なぜ眠い?過眠症の原因と症状、今日からできる対策を解説
精神科訪問看護とは
日中に強い眠気が続いたり、仕事中や会議中に思わず居眠りしてしまったりする場合、過眠症が関係している可能性があります。
本記事では、専門医の監修のもと、過眠症の主な原因、診断の流れ、治療法にくわえて、今日から取り入れられるセルフケアのポイントまでまとめて解説します。
仕組みを正しく理解し、適切な対策を進められれば、日中のパフォーマンスを取り戻せる可能性があります。眠気に悩まされている方の毎日が、少しでも快適になるヒントになれば幸いです。
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過眠症の原因は何?

日中の耐え難い眠気は、単なる寝不足だけでなく、さまざまな要因が複雑に絡み合って生じることがあります。ここでは、過眠症の主な原因について、専門的な視点から具体的に解説します。
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脳の機能異常
過眠症の中には、脳の機能異常が原因となるタイプがあります。
例えば、覚醒と睡眠のリズムを調整する「オレキシン」という脳内物質の不足は代表的な要因です。オレキシンは、日中の目覚めを保ち、夜はスムーズな睡眠へ導く働きをしています。この物質が足りなくなると、日中に急激な眠気が生じたり、夜の睡眠が途切れやすくなったりします。
代表的な疾患がナルコレプシーで、脳の特定部位の働きや神経伝達の異常が関わっていると見られる病気です。
睡眠障害
睡眠に関する別のトラブルが原因で、結果的に過眠症のような症状が現れるケースもあります。代表的な症状は、睡眠中に呼吸が断続的に止まることで酸素が不足し、脳が何度も覚醒してしまう睡眠時無呼吸症候群です。
このため、十分寝ているつもりでも深い睡眠が得られず、日中に強い眠気が生じます。また、むずむず脚症候群など睡眠を妨げる他の疾患によって休息が不十分となり、過眠状態に陥ることもあります。
精神疾患
精神的な健康状態も、過眠症の症状に大きく影響します。例えば「うつ病」は、過眠症を併発しやすい精神疾患の一つです。うつ病の症状として、気分の落ち込みや意欲の低下だけでなく、過度な眠気や長時間睡眠が見られることがあります。これは、うつ病が脳内の神経伝達物質のバランスを崩し、睡眠覚醒サイクルに影響を与える点が要因です。
その他にも、双極性障害や非定型うつ病など、特定の精神疾患が過眠症状を引き起こすことがあります。
生活習慣
日々の生活習慣も、過眠症の原因となり得ます。特に、慢性的な睡眠不足には注意が必要です。仕事や学業、プライベートの忙しさから十分な睡眠時間が確保できない状態が続くと、身体は常に睡眠負債を抱え、日中の強い眠気として現れます。
また、不規則な生活リズムや夜勤などによる「概日リズムの乱れ」も、睡眠覚醒サイクルを狂わせ、過眠症の一因となります。さらに、寝る前のアルコールやカフェインの過剰摂取、喫煙なども睡眠の質を低下させ、結果的に日中の眠気を引き起こす要因の一つです。
過眠症の症状をチェック!
過眠症は、日中の過度な眠気や長時間睡眠が主な症状ですが、それ以外にも様々な兆候が現れることがあります。もしあなたが以下の症状に心当たりがあるなら、過眠症の可能性も考えられます。
日中の過度な眠気
過眠症の最も特徴的な症状は、日中の活動中に抑えがたい眠気に襲われることです。本来眠るべきではない状況で、強い眠気や居眠りが頻繁に起こります。例えば、以下のような経験はありませんか?
