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統合失調症の家族向け|接し方と支援方法の完全ガイド

2025.10.27 精神科訪問看護とは

家族が統合失調症と診断されたとき、多くのご家族は戸惑い、どう接すればよいか分からなくなります。

本記事では、統合失調症の症状(陽性症状・陰性症状・認知機能障害)の理解から、日常的な接し方のコツ、利用できる支援制度まで、家族が知っておくべき情報を網羅的に解説します。適切な対応方法を身につけることで、患者さんの回復を促進できます。

また、家族自身のケアの重要性や、困ったときの相談機関についても詳しくご紹介。一人で抱え込まず、利用できる支援を活用しながら、患者さんと共に歩んでいくための実践的なガイドです。

統合失調症とは|家族が理解すべき基本知識

統合失調症は、思考、感情、行動の統合が困難になる慢性的な精神疾患で、日本では約100人に1人が罹患する比較的頻度の高い疾患です。主に思春期後期から成人早期(15-35歳)に発症することが多く、幻覚や妄想などの陽性症状、感情の平板化や意欲低下などの陰性症状、認知機能障害などの多彩な症状を呈します。家族として最初に理解すべきことは、統合失調症は「心の弱さ」や「育て方の問題」ではなく、脳の機能的な疾患であるということです。この理解があってこそ、適切な対応と支援が可能になります。

統合失調症の経過は、前兆期、急性期、消耗期(休息期)、回復期という段階を経ることが一般的です。各期において必要な支援が異なるため、家族は現在の病期を理解し、それに応じた対応を心がける必要があります。また、統合失調症は再発しやすい疾患であり、継続的な治療と支援が不可欠です。家族の理解と協力は、患者さんの予後を大きく左右する重要な要因となります。

家族が統合失調症について正しい知識を持つことは、偏見や誤解を防ぎ、適切な支援を提供する基盤となります。「危険な病気」「治らない病気」といった誤ったイメージではなく、適切な治療により多くの患者さんが症状をコントロールし、地域で生活できることを理解することが大切です。また、家族自身も支援を受ける権利があり、一人で抱え込む必要はないということも重要な認識です。

統合失調症の症状|家族が知っておくべき特徴

統合失調症の症状を正しく理解することは、家族が適切な対応をする上で不可欠です。症状は大きく陽性症状、陰性症状、認知機能障害の3つに分類されますが、これらは患者さんによって現れ方が異なり、また病期によっても変化します。家族は、これらの症状を「わがまま」や「怠け」と誤解せず、病気の症状として理解し、共感的に対応することが求められます。

症状の理解において重要なのは、患者さんにとってこれらの症状は極めて現実的な体験であるということです。幻聴や妄想は、本人にとっては疑いようのない事実として体験されており、それによる苦痛や不安は計り知れません。家族がこの点を理解することで、より適切で共感的な対応が可能になります。

また、症状は固定的なものではなく、適切な治療により改善可能であることも重要な理解です。薬物療法や心理社会的治療により、多くの患者さんで症状の改善が見られます。家族の適切な対応と支援は、症状の改善と安定に大きく貢献します。

陽性症状

陽性症状は、正常な精神機能に「付け加わった」症状で、幻覚、妄想、思考の解体、異常な精神運動性行動などが含まれます。最も一般的な幻覚は幻聴で、患者さんの約70%が経験します。「お前はダメだ」「死ね」といった批判的な声や、行動を命令する声が聞こえることが多く、患者さんに強い苦痛を与えます。家族は、患者さんが独り言を言っていたり、見えない何かに反応していたりする場合、幻聴の可能性を考慮する必要があります。

妄想は、明らかに誤った内容を強く確信している状態で、被害妄想(「誰かに狙われている」)、関係妄想(「テレビが自分のことを言っている」)、誇大妄想(「自分は特別な存在だ」)などがあります。家族にとって、これらの妄想的な話を聞くことは困惑や不安を感じることが多いですが、患者さんにとっては現実であることを理解し、否定も肯定もせず、感情に共感する対応が重要です。

