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ADHDとうつ病の併発|症状の違いと適切な治療法を解説

2025.10.23 精神科訪問看護とは

ADHDの特性は車の運転にどのような影響を与えるのでしょうか。不注意や衝動性といった特性により、運転中の集中力維持や安全確認に課題を感じる方も少なくありません。

しかし、ADHDだからといって運転を諦める必要はありません。自分の特性を正しく理解し、適切な対策を講じることで、安全な運転は十分に可能です。

本記事では、ADHDの特性が運転に与える具体的な影響から、免許取得時の手続き、服薬中の注意点、日常的に実践できる安全対策まで、ADHD当事者が安心して運転を続けるための実践的な情報を詳しく解説します。

ADHDとうつ病は併発する?その関係性と発症メカニズム

ADHDとうつ病の併発は、実は非常に多く見られる現象です。研究によると、ADHD当事者の約30〜50%が生涯のうちにうつ病を経験すると報告されています。ここでは、なぜこの2つの疾患が併発しやすいのか、そのメカニズムについて詳しく解説します。

ADHDは注意欠如・多動症と呼ばれる発達障害の一種で、不注意、多動性、衝動性という特性により、日常生活や社会生活にさまざまな困難を抱えやすい状態です。一方、うつ病は気分障害の一種で、持続的な抑うつ気分や興味・喜びの喪失を主症状とする精神疾患です。一見すると全く異なる疾患のように思えますが、実はADHDの特性がうつ病の発症リスクを高める要因となることが分かっています。ADHDの特性により、学業や仕事での失敗体験が重なりやすく、自己肯定感の低下や慢性的なストレスにさらされることが多いためです。また、脳内の神経伝達物質であるドーパミンやセロトニンの機能不全が、両疾患に共通して関与していることも、併発しやすい理由の一つとされています。さらに、ADHDの診断が遅れることで、適切な支援を受けられずに二次障害としてうつ病を発症するケースも少なくありません。

ADHD・うつ病・適応障害の主な症状と違い

ADHDとうつ病、そして適応障害は、それぞれ異なる疾患ですが、症状が重なる部分もあるため、正確な診断が重要になります。

ADHDの主な症状は、不注意(集中力の欠如、物忘れ、整理整頓の困難)、多動性(じっとしていられない、落ち着きがない)、衝動性(思いつきで行動する、待つことが苦手)です。これらの症状は幼少期から持続的に見られ、複数の場面で現れることが特徴です。

一方、うつ病の症状は、抑うつ気分、興味や喜びの喪失、食欲や睡眠の変化、疲労感、無価値感、集中力の低下、希死念慮などです。これらの症状は、ほぼ毎日、2週間以上続くことが診断基準となります。

適応障害は、明確なストレス要因に対する不適応反応として現れ、ストレス要因から離れると症状が改善することが特徴です。症状はうつ病と似ていますが、期間や重症度が異なります。

これらの疾患が併発している場合、症状が複雑に絡み合うことがあります。例えば、ADHDの集中力低下とうつ病の思考力低下が重なると、日常生活への影響がより深刻になります。そのため、専門医による丁寧な問診と、症状の経過観察が診断には不可欠です。

ADHDだとうつ病になりやすい理由と危険因子

ADHDの人がうつ病になりやすい理由は、複数の要因が複雑に絡み合っています。

まず、ADHDの特性による失敗体験の蓄積が大きな要因です。不注意によるミスや、衝動性による対人関係のトラブルなどが繰り返されることで、「自分はダメな人間だ」という否定的な自己認識が形成されやすくなります。特に、周囲から「努力不足」「やる気がない」といった誤解を受けることが多く、これが慢性的なストレスとなってうつ病の発症につながります。

また、ADHDの人は感情調節が苦手な傾向があり、ストレスへの対処能力が低いことも危険因子となります。日常的な出来事に対しても過剰に反応しやすく、精神的な疲労が蓄積しやすいのです。

さらに、睡眠障害もADHDに多く見られ、これがうつ病のリスクを高めます。ADHDの人の約70%が何らかの睡眠問題を抱えているとされ、慢性的な睡眠不足は気分の不安定さを招きます。