- 会議中や授業中に意識が飛んでしまう
- 食事中にうっかり居眠りしてしまう
- 車の運転中に眠気に襲われ、ヒヤリとした経験がある
- 友人との会話中や映画鑑賞中に眠ってしまう
- 休憩時間に少し横になるつもりが、長時間眠ってしまう
これらの眠気は、夜に十分な睡眠をとっているにも関わらず生じ、日常生活や仕事、学業に大きな支障をきたすことがあります。
長時間睡眠
過眠症のもう一つの特徴的な症状は、夜間の睡眠時間が非常に長く、かつ日中も眠気が続く点です。一般的に、成人では7〜9時間の睡眠が推奨されますが、過眠症の人は10時間以上眠っても、目覚めが悪く、寝足りない感覚が残ることがよくあります。
具体的には、以下のような状態が挙げられます。
- 夜間に10時間以上寝ているのに、朝起きるのがつらい
- 目覚まし時計をいくつもセットしないと起きられない
- 休日には半日以上寝てしまうことがある
- 昼寝をしても、すっきりせず、むしろだるさが増す
このような長時間睡眠は、単なる寝すぎではなく、睡眠の質が低下している、あるいは脳の覚醒維持機能に問題がある可能性を示唆しています。
その他症状
過眠症では、日中の強い眠気や長時間睡眠に加えて、さまざまな付随症状が現れることがあります。代表的な症状は、目覚めてからしばらく頭がぼんやりして動き出しにくい「睡眠慣性」です。
また、眠気の影響で集中力や記憶力が低下し、物忘れが増える場合も珍しくありません。十分に眠ったつもりでも疲労感が取れず、常に体がだるい状態が続くケースも過眠症の一つのサインです。
さらに、眠気や疲れの蓄積によってイライラしやすくなったり、気分が落ち込みやすくなったりする事例も多くみられます。これらの症状が重なると、仕事のパフォーマンスの低下や人間関係への影響、交通事故のリスク増加など、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。
過眠症の原因を特定する診断方法
過眠症を正しく見極めるには、日中の強い眠気が別の病気や生活習慣によるものではないかを確認し、原因を丁寧に特定する必要があります。自己判断では見落としが起きやすいため、専門の医療機関で医師による詳しい問診や検査を受けることが欠かせません。ここでは、過眠症がどのような流れで診断されるのか、そのプロセスをわかりやすく紹介します。
問診
過眠症の診断では、まず問診を行うケースがほとんどです。医師は、症状がいつから始まったのか、どのように変化してきたのか、そして日常生活にどの程度影響しているのかを丁寧に確認します。具体的には、日中の眠気の強さや起こりやすい状況、居眠りの頻度や睡眠発作の有無など、症状の詳細でし。あわせて、夜間の睡眠時間や寝つきの良さ、中途覚醒の回数、起床後の満足度といった睡眠の質と量についても確認されます。
さらに、生活習慣やカフェイン・アルコールの摂取状況、服用中の薬、過去の病歴や家族に睡眠障害があるかどうかなどの既往歴も重要な情報です。加えて、気分の落ち込みや集中力の低下、意欲の減退といった精神面の変化も、診断の判断材料となります。
これらの情報は、過眠症の種類を見極めたり、他の疾患が影響していないかを判断するうえで欠かせません。受診前に自分の症状や生活状況を整理しておくと、よりスムーズに診察が進みます。
睡眠検査
問診だけでは診断が難しい場合や、客観的なデータが必要な場合には専門的な睡眠検査が行われます。
代表的なのが、ポリソムノグラフィー(PSG)と睡眠潜時反復検査(MSLT)です。PSGは一晩入院して行う精密検査で、脳波・眼球運動・筋電図・呼吸・心電図・酸素飽和度などを同時に記録し、睡眠の深さや質、睡眠時無呼吸などの異常を評価します。夜間睡眠の問題が日中の眠気につながっていないかを確認するために欠かせません。
MSLTはPSG翌日に実施され、日中の眠気を客観的に測定します。決められた時間に複数回の仮眠をとり、眠りにつくまでの時間(睡眠潜時)やREM睡眠の出現を調べることで、ナルコレプシーや特発性過眠症の診断に役立ちます。極端に短い睡眠潜時や早期のREM出現は、特定の過眠症を示す重要な所見です。
これらの検査結果と問診を総合して、医師は正確な診断と治療方針を決定します。
過眠症の治療法
過眠症と診断された場合、またはその可能性があるときは、適切な治療によって日中の強い眠気を和らげ、生活の質を大きく改善できます。治療内容は過眠症の種類や症状の程度、生活状況によって異なりますが、基本となるのは薬物療法、生活習慣の見直し、そして認知行動療法の三つです。それぞれの治療法を解説します。