思考の解体により、話のまとまりがなくなり、論理的な会話が困難になることもあります。家族は、患者さんの話が理解できなくても、根気よく聞く姿勢を示し、理解しようとする努力を続けることが大切です。これらの陽性症状は、急性期に特に顕著に現れますが、適切な薬物療法により改善することが多いため、治療への希望を持つことが重要です。

陰性症状

陰性症状は、正常な精神機能が「失われた」状態で、感情の平板化、意欲の低下、会話の貧困、快感消失、社会的引きこもりなどが含まれます。これらの症状は陽性症状に比べて目立ちにくいものの、患者さんの日常生活や社会機能に大きな影響を与え、家族にとっても対応が難しい症状です。感情表現が乏しくなり、以前は楽しんでいた活動への興味を失い、人との交流を避けるようになります。

意欲の低下により、身だしなみや衛生管理がおろそかになったり、日常的な家事ができなくなったりすることがあります。家族は、これを「怠けている」「やる気がない」と誤解しがちですが、これは病気の症状であり、本人もコントロールできないことを理解する必要があります。小さな改善でも認めて褒め、できることから少しずつ取り組むよう促すことが大切です。

陰性症状は薬物療法だけでは改善が困難なことが多く、心理社会的な介入が重要となります。デイケアへの参加、作業療法、音楽療法などの活動を通じて、徐々に意欲や感情表現を回復させていくアプローチが有効です。家族は、患者さんのペースを尊重しながら、過度な要求をせず、小さな一歩を支援する姿勢が求められます。

認知機能障害

認知機能障害は、注意力、記憶力、実行機能、処理速度などの低下として現れ、日常生活に大きな影響を与えます。複数のことを同時に処理することが困難になり、指示を覚えられない、計画を立てられない、問題解決ができないといった困難が生じます。家族は、これらの障害を理解し、患者さんの能力に応じた支援を提供する必要があります。

コミュニケーションにおいては、簡潔で明確な表現を心がけ、一度に多くの情報を伝えないようにすることが重要です。「お風呂に入って、着替えて、薬を飲んで」といった複数の指示ではなく、一つずつ段階的に伝えることで、理解と実行を促すことができます。また、メモやカレンダーなどの視覚的な補助を活用することも有効です。

認知機能障害は、就労や学業の継続を困難にする主要な要因となります。家族は、患者さんの認知機能のレベルを理解し、現実的な目標設定を支援することが重要です。認知リハビリテーションプログラムへの参加を促し、機能の改善または代償方法の習得を支援することも、家族ができる重要なサポートとなります。

家族が統合失調症になった場合に気をつけること

家族が統合失調症と診断された時、多くの家族は混乱し、どう対応すればよいか分からなくなります。まず重要なのは、冷静になり、正しい情報を収集することです。インターネット上には誤った情報も多いため、医療機関や公的機関から信頼できる情報を得ることが大切です。また、診断直後は感情的になりやすいですが、患者さんの前では動揺を見せず、安心感を与えることが重要です。

病気を受け入れることは、患者さんにとっても家族にとっても時間がかかるプロセスです。否認、怒り、取引、抑うつ、受容という段階を経ることが一般的です。家族は、自分自身の感情の変化も正常な反応として受け入れ、必要に応じて専門家のサポートを求めることが大切です。自責感や罪悪感を持つ家族も多いですが、統合失調症は誰のせいでもないことを理解することが重要です。

家族内での役割分担と協力体制の構築も重要です。一人の家族メンバーに負担が集中しないよう、それぞれができることを分担し、協力して支援にあたることが必要です。また、家族会議を定期的に開き、情報共有と方針の統一を図ることも有効です。家族全員が同じ方向を向いて支援することで、患者さんの混乱を防ぎ、回復を促進することができます。

