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【CEOコラム】Vol.068 「感情」を「構造」でハックする—外部の知性を組織のOSへと昇華させる、経営的試論—

HEROさんシリーズMr.Childrenくるみの社長エッセイ

こんにちは。株式会社Make Careの代表取締役CEOであり、訪問看護ステーションくるみでマーケティングを担当している石森寛隆です。XではHEROと名乗っていますので、もしよろしければフォローください。

感動は「構造」の上に立ち上がる

僕は昔から、ひとつの持論を持っています。

それは、「感情論」と「ロジック」は決して対立するものではなく、
むしろロジックを極限まで突き詰めた先に、最も純度の高い感情が立ち上がるという確信です。

音楽の美しい転調も、スポーツの劇的な逆転劇も、
あるいは経営における奇跡的なV字回復も、
すべては偶然の産物ではありません。

そこには必ず、
緻密に積み上げられた「構造」が存在します。

感動とは、設計された構造が正しく機能した瞬間に溢れ出す
一種の「報酬」のようなものだと、僕は思っています。

そんな前提を持っている僕が、
今、確かな興奮とともに向き合っているテキストがあります。

現在、僕たちのメディアでは、
フリーランス看護師(!?)の中村さんに「クライシス・プラン」についての連載を寄稿していただいています。

現場の最前線を歩んできた彼にしか書けない、
温度感と専門性が同居した言葉たち。

しかし、経営者であり、
物事を常に因数分解して考えてしまう僕の目には、
このコラムは
「現場の優しいケアの話」を遥かに超えた、
極めて数学的で、戦略的な経営提言として映りました。

中村さんが綴っているのは、曖昧で不確実な「感情」や「危機」というブラックボックスを、
いかに構造化し、解決可能なタスクへと分解していくかという
“経営OSの設計図”そのものです。

この記事では、中村さんのコラムへの“アンサー”として、
僕がなぜ彼の思考にこれほどまで共鳴し、
それをMake Careという組織の核に組み込みたいと考えたのか。

その理由を、3つの視点で整理していきます。

是非、このコラムの本文を読み進める前に中村さんのコラムを読んでみてください。

第1回 クライシス・プランから考える、看護の視点
第2回 「クライシス」という言葉のそばで

「思考停止」という組織のバグを、メタ認知で破壊する

連載第1回を読み、僕が最も強く共感したのは、
「書式(ツール)」と「目的(アプローチ)」を混同するなというメッセージでした。

組織が成長し、規模が拡大する過程で、
必ずといっていいほど蔓延する病があります。

それは、「標準化」の副作用として現れる
「思考の去勢」です。
・マニュアルがあるから、とりあえず項目を埋める
・決まりだから、形式通りに書く
・上司に言われたから、フォーマットを埋める

いつの間にか手段が目的化し、現場から「なぜこれをやっているのか?」という問いが消失する。

これは、僕が組織運営において最も警戒している 「思考停止という名のバグ」 です。

中村さんはここで、
クライシス・プランというツールを前にして
「あえて書かない」という、極めて挑戦的な選択肢を提示しました。

医療・看護という、エビデンスとコンプライアンスが極めて厳しい現場において、これは非常に勇気のいる発言です。

しかし、経営の視点で見れば、
これは極めてまっとうなプロフェッショナルの判断です。

ツールはあくまで攻略本の一部に過ぎません。
市場(現場)という流動的な戦場で、
目の前のボス(課題)の属性に合わせて武器を持ち替える。
あるいは、今は武器を置くべきだと判断する。