薬物療法
過眠症の症状を直接的に緩和するために、薬物療法が用いられることがあります。特に日中の強い眠気に対しては、覚醒作用のある薬が処方されるケースが一般的です。
主な薬の種類としては、モダフィニルやソリマンフェトール、ピトシサントなどが挙げられます。これらの薬は、脳内の神経伝達物質に作用し、覚醒状態を維持する働きを促す点が特徴です。例えば、モダフィニルはドーパミンなどの神経伝達物質の放出を促進し、眠気を抑制します。
薬物療法を開始する際は、医師の指示に従い、用法・用量を遵守しましょう。なお、副作用として頭痛、吐き気、不眠、動悸などが現れる可能性もあります。これらの症状が現れた場合は、速やかに医師に相談してください。薬の種類や量は、個人の状態や効果を見ながら調整されるため、定期的な診察が不可欠です。
生活習慣の改善
生活習慣の改善は、軽症例では主要な治療手段です。また、薬物療法との併用により、症状改善効果を高められる可能性があります。
具体的な改善策の一つは、規則正しい睡眠スケジュールの確立です。毎日同じ時間に就寝・起床し、週末も大きくずらさないように心がけましょう。次に、睡眠環境の最適化も不可欠です。寝室は暗く静かで、快適な温度に保ち、寝具にも気を配りましょう。
さらに、食事や運動の工夫も適切な睡眠を促します。夕食は就寝の数時間前までに済ませ、カフェインやアルコールの摂取は控えましょう
適度な運動は、入眠をスムーズにし、睡眠の質を高める効果があります。ただし、就寝直前の激しい運動は避けたほうが無難です。日中の短い仮眠(15〜20分程度)は、眠気を軽減するのに役立つ場合がありますが、長時間の仮眠は夜間の睡眠を妨げる可能性があるため注意が必要です。
認知行動療法
過眠症の治療法の一つとして、認知行動療法も有効とされています。これは、過眠症に関連する誤った睡眠に対する考え方や行動パターンを修正し、健康的な睡眠習慣を身につけることを目的とした心理療法です。
認知行動療法では、まず自身の睡眠に関する「認知(考え方)」を見直します。「寝ないと日中活動できない」「眠いのは自分のせいだ」といった、睡眠に対する非合理的な考え方や不安が、かえって睡眠の質の低下に繋がりかねません。こうした認知の歪みを認識し、より現実的で建設的な考え方に変えていくトレーニングを行います。
また「行動(習慣)」の改善も重要な要素です。例えば、就寝前のスマートフォン使用を控える、寝室を睡眠以外の活動場所としない、日中の活動量を増やすといった具体的な行動変容を促します。専門家によるカウンセリングを通じて、これらの認知と行動を段階的に修正していくと、睡眠の質が向上し、日中の眠気を抑えやすくなります。
日常生活でできる過眠症の対策

診断や治療とあわせて、日々の生活に取り入れられる対策を実践することで、日中の眠気を和らげ、過ごしやすさを大きく改善できます。ここでは、今日から無理なく始められる具体的な方法を紹介します。
睡眠環境の改善
質の高い休息を得るためには、心地よい睡眠環境の整備が欠かせません。まず、寝室の温度と湿度を適切に維持しましょう。一般的には、18〜22℃、湿度50〜60%が快適とされています。季節に応じてエアコンや加湿器を活用し、無理のない状態を保つことが大切です。
また、寝室の明るさも睡眠に大きく影響します。できるだけ暗くし、遮光カーテンを使うほか、就寝前のスマートフォンやパソコンの利用の抑制も、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を促します。
加えて、静かな環境を保つために、周囲の騒音が気になる場合は耳栓やホワイトノイズを試してみるとよいでしょう。枕やマットレスなどの寝具が体に合っているかも見直すポイントです。寝具が合わないと寝返りが増えたり体の痛みが出たりし、結果として睡眠の質が低下してしまいます。自分に合った環境づくりが、より深い睡眠へとつながります。
規則正しい生活
体内時計を整えて安定した睡眠リズムをつくることは、過眠症対策の基本です。まず、起床と就寝の時間を毎日そろえると、体内時計が乱れにくくなり、自然な眠気や目覚めが訪れやすくなります。
また、日中の適度な運動は夜の睡眠の質を高めます。激しい運動は就寝直前を避け、夕方までに済ませると負担が少なく効果的です。
さらに、食事のタイミングにも注意しましょう。就寝直前の食事は消化活動を活発にして睡眠を妨げる可能性があるため、夕食は就寝の2〜3時間前までに済ませることをおすすめします。
カフェインの摂取
