中学生の「うつ病」とは?症状、原因、親ができること【専門家監修】
精神科訪問看護とは「最近、うちの子、なんだか元気がない…もしかして、うつ病?」 中学生のお子さんのことで、こんな風に悩んでいませんか? 中学生は心身ともに大きく成長する時期。友人関係、勉強、将来への不安など、様々なストレスを抱えやすい時期でもあります。
この記事では、中学生のうつ病について、症状から原因、親としてできること、専門家への相談方法まで、分かりやすく解説します。お子さんの心のSOSに気づき、寄り添うために、ぜひお役立てください。
中学生のうつ病とは?

中学生という多感な時期は、心と体が大きく成長する一方で、友人関係、学業、そして将来への漠然とした不安など、さまざまなストレスを感じやすい時期でもあります。このセクションでは、まず「うつ病」という病気について、誰もが理解できるように分かりやすく解説します。
うつ病の定義
うつ病は、単に一時的に気分が落ち込んでいる状態とは異なります。これは、脳の機能に変化が生じることによって引き起こされる「病気」であり、意欲や興味の喪失、気分の落ち込み、不眠や過眠、食欲の変化、集中力の低下、無気力感、そして時には希死念慮といった、様々な精神的・身体的な症状が継続的に現れるのが特徴です。
日常生活を送る上で、これまで楽しめていたことに興味を持てなくなったり、学校や仕事に行くことが困難になったりするなど、機能の著しい低下を伴うことがあります。この病気は、誰にでも起こりうるものであり、早期の理解と適切な治療によって回復が期待できます。
中学生のうつ病の特徴
中学生のうつ病は、思春期特有の心身の揺らぎや友人関係・学業のプレッシャーなどが重なり、大人とは異なる形で現れることがあります。元気がないだけでなく、イライラや反抗的な態度、学校を避ける、成績低下、友人を遠ざけるといった行動の変化が見られる場合があります。頭痛・腹痛など原因不明の体調不良を訴えることも多く、強い自己否定感に陥ることもあります。こうしたサインに早く気づき、専門家につなげることが回復の第一歩です。
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中学生のうつ病の主な症状
中学生のうつ病は、単に「元気がない」「やる気が出ない」といった精神的な側面だけでなく、体の不調や普段とは異なる行動として現れることがあります。お子さんの様子に変化が見られる場合、それはうつ病のサインかもしれません。このセクションでは、保護者の方が早期に気づけるよう、精神面、身体面、行動面における具体的な症状を詳しく解説していきます。
精神的な症状
うつ病の精神的な症状は、お子さんの内面で起こる変化として現れます。最も代表的なのは、常に気分が落ち込んでいる、悲しい、虚しいといった感情が続くことです。以前は楽しめていた趣味や友達との交流にも興味を示さなくなり、何事にも意欲が湧かなくなります。
また、些細なことでイライラしやすくなったり、理由もなく不安を感じたりすることも増えるでしょう。集中力が低下し、物事を判断したり、決断したりすることが難しくなる場合もあります。これらの変化は、お子さん自身もどうしていいかわからず、苦しんでいるサインかもしれません。
身体的な症状
精神的な不調だけでなく、うつ病は身体的な症状として現れることも少なくありません。お子さんが「頭が痛い」「お腹が痛い」といった訴えを繰り返すものの、病院で検査しても特に異常が見つからない場合、うつ病が原因である可能性も考えられます。食欲が極端に減ったり、逆に過食になったりすることも。
睡眠に関しても、寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めたりする不眠、あるいは逆に日中に強い眠気を感じる過眠といった症状が現れることがあります。理由もなく体がだるく、疲れやすいといった倦怠感も、うつ病のサインとして見過ごせません。
行動の変化
うつ病は、お子さんの日常生活における行動にも顕著な変化をもたらします。以前は活発だったお子さんが、何をするのも億劫になり、無気力な状態が続くことがあります。部屋に閉じこもりがちになり、家族や友人との関わりを避ける「引きこもり」のような状態になることも。学校生活においては、遅刻や欠席が増えたり、授業に集中できずに成績が低下したりする傾向が見られます。
さらに、自分を傷つける自傷行為や、最悪の場合には自殺をほのめかす、あるいは実行しようとするような、深刻な行動が現れることもあります。これらの変化は、お子さんが抱える苦しみのSOSとして捉える必要があります。
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中学生がうつ病になる原因
中学生のうつ病は、単一の原因で発症するものではなく、様々な要因が複雑に絡み合って生じます。思春期は心身ともに大きく変化する時期であり、この時期特有のストレスや発達段階における課題が、うつ病の発症リスクを高めることがあります。
