすいです。

また、女性は社会的な役割が多岐にわたるため、症状の影響も広範囲に及びます。職場では仕事の効率、家庭では家事や育児、社会では友人関係や地域活動など、あらゆる場面で困難を感じることがあります。特に、「マルチタスク」が苦手なADHDの特性は、現代社会で女性に求められる「何でもこなす」という期待と真っ向から対立し、大きなストレスとなっています。さらに、感情調節の困難さも女性ADHDの重要な特徴で、気分の波が激しく、些細なことで落ち込んだり、イライラしたりすることがあります。

仕事場面での困りごとと特徴

職場において、女性のADHDは特有の困難を抱えやすく、キャリア形成に影響を与えることがあります。

デスクワークでは、書類の整理整頓ができず、机の上が常に散らかっている状態になりがちです。重要な書類を紛失したり、締切を忘れたりすることも頻繁に起こります。メールの返信を後回しにして忘れてしまう、会議の準備が間に合わない、複数のプロジェクトを同時進行できないといった問題も生じます。特に、細かい数字のチェックや、単調な事務作業では、ケアレスミスが多くなる傾向があります。

時間管理の困難さも大きな課題です。作業にかかる時間を正確に見積もれず、いつも締切ギリギリになってしまいます。朝の準備に時間がかかり、遅刻を繰り返すこともあります。会議中は、集中力が続かず、重要な内容を聞き逃したり、関係ない考えが浮かんで上の空になったりすることもあります。

対人関係では、同僚との雑談で話しすぎてしまったり、逆に集中しすぎて周囲とのコミュニケーションが不足したりすることがあります。また、批判に過敏に反応し、些細な指摘でも深く傷ついてしまうことがあります。

これらの困難により、能力があるにも関わらず評価が低くなったり、転職を繰り返したりすることも少なくありません。特に、女性は「きちんとしている」ことを期待されるため、ADHDの症状による困難がより厳しく評価される傾向があります。

家事・育児における困難と悩み

家事と育児は、女性のADHDにとって特に大きな挑戦となる領域です。複数のタスクを同時にこなし、計画的に進める必要があるため、ADHDの特性と相性が悪いのです。

家事では、掃除、洗濯、料理、買い物など、多岐にわたるタスクを管理する必要があります。しかし、優先順位をつけることが苦手なため、重要でないことに時間をかけすぎたり、必要な家事を後回しにしたりしてしまいます。料理中に別のことを思い出して鍋を焦がす、洗濯物を干し忘れる、買い物リストを作っても持っていくのを忘れるといったことが日常的に起こります。

片付けや整理整頓は特に苦手で、「片付けたいのに、どこから手をつけていいか分からない」という状態に陥りやすいです。物の定位置を決められず、探し物に多くの時間を費やすことになります。また、「後でやろう」と思って溜め込んだ家事が山積みになり、圧倒されて何もできなくなることもあります。

育児では、子どものスケジュール管理が大きな課題となります。保育園の持ち物、習い事の送迎、予防接種の予約など、覚えておくべきことが多すぎて混乱します。子どもの話を聞きながら家事をするというマルチタスクも困難で、どちらも中途半端になってしまうことがあります。

また、感情コントロールの困難さから、子どもに対して感情的に叱ってしまい、後で自己嫌悪に陥ることも多いです。「良い母親になれない」という罪悪感を抱え、自己肯定感がさらに低下する悪循環に陥りやすいのも特徴です。

感情調節の困難さと気分の波

女性のADHDでは、感情調節の困難さが顕著に現れることが多く、日常生活に大きな影響を与えます。

感情の起伏が激しく、些細なことで急に泣き出したり、怒りが爆発したりすることがあります。朝は元気だったのに、午後には落ち込んでいるといった気分の変動も頻繁に起こります。この感情の不安定さは、「情緒不安定」「ヒステリック」といったレッテルを貼られる原因となり、さらに自己肯定感を低下させます。

拒絶や批判に対して過敏に反応する「拒絶感受性不安」も、女性ADHDに多く見られる特徴です。相手の何気ない一言や表情を否定的に解釈し、深く傷ついてしまいます。SNSの「既読スルー」や、友人からの返信が遅いだけで、「嫌われた」と思い込んでしまうこともあります。