社会的な要因も無視できません。ADHDの特性への理解不足により、学校や職場で適切な配慮を受けられず、孤立感や疎外感を感じやすいことも、うつ病発症のリスクを高める要因となっています。

大人のADHDとうつ病の特徴的な症状パターン

大人のADHDとうつ病の併発は、子どもの場合とは異なる特徴を示します。成人期特有の責任やストレスが加わることで、症状がより複雑化し、診断や治療が難しくなることがあります。ここでは、大人特有の症状パターンについて詳しく見ていきます。

大人のADHDでは、多動性が目立たなくなる一方で、不注意症状が前面に出てくることが多いです。仕事でのケアレスミスの増加、締め切りの管理困難、会議中の集中力低下などが典型的な症状です。これらの症状により、職場での評価が低くなり、自己肯定感が著しく低下することがあります。

そこにうつ病が併発すると、元々あったADHDの症状がさらに悪化し、悪循環に陥ることがあります。例えば、うつ病による意欲低下がADHDの先延ばし傾向を増幅させ、タスクの山に圧倒されてさらに抑うつ気分が強まるといった具合です。

また、大人の場合は家庭生活での責任も加わるため、配偶者や子どもとの関係にも影響が及びやすくなります。家事や育児でのミスが増え、家族から理解を得られずに孤立感を深めることもあります。

非定型うつとADHDの関係性

ADHDと併発するうつ病の中でも、特に「非定型うつ」との関連が注目されています。

非定型うつは、通常のうつ病とは異なる特徴を持つうつ病のサブタイプです。気分の反応性(良いことがあると一時的に気分が改善する)、過眠傾向、過食(特に炭水化物への欲求)、鉛様麻痺(手足が鉛のように重く感じる)、拒絶過敏性(他者からの批判に過度に敏感)などが特徴的な症状です。

ADHDの人は、この非定型うつを発症しやすいことが研究で示されています。その理由として、両者に共通する感情調節の困難さが挙げられます。ADHDの人は元々感情の起伏が激しく、拒絶や批判に対して過敏に反応する傾向があり、これは非定型うつの症状と重なります。

また、ADHDの人に見られる報酬系の機能不全が、非定型うつの過食症状と関連している可能性も指摘されています。ドーパミン不足を補うために、食べ物による即時的な満足感を求めやすくなるのです。

治療においても、非定型うつはSSRIなどの一般的な抗うつ薬への反応が乏しいことがあり、ADHDの治療薬との併用や、別の種類の抗うつ薬の選択が必要になることがあります。そのため、ADHDと非定型うつの併発を正確に診断することは、適切な治療方針を立てる上で非常に重要です。

双極性障害との鑑別診断の重要性

ADHDとうつ病の併発を考える際、双極性障害との鑑別診断は極めて重要です。

双極性障害は、うつ状態と躁状態(または軽躁状態)を繰り返す気分障害で、ADHDと症状が重なる部分が多いため、誤診されやすい疾患の一つです。特に、躁状態や軽躁状態の際に見られる多弁、注意散漫、活動性の増加などは、ADHDの多動性・衝動性と類似しています。

しかし、両者には重要な違いがあります。ADHDの症状は持続的で一貫性があるのに対し、双極性障害の症状は周期的に変動します。また、ADHDの多動性は目的のある活動が多いのに対し、躁状態では非生産的で無計画な活動が目立ちます。

ADHDと双極性障害の併発率も高く、ADHD患者の約20%が双極性障害を併発するという報告もあります。両者が併発している場合、治療はさらに複雑になります。ADHDの治療薬である精神刺激薬は、双極性障害の躁転(うつ状態から躁状態への急激な変化)を引き起こす可能性があるため、慎重な薬物選択が必要です。

正確な診断のためには、症状の詳細な経過観察、家族歴の確認、心理検査などを組み合わせた包括的な評価が不可欠です。必要に応じて、気分の変動を記録する気分日誌の活用も有効です。

