クルミのアトリエ クルミのアトリエ TOPへもどる
  1. トップページ
  2. コラム
  3. ADHDの忘れっぽ ...

ADHDの忘れっぽさを改善|原因と実践的な対処法を徹底解説

2025.10.22 精神科訪問看護とは

「また忘れ物をしてしまった」「大事な約束をすっぽかしてしまった」「何度も同じミスを繰り返してしまう」このような忘れっぽさに悩んでいませんか?

ADHDの特性による忘れっぽさは、単なる「うっかり」ではなく、脳の機能的な特性が原因です。適切な対策を取ることで、忘れ物やミスを大幅に減らすことができます。

本記事では、ADHDの忘れっぽさの原因から、仕事や私生活で使える具体的な対処法、医療的なアプローチまで、包括的に解説します。

ADHDによる忘れっぽさの具体例と影響

ADHDの忘れっぽさは、日常生活のあらゆる場面で現れ、様々な困難を引き起こします。

仕事での忘れっぽさの実態

仕事場面でのADHDの忘れっぽさは、キャリアに深刻な影響を与えることがあります。最も多いのは締め切りの忘れで、カレンダーに記入していても、当日になるまで思い出せないことがあります。重要な会議の存在を完全に忘れ、別の仕事をしていて欠席してしまうこともあります。メールの返信を「後でしよう」と思って、そのまま忘れてしまい、相手から催促されて初めて気づくというパターンも頻繁です。

書類の提出忘れも深刻な問題です。作成は完了しているのに、提出することを忘れてしまう、または作成自体を忘れてしまうこともあります。口頭で受けた指示は特に忘れやすく、「分かりました」と返事をした直後に内容が頭から抜けてしまうことがあります。複数のタスクを抱えると、優先順位の低いものから順番に忘れていき、締め切り直前になって慌てることになります。

物理的な忘れ物も多く、重要な資料を会社に忘れて帰宅したり、逆に自宅に忘れて出社したりします。USBメモリ、名刺、社員証などの小物は特に忘れやすく、「また忘れた」と自己嫌悪に陥ることも多いです。これらの忘れっぽさにより、「仕事ができない人」「信頼できない人」というレッテルを貼られ、昇進の機会を逃したり、最悪の場合は職を失ったりすることもあります。

私生活での忘れっぽさの実態

私生活でも、ADHDの忘れっぽさは様々な問題を引き起こします。買い物では、買うべきものを忘れて帰り、必要のないものを衝動的に買ってしまうことがよくあります。冷蔵庫に同じ調味料が3本もあったり、トイレットペーパーを買い忘れて困ったりすることは日常茶飯事です。公共料金の支払いを忘れ、督促状が来て初めて気づくこともあります。

家事でも忘れっぽさが顕著に現れます。洗濯機を回したことを忘れて、翌日まで放置してしまい、洗い直しになることがあります。料理中に別のことを始めてしまい、鍋を焦がすことも珍しくありません。ゴミ出しの日を忘れ、家にゴミが溜まってしまうこともあります。鍵や財布、スマートフォンなどの必需品を毎日のように探し回り、出かける前の貴重な時間を無駄にしています。

薬の服用も忘れがちで、ADHDの治療薬自体を飲み忘れるという皮肉な状況も起こります。歯医者や美容院の予約を忘れ、無断キャンセルになってしまうこともあります。誕生日や記念日を忘れ、大切な人を傷つけてしまうこともあります。これらの忘れっぽさは、生活の質を低下させ、ストレスを増大させる要因となっています。

人間関係への深刻な影響

ADHDの忘れっぽさは、人間関係に最も深刻な影響を与えます。友人との約束を忘れてすっぽかしてしまい、「約束を守らない人」「自分のことを大切に思っていない」と誤解されることがあります。何度も同じ失敗を繰り返すと、「反省していない」「改善する気がない」と思われ、信頼を失ってしまいます。