家族や周りの方ができる具体的なサポート

統合失調症の患者さんへの家族のサポートは、治療の成功と生活の質の向上において極めて重要な役割を果たします。まず基本となるのは、治療の継続を支援することです。通院の同行、服薬の確認、副作用の観察など、医療面でのサポートが不可欠です。特に病識が乏しい患者さんの場合、家族の働きかけがなければ治療が中断してしまう可能性があります。

日常生活の支援も重要な役割です。食事の準備、掃除、洗濯などの家事支援から、金銭管理、スケジュール管理まで、患者さんの能力に応じたサポートを提供します。ただし、すべてを代行するのではなく、患者さんができることは自分でやってもらい、必要な部分のみサポートすることで、自立性を維持することが大切です。

社会参加の促進も家族ができる重要なサポートです。デイケアや作業所への通所を促し、社会との接点を維持することで、孤立を防ぎ、生活に張りを持たせることができます。また、趣味活動や運動などを一緒に行うことで、楽しみを共有し、関係性を深めることもできます。家族の温かい支援は、患者さんの回復への大きな力となります。

関連記事:統合失調症の方への接し方|家族・友人・職場での対応法

本人との接し方のコツ|効果的なコミュニケーション方法

統合失調症の患者さんとのコミュニケーションには、いくつかの重要なポイントがあります。これらのコツを理解し実践することで、患者さんとの関係を良好に保ち、回復を促進することができます。基本となるのは、患者さんを一人の人として尊重し、病気ではなく人格に焦点を当てることです。症状があっても、その人の尊厳と価値は変わらないことを常に意識することが大切です。

コミュニケーションにおいては、非言語的な要素も重要です。穏やかな表情、落ち着いた声のトーン、適切な距離感などが、患者さんに安心感を与えます。急な動作や大きな声は、患者さんを刺激し、症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。

また、一貫性のある対応も重要です。家族間で対応が異なると、患者さんは混乱し、不安が増大します。基本的な対応方針を家族で共有し、統一した接し方を心がけることで、患者さんに安定した環境を提供することができます。

①話を最後まで聞く

患者さんの話を最後まで聞くことは、信頼関係構築の基本です。たとえ内容が妄想的であったり、理解困難であったりしても、途中で遮らずに聞く姿勢を示すことが重要です。患者さんは、自分の体験を理解してもらいたい、共感してもらいたいという強い願望を持っています。話を聞いてもらえることで、孤独感が軽減し、安心感を得ることができます。

傾聴の際は、相槌を打ち、アイコンタクトを取りながら、関心を持って聞いていることを示します。「そうだったんですね」「大変でしたね」といった共感的な反応を示すことで、患者さんは受け入れられていると感じます。ただし、妄想的な内容を積極的に肯定する必要はなく、「あなたにはそう感じられるのですね」といった中立的な受け止め方が適切です。

話を聞いた後は、患者さんの感情に焦点を当てた対応を心がけます。「不安だったでしょうね」「辛かったですね」といった感情への共感は、患者さんの心理的な支えとなります。また、話の内容を要約して確認することで、理解していることを示し、コミュニケーションを深めることができます。

②言い争いや対立を避ける

統合失調症の患者さんとの言い争いや対立は、症状を悪化させ、関係を損なう可能性があるため、できる限り避けることが重要です。特に妄想的な内容について論理的に説得しようとしても、効果がないばかりか、患者さんは自分が否定されたと感じ、さらに頑なになることがあります。「そんなはずはない」「考えすぎだ」といった否定的な言葉は使わないようにしましょう。

対立を避けるためには、話題を変える技術も有効です。妄想的な話が続く場合は、「ところで、今日の夕食は何がいいですか?」といった形で、自然に別の話題に移行することができます。また、患者さんの良い面や興味のあることに話題を向けることで、ポジティブな会話を増やすことも可能です。

意見の相違がある場合は、「私はこう思うけれど、あなたの考えも理解できます」といった形で、双方の意見を尊重する姿勢を示します。正しいか間違っているかの議論ではなく、お互いの考えを共有し合うという視点でコミュニケーションを取ることが、良好な関係維持につながります。

