こんにちは。株式会社Make Careの代表取締役CEOであり、訪問看護ステーションくるみでマーケティングを担当している石森寛隆です。XではHEROと名乗っていますので、もしよろしければフォローください。
令和8年度の診療報酬改定が公表され、訪問看護業界ではさまざまな議論が起きています。
僕も発表後に次のコラムを発表しました。
💁【CEOコラム】Vol.071 【令和8年度診療報酬改定・決定版】-「答え合わせ」は終わった。精神科訪問看護が“楽をする道”を完全に塞がれた日-
その中で、精神科訪問看護の領域において最近よく耳にするのが次の疑問です。
「看護師がGAF尺度を評価してよいのか」
GAF(機能の全体的評定尺度)は、患者の心理的・社会的機能を数値化する指標です。
精神科訪問看護では、この数値が報酬算定にも関係してきます。
しかし、報酬を受け取る側の事業所が重症度を評価するという構造には、確かに違和感があります。
「お手盛りになるのではないか」という疑問が出るのも無理はありません。
現場の感覚として
「あくまで参考値として扱うべきではないか」
と考えるのは、むしろ健全な視点でしょう。
ですが、国の制度設計は違います。
ルール上、看護師が評価したGAFは、
報酬算定に関わる公的指標として制度に組み込まれています。
なぜ、あえてこのような仕組みになっているのか。
そこには極めて明確な思想があります。
それは
「診察室ではなく、生活を見よ」
というメッセージです。
精神疾患は、診察室の短時間の診察だけでは本当の姿が見えないことが多い。
生活の場に入り、日常生活や社会機能を観察できるのは訪問看護の現場です。
だからこそ国は、その評価を現場に委ねました。
ただし、それは同時に重い責任も伴います。
GAF評価は訪問看護報告書として毎月主治医に提出されます。
不自然な評価が続けば、主治医や審査機関が必ず矛盾を見抜く仕組みになっています。
つまり国はこう言っているのです。
「生活を見ているあなたたちに評価を委ねる。
その代わり、客観的な根拠を示す責任を負え。」
この制度思想を理解せずに報酬の数字だけを見ていると、今回の改定の本質は見えてきません。
大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象
“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」
平日・土曜・祝日 9:00〜18:00
【日曜・お盆・年末年始休み】
※訪問は20時まで
対応させていただいております。
効率重視ビジネスの終焉
今回の令和8年度改定を読み解くと、国が訪問看護業界に突きつけている未来はかなり明確です。
結論から言えば、
「効率だけを追うビジネスモデルは、生き残れない」
ということです。
象徴的なのが、月初に算定される訪問看護管理療養費です。
機能強化型1
13,760円
新設された精神科特化の機能強化型4
9,030円
機能強化型を取得していないステーション
7,710円
この差は、単なる金額の違いではありません。
制度が示す思想の差です。
さらに今回の改定では、同一建物への訪問について、人数が増えるほど大きな減算が設定されました。
これはつまり、こういうことです。
「軽い患者だけを効率よく回るモデルは地域医療ではない」
訪問看護は本来、重症者や在宅療養が困難な患者を支える地域インフラです。
日中だけ
軽症者だけ
効率よく件数を回す
こうしたビジネスモデルは制度思想と完全に逆方向にあります。
今回の改定は、その方向性を制度として明確に示したものだと言えるでしょう。
機能強化型4は「ボーナス」ではない
今回新設された精神科特化の「機能強化型4」を見て、
「精神科訪問看護に追い風だ」
と感じた人もいるかもしれません。
しかし現場の実感はむしろ逆です。
24時間対応
重症者受け入れ
組織体制の整備
これらを求められた上で、報酬が大きく上がるわけではありません。
僕の感覚で言えば、機能強化型4は
「ボーナス制度」ではありません。
これは
“防空壕”
です。
空爆の中で、なんとか生き残るための最低限の避難場所。
つまり機能強化型4は
「儲ける制度」ではなく
「退場させられないための制度」
なのです。
医療DXは「総量規制」である
もう一つ、現場を悩ませているのが怒涛のシステム投資です。
BCP策定
オンライン請求
オンライン資格確認
医療DX対応
「なぜこんなにコストがかかる仕組みを強引に進めるのか」
そう感じている事業者も多いでしょう。
しかし、これも制度設計としては極めて合理的です。
国は法律で
「新規参入を禁止する」
とは言いません。
その代わり、
「この程度のシステム投資や組織ガバナンスを維持できない事業所には地域インフラは任せられない」
という形で、事実上のハードルを設けています。
これはつまり、
実質的な総量規制
です。
この波に乗れない小規模ステーションや効率偏重型の事業所は、
採用難
資金ショート
組織維持困難
といった問題に直面し、統廃合の波に飲み込まれていくでしょう。
訪問看護業界はこれから確実に
大淘汰時代
に入っていきます。
次の改定で起きる可能性が高いこと
さらに僕は、今回の改定の流れを見ていて、
次の改定で起きる可能性が高い制度変更があると感じています。
それは
「機能強化型ステーションを対象とした基本療養費の新設」
です。
つまり
・現行の基本療養費は据え置き
・機能強化型を対象とする新しい基本療養費を設定
・そこに物価上昇分などを反映させる
という構造です。
こうなると何が起きるか。
表向きは報酬改定ですが、実態としては
機能強化型を取得していないステーションの実質的な報酬カット
になります。
つまり
機能強化型3や4以上を取っていない事業所は、構造的に経営が厳しくなる
という仕組みです。
これは制度として非常に巧妙です。
直接的な規制ではなく、
制度設計によって市場構造を変えていく。
今回の改定は、その布石に見えます。
僕たちが「機能強化型1」を目指す理由
こうした流れの中で、国のメッセージは極めてシンプルです。
「地域医療を丸ごと支えられる拠点だけが生き残る」
小児
高齢者
精神の重症患者
在宅療養
看取り
それらを
24時間365日支えられるステーション
だけが、地域インフラとして認められる時代に入っています。
僕たちが、あえて最もハードルの高い
機能強化型1
を目指している理由はここにあります。
精神科訪問看護に特化するだけではなく、
小児
重症児
看取り
まで含めて、地域のあらゆるニーズを面で支える体制を作る。
それは簡単な道ではありません。
実際、今この瞬間もくるみのスタッフは全社一丸となってその山を登り続けています。
しかし、業界全体が
「機能強化型4を取らなければ」
と防空壕に駆け込もうとしている今、
僕たちはその一段上に立たなければならない。
それは
地域を丸ごと支える“本物の拠点”を作ること
です。
それこそが、この大淘汰時代における最大の生存戦略であり、同時に地域社会への責任だと僕は考えています。
訪問看護業界の大淘汰は、もうすぐそこまで来ています。
その中で僕たちは揺るぐことなく、
地域に不可欠なインフラになる
という目標に向かって挑戦を続けていきます。




