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双極性障害とADHDの違いと共通点を徹底解説|併発時の対処法

2025.11.07 精神科訪問看護とは

双極性障害(躁うつ病)とADHD(注意欠如・多動症)は、集中できない・感情の波が激しいといった共通する特徴があるため、しばしば混同されがちです。しかし、両者は根本的な原因や治療法が異なり、正しい理解と対応が欠かせません。

本記事では、双極性障害とADHDの違い・併発するケース・治療法・仕事との付き合い方までを詳しく解説します。自身や身近な人の症状理解の一助にしてください。

双極性障害とADHDの違いとは?

両者は一見似ていますが、性質や原因、治療法は大きく異なります。ここではそれぞれの特徴を整理しながら、違いを明確にしていきます。

双極性障害とは?

双極性障害は「躁状態」と「うつ状態」を周期的に繰り返す精神疾患です。躁状態では、過剰な自信や活動的な行動、浪費、攻撃的な発言などが見られます。一方で、うつ状態では無気力・集中力の低下・自己否定が強くなり、日常生活が困難になるほど気分の波が激しく変動します。

原因には遺伝的素因のほか、ストレスや睡眠リズムの乱れなど環境的要因も関係しています。特徴的なのは、症状の「周期性」であり、一時的ではなく一定のリズムをもって気分が上下する点です。医師による継続的な診察と気分記録が診断の鍵となります。

関連記事:双極性障害の末期症状とは?進行の兆候と回避策

ADHDとは?

ADHD(注意欠如・多動症)は、脳の発達に関わる神経伝達機能のアンバランスによって起こる発達障害の一種です。特徴として「不注意」「多動性」「衝動性」の3つが挙げられます。たとえば会議中に集中が続かない、忘れ物が多い、思いつきで発言してしまうといった行動が見られます。

ADHDは感情の波というよりも「注意力や思考の制御が苦手」という認知機能の問題です。生まれつきの脳の特性によるものであり、努力不足ではありません。子どものころに気づかれず、大人になってから職場で困難を感じる「成人ADHD」も増えています。

似ているようで異なるポイント

双極性障害とADHDは共通して衝動的な行動や感情の波を示しますが、根本的な仕組みが異なります。双極性障害は「気分のリズムの異常」、ADHDは「注意・実行機能の障害」です。躁状態は一時的な高揚ですが、ADHDの多動性は持続的な傾向です。

さらに、ADHDは生涯にわたる発達特性であるのに対し、双極性障害は成人期以降に発症することが多い点も違いです。つまり、双極性障害は「気分の波」、ADHDは「注意の偏り」が本質的な違いなのです。

関連記事:ADHDと双極性障害は似ている?違いや共通点を解説

双極性障害とADHDの併発はあるのか?

この2つの疾患は独立して存在しますが、同時に見られることもあります。ここではその背景と注意点を解説します。

併発の割合と背景

研究によると、ADHDを持つ成人の1割程度が双極性障害を併発していると報告されています。両者に共通して関わるのは、ドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質の働きです。脳の報酬系や感情制御に関わる領域が共通して影響を受けるため、症状が重なりやすいと考えられます。

また、幼少期のADHDが長年のストレスや社会的失敗体験によって二次的にうつ症状を引き起こし、双極性障害の発症につながることもあります。遺伝と環境が複雑に関わり合っているのが特徴です。

診断が難しい理由

併発例では、ADHDの衝動性が躁状態に見えたり、双極性障害のうつ期がADHDの集中困難と混同されることがあります。このため、医師でも短期間の診察では判断が難しく、誤診のリスクが生じます。

実際、ADHDと誤診されて双極性障害の治療が遅れるケースもあります。そのため、本人や家族が症状の「経過」を詳細に記録し、感情の波や生活リズムの変化を医師に伝えることが非常に重要です。

正確な診断のためにできること

診察では、「症状がいつから始まり」「どのような状況で悪化するか」を具体的に伝えることが求められます。メンタル面だけでなく、睡眠、食事、仕事の状況などを含めて記録しておくと役立ちます。家族や職場の人の観察も診断材料になります。症状の経過を可視化し、主観と客観の両面から整理して伝えることが、正確な診断の第一歩です。

