ギャンブル依存症の家族を「突き放す」前に知っておくべきこと
精神科訪問看護とは
家族のギャンブル依存症によって、経済的な問題や精神的な負担、不安が積み重なり、どう向き合えばいいのか分からなくなっていませんか。支えたい気持ちと、これ以上耐えられないという思いの間で、心がすり減っている方も少なくありません。
本記事では、家族を突き放すという選択をしてしまう前に知っておきたい視点と、今できる現実的な対応策を整理します。あなた自身を守りながら、問題と向き合うためのヒントをお伝えします。
ギャンブル依存症の家族を突き放すメリット・デメリット

限界を感じたとき、ギャンブル依存症の家族を突き放すという選択肢が浮かぶことがあります。それは決して冷淡な判断ではなく、長期間にわたり問題と向き合い、苦悩を重ねた末に生じる切実な思いといえるでしょう。心身の負担が限界に達した状況で、自身の生活や心を守ろうとする行動でもあります。
ここでは、ギャンブル依存症の家族を突き放す選択がもたらす影響と、検討する際に理解しておくべき視点について整理します。
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突き放すことのメリット
突き放すという選択の大きなメリットは、家族自身の負担を軽減できる点です。依存症の家族から一時的に距離を置くことで、借金の肩代わりや絶え間ないトラブル対応といった精神的・経済的消耗から解放される可能性があります。その結果、自身の生活を立て直し、心の安定を取り戻すための時間と余裕が生まれやすくなるでしょう。
また、家族が常に問題の後始末をする状況では、本人が自らの行動と向き合う機会を失う傾向があります。しかし、突き放された状況を通じて、本人がギャンブルによる結果を直視し、自助努力や専門機関への相談を検討する機会が生まれる点も意義のある側面です。
さらに、依存症を抱える家族を支え続ける過程で、無意識のうちに共依存関係が形成されてしまう事例も少なくありません。突き放す選択は、この不健全な関係性から距離を取り、家族と本人それぞれが健全な自立を目指すための一歩となり得ます。
突き放すことのデメリット
ギャンブル依存症の家族を突き放す選択には、本人の状態が悪化するリスクも伴うため注意が必要です。
例えば、家族からの支援が途絶えると、本人の孤立を深める要因になりかねません。その結果、ギャンブル行為や借金問題がかえって深刻化する可能性があります。状況によっては、住まいを失ったり、違法行為に関与したりするなど、より深刻な問題に発展するケースも否定できないでしょう。
また、大切な家族を突き放すという決断は、家族自身に強い罪悪感や後悔をもたらすことがあります。本当にこれでよかったのかという自問が続き、新たな精神的負担として残る場合も少なくありません。
さらに、一度距離を置いた関係は、その後の修復が難しくなる恐れもあります。家族としての信頼や絆が損なわれ、再び関係を築くには長い時間と努力が求められるでしょう。
突き放す際の注意点
ギャンブル依存症の家族を突き放すという選択は、非常に重い決断です。後悔しないためにも、以下の点に注意して検討してください。
完全に縁を切るのではなく、物理的・心理的に適切な距離感を保つことを意識しましょう。例えば、経済的な援助は一切しない、連絡を一時的に制限するなど、具体的なルールを設けることが有効です。この距離感が、あなた自身の安全と心の健康を守る上で非常に重要になります。また、依存症の本人からの暴力や脅迫がある場合は、迷わず警察や専門機関に相談し、安全を最優先に行動してください。あなた自身が孤立しないよう、友人や他の家族、専門家など、信頼できる人々に状況を話し、サポートを求めることも大切です。一人で抱え込まず、外部の力を借りることで、より冷静な判断と行動が可能になります。
ギャンブル依存症の家族を突き放す前にできること
家族がギャンブル依存症に陥り、突き放すという選択を考える場面では、すでに多くの対応を試していることが少なくありません。しかし、関係を断つ決断に至る前に、検討できる支援や対応策は残されている場合もあります。
ここでは、専門家によるサポートの活用や、家族としてサポートできる具体的な行動について整理します。
専門家への相談(医療機関、カウンセリング)
ギャンブル依存症は、個人の意思の弱さからくるものではなく、適切な治療が必要な精神疾患です。そのため、専門家の力を借りることが回復への第一歩となります。
例えば、精神科医や心療内科医は依存症の診断を担い、薬物療法や精神療法を組み合わせた治療方針を提示します。うつ病や不安障害などの併存症が疑われる場面でも対応可能であり、回復までの道筋を医学的に整理できる点が特徴です。
臨床心理士や公認心理師は、認知行動療法などの心理的手法を用い、ギャンブル行動に結びつく思考や感情への向き合い方を支援する専門家です。本人のサポートはもちろん、家族へのカウンセリングを通じて関係性の整理を促す役割も担います。