ADHDとうつ病の併発が仕事や日常生活に与える影響

ADHDとうつ病が併発すると、仕事や日常生活への影響は単独の疾患よりも深刻になります。両疾患の症状が相互に作用し合い、機能障害がより顕著になるためです。ここでは、具体的にどのような影響があるのか、詳しく解説します。

仕事面では、ADHDによる注意力散漫や時間管理の困難に、うつ病による意欲低下や疲労感が加わることで、業務遂行能力が著しく低下します。例えば、会議での集中力が保てず重要な情報を聞き逃したり、締め切りを守れずプロジェクトに遅れが生じたりすることが頻繁に起こります。また、うつ病による自己否定的な思考により、ADHDの症状による失敗を過度に自分の責任と捉え、さらに自信を失うという悪循環に陥ることもあります。

対人関係においても、ADHDの衝動性による不適切な発言と、うつ病による引きこもり傾向が組み合わさることで、職場での孤立を招きやすくなります。日常生活では、家事や身の回りの整理整頓がさらに困難になり、生活環境の悪化がうつ症状を増悪させることもあります。経済的な影響も深刻で、衝動買いと仕事のパフォーマンス低下により、金銭管理が困難になることも少なくありません。

職場での合理的配慮と環境調整

ADHDとうつ病を併発している人が職場で働き続けるためには、適切な配慮と環境調整が不可欠です。

まず重要なのは、上司や人事部門への適切な情報開示と相談です。診断書を提出し、必要な配慮について具体的に伝えることで、法的に保護された合理的配慮を受けることができます。具体的な配慮としては、静かな環境での作業スペースの確保、フレックスタイム制の導入、定期的な休憩時間の設定などが挙げられます。

業務内容の調整も重要です。マルチタスクを避け、一つずつ順番に処理できるような業務配分や、締め切りに余裕を持たせた スケジュール設定が有効です。また、口頭での指示だけでなく、文書やメールでの確認を併用することで、情報の取りこぼしを防げます。

定期的な面談の機会を設けることも大切です。業務の進捗確認だけでなく、体調や困りごとについて相談できる環境があることで、問題が深刻化する前に対処できます。

同僚の理解と協力も欠かせません。可能な範囲で自分の特性について説明し、サポートが必要な場面を具体的に伝えることで、チーム全体での支援体制を構築できます。ただし、プライバシーに配慮し、開示する情報の範囲は慎重に判断する必要があります。

家庭生活での工夫と家族のサポート

家庭生活においても、ADHDとうつ病の併発は大きな影響を与えますが、適切な工夫とサポートにより、生活の質を改善することが可能です。

まず、家事や日常のタスクを管理しやすくする工夫が必要です。視覚的なリマインダーやアラームを活用し、ルーティンを確立することで、ADHDによる忘れ物や先延ばしを防ぎます。また、完璧を求めず、「できる範囲で」という考え方を持つことで、うつ病による自己批判を和らげることができます。

家族の理解とサポートは極めて重要です。家族に対して、ADHDとうつ病の症状や特性について説明し、どのようなサポートが必要かを具体的に伝えることが大切です。例えば、重要な予定のリマインド、服薬の声かけ、家事の分担などです。

ただし、過度な依存は避け、自立性を保つことも重要です。家族も支援疲れを起こさないよう、家族会への参加や、レスパイトケアの利用なども検討すべきです。

生活リズムの安定化も欠かせません。規則正しい睡眠時間、バランスの取れた食事、適度な運動は、両疾患の症状改善に有効です。特に、朝の光を浴びることで体内時計を整え、気分の安定化を図ることができます。

また、ストレス管理も重要です。趣味の時間を確保したり、リラクゼーション法を実践したりすることで、日常のストレスを軽減できます。

ADHDとうつ病の治療方法:薬物療法の選択と注意点

ADHDとうつ病が併発している場合の治療は、単独の疾患よりも複雑になります。両方の症状を考慮しながら、慎重に治療方針を決定する必要があります。ここでは、主に薬物療法について、その選択基準と注意点を詳しく解説します。

薬物療法を開始する際は、まずどちらの症状がより生活に支障をきたしているかを評価します。一般的に、重度のうつ症状がある場合は、まず抗うつ薬での治療を優先することが多いです。これは、うつ病による希死念慮などの緊急性の高い症状に対処する必要があるためです。抗うつ薬が効果を示し、うつ症状が改善してきたら、ADHD治療薬の追加を検討します。