双極性障害とADHDの原因

両者は似た困りごとが現れますが、発症の背景は異なります。根っこを見誤ると治療選択を誤るため、遺伝や脳機能、成育歴や生活環境の影響をそれぞれ分けて整理します。ここからは疾患ごとの特徴と環境要因の相互作用を具体的に解説します。

双極性障害の原因

双極性障害は遺伝的素因の寄与が相対的に大きく、家族内発症の有無がリスクを押し上げます。脳内ではセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の調整機構が不安定になり、前頭前野と大脳辺縁系の連携が乱れることで気分の振幅が拡大します。

発症や再燃の引き金としては睡眠リズムの崩れ、強いストレス、出産や更年期のホルモン変化、アルコールの過量摂取などが挙げられます。とはいえ単一の原因で説明できる病気ではなく、生まれ持った脆弱性に環境要因が重なる多因子モデルで捉えるのが実際的です。すなわち遺伝的素因と環境ストレスの相互作用が気分の波の増幅に関与し、長期的な再発予防には生活リズムの保全が中核となります。

ADHDの原因

ADHDは発達期から持続する神経発達の特性で、注意や抑制に関わる前頭前野―線条体回路の働きに偏りが生じます。ドーパミンやノルアドレナリンの調節機能が弱く、情報の取捨選択とワーキングメモリの効率が低下しやすいことが不注意や衝動性の背景になります。遺伝率は高く、家族歴のある人ほど発症しやすい傾向があります。

周産期の低出生体重、早産、胎内環境の影響などが報告されますが、単独で決定づけるものではありません。学齢期の成功体験の乏しさや誤学習が二次的な不安や抑うつを招き、成人期の機能低下を強めることがあります。したがってADHDは努力不足ではなく脳の情報処理特性に由来し、支援は「能力開発と環境調整」を両輪で進めることが合理的です。

環境要因が与える影響

双極性障害とADHDはいずれも外的環境の影響を受けやすく、ストレス過多や睡眠不足は症状を悪化させます。双極性障害では徹夜や交代勤務が躁転や抑うつの引き金になり、ADHDでは刺激が多すぎる職場配置や曖昧な指示がミスの増加につながります。人間関係の衝突や評価の不一致は自己効力感を下げ、回避や遅延を助長します。

一方で、予測可能な予定、役割の明確化、感覚過負荷の軽減、適切なフィードバックを組み込むと機能は大きく改善します。家族や同僚の理解も保護因子となり、再発サイクルの遮断に役立ちます。環境は症状の結果ではなく調整可能な治療因子であり、生活設計に織り込むことで再燃リスクを実用的に下げられます。

それぞれの治療法と向き合い方

治療は病態生理に沿って選ぶと効果が高まります。薬物療法と心理社会的支援、生活リズムの整備を組み合わせ、短期の改善と長期の再発予防を同時に設計します。ここでは疾患別の標準的アプローチを示します。

双極性障害の治療法

第一選択は気分安定薬で、リチウムやバルプロ酸、ラモトリギンなどを症状相に応じて調整します。躁状態が強ければ非定型抗精神病薬を併用し、うつ相では過度な抗うつ薬単独投与を避けつつ気分安定薬を基盤に用います。急性期を越えたら再発予防の維持療法に移行し、睡眠覚醒リズムの固定、アルコールの制限、ストレスの負荷管理を継続します。

家族心理教育は早期兆候の気づきを高め、受診遅れや服薬中断を減らします。副作用や血中濃度モニタリングを含め医師と二人三脚での調整が重要です。薬物療法に生活リズム介入と心理教育を組み合わせることが、短期安定と長期予防の両立に最も効果的です。

ADHDの治療法

ADHDには中枢刺激薬や非刺激薬が用いられ、ドーパミンやノルアドレナリンの働きを整えて注意と抑制機能を高めます。副作用や効果時間を見ながら用量や製剤を調整し、就業時間や学習時間に合わせた服用設計を行います。