また、感情に圧倒されると、理性的な判断ができなくなります。衝動的にLINEを送りすぎて相手を困らせたり、感情的なメールを送って後悔したりすることもあります。ストレスが高まると、過食や衝動買いなどの不適応な対処行動に走ることもあります。

さらに、共感性が高すぎて、他人の感情に振り回されることもあります。周囲の人の機嫌に敏感に反応し、常に気を使って疲れ果ててしまいます。この過度の共感性は、対人関係でのストレスを増大させ、社交不安につながることもあります。

対人関係・恋愛における特徴

女性のADHDは、対人関係や恋愛において特有の困難を抱えやすく、親密な関係の構築と維持に苦労することがあります。

友人関係では、約束を忘れる、時間に遅れる、話を聞いていないように見えるといった行動が、「いい加減な人」という印象を与えてしまいます。また、衝動的に思ったことを口に出してしまい、相手を傷つけることもあります。一方で、過度に相手に合わせようとして、自分の意見が言えなくなることもあり、本当の自分を出せずに苦しむことも多いです。

恋愛関係では、感情の起伏が激しいため、パートナーを振り回してしまうことがあります。些細なことで不安になり、過度に連絡を取ったり、確認を求めたりして、相手に重いと思われることもあります。また、衝動性から、よく考えずに恋愛関係に飛び込んでしまい、後で後悔することもあります。

依存的な関係に陥りやすいのも特徴の一つです。自己肯定感の低さから、相手に過度に依存し、自分の価値を相手の評価に委ねてしまいます。相手の機嫌を常に気にして、自分を犠牲にしてまで相手に尽くしてしまうこともあります。

また、ADHDの特性を理解してもらえず、「だらしない」「気分屋」と批判されることで、関係が悪化することも少なくありません。特に、家事分担や金銭管理などの現実的な問題で衝突しやすく、結婚生活においても困難を抱えることがあります。

女性ADHDが併発しやすい二次障害とメンタルヘルス

女性のADHDは、適切な診断と支援を受けられないまま成人期を迎えることが多く、その結果、さまざまな二次障害を併発するリスクが高くなっています。

二次障害とは、ADHDの一次的な症状によって生じるストレスや適応困難が原因となって発症する精神疾患のことです。女性の場合、社会的な期待に応えようとする過剰適応や、「女性らしくない」という自己批判により、男性よりも二次障害のリスクが高いとされています。長年にわたる失敗体験の蓄積、慢性的な低い自己評価、対人関係の困難などが、うつ病や不安障害などの精神疾患につながりやすいのです。

また、女性特有のライフイベント(結婚、出産、育児、介護など)によるストレスも、二次障害の引き金となることがあります。これらの二次障害は、元々のADHD症状をさらに悪化させ、日常生活により深刻な影響を与えます。早期の診断と適切な治療により、二次障害の予防や改善が可能ですが、女性のADHDは見逃されやすいため、二次障害が主訴となって初めて医療機関を受診するケースが多いのが現状です。

うつ病・不安障害との関連

女性のADHDは、うつ病や不安障害を併発する割合が非常に高く、生涯有病率は一般人口の2-3倍に達するとされています。

慢性的な失敗体験と自己否定により、「何をやってもうまくいかない」という無力感が形成され、うつ病を発症しやすくなります。特に、完璧主義的な傾向のある女性は、ADHDの症状による失敗を「自分の努力不足」と捉え、自己批判を繰り返すことで、うつ状態に陥りやすいです。朝起きられない、何もする気が起きない、自分には価値がないと感じるといった症状が現れ、ADHDの症状と相まって、日常生活が著しく困難になります。

不安障害も高頻度で併発します。特に、社交不安障害は、対人関係での失敗経験から、人と接することへの強い不安を抱くようになることで発症します。会議で発言することが怖い、電話に出られない、人前で食事ができないといった症状が現れます。また、全般性不安障害により、常に何かを心配し、最悪の事態を想像して不安に苛まれることもあります。

パニック障害を併発することもあり、突然の動悸、息苦しさ、めまいなどの発作に襲われます。これらの症状は、ADHDの感情調節の困難さと相互作用し、より複雑な病態を形成します。

月経前には、これらの症状がさらに悪化することが多く、PMDDとの鑑別が困難になることもあります。適切な診断と、ADHD・うつ病・不安障害それぞれに対する包括的な治療が必要です。