一方、うつ症状が軽度で、ADHDの症状が主な問題である場合は、ADHD治療薬から開始することもあります。興味深いことに、ADHD治療薬によってADHD症状が改善すると、二次的にうつ症状も軽減することがあります。これは、日常生活での失敗体験が減り、自己肯定感が向上するためです。ただし、薬物相互作用には十分な注意が必要で、定期的な診察と慎重なモニタリングが不可欠です。

ADHD治療薬と抗うつ薬の併用療法

ADHD治療薬と抗うつ薬の併用は、多くの場合で有効ですが、慎重な管理が必要です。

ADHD治療薬として最も一般的なメチルフェニデート(コンサータなど)やアトモキセチン(ストラテラ)は、抗うつ薬と併用可能です。メチルフェニデートは即効性があり、注意力や集中力を改善しますが、不安や不眠を悪化させる可能性があるため、うつ病に伴う不安症状が強い場合は注意が必要です。

アトモキセチンは、非刺激薬であり、不安症状への影響が少ないため、うつ病との併発例では第一選択となることもあります。また、アトモキセチン自体に抗うつ作用があることも報告されています。

抗うつ薬としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)がよく使用されます。特にSNRIは、ノルアドレナリンにも作用するため、ADHD症状にも一定の効果が期待できます。

併用する際は、段階的に薬を追加していくことが重要です。一度に複数の薬を開始すると、副作用が出た際にどの薬が原因か判断できなくなるためです。また、薬物相互作用により、血中濃度が変化する可能性もあるため、定期的な血液検査や心電図検査が必要な場合もあります。

副作用のモニタリングと対処法

ADHDとうつ病の薬物療法では、副作用の適切なモニタリングと対処が治療の成功に不可欠です。

ADHD治療薬の一般的な副作用には、食欲不振、不眠、頭痛、動悸などがあります。これらの副作用は、服薬開始初期に現れやすく、多くの場合は時間とともに軽減します。食欲不振に対しては、薬を食後に服用したり、栄養価の高い間食を取り入れたりすることで対処できます。

抗うつ薬の副作用としては、吐き気、眠気、性機能障害などが挙げられます。特に服薬開始から2週間程度は、一時的に不安や焦燥感が増すことがあるため、この期間は特に注意深い観察が必要です。

両薬剤を併用する場合、相互作用により予期しない副作用が現れることもあります。例えば、セロトニン症候群のリスクや、血圧上昇などです。そのため、新たな症状が現れた場合は、すぐに主治医に相談することが重要です。

副作用日記をつけることも有効です。症状の種類、程度、出現時間などを記録することで、医師との相談時に正確な情報を伝えることができます。また、副作用と思われる症状が、実は原疾患の症状である可能性もあるため、自己判断での服薬中止は避け、必ず医師と相談して対処方法を決めることが大切です。

心理療法とカウンセリングによる包括的アプローチ

薬物療法と並んで重要なのが、心理療法やカウンセリングによるアプローチです。ADHDとうつ病の併発例では、薬物療法だけでは不十分なことが多く、心理的介入により症状の改善と再発予防が期待できます。

心理療法は、思考パターンや行動パターンを変えることで、症状の改善を図ります。ADHDとうつ病の併発例では、特に認知行動療法(CBT)が有効とされています。CBTでは、否定的な思考パターンを特定し、それをより現実的で建設的な思考に置き換える練習をします。例えば、「自分は何をやってもダメだ」という思考を、「今回は失敗したが、次は工夫すれば改善できる」という思考に変えていきます。

また、ADHDの特性に対する理解を深め、それを「欠点」ではなく「特性」として受け入れることで、自己肯定感の向上を図ります。さらに、問題解決スキルの向上、時間管理技術の習得、ストレス対処法の学習なども行います。個人療法だけでなく、グループ療法も効果的で、同じ悩みを持つ仲間との交流により、孤立感の軽減と相互サポートが期待できます。