その高度な意思決定ができるのは、
マニュアルをなぞるだけの「兵士」ではなく、
目的を俯瞰し、現場をメタ認知できる「指揮官」だけです。

僕は、中村さんのような外部の知性と深く関わることで、
Make Careの中に意図的に「揺らぎ」と「問い」を起こしたいと考えています。

標準化を重んじ、品質を担保しながらも、
目的のためにあえてルールをハックする。

その 「統制された自律性」 こそが、
組織に真の血を通わせるのだと確信しています。

「危機(クライシス)」を、方程式でハックする

第2回で示された、
「クライシスとは現象ではなく、主観的な評価である」
という定義。

これを僕なりに因数分解したとき、
次の数式に行き着きました。

Crisis = 課題の大きさ ÷ 保有リソース

分子ではなく、分母を見るという発想

人が危機に陥るかどうかは、課題の大きさだけで決まるわけではありません。

分母である 「保有リソース」 を、本人がどう認識し、どう確保しているかという相関関係で決まります。

従来の支援やトラブルシューティングは、
分子である「課題」を小さくしようとする
減法的アプローチに終始しがちでした。

しかし、中村さんの視点は根本から異なります。

彼は、分母である「保有リソース」を再確認し、
意図的に増やすことに焦点を当てています。
・パニック時に自分を落ち着かせる具体的手法(コーピング)
・「まだこれだけの打ち手がある」という平時の合意
・いざという時に頼れる支援ネットワーク

これらを、嵐が来る前の「平時」に
資産目録(インベントリ)として整理しておく。

これは情緒的なケアではありません。
極めてロジカルなリスク管理です。

経営で言えば、
有事の融資枠(コミットメントライン)を把握し、
手元資金を管理するキャッシュフロー経営と
構造はまったく同じです。

混沌とした感情の世界にも、
ちゃんとロジックに基づいた 「設計図」 は引ける。

中村さんのコラムは、
僕にその可能性を確信させてくれました。

Make Careは、この
「分母を最大化する戦略」を、サービスの標準アルゴリズムとして実装していきます。

スタッフ自身も「変動資産」であるという、冷徹な優しさ

そして何より、
この「リソースの方程式」の視点が、
支援される側だけでなく
支援者である看護師自身にも向けられている点。

ここに、僕は経営者として最も心を打たれました。

スタッフは、固定的な「コスト」でも、単なる「駒」でもありません。

彼ら自身もまた、同じ方程式の中で揺れ動き、リソースを消費しながら戦っている一人の人間です。

支援者自身のリソースが枯渇し、
数式が「1」を超えてしまえば、
どれほど立派な理念を掲げていても、
質の高いサービスを継続することはできません。

「揺らぎ」を個人の問題にしない

「看護師も揺らいでいい」。

この言葉は甘えではありません。
経営者の耳には、
「自らのリソース残量を常にモニタリングせよ」
という、極めてシビアな
BCP(事業継続計画)的アラートとして響きました。

スタッフの疲れや揺らぎを、
個人のメンタル耐性や根性論にすり替えない。

それは、組織としての「リソース配分」のミスであり、マネジメントの敗北です。

結論:論理と情熱の交差点で、業界をハックする

Make CareのVISIONは、
「回復をゴールとしない」ことです。

ビジョンマップ(表)

中村さんが連載で描いた
「クライシス・プラン」は、単にマイナスをゼロに戻すための防波堤ではありません。

それは、
利用者自身が、そして僕たち自身が、
人生という名の予測不能な航海をタフに生き抜き、次のステージへ進むための
「戦略的な羅針盤」です。

「こころのかたち」という、
本来は見えないはずの不定形なものを、
論理と言葉によって「設計図」へと落とし込む。

感性と理性が高度に融合したこのプロセスこそが、
僕たちの目指すプロフェッショナリズムの体現です。

中村さんのような外部の鋭い知性を、敬意をもって迎え入れる。
その知見を、組織のOSへと昇華させ、社会実装していく。

それが、CEOとしての僕の役割です。

僕たちは、この設計図を手に、
これからも訪問看護という業界の
「当たり前」をハックし続けます。

論理を突き詰め、構造を磨き上げたその先にこそ、
誰かの心を震わせる本当の「ケア」が宿ると信じて。

(PS. 冒頭で「ロジックの先に感情が立ち上がる」と書きましたが、
このコラムを書き終えた今、
僕の頭の中にはMr.Childrenの『終わりなき旅』が不意に流れています。
少しだけ胸が熱くなっているのは内緒です。
論理の極北にこそ、本物の情熱が宿るのかもしれません。)

この記事を書いた人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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