摂食障害・依存症のリスク

女性のADHDは、摂食障害や各種依存症のリスクが高いことが知られています。これらは、ADHDの症状に対する不適応な対処行動として発症することが多いです。

摂食障害、特に過食症や過食嘔吐は、女性ADHDに多く見られます。衝動性により、食欲をコントロールできずに過食してしまい、その後の罪悪感から嘔吐や過度な運動で補償しようとします。また、ドーパミン不足を食べ物で補おうとする傾向もあり、特に糖質や高カロリー食品への依存が見られます。感情調節の困難さから、ストレスや不安を食べることで紛らわそうとする「感情的摂食」も多く見られます。

買い物依存も女性ADHDに多い問題です。衝動性により、必要のないものを大量に購入してしまい、経済的な問題を引き起こします。買い物による一時的な高揚感がドーパミン不足を補う役割を果たしているため、やめられなくなります。オンラインショッピングの普及により、この問題はさらに深刻化しています。

アルコールや薬物への依存リスクも高いです。不安や落ち込みを紛らわせるため、あるいは社交場面での緊張を和らげるために飲酒し、次第に依存していくケースがあります。また、ADHDの症状を自己治療しようとして、カフェインや市販薬を過剰摂取することもあります。

これらの依存症は、根本的なADHDの治療なしには改善が困難であり、包括的なアプローチが必要です。

適応障害・燃え尽き症候群

女性のADHDは、過剰適応の結果として、適応障害や燃え尽き症候群を発症しやすい傾向があります。

適応障害は、特定のストレス要因に対して過度の反応を示す状態です。女性ADHDの場合、職場環境の変化、結婚、出産、育児開始など、ライフイベントをきっかけに発症することが多いです。新しい環境に適応しようと過度に努力し、ADHDの症状を隠そうとすることで、心身ともに疲弊してしまいます。不眠、頭痛、胃痛などの身体症状や、不安、抑うつ、イライラなどの精神症状が現れます。

燃え尽き症候群は、長期間の過剰適応の結果として起こります。「普通」を装うために膨大なエネルギーを使い続けた結果、ある日突然、何もできなくなってしまうのです。仕事への意欲を完全に失い、今まで頑張ってきたことすべてが無意味に感じられます。身体的・精神的・感情的な疲労が極限に達し、回復に長期間を要することもあります。

特に、育児中の女性は、「良い母親」であろうとする圧力が強く、燃え尽きやすい状況にあります。ADHDの症状により育児が困難であるにも関わらず、助けを求められずに一人で抱え込んでしまうことが多いです。

これらの二次障害は、ADHDの存在を認識し、適切な支援を受けることで予防可能です。自分の限界を認め、無理のない範囲で生活することが重要です。

女性ADHDの診断プロセスと相談先

女性のADHDを適切に診断し、支援につなげるためには、専門的な知識を持つ医療機関での評価が不可欠です。しかし、どこに相談すればよいか分からない人も多いのが現状です。

診断のプロセスは、単にチェックリストで判断するものではなく、詳細な問診、心理検査、行動観察などを組み合わせた包括的な評価が必要です。特に女性の場合、症状が内面化されていたり、他の精神疾患と併存していたりすることが多いため、慎重な鑑別診断が求められます。

また、子ども時代の情報も重要で、可能であれば親や兄弟から当時の様子を聞き取ることも行われます。診断を受けることで、今までの困難の理由が明確になり、適切な治療や支援を受けることができます。「自分の努力不足ではなかった」と分かることで、自己理解が深まり、自己肯定感の回復にもつながります。診断は「レッテル貼り」ではなく、より良い人生を送るためのスタートラインと考えることが大切です。

専門医による診断基準と検査

ADHDの診断は、精神科医や心療内科医による専門的な評価に基づいて行われます。DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)の診断基準が用いられることが一般的です。

診断基準では、不注意症状9項目、多動性・衝動性症状9項目のうち、それぞれ6項目以上(成人の場合は5項目以上)が6ヶ月以上持続し、発達段階に不相応で、社会的・学業的・職業的機能に直接的な悪影響を及ぼしていることが必要とされます。また、12歳以前に症状が存在していたことも診断基準の一つです。