③伝えるときにはわかりやすく

認知機能障害がある患者さんに情報を伝える際は、わかりやすさが極めて重要です。複雑な説明や長い文章は理解が困難なため、簡潔で明確な表現を心がけます。「明日の10時に病院に行きます」といった具体的で単純な伝え方が効果的です。抽象的な表現や比喩は避け、具体的な言葉を使うようにしましょう。

一度に多くの情報を伝えることは避け、段階的に伝えることが大切です。「まず着替えてください」→(実行を確認)→「次に朝食を食べましょう」といった形で、一つずつ確実に伝えていきます。また、重要な情報は繰り返し伝え、理解度を確認することも必要です。「今言ったこと、分かりましたか?」と優しく確認し、必要に応じて再度説明します。

視覚的な補助を活用することも有効です。カレンダーに予定を書き込む、メモを渡す、図や写真を使って説明するなど、言葉だけでなく視覚的な情報も併用することで、理解と記憶を促進できます。また、患者さんが理解しやすい時間帯(薬の効果が安定している時など)を選んで重要な話をすることも効果的です。

④言ってもわからないと決めつけない

「どうせ言ってもわからない」という決めつけは、患者さんの尊厳を傷つけ、回復の可能性を閉ざしてしまいます。認知機能障害があっても、患者さんは多くのことを理解し、感じています。時間がかかったり、理解の仕方が異なったりするかもしれませんが、根気よく伝え続けることで、理解してもらえることは多くあります。

患者さんの理解力は、症状の状態によって変動します。調子の良い時には複雑な話も理解できることがあり、調子の悪い時には簡単なことも困難になることがあります。その時々の状態を見極めながら、柔軟に対応することが重要です。また、言葉では表現できなくても、感情的には理解していることも多いため、患者さんの反応を注意深く観察することが大切です。

重要な決定や相談事については、患者さんの意見を聞き、可能な限り本人の意思を尊重することが重要です。「あなたはどう思いますか?」「どうしたいですか?」と問いかけ、患者さんが自分で考え、決定する機会を提供します。これにより、自己効力感が高まり、治療への主体的な参加が促進されます。

⑤多少のミスには目をつぶる

完璧を求めすぎることは、患者さんにとって大きなストレスとなり、症状の悪化につながる可能性があります。日常生活での小さなミスや失敗は、誰にでもあることです。食器を割った、約束を忘れた、片付けが不十分だったといったことに対して、過度に注意したり叱責したりすることは避けましょう。

ミスがあった時は、「大丈夫、誰にでもあることですよ」と優しく声をかけ、一緒に解決策を考えることが大切です。失敗を学習の機会として捉え、次はどうすればよいかを建設的に話し合うことで、患者さんの成長を支援できます。また、できたことや努力したことに焦点を当て、ポジティブなフィードバックを与えることで、自信を回復させることができます。

ただし、安全に関わることや、他者に迷惑をかけることについては、適切に対処する必要があります。その場合も、感情的にならず、冷静に状況を説明し、改善方法を一緒に考えるアプローチが効果的です。批判ではなく支援の姿勢を示すことで、患者さんは安心して挑戦を続けることができます。

⑥甘えやわがままと批判しない

陰性症状による意欲低下や、認知機能障害による困難を「甘え」や「わがまま」と誤解することは、患者さんを深く傷つけ、回復を妨げます。これらは病気の症状であり、本人の意志でコントロールできるものではないことを理解することが重要です。「もっと頑張れ」「やる気を出せ」といった励ましは、かえってプレッシャーとなり、症状を悪化させる可能性があります。

患者さんの行動を理解する際は、病気の視点から考えることが大切です。朝起きられないのは怠けではなく、睡眠リズムの障害や薬の副作用かもしれません。家事ができないのは、実行機能の障害により計画や段取りが困難なためかもしれません。このような理解があれば、批判ではなく適切な支援を提供することができます。