カフェインには覚醒作用があり、日中の眠気対策として役立つ一方、摂り方によっては睡眠を妨げる原因にもなります。カフェインの作用は摂取後数時間続くため、就寝の4〜6時間前からはコーヒーや紅茶、エナジードリンクなどの摂取を控えるほうが安心です。
また、カフェインへの感受性には個人差があり、過剰に摂ると神経が興奮して不安や動悸を招く場合もあります。自身の体調に合わせて量を調整することが欠かせません。午後以降は、カフェインレスコーヒーやハーブティーなど、カフェインを含まない飲み物に切り替えると、夜の睡眠を妨げにくく、より安定したリズムを保ちやすくなります。
過眠症と間違えやすい病気
日中の強い眠気は、過眠症だけでなく、他の病気が原因で引き起こされている可能性もあります。ここでは、過眠症と症状が似ているため混同しやすい代表的な病気について解説します。適切な診断を受けるためにも、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が何度も止まったり浅くなったりすることで、体が酸素不足に陥り、深い睡眠が妨げられる病気です。そのため、夜にしっかり眠ったつもりでも疲れが取れず、日中に強い眠気が生じます。
過眠症との大きな違いは、呼吸の異常があるかどうかです。SASでは大きないびきや、いびきが急に止まる無呼吸がよく見られるのに対し、過眠症は呼吸に異常がなくても日中の眠気が続きます。
うつ病
うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下、不眠といった精神症状が主な病気です。一部の患者さんには過眠の症状が見られることがあります。特に、非定型うつ病と呼ばれるタイプでは、過眠や過食が起こりやすい点が特徴です。
過眠症とうつ病の鑑別点としては、精神症状の有無が挙げられます。うつ病では、眠気だけでなく、憂鬱な気分、興味の喪失、倦怠感、食欲不振や過食、集中力の低下など、睡眠以外の精神的な症状が強く現れます。一方で、過眠症の場合は、精神的な落ち込みよりも、純粋な眠気が中心です。
過眠症の原因に関するよくある質問
ここでは、過眠症に関して多くの方が抱く疑問にお答えします。あなたの不安を少しでも和らげ、適切な対処法を見つける手助けになれば幸いです。
Q1: 毎日長時間寝ていても過眠症ですか?
毎日長時間寝ているからといって、必ずしも過眠症であるとは限りません。過眠症の診断では、単に睡眠時間が長いだけでなく、日中の生活に支障が出るほどの強い眠気があるかどうかが重要になります。
例えば、十分に寝ているはずなのに会議中に居眠りしてしまったり、集中力が続かなかったり、日常生活に支障をきたしている場合は、過眠症の可能性も考えられます。
Q2: 過眠症は完治しますか?
過眠症が完治するかどうかは、原因やタイプによって異なります。他の病気が背景にある場合は、その治療によって眠気が改善する可能性もあるでしょう。
一方で、ナルコレプシーや特発性過眠症のように脳の機能が関係するタイプでは、根本的な完治は困難なケースが多くみられます。しかし、適切な治療法(薬物療法や生活習慣の改善など)を受けることで、症状を大幅にコントロールし、日常生活への支障を軽減できる可能性は十分にあります。
諦めずに専門医と相談しながら、あなたに合った治療法を見つけていきましょう。
Q3: 市販薬で眠気を抑えることはできますか?
市販の眠気覚まし薬には、カフェインなどが含まれており、一時的に眠気を軽減する効果が期待できるものもあります。しかし、これらはあくまで一時的な対処療法であり、過眠症の根本的な原因を解決するものではありません。
頻繁に市販薬に頼ってしまうと、かえって睡眠リズムが乱れたり、症状が悪化したりする可能性もあります。日中の強い眠気で悩んでいる場合は、自己判断せずに、まず専門の医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
まとめ
過眠症は、夜に十分眠っていても日中の強い眠気が続く状態で、原因や症状は人によってさまざまです。脳の機能異常や他の睡眠障害、生活リズムの乱れなどが関わることがあり、自己判断だけでは見極めが難しい場合も少なくありません。
治療には薬物療法や生活習慣の改善が用いられますが、最適な方法は状態によって異なります。日常の工夫で症状が和らぐこともありますが、本当に必要な治療を見逃さないためにも、専門医に相談して正しい診断を受けることが大切です。適切なサポートを得ながら、自分に合った改善方法を見つけていきましょう。