女性の場合、不注意症状が中心となることが多く、「細部に注意が払えない」「課題や活動を順序立てることが困難」「必要な物をなくしやすい」「日常の活動を忘れやすい」などの項目が該当することが多いです。しかし、これらの症状を「性格」として片付けてきた女性も多く、症状として認識することから始める必要があります。

心理検査では、WAIS(成人知能検査)、CAARS(成人ADHD評価尺度)、持続的注意課題(CPT)などが用いられます。これらの検査により、認知機能のアンバランスや、注意機能の問題を客観的に評価できます。

また、他の精神疾患との鑑別も重要です。うつ病、双極性障害、不安障害、境界性パーソナリティ障害などとの鑑別や併存の評価が行われます。女性の場合、PMSやPMDDとの関連も考慮されます。

相談できる医療機関・支援機関

女性のADHDについて相談できる機関は、医療機関から公的支援機関まで多岐にわたります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った相談先を選ぶことが大切です。

医療機関では、精神科・心療内科が主な相談先となります。最近は「大人のADHD外来」「女性外来」を設置している医療機関も増えています。女性医師を希望する場合は、事前に確認することをお勧めします。大学病院や総合病院の精神科では、より専門的な検査や治療を受けることができます。

発達障害者支援センターは、各都道府県に設置されている公的機関で、相談、診断、支援などを無料で受けることができます。女性特有の悩みについても理解があり、継続的な支援を受けることが可能です。

精神保健福祉センターや保健所でも、メンタルヘルスに関する相談を受け付けています。ADHDの可能性について相談し、適切な医療機関を紹介してもらうこともできます。

女性センターや男女共同参画センターでは、女性特有の悩みについて相談できます。直接ADHDの診断はできませんが、生活上の困りごとについてアドバイスを受けたり、自助グループの情報を得たりすることができます。

オンライン診療を行っている医療機関も増えており、通院が困難な場合の選択肢となります。ただし、初診は対面診療が必要な場合が多いので、事前に確認が必要です。

女性ADHDとの向き合い方と対処法

女性のADHDと上手に付き合っていくためには、自己理解を深め、具体的な対処法を身につけることが重要です。完璧を目指すのではなく、自分に合った方法を見つけることが大切です。

まず重要なのは、ADHDを「欠陥」ではなく「特性」として受け入れることです。ADHDには、創造性、共感性、エネルギッシュさ、直感力など、多くの強みもあります。これらの強みを活かしながら、困難な部分をカバーする戦略を立てることで、より充実した生活を送ることができます。また、「女性らしさ」の呪縛から解放されることも重要です。

社会的な期待に応えようとして無理をするのではなく、自分らしい生き方を見つけることが大切です。家事が苦手なら外注する、育児が大変なら助けを求める、といった柔軟な発想が必要です。さらに、一人で抱え込まず、周囲のサポートを積極的に求めることも大切です。家族、友人、専門家など、さまざまな人の力を借りながら、自分に合った生活スタイルを構築していくことが、長期的な安定につながります。

環境調整と生活の工夫

日常生活を送りやすくするための環境調整は、女性ADHDにとって最も効果的な対処法の一つです。

物理的環境の整備として、視覚的にわかりやすい収納システムを作ることが重要です。透明な収納ボックスを使う、ラベルを貼る、物の定位置を決めるなど、「見える化」することで、探し物の時間を減らせます。また、気が散る要因を減らすため、作業スペースはシンプルに保ち、必要最小限の物だけを置くようにします。

時間管理には、デジタルツールを活用します。スマートフォンのリマインダー機能、カレンダーアプリ、タスク管理アプリなどを使い、予定や締切を忘れないようにします。アラームは複数設定し、準備時間も含めて余裕を持ったスケジュールを組みます。

家事の負担を減らす工夫も重要です。食洗機、ロボット掃除機、乾燥機付き洗濯機などの家電を活用し、自動化できることは自動化します。料理は、作り置きや冷凍食品、ミールキットなどを活用し、完璧を求めないことが大切です。

ルーティンを確立することで、決断疲れを減らせます。朝の準備、寝る前の片付けなど、毎日同じ順序で行うことで、考えなくても行動できるようになります。

また、「ボディダブリング」という方法も効果的です。誰かと一緒に作業することで、集中力が保ちやすくなります。オンラインでつながって一緒に作業する「バーチャル・コワーキング」も選択肢の一つです。