患者さんのペースを尊重し、小さな進歩でも認めて評価することが重要です。「今日は顔を洗えたね」「薬を忘れずに飲めたね」といった、些細に見えることでも褒めることで、患者さんの意欲を少しずつ高めていくことができます。批判ではなく共感と支援の姿勢を保つことが、信頼関係の構築と回復の促進につながります。

⑦あせらない

統合失調症の回復は、直線的ではなく、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、長期的に改善していくものです。家族は、早く良くなってほしいという気持ちから、つい焦ってしまいがちですが、この焦りは患者さんにプレッシャーを与え、かえって回復を遅らせる可能性があります。「まだ働けないの?」「いつになったら良くなるの?」といった言葉は避け、長期的な視点で見守ることが大切です。

回復のペースは個人差が大きく、数ヶ月で改善する人もいれば、数年かかる人もいます。他の患者さんと比較することなく、本人のペースを尊重することが重要です。小さな変化や改善を見逃さず、それを認めて喜ぶことで、患者さんも家族も希望を持ち続けることができます。

焦らないためには、現実的な期待を持つことも大切です。完全に病前の状態に戻ることを目標とするのではなく、症状と共存しながらもその人らしい生活を送れることを目指すという視点が重要です。また、家族自身も息抜きをし、長期戦に備えることが必要です。

⑧穏やかな気持ちで過ごせる雰囲気を作る

家庭の雰囲気は、患者さんの症状に大きな影響を与えます。緊張感の高い、批判的な雰囲気は症状を悪化させ、温かく受容的な雰囲気は回復を促進します。家族は、できるだけ穏やかで安定した家庭環境を作ることを心がける必要があります。大声での口論、急な予定変更、過度な刺激などは避け、予測可能で安心できる環境を提供することが大切です。

日常的な会話を大切にし、病気の話題ばかりでなく、楽しい話題や共通の興味について話すことも重要です。一緒にテレビを見る、音楽を聴く、散歩をするなど、リラックスできる時間を共有することで、家族の絆を深めることができます。笑顔と humor を忘れず、時には冗談を言い合える関係を保つことも、穏やかな雰囲気作りに役立ちます。

家族自身のストレス管理も、穏やかな雰囲気を保つために不可欠です。介護疲れやストレスが蓄積すると、イライラしやすくなり、患者さんへの対応も厳しくなってしまいます。定期的に休息を取り、趣味や友人との時間を持ち、必要に応じて専門家のサポートを受けることで、家族も心の余裕を保つことができます。

統合失調症の方が受けられる支援制度やサポート

統合失調症の患者さんと家族が利用できる支援制度は多岐にわたります。これらの制度を適切に活用することで、経済的負担を軽減し、社会参加の機会を増やし、生活の質を向上させることができます。しかし、制度の存在を知らなかったり、申請方法が分からなかったりして、利用していない家族も多いのが現状です。家族は、利用可能な制度について積極的に情報収集し、必要な支援を受けることが重要です。

支援制度の申請には、診断書や各種書類が必要となることが多く、手続きが複雑な場合もあります。分からないことは、病院のソーシャルワーカーや市区町村の福祉窓口で相談することができます。また、複数の制度を組み合わせて利用することも可能なので、総合的な支援計画を立てることが大切です。

制度の利用は権利であり、遠慮する必要はありません。これらの支援を受けることで、患者さんの治療と生活が安定し、家族の負担も軽減されます。早期から適切な支援を受けることで、長期的な予後も改善することが期待できます。

障害年金

障害年金は、病気や障害により日常生活や就労に制限がある方に支給される公的年金です。統合失調症の患者さんも、一定の要件を満たせば受給することができます。障害基礎年金と障害厚生年金があり、初診日に加入していた年金制度により異なります。20歳前に初診日がある場合は、20歳から障害基礎年金を受給できる可能性があります。

