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うつ病で「脳がおかしい」は本当? うつ病が脳に与える影響と対策を解説

精神科訪問看護とは

「最近、どうも頭がうまく働かない…」
そんな感覚を抱くことはありませんか? 実はその不調、心や気分の問題だけでなく、脳の働きが影響している場合があります。近年、うつ病が脳にどのような変化をもたらすのかが少しずつ明らかになってきました。

この記事では、うつ病と脳の関係についてわかりやすくお伝えしながら、不安を和らげるための知識や、脳の調子を整えるための具体的な方法をご紹介します。

うつ病と脳の関係:脳に何が起きているのか?

「脳がおかしい」と感じるというお悩みは、決して気のせいではありません。現代の脳科学は、うつ病が単なる気分の問題ではなく、脳の機能や構造に具体的な変化をもたらす疾患であることを解明しつつあります。ここでは、うつ病と脳の密接な関係について、科学的な根拠に基づき、分かりやすく解説していきます。

脳内物質のバランス

私たちの気分や意欲、睡眠といった様々な心身の働きは、脳内で働く神経伝達物質によって調整されています。うつ病では、特に「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニン、意欲や快感に関わるドーパミン、そしてストレスへの反応や覚醒に関わるノルアドレナリンといった神経伝達物質のバランスが崩れることが知られています。

これらの物質が減少したり、その働きが悪くなったりすると、気分の落ち込み、喜びを感じにくくなる、やる気が出ない、集中力が低下するといった、うつ病特有の症状が現れやすくなります。まさに、脳内の情報伝達システムに不具合が生じている状態と言えるでしょう。

脳の機能低下

うつ病は、脳の特定の領域の機能低下とも深く関わっています。特に、思考、判断、感情のコントロールといった高度な精神活動を司る「前頭前野(ぜんとうぜんや)」や、記憶の形成や情動の調節に関わる「海馬(かいば)」といった部位は、うつ病の影響を受けやすいことが分かっています。

これらの領域の機能が低下すると、物事を前向きに考えにくくなったり、集中力が持続しなかったり、些細なことで過度に落ち込んだり、感情の波が激しくなったりすることがあります。また、これらの脳機能の変化は、前述した神経伝達物質の異常とも相互に影響し合っています。

脳の画像診断

近年、MRI(磁気共鳴画像診断)やfMRI(機能的磁気共鳴画像診断)といった高度な画像診断技術の進歩により、うつ病患者さんの脳にどのような変化が起きているのかを、より詳細に観察できるようになりました。

これらの検査では、うつ病によって脳の体積がわずかに減少している(脳萎縮)、特定の領域の血流が低下している、あるいは脳の神経回路の活動パターンに変化が見られる、といったことが報告されています。これらの画像データは、うつ病が単なる精神的な不調ではなく、脳に物理的な変化を伴う疾患であることを客観的に示しており、診断や治療方針の決定に役立てられています。

特徴 健康な脳 うつ病の脳
脳内物質(セロトニン、ドーパミンなど) 適切な量とバランスで機能し、気分の安定や意欲を保つ 減少や機能不全が見られ、気分の落ち込みや意欲低下を引き起こす
前頭前野の機能 思考、判断、感情制御がスムーズに行われる 思考力、集中力、意欲の低下、ネガティブ思考に陥りやすい
海馬の機能 記憶の形成や情動の調節が正常に行われる 記憶力の低下、感情のコントロールが難しくなる
脳の体積・血流 正常な体積と血流パターン 特定領域の体積減少や血流低下が見られることがある
神経回路の活動 活発でバランスの取れた活動 特定の回路の活動低下や過活動が見られることがある

 

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うつ病で「脳がおかしい」と感じる原因

前のセクションでは、うつ病が脳にどのような科学的な変化をもたらすのかを解説しました。ここでは、それらの脳の変化が、私たちが日々感じている「脳がおかしい」という感覚に、具体的にどのように繋がっているのかを掘り下げていきます。

認知機能への影響

うつ病になると、集中力や思考力、記憶力といった認知機能が低下しやすくなります。「考えがまとまらない」「決断できない」「ミスが増える」といった変化は、前頭前野や海馬の働きが弱まることが関係しています。以前より思い出しにくくなったり、簡単な作業に時間がかかることもあります。こうした変化は気力の問題ではなく、脳機能の低下によって起きるもので、日常生活や仕事のパフォーマンスに影響を及ぼします。

感情のコントロール

うつ病では、理由もなく涙が出たり、イライラしやすくなったり、物事を楽しめなくなったりと感情の波が大きくなります。これは、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質のバランスの乱れが原因です。喜びを感じる脳の「報酬系」がうまく働かなくなると意欲が低下し、扁桃体が過敏になると不安や恐怖が強くなります。感情をコントロールしにくくなるのは、脳の働きが疲れているサインともいえます。

身体的な症状

うつ病は心だけでなく体にも変化をもたらします。代表的なのが睡眠障害、食欲の変化、慢性的な疲労感です。「眠れない」「過眠になる」「食欲が落ちる」「だるさが続く」といった症状は、視床下部や自律神経系の乱れによって起こります。これらは体の機能を調整する脳の働きが弱まっている証拠で、動悸やめまい、胃腸の不調などを引き起こすこともあります。こうした身体症状が続くことで、「脳がおかしい」と感じやすくなることがあります。

症状 脳機能との関連
集中力・注意力の低下 前頭前野の機能低下、神経伝達物質(ドーパミンなど)のバランス異常
記憶力の減退 海馬や関連領域の機能低下
決断力の低下 前頭前野の機能低下
抑うつ気分、興味・喜びの喪失 報酬系回路の活動低下、セロトニン・ドーパミンなどの神経伝達物質のバランス異常
過度の不安、イライラ感 扁桃体の過活動、神経伝達物質のバランス異常
睡眠障害 視床下部や自律神経系の機能調節異常、メラトニン分泌の乱れ
食欲の変化 視床下部や自律神経系の機能調節異常
疲労感 脳のエネルギー代謝の低下、自律神経系の機能調節異常