認知行動療法(CBT)の具体的な実践方法

認知行動療法(CBT)は、ADHDとうつ病の併発例に対して特に有効な心理療法です。

CBTでは、まず自動思考の同定から始めます。日常生活で自動的に浮かぶ否定的な思考を記録し、それがどのような状況で生じるかを分析します。ADHDの人は「また失敗した」「自分は無能だ」といった思考を持ちやすく、これがうつ症状を悪化させます。

次に、認知の歪みを特定します。全か無か思考(完璧でなければ失敗)、過度の一般化(一度の失敗を全てに当てはめる)、心のフィルター(否定的な面ばかり注目する)などの歪みを見つけ出します。

そして、これらの歪んだ思考に対して、証拠を検証します。「本当に自分は何もできないのか?」「過去に成功した経験はないか?」といった質問を通じて、思考の妥当性を検討します。

行動活性化も重要な要素です。うつ病により活動量が低下している場合、段階的に活動を増やしていきます。ADHDの特性を考慮し、興味のある活動から始め、成功体験を積み重ねることで自己効力感を高めます。

また、ADHD特有の問題に対する行動戦略も学びます。タスクの細分化、視覚的リマインダーの活用、報酬システムの導入などを通じて、日常生活の改善を図ります。

マインドフルネスと感情調節スキル

マインドフルネスは、ADHDとうつ病の両方に有効な介入方法として注目されています。

マインドフルネスとは、今この瞬間の体験に意図的に注意を向け、判断せずに観察することです。ADHDの人は思考が次々と移り変わりやすく、うつ病の人は過去や未来への否定的な思考に囚われやすいため、「今ここ」に意識を向ける練習は両症状の改善に役立ちます。

具体的な実践方法としては、呼吸瞑想から始めることが多いです。5分程度の短い時間から始め、徐々に時間を延ばしていきます。ADHDの人は長時間の瞑想が困難な場合があるため、歩行瞑想や食事瞑想など、動きを伴う瞑想も取り入れます。

ボディスキャンも有効です。身体の各部位に順番に注意を向けることで、身体感覚への気づきを高め、ストレスや緊張を早期に察知できるようになります。

感情調節スキルとしては、PLEASE技法が役立ちます。Physical illness(体調管理)、baLanced Eating(バランスの良い食事)、avoid mood-Altering substances(気分を変える物質を避ける)、balanced Sleep(十分な睡眠)、Exercise(運動)の頭文字を取ったもので、基本的な生活習慣を整えることで感情の安定を図ります。

また、感情の波乗り技法も重要です。強い感情が生じた時、それと戦うのではなく、波のように自然に過ぎ去るのを観察する練習をします

うつ病以外にもあるADHDと併発しやすい精神疾患

ADHDは、うつ病以外にもさまざまな精神疾患を併発しやすいことが知られています。これらの併存疾患を理解することは、包括的な治療計画を立てる上で非常に重要です。ここでは、主な併存疾患について詳しく解説します。

ADHDの人の約70〜80%が、生涯のうちに何らかの精神疾患を併発すると報告されています。これは、ADHDの脳機能の特性が、他の精神疾患の発症リスクを高めるためと考えられています。

また、ADHDによる日常生活の困難さが慢性的なストレスとなり、二次的に他の精神疾患を引き起こすこともあります。併存疾患がある場合、症状が複雑に絡み合い、診断や治療がより困難になります。例えば、不安障害が併存していると、ADHDの不注意症状がさらに悪化したり、薬物療法の副作用が出やすくなったりすることがあります。

そのため、初診時には包括的な評価を行い、併存疾患の有無を慎重に確認することが重要です。また、治療過程においても、新たな症状が出現していないか定期的にモニタリングする必要があります。

不安障害との併発パターンと対処法

不安障害は、ADHDと最も頻繁に併発する精神疾患の一つで、ADHD患者の約30〜50%が何らかの不安障害を併発すると報告されています。

全般性不安障害、社交不安障害、パニック障害などが特に多く見られます。ADHDの人は、失敗体験の蓄積により「また失敗するのではないか」という予期不安を持ちやすく、これが不安障害の発症につながります。また、衝動性により思いついたことをすぐ口にしてしまい、対人関係でトラブルを経験することで、社交不安が生じることもあります。