申請には、初診日の証明、診断書、病歴・就労状況等申立書などが必要です。特に診断書は、日常生活能力や就労能力について詳細に記載する必要があり、主治医との相談が重要です。審査には数ヶ月かかることが一般的で、不支給となった場合でも審査請求(不服申立て)が可能です。

障害年金の受給により、経済的な安定が得られ、治療に専念できる環境が整います。また、障害年金受給者は、国民年金保険料の免除を受けることもできます。家族は、患者さんの症状や生活状況を正確に伝え、適切な診断書の作成に協力することが重要です。

自立支援医療制度

自立支援医療制度(精神通院医療)は、統合失調症などの精神疾患で通院治療を受ける方の医療費負担を軽減する制度です。通常3割の自己負担が1割に軽減され、所得に応じて月額上限額も設定されます。外来診療、投薬、デイケア、訪問看護などが対象となり、継続的な治療を受ける上で重要な支援となります。

申請は市区町村の福祉窓口で行い、診断書、申請書、所得を証明する書類などが必要です。有効期間は1年間で、継続する場合は更新手続きが必要です。指定医療機関でのみ利用可能なため、事前に確認が必要です。

この制度により、経済的理由による治療中断を防ぎ、安定した通院治療を継続することができます。特に、高額な新薬を使用する場合や、頻回の通院が必要な場合には、大きな経済的支援となります。家族は、更新時期を忘れないよう管理し、継続的に制度を利用できるようサポートすることが大切です。

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳は、精神障害により日常生活や社会生活に制限がある方に交付される手帳です。1級から3級までの等級があり、障害の程度により判定されます。手帳を取得することで、税金の控除、公共料金の割引、交通機関の運賃割引など、様々な優遇措置を受けることができます。

申請には、診断書(初診から6ヶ月以上経過後)または障害年金証書の写しが必要です。有効期間は2年間で、更新が必要です。手帳の取得により、障害者雇用枠での就労も可能となり、就労機会が広がります。

手帳の取得をためらう家族もいますが、これは患者さんの権利を保障し、社会参加を促進するための重要なツールです。手帳があることで受けられる支援は多岐にわたり、生活の質の向上に大きく貢献します。プライバシーも保護されており、必要な場面でのみ提示すればよいので、安心して利用することができます。

その他の支援制度

特別障害者手当は、重度の障害により日常生活に常時特別な介護が必要な20歳以上の方に支給される手当です。統合失調症でも、症状が重度で一定の要件を満たす場合は対象となります。月額約27,000円が支給され、所得制限があります。

生活保護制度は、病気により就労が困難で、他の収入や資産がない場合に、最低限度の生活を保障する制度です。医療扶助により医療費も無料となります。申請は福祉事務所で行い、資産調査などの審査があります。

住宅支援として、公営住宅の優先入居、家賃補助制度なども利用できる場合があります。また、成年後見制度を利用することで、判断能力が不十分な患者さんの財産管理や身上監護を支援することも可能です。これらの制度を組み合わせることで、包括的な生活支援を受けることができます。

困ったときの相談機関|家族が利用できるサポート

統合失調症の患者さんを支える家族は、様々な困難に直面することがあります。症状への対応、治療の継続、経済的問題、家族関係の問題など、一人で抱え込むには重すぎる課題が多くあります。そんな時、適切な相談機関を利用することで、専門的なアドバイスを受け、問題解決の糸口を見つけることができます。相談することは決して恥ずかしいことではなく、むしろ積極的に支援を求めることが、患者さんと家族の幸せにつながります。

相談機関は、医療機関だけでなく、行政機関、民間団体など多岐にわたります。それぞれに特徴があり、相談内容に応じて使い分けることが重要です。また、多くの相談機関は無料で利用でき、プライバシーも守られるので、安心して相談することができます。

定期的に相談機関を利用することで、問題が深刻化する前に対処でき、家族の負担も軽減されます。また、同じような経験を持つ他の家族との交流の機会も得られ、孤立感から解放されることもあります。