家族関係でも問題が生じます。子どもの学校行事を忘れて参加できず、子どもを悲しませてしまうことがあります。配偶者から頼まれたことを忘れ、「話を聞いていない」「自分のことばかり考えている」と非難されることもあります。親の介護や家族の用事を忘れ、「無責任」「冷たい」と言われることもあります。

恋愛関係では特に致命的です。デートの約束を忘れる、相手の誕生日を忘れる、大切な記念日を忘れるなど、相手を傷つける行動を繰り返してしまいます。相手から話された重要なことを忘れてしまい、「私の話を聞いていない」と言われることもあります。プレゼントを買うことを忘れたり、約束していたことを忘れたりして、関係が悪化することもあります。これらの忘れっぽさが原因で、多くの人間関係を失い、孤独感や自己否定感に苦しむことになります。

ADHDの忘れっぽさの原因

ADHDの忘れっぽさには、脳の機能的な特性が深く関わっています。

ワーキングメモリの弱さ

ADHDの忘れっぽさの最大の原因は、ワーキングメモリ(作業記憶)の機能低下です。ワーキングメモリは、情報を一時的に保持し、処理する脳の機能で、「脳のメモ帳」とも呼ばれます。電話番号を聞いてダイヤルするまでの間覚えておく、会話の内容を理解しながら返答を考える、複数の指示を順番に実行するなど、日常生活のあらゆる場面で使用されています。

ADHDの人では、前頭前皮質の活動低下により、ワーキングメモリの容量が小さく、保持時間も短いことが分かっています。健常者が7±2個の情報を同時に処理できるのに対し、ADHDの人は4-5個程度しか処理できないことが多いです。また、新しい情報が入ってくると、古い情報が押し出されてしまう「上書き現象」が起きやすく、直前に聞いたことや考えていたことを忘れてしまいます。

ワーキングメモリの弱さは、「覚える」「思い出す」の両方に影響します。情報を符号化(記憶として定着させる)する際に、注意が散漫になりやすく、そもそも記憶として定着しないことがあります。また、記憶を検索(思い出す)する際にも、適切な手がかりを使えず、「覚えているはずなのに思い出せない」という状態になります。これらの問題により、約束、締め切り、やるべきことなどを忘れてしまうのです。

注意の切り替えと持続の困難

ADHDの人は、注意の切り替え(シフティング)と持続(サステイン)の両方に困難があり、これが忘れっぽさにつながっています。注意の切り替えの問題では、一つのことに集中していると、他の重要な情報を取り込めなくなります。例えば、メールを書いている最中に電話で別の指示を受けても、メールに注意が向いているため、電話の内容が記憶に残りません。

逆に、注意が散漫になりやすく、関係ない刺激に反応してしまうこともあります。会議中に窓の外の景色に気を取られ、重要な議題を聞き逃してしまうことがあります。この注意の不安定さにより、情報の取りこぼしが多くなり、結果として「忘れた」という状態になります。

注意の持続困難も深刻です。単調な作業や興味のない話題では、数分で注意が途切れてしまいます。長い説明や複雑な指示を最後まで聞くことができず、部分的にしか記憶に残りません。また、マルチタスクが特に苦手で、複数のことを同時に処理しようとすると、すべてが中途半端になり、重要なことを忘れてしまいます。これらの注意の問題は、ドーパミンとノルアドレナリンの不均衡が原因とされており、薬物療法により改善することがあります。

時間感覚の歪みと実行機能の問題

ADHDの人は「時間盲」とも呼ばれる時間感覚の歪みを持っており、これが忘れっぽさと密接に関連しています。過去、現在、未来という時間の流れを適切に認識できず、「今」に過度に焦点が当たってしまいます。そのため、将来の予定や締め切りが現実感を持って認識されず、「まだ大丈夫」と思っているうちに忘れてしまいます。