ここでは、その主な原因を環境、心理、生物学という3つの側面から詳しく見ていきます。これらの要因を多角的に理解することは、早期発見や予防、そして適切な支援につなげるための第一歩となります。
環境要因
うつ病の発症には、本人が置かれている外部環境が大きく影響します。家庭環境においては、家族間のコミュニケーション不足、両親の不仲、過度な期待や干渉、あるいは逆に無関心などが、子供の心に負担をかけることがあります。学校環境も重要な要因です。いじめや不登校、友人関係のトラブル、過剰な学業成績へのプレッシャー、先生との関係などがストレス源となり得ます。また、所属する地域社会や、インターネットを通じた人間関係なども、子供の精神状態に影響を与える可能性があります。
心理的要因
個人の内面的な要因も、うつ病の発症に関与します。例えば、完璧主義の傾向が強く、常に自分自身に高い基準を課し、達成できないと自己否定に陥りやすい性格などが挙げられます。また、自己肯定感が低いと、些細な失敗でも「自分はダメだ」と思い込みやすく、ネガティブな感情に囚われやすくなります。過度な心配性や、ストレスに対する適応力、感情のコントロール能力の低さなども、うつ病を発症しやすくする要因となり得ます。これらの心理的な傾向は、環境からのストレスと相互に作用し、うつ病のリスクを高めることがあります。
生物学的要因
うつ病の発症には、脳の機能や身体的な要因も無視できません。思春期は脳が発達途上にあり、特に感情や情動を司る部分が大きく変化します。この時期に、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)のバランスが崩れることが、気分の落ち込みや意欲の低下といったうつ症状と関連していると考えられています。また、遺伝的な要因が関与している場合もあり、家族にうつ病の経験者がいると、発症リスクがやや高まることが指摘されています。さらに、ホルモンバランスの変化なども、心身の不調に影響を与える可能性があります。
中学生のうつ病チェックリスト

ここでは、中学生のお子さんにうつ病の兆候が見られるのではないかと心配されている保護者の方のために、簡易的なチェックリストをご用意しました。このチェックリストは、あくまでご家庭での観察を助けるための目安であり、医学的な診断に代わるものではありません。もし気になる項目が多い場合は、専門家への相談を強く推奨します。
チェックリストの使い方
このチェックリストは、保護者の方が普段接しているお子さんの様子を振り返り、うつ病の可能性を示唆するサインに気づくための補助ツールとしてご活用ください。各質問に対して、お子さんの最近の状態に最も近いと思われる方にチェックを入れてください。「はい」の数が多くても、それが必ずしもうつ病であると断定するものではありません。これはあくまで「目安」であり、お子さんの心身の状態をより深く理解するための一歩です。
もし、多くの項目で「はい」に該当する場合や、お子さんの元気がない、学校に行きたがらないなどの明らかな変化が見られる場合は、一人で抱え込まず、スクールカウンセラー、小児科医、精神科医などの専門家にご相談ください。
チェック項目
以下に、中学生のうつ病でよく見られる精神的、身体的、行動的な変化に関する質問項目を挙げます。お子さんの最近の様子を思い出し、「はい」「いいえ」でお答えください。あくまで自己観察の補助としてご活用ください。
- 最近、以前よりずっと元気がない、悲しそうにしていることが多いですか?
- 以前は楽しめていたこと(趣味、友達との遊びなど)に興味を示さなくなりましたか?
- イライラしたり、怒りっぽくなったりすることが増えましたか?
- 自分を責めたり、「自分はダメだ」といった考えを口にしたりすることがありますか?
- 理由もなく涙が出たり、泣き止まなかったりすることがありますか?
- 将来に希望が持てない、といったことを話すことがありますか?
- 集中力がなくなり、授業についていくのが難しくなりましたか?
- 以前と比べて、眠りが浅い、または逆に寝すぎるようになりましたか?
- 食欲がなくなったり、逆に過食になったりしましたか?
- 体重が急に増えたり減ったりしましたか?
- 疲れやすくなり、何をするにも元気がないように見えますか?
- 頭痛、腹痛、めまいなど、原因のはっきりしない体の不調を訴えることがありますか?
- 友達や家族との関わりを避け、一人でいることが多くなりましたか?
- 学校を休みがちになったり、学校に行くのを嫌がったりしますか?
- 成績が急に下がったり、授業に集中できなくなったりしましたか?
- 以前はしなかったような、危険な行動(無謀な運転、自傷行為など)をとるようになりましたか?
- 身だしなみに気を配らなくなったり、清潔さが保てなくなったりしましたか?