精神保健福祉センター

精神保健福祉センターは、都道府県や政令指定都市に設置されている精神保健の専門機関です。精神科医、保健師、精神保健福祉士などの専門職が配置され、統合失調症を含む精神疾患に関する相談に幅広く対応しています。本人だけでなく、家族からの相談も受け付けており、病気の理解、対応方法、利用できる制度などについて、専門的なアドバイスを受けることができます。

センターでは、家族教室や家族会の開催も行っています。これらのプログラムでは、病気についての正しい知識を学び、対応スキルを身につけ、他の家族との交流を通じて支え合うことができます。グループでの学習は、孤立感を軽減し、「自分だけではない」という安心感を得ることができます。

また、精神保健福祉センターは、地域の精神保健福祉のネットワークの中心的役割を担っており、必要に応じて適切な医療機関や福祉サービスへの紹介も行います。電話相談も実施しているところが多く、まずは電話で相談してみることも可能です。

保健所

保健所は、市区町村に設置されている身近な相談窓口です。保健師が中心となり、精神保健相談を実施しています。定期的に精神科医による相談日を設けているところも多く、医療機関を受診する前の相談先としても利用できます。家族の相談にも対応しており、患者さんが受診を拒否している場合の対応方法などについてもアドバイスを受けることができます。

保健所では、訪問指導も実施しています。ひきこもりがちな患者さんや、通院が困難な患者さんの自宅を保健師が訪問し、生活状況の確認や相談支援を行います。家族だけでは対応が困難な場合、保健師の介入により、状況が改善することもあります。

また、保健所は地域の社会資源についての情報を持っており、デイケア、作業所、グループホームなどの紹介も行います。各種制度の申請窓口にもなっており、自立支援医療や精神障害者保健福祉手帳の申請手続きも行えます。身近な相談窓口として、気軽に利用することができます。

病院や診療所の精神科

医療機関の精神科は、治療だけでなく、相談機能も持っています。多くの病院には、精神保健福祉士(ソーシャルワーカー)が配置されており、医療相談室で様々な相談に応じています。治療に関することはもちろん、経済的問題、福祉制度の利用、就労支援、家族関係の調整など、幅広い相談に対応しています。

主治医との連携も重要な特徴です。ソーシャルワーカーは主治医と連携しながら、患者さんと家族を包括的に支援します。医療的な視点と福祉的な視点の両方から、最適な支援方法を検討することができます。また、必要に応じて、院内の他の専門職(心理士、作業療法士など)とも連携し、チーム医療を提供します。

家族向けのプログラムを実施している医療機関も増えています。家族心理教育、家族会、家族面談などを通じて、家族の疾患理解を深め、対応スキルを向上させる支援を行っています。定期的に参加することで、継続的なサポートを受けることができます。

地域活動支援センター

地域活動支援センターは、精神障害者の日中活動の場として、創作活動、生産活動、社会交流などの機会を提供する施設です。患者さん本人の利用が中心ですが、家族の相談にも対応しているところが多くあります。ピアスタッフ(精神疾患の経験を持つスタッフ)が配置されているところもあり、経験に基づいた実践的なアドバイスを受けることができます。

センターでは、家族向けの勉強会や交流会も開催されています。地域で生活する上での具体的な工夫、社会資源の活用方法、当事者との関わり方など、実践的な内容が中心です。また、患者さんがセンターを利用することで、家族の介護負担が軽減され、レスパイト(休息)の機会にもなります。

地域に根ざした活動を行っているため、地域の情報に詳しく、住まい、仕事、余暇活動などの相談にも応じています。インフォーマルな雰囲気の中で、気軽に相談できることも特徴です。患者さんと家族が共に利用することで、地域での生活を支える重要な拠点となります。

家族自身のケア|介護疲れを防ぐために

統合失調症の患者さんを支える家族は、長期にわたる介護により、身体的・精神的に疲弊することがあります。家族の健康が損なわれると、患者さんへの支援も困難になるため、家族自身のケアは極めて重要です。「自分のことは後回し」という考えは美徳ではなく、むしろ長期的には患者さんのためにもならないことを理解する必要があります。