薬と並行して、認知行動療法やコーチングで時間管理、タスク分割、外部記憶の活用、衝動への遅延行動などのスキルを訓練します。職場ではノイズ低減、作業の見える化、締切の段階設定、フィードバックの頻度調整が有効です。薬物療法と実行機能トレーニング、環境調整の三位一体を継続することで、症状の困りごとは大幅に軽減します。

併発している場合の治療のポイント

併発では症状の優先順位づけが鍵です。躁転や自傷リスクが高い時期は気分安定を最優先し、安定後にADHD症状へ段階的に介入します。薬物間の相互作用や賦活による躁転リスクに配慮し、刺激薬の導入は慎重に行います。

心理社会的には睡眠の固定、予定の過密回避、支援者との連絡導線の一本化が再燃予防に寄与します。本人の強みを生かす役割設計も有効で、成功体験が治療アドヒアランスを高めます。危険度の高い症状から順に安定化させ、段階的に目標を広げるステップ治療が最も安全で成果が持続します。

双極性障害・ADHDと仕事の両立

働き続けることは多くの場合可能です。ポイントは「作業の設計」と「周囲の合意形成」です。ここでは日々の実践に落とし込める工夫、制度活用、外部支援の使い方を順に示します。

仕事を続けるための工夫

まず業務を小さな単位に分け、着手の障壁を下げます。チェックリストやタイムボックスで進捗を見える化し、集中が切れたら短い休憩を挟んで再起動します。予定は一元管理し、朝一番に優先順位を確定します。双極性障害では睡眠を削らない範囲で締切を設定し、夜間の連絡ルールを明確化します。

ADHDでは通知の整理、デスクの定位置化、口頭指示の文字化がミス防止に有効です。振り返りは週1回の固定枠で行い、改善点を1つだけ実装します。完璧主義ではなく再現可能な小さな仕組み化が、安定した成果と自信の積み上げにつながります。

職場での配慮と支援制度

上司と相談し、静かな席やノイズ低減ツール、タスクの優先順位の明確化、複数締切の段階設定など具体的配慮を取り決めます。産業医や人事と連携すれば勤務時間の調整や在宅勤務の併用も検討できます。障害者雇用や就労移行支援の利用で、職務設計と職場定着の支援を受けられます。

診断書や支援機関の所見は合意形成の材料となり、本人の負担を減らします。評価基準を事前に共有すると不一致が減り、フィードバックが建設的になります。配慮は特別扱いではなく生産性を最大化する職場の投資であり、合意形成の文書化が継続性を担保します。

支援を受けながら働く

医療・心理・福祉のチームを組むと、困りごとが早期に表面化し対処が速くなります。訪問看護やカウンセリングは服薬支援や睡眠・食事の整え、ストレス対処の伴走に役立ちます。就労支援は職務分析と環境調整を具体化し、配置転換や段階的復職の設計を助けます。

家族にはサインの見分け方と関わり方を共有し、過干渉や放任を避ける中庸を目指します。地域の資源とつながることで孤立が減り、再発時の安全網が強化されます。支援は甘えではなく自己管理の拡張であり、外部リソースの活用が長期の就労継続を支えます。

まとめ

双極性障害とADHDは、似た症状を持ちながらも異なる性質を持つ疾患です。誤診を避け、正しい治療を受けるためには、症状を記録し、医師と継続的に連携することが大切です。支援を受けながら働くことも可能であり、無理をせず自分の特性に合った生活を見つけることが回復への近道です。

精神疾患で悩んでいる方は、訪問看護の利用も選択肢の一つです。ぜひ「訪問看護ステーションくるみ」へご相談ください。精神科に特化した専門スタッフがあなたの暮らしに寄り添い、地域と連携しながら安心できる生活を支援します。

大阪市、寝屋川市、守口市、
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平日・土曜・祝日 9:00〜18:00 
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対応させていただいております。

この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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