- 以前より口数が少なくなりましたか?
- 約束を守れなくなったり、物事を先延ばしにすることが増えましたか?
- 過度に心配したり、落ち着きがなくなったりすることがありますか?
- 些細なことで過剰に反応したり、感情の起伏が激しくなったりしましたか?
- 学校や家庭での役割をこなすのが難しくなったように見えますか?
このリストは網羅的なものではありませんが、お子さんの状態を把握するための一助となるでしょう。もし、上記の項目のうち、多くに「はい」と答える場合や、お子さんの様子に深刻な変化が見られる場合は、ためらわずに専門家にご相談ください。
専門家への相談
お子さんのうつ病が疑われる場合、専門家による適切な診断とサポートが不可欠です。本セクションでは、具体的にどのような専門家(精神科医、心療内科医、臨床心理士、スクールカウンセラーなど)に相談できるのか、相談時の一般的な流れ、そして保護者の方が安心して相談に臨むための注意点について解説します。
相談できる専門家
お子さんの心の健康に関する相談先としては、主に精神科医、心療内科医、臨床心理士、公認心理師、そして学校によってはスクールカウンセラーなどが挙げられます。精神科医や心療内科医は医師免許を持つ専門家であり、うつ病を含む精神疾患の診断を下し、必要に応じて薬物療法を含む治療を行います。
一方、臨床心理士や公認心理師は、心理的なアセスメントやカウンセリング、心理療法を専門としており、対話を通じてお子さんの心の状態の改善を図ります。スクールカウンセラーは、学校生活における悩みやストレスに対して、生徒や保護者、教員への相談・支援を行います。それぞれ異なる専門性を持っていますので、状況に応じて適切な専門家を選ぶことが大切です。
相談の流れ
専門機関への相談は、多くの場合、まず初診の予約から始まります。予約後、指定された日時に医療機関や相談窓口を訪れると、医師やカウンセラーによる問診が行われます。問診では、お子さんの現在の様子、症状の経過、生活状況、家庭環境などについて詳しく伺います。
必要に応じて、心理検査や発達検査などが行われることもあります。これらの情報をもとに、専門家がお子さんの状態を総合的に評価し、診断を行います。診断が確定した後は、その診断に基づいた治療方針(カウンセリング、薬物療法、生活指導など)が提案され、保護者の方と共有されます。
相談時の注意点
専門家への相談に臨むにあたり、事前に準備しておくと役立つことがいくつかあります。お子さんの様子で気になる点(気分の落ち込み、不眠、食欲不振、意欲の低下など)を具体的にメモしておくと、医師やカウンセラーが状況を把握しやすくなります。
また、受診時には、お子さん自身が安心して話せるような雰囲気作りを心がけ、保護者の方は冷静に、しかしお子さんの気持ちに寄り添う姿勢で臨むことが重要です。専門家を信頼し、共に解決策を探るという前向きな姿勢で臨むことで、より良い結果に繋がるでしょう。
治療方法

中学生のうつ病治療は、症状の程度や生活環境に合わせて複数の方法を組み合わせて進めます。薬物療法・精神療法・生活習慣の改善などを総合的に行い、専門家と相談しながら最適な治療計画を立てることが重要です。
薬物療法
抗うつ薬は気分の落ち込みや意欲低下を改善するために用いられ、脳内の神経伝達物質のバランスを整える働きがあります。効果が出るまで数週間かかるため、自己判断で服薬を中断しないことが大切です。副作用や一時的な気分変化が起こる場合もあるため、治療初期は医師と保護者が密に連携し、慎重に様子を見守る必要があります。安全性に配慮しつつ継続することで、薬物療法の効果をより高められます。
精神療法
精神療法は、お子さんの思考や感情のクセを理解し、より良い対処法を身につけるためのアプローチです。
代表的な方法である認知行動療法(CBT)では、ネガティブな考え方を現実的な視点に修正し、行動面の改善も図ります。対人関係療法(IPT)は、人間関係の問題や役割変化に焦点を当て、コミュニケーションや関係づくりを改善する方法です。精神療法は薬物療法と併用されることも多く、再発予防にも役立ちます。
その他の治療法
光療法は季節性うつ病に有効とされ、特定の光を浴びることで体内リズムを整える治療です。また、十分な睡眠と休息、規則正しい生活、栄養バランスの良い食事、ウォーキングなどの軽い運動は、心身の安定に寄与します。これらの生活習慣改善は無理なく行うことが重要で、医師や専門家に相談しながら少しずつ取り入れていくと効果的です。
親としてできること
お子さんがうつ病と診断された状況は、保護者にとって大きな不安を伴います。だからこそ、親がどのように向き合い、支えていくかは回復に大きく影響します。この章では、日常での関わり方、学校との連携、周囲の協力、そして親自身のケアという4つの観点から、実践的なサポート方法を紹介します。