家族の介護負担は、うつ病、不安障害、身体疾患などのリスクを高めることが知られています。定期的に自分の健康状態をチェックし、必要に応じて医療機関を受診することも大切です。また、介護ストレスのサインを見逃さず、早期に対処することで、深刻な健康問題を防ぐことができます。

家族のケアは、個人の問題ではなく、社会全体で支えるべき課題です。利用可能な支援サービスを積極的に活用し、一人で抱え込まないことが重要です。家族が健康で幸せであることが、結果的に患者さんの回復にもつながることを忘れないでください。

家族会への参加

家族会は、統合失調症の患者さんを持つ家族が集まり、情報交換や相互支援を行う自助グループです。全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)を中心に、全国各地で活動しています。同じような経験を持つ家族との出会いは、「自分だけではない」という安心感を与え、孤立感から解放してくれます。

家族会では、病気や治療についての情報交換、日常的な対応方法の共有、利用できる制度やサービスの紹介などが行われます。経験豊富な先輩家族からのアドバイスは、実践的で役立つものが多く、専門書では得られない生きた知識を得ることができます。また、悩みや愚痴を安心して話せる場でもあり、精神的な支えとなります。

家族会は、社会に対する啓発活動や、制度改善への提言も行っています。個人では解決困難な問題も、集団の力で改善を求めることができます。家族会への参加は、受け身の支援を受けるだけでなく、主体的に活動する機会でもあり、エンパワメントにつながります。定期的に参加することで、継続的なサポートを受けることができます。

レスパイトケアの活用

レスパイトケアは、介護者の休息(レスパイト)を目的としたサービスです。ショートステイ、デイケア、訪問看護などを利用することで、家族は介護から一時的に解放され、心身のリフレッシュを図ることができます。「患者さんを預けることは申し訳ない」と感じる家族も多いですが、介護者の健康維持は、長期的な介護継続のために不可欠です。

定期的なレスパイトの確保が重要です。週に数時間でも、自分の時間を持つことで、ストレスを軽減し、介護へのエネルギーを回復することができます。趣味活動、友人との交流、運動、旅行など、自分が楽しめることをする時間を意識的に作ることが大切です。

レスパイトケアは、患者さんにとってもメリットがあります。家族以外の人との交流により社会性が保たれ、新しい刺激を受けることで、生活に変化が生まれます。また、家族がリフレッシュすることで、より良い関係性を保つことができます。罪悪感を持たず、積極的にレスパイトケアを活用することが、家族と患者さんの両方にとって有益です。

関連記事:【精神科訪問看護師が解説!】精神疾患を抱える方への重要な看護師のコミュニケーション方法とは?

まとめ|家族の理解と支援が回復への鍵

統合失調症は、患者さん本人だけでなく、家族全体に影響を与える疾患です。しかし、適切な知識と対応方法を身につけ、利用可能な支援を活用することで、患者さんの回復を促進し、家族も健康的な生活を送ることができます。最も重要なのは、統合失調症が誰のせいでもない脳の機能的疾患であることを理解し、偏見や自責感から解放されることです。

家族の役割は多岐にわたりますが、すべてを完璧にこなす必要はありません。できることから少しずつ取り組み、困った時は専門家や支援機関に相談することが大切です。また、家族自身のケアも忘れず、長期的な視点で支援を継続できる体制を整えることが重要です。

統合失調症は、適切な治療と支援により、多くの患者さんが症状をコントロールし、充実した生活を送ることができる疾患です。家族の温かい理解と適切な支援は、患者さんの回復への大きな力となります。希望を持ち続け、患者さんと共に歩んでいくことで、必ず道は開けます。一人で抱え込まず、利用できる支援を活用しながら、患者さんと家族が共に幸せな生活を送れることを願っています。

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この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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