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【CEOコラム】Vol.052 AIが「AIを使う」時代〜Gemini Pro 3を使ってみて〜

HEROさんシリーズくるみの社長エッセイ

こんにちは。株式会社Make Careの代表取締役CEOであり、訪問看護ステーションくるみでマーケティングを担当している石森寛隆です。XではHEROと名乗っていますので、もしよろしければフォローください。

Gemini 3を触って最初に覚えた感覚は「性能が上がった」でも「マルチモーダルがエグい」でもなく、
もっと根底の部分、AIという存在の役割が変わり始めたということだと思う。

多くの人は「GPTより強い?」「画像認識どう?」という比較で語るけれど、今回の本質はそこじゃないんじゃないか。

AIが“道具”から“道具を使う存在”へと変わり始めた「起点」になるんじゃないか。
そんなふうに思えて、コラムに綴ってみることにした。

これまでAIは、人間がプロンプトを与え、タスクに合わせてモデルを選び、処理を組み合わせて実行させる存在だった。
それが今、AIは自ら別モデルを叩き、外部APIを呼び、環境を操作し始めている。

AIが強くなったのではない。
AIが「指揮を取る側」にシフトし始めた。

これは単なるテクノロジーの進化ではなく、文明の構造が更新されるシグナルと感じたのです。

大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象

“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」

06-6105-1756 06-6105-1756

平日・土曜・祝日 9:00〜18:00 
【日曜・お盆・年末年始休み】

※訪問は20時まで
対応させていただいております。

これまでのAIは「ツール」だった

旧来のAIは、基本的に単体で完結するモデルだった。
・ChatGPT → 文章を生成する
・Midjourney → 画像を生成する
・Whisper → 音声を文字起こしする
などなど。

すべて役割は明確で、主体は人間だった。

人間がタスクを分解し、人間がモデルを選び、人間が成果を統合していた。

能力はAIにあったが、構造の主導権は人間にあったと思う。

いま起きている変化:AIがAIを“使い始めた”

Gemini 3の思想は「単体で全部やる」を捨てている。
・必要なら別AIに投げる
・必要ならブラウザを操作する
・必要なら端末に直接アクセスする
・必要ならDriveやYouTubeの文脈を参照する

これまで人間が行っていた「タスク分解」「ツール選択」「外部連携」「統合」を、AI自体が代行し始めた。

つまり、

AIが“エンジニアとしてAIを扱う”段階に入った。

これはモデル戦争の延長ではなく、主体の移行であると切に感じる。

人間の役割は「技術者」から「設計者」へ

この進化は、単に仕事が奪われるとか効率化とか、そういう話では終わらない。
・コードを書くこと
・ツールを操作すること
・プロンプトを最適化すること

こうした行為の価値が下落する。

代わりに問われるのは、
・どんな世界をつくりたいのか(意志)
・どんな制約と倫理で動かすのか(設計)
・どの価値観に寄与させるのか(方向性)

AIに使われる存在から、
AIが力を発揮する舞台を設計する存在へ。

この役割転換に気づけるかどうかで、この10年の競争は決まると思っている。

結論:AIは人間を代替するのではなく、人間の“役割”を書き換える

AIが進化することで失われるものもあるが、獲得できるものもある。

人間が担うべきは「手を動かすこと」ではなく、
・意志を定めること
・前提を決めること
・社会の設計思想を描くこと

AI時代の本質は、生産性でも効率でもなく、文明の分業構造そのものが変わることだ。

AIは人類の敵ではない。
ただ、人類の「役割」を再定義しに来ているだけだ。

制度設計は「ルール」ではなく“前提”をつくる仕事へ

医療制度、税制度、社会保障制度──どれも「前提」でものが決まる世界だ。
訪問看護の報酬体系ひとつ取っても、
・精神科訪問看護は「予防ケアとして扱うのか」
・「重症化を防ぎ復職を支える社会投資」と捉えるのか
・それとも「患者負担を抑えるための福祉費」と見るのか

この前提だけで制度は全く変わる。

そして、これまで制度は人間がつくるものだった。
だが、AIが意思決定プロセスに介入し始めると、制度そのものが自動化されていく。
・AIが統計を取り
・AIがボトルネックを可視化し
・AIが政策効果をシミュレーションし
・AIが代替案を提示する

このとき必要なのは「AIにやらせる政策設計」ではなく、

“どんな価値観に基づいた制度をつくるか”というアーキテクチャの定義である。

制度の未来は、技術ではなく世界観に支配される。

医療・福祉はAIで効率化される産業ではない

訪問看護は、人間の身体と精神に介入する行為だ。
その本質は「効率化」ではなく、
・自己決定
・尊厳
・自律
・関係性

といった、人間そのものを扱う領域にある。

だからこそ、AIが強くなるほど人間の役割は“人間そのもの”側に寄っていく。

AIが情報処理を奪うほど、
人間は「意志・価値観・選択」の領域に集中できるようになる。

AIは人を置き換えるのではなく、人を“人間らしい領域に押し返す”。

精神科訪問看護は、その象徴だと思っている。

経営の話:100億円企業をつくる理由

僕は株式会社Make Careを「訪問看護の100億円企業」にするつもりで動いている。
それは規模が目的ではなく、
・精神
・小児
・重心
・その他他科の訪問看護領域
・社会福祉
・産業メンタルヘルス

これらを本気で統合し、制度と社会構造ごと変えるレベルの影響力を持つためだ。

AIがAIを使う時代において、中途半端な企業は文化を作れない。
資本も、データも、制度も、現場も、何ひとつ動かせない。

医療や福祉の世界で、本当に構造改革を起こすには、
小さな善意では足りない。巨大な設計思想と社会実装が必要だ。

AIが力を発揮する舞台を、人間がつくる。
その舞台は国家レベルで設計されるべきだと思っている。

教育の話:これからの学びは「能力」ではなく“意志”に寄っていく

AIが全知全能に近づくほど、
「知識」「技術」「記憶」「計算」はコモディティ化する。

残るのは、
・何を選ぶか
・どんな世界にしたいか
・どの価値観で判断するか

つまり、教育の主戦場は能力ではなく世界観になる。

学力ではなく、思想を持つ人間が強くなる。

最後に:AIは敵か味方か、という議論はもう古い

AIは脅威ではない。
AIは人類を代替しない。
AIは人間を凌駕する存在にもならない。

むしろ、AIが高度になるほど、
人間は「人間でしか担えない領域」に押し戻されていく。
・経営
・政策
・制度設計
・価値判断
・世界観

ここはAIが奪わない。
奪えない。
奪う必要すらない。

AIは文明を更新するためのプラットフォームだ。
そして、方向を決めるのは人間だ。

AIが道具を選べる世界なら、
人間は“どんな道を選ばせるか”を決める存在になる。

それこそが、この時代に生きる意味だと思っている。

この記事を書いた人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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