子供とのコミュニケーション
お子さんの話を否定せずに受け止め、まずは「聞く姿勢」を大切にします。アドバイスを急がず、「つらかったね」「大変だったね」と共感を示すことが安心につながります。
逆に「頑張って」「しっかりしなさい」といった言葉はプレッシャーになるため避けましょう。
また、安心して過ごせる家庭環境を整え、生活リズムが乱れないようにやさしくサポートすることも重要です。お子さんが負担なく楽しめる活動を一緒に試してみるなど、無理のない範囲で興味を育てる関わりも効果的です。
学校との連携
学校に通っている場合、先生やスクールカウンセラーへ状況を共有し、必要な配慮を相談しましょう。授業の参加方法、休憩の取り方、対人関係の不安など、具体的に伝えることで学校もサポートしやすくなります。
定期的に情報交換し、家庭と学校が協力して見守る体制を整えることが大切です。ただし、共有する情報の範囲はお子さんのプライバシーにも配慮しながら決めていきましょう。
周囲への理解を求める
保護者一人で抱え込まず、家族や親しい友人にも状況を説明し、協力を得ることが大きな支えになります。難しい説明は避け、「しばらくは静かに見守ってほしい」「話を聞いてくれると助かる」など、必要なサポートを具体的に伝えると理解が得られやすくなります。
周囲のサポートは保護者自身の孤立感や負担感を軽減し、お子さんを支える力にもつながります。
親自身のケア
お子さんを支えるためには、親の心身の健康が欠かせません。罪悪感や不安で疲れが溜まりやすいため、無理をしすぎず、休息・睡眠・食事といった基本的なセルフケアを大切にしましょう。
また、信頼できる人に話を聞いてもらう、同じ経験を持つ保護者のグループに参加するなど、心の負担を軽くする方法を取り入れることも効果的です。必要であれば専門家への相談も検討してください。親が心にゆとりを持つことは、お子さんにとって大きな安心となり、回復を支える力になります。
回復への道筋と注意点
うつ病からの回復は、直線的なものではなく、しばしば一進一退を繰り返しながら進んでいきます。このセクションでは、回復に至るまでの道のり、その過程で注意すべき点、そして再発を防ぐための具体的な方法について詳しく解説します。希望を持って前向きに進むための、実践的な指針を提供します。
回復のプロセス
うつ病からの回復は、症状が徐々に改善していく過程をたどります。しかし、この過程は常に順調とは限らず、一時的に症状が悪化したり、気分が落ち込んだりすることを繰り返す「一進一退」の状態に陥ることも少なくありません。
このような時期は、回復が停滞しているように感じられるかもしれませんが、それは回復プロセスの一部であると理解することが重要です。焦らず、ご自身のペースを大切にし、心身の状態を注意深く見守りながら、一歩ずつ進んでいく姿勢が求められます。
注意すべきこと
回復期に入ると、症状が軽くなったように感じられ、無理をしてしまいがちですが、ここで注意が必要です。回復期に見落としがちなサイン、例えば疲れやすさの再燃や意欲の低下などは、再燃の兆候である可能性があります。心身の回復には時間がかかるため、活動量を急に増やしたり、過度なストレスにさらされたりすることは避けるべきです。症状の再燃を防ぐためには、ご自身の体調の変化に敏感になり、休息を十分にとり、無理のない範囲で生活を続けることが大切です。
再発予防
うつ病からの回復後も、再発を防ぐためには継続的な取り組みが重要です。まず、規則正しい生活習慣(十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動)を維持することは、心の健康を支える基盤となります。また、日々の生活で生じるストレスとうまく付き合うためのストレス管理スキルを身につけることも有効です。趣味やリラクゼーションを取り入れたり、信頼できる人に相談したりする習慣をつけましょう。さらに、主治医や専門家との定期的なフォローアップを続けることで、早期に変化に気づき、適切な対処を行うことができます。
まとめ
中学生のうつ病は思春期に起こりやすい身近な病気ですが、早期にサインへ気づき、学校や専門機関へ相談することで回復への道が開けます。保護者にとっては大きな不安がありますが、温かく寄り添い、お子さんのペースに合わせて支えることが何より大切です。専門家の力を借りながら、今できることから取り組んでいきましょう。ご家族の理解とサポートが、お子さんの笑顔を取り戻す大きな力になります。
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