専門医が教える! うつ病の治療法

ここでは、専門医が推奨する具体的な治療法について、詳しく見ていきましょう。ご自身の状態に合った治療法を見つけるための参考にしてください。

薬物療法

薬物療法は、うつ病の治療において中心的な役割を果たすことがあります。主に脳内の神経伝達物質のバランスを整えることを目的とした抗うつ薬が用いられます。代表的なものとしては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などがあります。これらの薬は、脳内の神経伝達物質の濃度を適切に保つことで、気分の落ち込み、意欲の低下、不眠といったうつ病の症状の改善を目指します。

効果が現れるまでに数週間かかることもありますが、医師の指示に従って根気強く服用を続けることが重要です。副作用が出る可能性もありますが、多くは一時的なものであったり、用量を調整することで軽減されたりします。自己判断で服用を中止せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。

精神療法

精神療法、いわゆるカウンセリングも、うつ病治療の重要な柱です。特に効果が期待されているものとして、認知行動療法(CBT)と対人関係療法(IPT)が挙げられます。

認知行動療法(CBT)では、うつ病の患者さんが抱えがちな否定的で非合理的な考え方(認知の歪み)に焦点を当て、それをより現実的で肯定的なものに変えていく練習をします。これにより、気分や行動の改善を目指します。対人関係療法(IPT)は、うつ病の症状と、それに関連する対人関係の問題(役割の変化、対人関係の葛藤、喪失、孤立など)に焦点を当て、対人関係を改善することで気分の回復を図ります。

その他の治療法

薬物療法や精神療法が基本となりますが、症状や状態によっては、他の治療法が選択されることもあります。例えば、季節性うつ病に対しては、光を浴びることで体内時計を整える光療法が有効な場合があります。また、重度のうつ病で他の治療法が奏効しない場合には、経頭蓋磁気刺激法(TMS)や、より強力な効果が期待できる電気けいれん療法(ECT)が検討されることもあります。これらの治療法は、専門的な知識と設備を持つ医療機関で行われます。

関連記事:うつ病は何科を受診すればいい? 症状別の診療科選びと、専門医への相談方法

脳の健康を取り戻すためにできること

前のセクションでは、うつ病が脳にどのような影響を与えるのか、そしてその原因について詳しく解説しました。ここでは、脳の健康を取り戻し、回復をサポートするための具体的な方法を、日常生活に取り入れやすいものからご紹介します。これらの習慣は、専門的な治療と併せて行うことで、より効果を発揮します。

食事

脳の健康を保つには、栄養バランスの良い食事が欠かせません。特に、青魚やナッツに含まれるオメガ3脂肪酸、野菜や全粒穀物に豊富なビタミンB群、ナッツや海藻類のマグネシウム、果物や野菜に含まれる抗酸化物質は脳の働きを助けます。一方、糖分や加工食品のとりすぎは脳の炎症を招く可能性があり、控えめにすることが望ましいでしょう。

運動

運動は脳の働きを高め、ストレスを軽減する効果があります。セロトニンやドーパミンの分泌を促し、気分を安定させるだけでなく、脳への血流が増えて記憶力や集中力の向上も期待できます。ウォーキングなどの有酸素運動は週3〜5回、30分程度を目安に、筋力トレーニングは週2〜3回行うと効果的です。

睡眠

質の高い睡眠は、脳が休息し、情報を整理・修復するための最も重要な時間です。うつ病の症状として睡眠障害がみられることも多いですが、意識的に睡眠の質を高める努力をすることが回復への鍵となります。

睡眠の質を高めるための具体的な方法(睡眠衛生):

  • 規則正しい生活: 毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計を整えます。
  • 寝室環境の整備: 寝室を暗く、静かで、快適な温度に保ちましょう。
  • 就寝前のリラックス: 就寝1~2時間前からは、スマートフォンやパソコンの使用を避け、読書や軽いストレッチ、温かい飲み物(カフェインレス)などでリラックスする時間を作りましょう。
  • カフェイン・アルコールの制限: 就寝前のカフェイン摂取や、寝酒は睡眠の質を低下させるため控えましょう。
  • 日中の適度な運動: 適度な運動は、夜間の睡眠を深くするのに役立ちます。

生活習慣の改善

脳の回復には、食事・運動・睡眠に加え、日常生活全体の見直しが欠かせません。ストレスを溜め込まず、瞑想や深呼吸、ヨガなどで心を落ち着ける時間をつくりましょう。自然に触れる、音楽を楽しむなど、自分が心地よいと感じる活動も効果的です。また、孤立を防ぐために家族や友人と適度に交流し、毎日達成できる小さな目標を設定することで、自己肯定感を取り戻しやすくなります。

まとめ:希望を持って、一歩ずつ進みましょう

この記事では、うつ病が脳にどのような影響を与えるのか、そして「脳がおかしい」と感じる不安にどう向き合えば良いのかを、脳科学的な視点から解説してきました。

うつ病は、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れや、脳の機能低下、さらには脳の構造的な変化を伴うことがある、決して気のせいではない、脳の病気です。しかし、それは決して回復不可能な状態ではありません。

最新の研究と専門的な治療法、そして日々の生活習慣の改善によって、脳の健康は回復し、症状は軽減していくことが科学的に証明されています。大切なのは、正しい知識を持ち、一人で抱え込まず、専門家のサポートを得ながら、一歩ずつ回復への道を歩むことです。

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この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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