薬物療法と心理療法の選択

女性のADHDの治療には、薬物療法と心理療法があり、多くの場合、両者を組み合わせることで最良の効果が得られます。

薬物療法では、メチルフェニデート(コンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)などが使用されます。これらの薬は、脳内の神経伝達物質のバランスを調整し、注意力や衝動制御を改善します。女性の場合、月経周期により薬の効果が変動することがあるため、症状日記をつけて医師と相談しながら調整することが重要です。

妊娠・授乳期の薬物療法については、慎重な検討が必要です。計画的な妊娠の場合は、事前に医師と相談し、薬の継続や中断について決定します。薬を中断する場合は、他の対処法を強化する必要があります。

心理療法では、認知行動療法(CBT)が有効です。否定的な思考パターンを修正し、問題解決スキルを身につけることができます。特に、完璧主義や自己批判的な思考を持つ女性には効果的です。

マインドフルネス療法も注目されています。「今ここ」に意識を向ける練習により、衝動性や感情調節の改善が期待できます。瞑想、ヨガ、呼吸法などを通じて、自己認識を高めることができます。

また、ADHDコーチングという支援方法もあります。日常生活の具体的な課題に対して、実践的な解決策を一緒に考え、実行をサポートしてもらえます

周囲への理解を求める方法

家族、友人、職場など、周囲の人々の理解とサポートは、女性ADHDが安定した生活を送る上で不可欠です。

まず、信頼できる人から少しずつ開示していくことをお勧めします。いきなり「私はADHDです」と伝えるのではなく、具体的な困りごとから話し始めると理解を得やすいです。例えば、「約束を忘れやすいので、リマインドしてもらえると助かる」といった具体的なお願いから始めます。

家族には、ADHDについての正しい情報を共有することが重要です。書籍やウェブサイトを一緒に見たり、可能であれば診察に同行してもらったりすることで、理解が深まります。特に、パートナーには、家事分担や育児について具体的に相談し、お互いの得意不得意を考慮した役割分担を決めることが大切です。

職場では、必要に応じて合理的配慮を求めることができます。診断書があれば、法的に保護された配慮を受けることが可能です。静かな環境での作業、締切のリマインド、指示の文書化など、具体的な配慮内容を相談します。

友人には、全員に開示する必要はありません。理解してくれそうな人を選んで、少しずつ関係を深めていくことが大切です。ADHDの自助グループに参加することで、同じ悩みを持つ仲間と出会うこともできます。

開示する際は、ADHDの説明だけでなく、自分の強みも一緒に伝えることで、バランスの取れた理解を得やすくなります。

まとめ

女性のADHDは、不注意優勢型が多く、症状が内面化されやすいため、診断が遅れる傾向があります。過剰適応により症状をマスキングし、「普通」を装うために膨大なエネルギーを使い続けた結果、成人期になって燃え尽きたり、二次障害を発症したりすることが多いのが特徴です。

女性特有のホルモン変動も症状に影響を与え、月経周期、妊娠、出産、更年期などのライフステージごとに症状が変化します。仕事では時間管理や書類整理に困難を感じ、家庭では家事や育児のマルチタスクに苦労します。感情調節の困難さから、対人関係でもトラブルを抱えやすく、自己肯定感の低下につながりやすいです。

二次障害として、うつ病、不安障害、摂食障害、依存症などを併発するリスクが高く、包括的な治療が必要です。適切な診断を受けることで、自己理解が深まり、効果的な治療や支援につなげることができます。

対処法としては、環境調整、薬物療法、心理療法などがあり、個人に合った方法を組み合わせることが重要です。また、周囲の理解とサポートを得ることで、より安定した生活を送ることができます。

女性のADHDは「隠れた障害」と呼ばれることもありますが、適切な理解と支援があれば、その特性を強みに変えることも可能です。創造性、共感性、直感力など、ADHDの持つポジティブな面も多くあります。完璧を求めず、自分らしい生き方を見つけることが、充実した人生への第一歩となります。もし、この記事を読んで自分に当てはまると感じた方は、一人で悩まず、専門機関に相談することをお勧めします。

この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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