不安障害が併存すると、ADHDの症状がさらに悪化します。不安により注意力がさらに散漫になり、決断力が低下し、先延ばし行動が増加します。また、不安による身体症状(動悸、発汗、震え)が、ADHDの落ち着きのなさと相まって、日常生活に大きな支障をきたします。

治療においては、不安症状の程度により優先順位を決めます。重度の不安がある場合は、まず不安の治療を優先し、その後ADHDの治療を行います。認知行動療法は両疾患に有効で、暴露療法や系統的脱感作法なども組み合わせて実施します。薬物療法では、SSRIが第一選択となることが多く、ベンゾジアゼピン系薬剤は依存性の問題から慎重に使用します

睡眠障害の影響と改善アプローチ

睡眠障害は、ADHD患者の約70%に見られる非常に一般的な併存疾患です。

ADHDの人は、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、日中の過度の眠気など、さまざまな睡眠問題を抱えています。脳内の覚醒システムの調節異常により、夜になっても脳が活発なままで、なかなか眠りにつけないことが多いです。また、衝動性により就寝時間が不規則になりやすく、体内時計が乱れることも睡眠障害の原因となります。

睡眠障害は、ADHDとうつ病の両方の症状を悪化させます。睡眠不足により、注意力や集中力がさらに低下し、感情調節も困難になります。また、慢性的な睡眠不足は、うつ病の発症リスクを高め、既存のうつ症状を悪化させます。

改善アプローチとしては、まず睡眠衛生の確立が重要です。規則正しい就寝・起床時間の設定、寝室環境の整備(適切な温度、暗さ、静かさ)、就寝前のスクリーンタイムの制限などを行います。

また、認知行動療法for不眠症(CBT-I)も有効です。睡眠に関する誤った認知の修正、刺激統制法、睡眠制限法などを組み合わせて実施します。薬物療法としては、メラトニン受容体作動薬や、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が使用されることがあります。ADHD治療薬の服薬時間の調整も重要で、夕方以降の服薬を避けることで、睡眠への影響を最小限にできます。

まとめ:ADHDとうつ病の併発に対する総合的な治療戦略

ADHDとうつ病の併発は、決して珍しいことではなく、適切な理解と治療により、症状の改善と生活の質の向上が十分に期待できます。最後に、これまでの内容を踏まえて、総合的な治療戦略についてまとめます。

まず重要なのは、正確な診断です。ADHDとうつ病、そして他の併存疾患の有無を包括的に評価することで、適切な治療計画を立てることができます。症状の重症度や生活への影響度を考慮し、治療の優先順位を決定します。一般的には、生命に関わる可能性のあるうつ症状を優先的に治療し、その後ADHDの治療を追加していきます。

薬物療法においては、両疾患に対する薬剤の相互作用を考慮しながら、慎重に選択と調整を行います。また、生活習慣の改善も欠かせません。規則正しい生活リズム、適切な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠は、両疾患の症状改善に大きく貢献します。家族や職場の理解とサポートも治療成功の鍵となります。適切な情報提供と環境調整により、当事者が安心して治療に専念できる環境を作ることが大切です。

治療は長期的な視点で考える必要があります。症状の改善には時間がかかることが多く、一進一退を繰り返すこともあります。しかし、諦めずに治療を継続することで、多くの人が症状の改善を実感しています。定期的な診察により、治療効果を評価し、必要に応じて治療方針を調整することが重要です。また、症状が改善した後も、再発予防のための維持療法を継続することが推奨されます。

ADHDとうつ病の併発は、確かに困難な状況ですが、決して希望がないわけではありません。適切な治療と支援により、多くの人が充実した生活を送っています。自分の特性を理解し、それに合った対処法を身につけることで、症状をコントロールしながら、自分らしい人生を歩むことができるのです。もし、ADHDとうつ病の症状に悩んでいる場合は、一人で抱え込まず、専門医に相談することをお勧めします。早期の介入により、より良い予後が期待できます。

この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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