また、依存症専門のカウンセラーは、回復支援に特化した経験を生かし、面談やグループ支援を通じて実践的な助言を提供します。相談先に迷う場合は、地域の保健所や精神保健福祉センターに問い合わせるとよいでしょう。
自助グループの活用
自助グループは、同じ問題を抱える人々が集い、経験を共有しながら互いを支え合う場です。医療機関や専門家による治療とは異なり、当事者や家族同士が対等な立場で関わるピアサポートを中心に、実体験を踏まえた支援が回復を後押しします。
例えば、ギャンブル依存症の当事者を対象としたGA(ギャンブラーズ・アノニマス)では、匿名性を保った環境で体験を語り合い、依存症と向き合う姿勢を整える点が特徴です。
一方、ギャマノン(Gam-Anon)は家族や友人向けのグループで、不安や混乱を共有しながら、依存症の影響から立ち直るためのサポートを受けられます。自助グループへの参加は孤独感の軽減や対応のヒントにつながり、家族が適切な関わり方を学ぶ機会にもなるでしょう。
家族自身ができるサポート
家族のサポートは本人の回復に大きな影響を与えます。ただし、共依存に陥らない配慮が欠かせません。
まず、ギャンブル依存症を病気として理解し、本人の感情や苦しみに耳を傾ける姿勢が大切です。そのうえで、非難や説教をするのではなく、経済的援助の停止や行動面のルールを定めましょう。具体的な境界線を明確に示し、一貫して守る姿勢が求められます。
特に借金の肩代わりは避け、金銭管理については家族が関与しましょう。そのうえで、ギャンブルへのアクセスを制限する必要があります。
また、専門機関の受診に家族が同行し、状況を共有することで、より適切な治療や支援につながる場合もあります。ただし、支援に偏りすぎず、家族自身の心身の健康を守る意識も忘れてはなりません。家族が安定している状態こそが、回復を支える基盤となります。
ギャンブル依存症による借金問題への対処法
ギャンブル依存症が家族にもたらす最も深刻な問題の一つが、借金問題です。本人だけでなく、家族全体が経済的な苦境に立たされることも少なくありません。ここ、借金問題にどう対処すべきか、具体的な方法を解説します。
弁護士への相談
借金問題に直面した際、まず検討すべきは弁護士への相談です。弁護士は法律の専門家として、複雑な借金問題を法的な観点から解決へと導いてくれます。
弁護士に相談する最大のメリットは、個々の状況に応じた最適な解決策を提案してもらえる点です。多重債務でどうにもならないと感じていても、専門家の知識があれば道が開ける可能性があります。
相談のタイミングとしては、借金の返済が滞り始めた、あるいは返済が困難だと感じた時点が理想的です。早めに相談することで、選択肢が広がり、より有利な解決に繋がりやすくなります。
相談の際は、借入先、借入額、返済状況など、現在の借金に関する情報を整理しておくとスムーズです。
債務整理の種類
借金問題を法的に解決する方法として「債務整理」があります。債務整理にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。
主な債務整理の方法は以下の通りです。
- 任意整理:裁判所を通さずに、弁護士が債権者(お金を貸している側)と直接交渉し、利息のカットや返済期間の延長など、無理のない返済計画を立てる方法です。周囲に知られにくい、特定の借金だけを対象にできるといったメリットがあります。ただし、元金自体は減額されないケースがほとんどです。
- 個人再生:裁判所に申し立てて、借金を大幅に減額してもらう手続きです。住宅ローンがある場合でも家を残せる可能性があるなど、大きなメリットがありますが、手続きが複雑で費用もかかります。なお、安定した収入がある人が対象です。
- 自己破産:裁判所に申し立て、すべての借金の支払い義務を免除してもらう手続きです。借金がゼロになるという最大のメリットがありますが、一定の財産が処分されたり、信用情報に登録されたりするデメリットもあります。
これらの選択肢の中から、ご自身の状況に最も適した方法を選ぶためには、やはり専門家である弁護士の助言が不可欠です。
ギャンブル依存症を突き放す前の相談窓口と支援機関

ギャンブル依存症は、本人だけの問題ではなく、家族全体に影響を及ぼす深刻な問題です。一人で抱え込まず、専門機関のサポートを積極的に活用することが解決への第一歩となります。ここでは、ギャンブル依存症そのものに関する相談窓口と、それに伴う借金問題に対応する相談窓口をご紹介します。
ギャンブル依存症に関する相談窓口
ギャンブル依存症からの回復には、専門的な知識と支援が不可欠です。以下に、相談できる主な機関と連絡先をまとめました。これらの機関は、本人だけでなくご家族からの相談も受け付けています。
- 精神保健福祉センター:各都道府県や指定都市に設置されており、精神的な健康問題全般について相談を受け付けています。ギャンブル依存症に関する専門的な相談にも対応しており、状況に応じて適切な医療機関や支援機関の紹介を受けることが可能です。お住まいの地域にある精神保健福祉センターは、厚生労働省のウェブサイトなどを通じて確認できます。
- 依存症専門医療機関:依存症専門医療機関は、ギャンブル依存症の診断や治療、カウンセリングを専門的に行う医療機関です。外来診療に加え、入院治療やデイケアプログラムを提供している施設もあり、症状や生活状況に応じた支援を受けられます。医療機関を探す際は「ギャンブル依存症 病院(地域名)」などのキーワードで検索する方法があります。また、精神保健福祉センターに相談すれば、状況に合った専門医療機関を紹介してもらうことも可能です。
- 各都道府県のギャンブル依存症相談窓口:一部の自治体では、ギャンブル依存症に特化した相談窓口を設けています。専門の相談員が対応し、きめ細やかなサポートを提供しています。自治体のウェブサイトで「ギャンブル依存症 相談」と検索してください。
- GA(ギャンブラーズ・アノニマス):ギャンブル依存症からの回復を目指す当事者のための自助グループです。匿名で参加でき、自身の体験を分かち合うことで回復を支援します。家族向けの「ギャマノン」もあります。全国各地でミーティングが開催されており、GAの公式サイトで情報を確認可能です。
借金問題に関する相談窓口
ギャンブル依存症に伴う借金問題は、早急な対処が必要です。法的な専門知識を持つ機関に相談することで、適切な解決策を見つけられます。
- 法テラス(日本司法支援センター):法的トラブル解決のための情報提供や、弁護士・司法書士の紹介、費用が払えない場合の立替制度など、幅広い支援を行っています。ギャンブル依存症による借金問題も相談可能です。
- 電話番号:0570-078374(全国共通ナビダイヤル)
- ウェブサイト:https://www.houterasu.or.jp/
- 弁護士会の法律相談センター:各地域の弁護士会が運営する法律相談窓口です。弁護士による面談相談を通じて、債務整理の方法や手続きについて具体的なアドバイスを受けられます。お住まいの地域の弁護士会のウェブサイトをご確認ください。
- 消費生活センター:多重債務を含む消費生活全般に関する相談を受け付けています。借金の状況に応じて、適切な専門機関への橋渡しをしてくれます。
- 電話番号:188(局番なしの消費者ホットライン)
ギャンブル依存症の家族を突き放す前の家族ケア
家族がギャンブル依存症に苦しむ状況の中で、家族自身が大きな精神的負担を抱え続けてきたケースは少なくありません。しかし、問題と向き合ううえでは、支える側である家族の心身の健康が前提となります。本章では、一人で抱え込まずに対応するために知っておきたい心のケアの重要性と、家族自身が実践できる具体的な考え方や対処法を整理します。
家族が抱えがちな心の負担とセルフケアの重要性
ギャンブル依存症の問題に長く向き合ううちに、家族自身の心が疲弊してしまうことがあります。怒りや罪悪感、無力感、悲しみなど、さまざまな感情が入り混じる状態は自然な反応であり、誰かの責任によるものではありません。
しかし、こうした感情を抱え続けると、心身の不調につながる恐れがあります。問題と向き合い続けるためには、家族自身の心のケアが欠かせません。十分な休息を確保し、趣味や軽い運動などで気持ちを切り替える時間を持つことが大切です。
また、信頼できる相手に気持ちを打ち明けるだけでも、心の負担は和らぎます。家族の心身が安定してこそ、冷静な判断や適切な対応につながります。
専門家や自助グループによる家族自身のサポート
ギャンブル依存症は、本人だけでなく、家族も巻き込む病気です。そのため、家族自身も専門的なサポートを受けることが、問題解決への近道となります。一人で抱え込まず、外部の力を借りることに抵抗を感じる必要はありません。
家族が利用できるサポートとして、カウンセリングや家族向けの自助グループがあります。カウンセリングでは、専門家があなたの感情に寄り添い、適切な対処法を一緒に考えてくれます。
また、家族向けの自助グループへの参加は、同じような経験を持つ人々と感情を共有し、孤立感を軽減できるだけでなく、他の家族の経験から学び、新たな視点を得られる点がメリットです。これらのサポートは、あなたが抱える重荷を分かち合い、心の回復を促すための大切なステップとなります。
まとめ:一歩踏み出すために
本記事では、ギャンブル依存症の家族を支える中で「突き放す」という選択を考える前に知っておきたい情報を整理してきました。ギャンブル依存症が病気である点や、家族に及ぼす経済的・精神的影響の大きさについて、改めて理解が深まったのではないでしょうか。
この問題に向き合う過程で、迷いや苦しみを抱えるのは決して特別なことではありません。ここまで読み進めた姿勢そのものが、現状を変えたいと願う強さの表れといえます。
もしこの記事を通じて、少しでも気持ちが整理されたり、次に取れそうな行動が思い浮かんだりしたなら、それは十分な前進です。相談窓口への問い合わせや家族会への参加、専門家について調べるなど、できる範囲の一歩から始めてみてください。
無理のない行動の積み重ねが、家族と自身の将来を考えるうえでの大切な土台となります。