時間の見積もりも不正確で、「5分で終わる」と思った作業に30分かかり、その間に他の予定を忘れてしまうことがあります。また、時間の経過を感じにくく、「さっき確認したばかり」と思っていたことが、実は数時間前だったということもあります。この時間感覚の歪みにより、リマインダーを設定することすら忘れてしまうことがあります。

実行機能の問題も忘れっぽさに関与しています。実行機能とは、目標を設定し、計画を立て、実行し、評価するという一連のプロセスを管理する脳の機能です。ADHDの人は、この実行機能が弱いため、「覚えておく」という目標を設定しても、それを実行するための適切な戦略を立てられません。メモを取ろうと思っても、メモ帳を忘れる、メモを取っても見返すことを忘れる、といった具合に、対策自体がうまく機能しないのです。

忘れっぽさに対する実践的な対策

ADHDの忘れっぽさは、適切な対策により大幅に改善できます。

メモとリマインダーの徹底活用法

メモとリマインダーは、ADHDの忘れっぽさ対策の基本中の基本です。ただし、単に「メモを取る」だけでは効果が限定的です。効果的な方法は「とりあえずメモ」と「清書メモ」の2段階システムです。まず、思いついたことや聞いたことをすべて「とりあえずメモ」に書き込みます。このメモは乱雑でも構いません。スマートフォンのメモアプリ、小さなメモ帳、付箋など、常に手元にあるものを使います。

1日の終わりに、「とりあえずメモ」を見返し、重要な情報を「清書メモ」に転記します。この作業により、情報が整理され、記憶にも定着しやすくなります。清書メモは、カテゴリー別(仕事、プライベート、買い物など)に分け、優先順位をつけます。デジタルツールなら、Notion、Evernote、OneNoteなどが便利で、検索機能により必要な情報をすぐに見つけられます。

リマインダーは多層的に設定することが重要です。重要な予定は、前日、当日朝、1時間前、30分前と複数回通知するようにします。スマートフォンの標準リマインダーアプリに加え、GoogleカレンダーやTodoistなどの専用アプリを併用すると効果的です。音だけでなく、振動や画面表示も活用し、見逃しを防ぎます。また、アナログな方法も併用し、玄関ドアに付箋を貼る、鍵の横にメモを置くなど、必ず目に入る場所に物理的なリマインダーを配置します。

環境の構造化と視覚的サポート

環境を構造化し、視覚的なサポートを充実させることで、忘れ物を大幅に減らせます。まず、物の定位置を決め、ラベリングを徹底します。引き出しや収納ボックスには、中身を示すラベルを貼り、写真も添付すると効果的です。透明な収納容器を使用することで、中身が一目で分かり、存在を忘れにくくなります。

「ランチパッド」方式も有効です。玄関近くに、翌日持っていくものをすべて置くスペースを作ります。カバン、財布、鍵、書類など、必要なものをすべて前日の夜に準備し、このスペースに置きます。朝はこのスペースからすべてを持って出るだけなので、忘れ物が激減します。

視覚的スケジュール管理も重要です。大きなカレンダーやホワイトボードを目立つ場所に設置し、予定を色分けして記入します。仕事は青、プライベートは緑、重要な締め切りは赤など、一目で優先順位が分かるようにします。タスクボードを作成し、「やること」「進行中」「完了」の3つのカテゴリーに分けて、付箋で管理すると、進捗が視覚的に把握できます。デジタルとアナログの両方を使うことで、どちらかを見忘れても、もう一方でカバーできます。

ルーティン化と習慣化の技術

ルーティン化は、ADHDの忘れっぽさ対策として非常に効果的です。毎日同じ時間に同じことをすることで、意識しなくても自動的に行動できるようになります。朝のルーティンを例にすると、「起床→トイレ→歯磨き→着替え→朝食→持ち物チェック→出発」という順番を固定し、毎日同じ順序で行います。最初は意識的に行う必要がありますが、2-3週間続けると習慣化されます。

チェックリストの活用も重要です。朝の出発前チェックリスト、仕事終了時チェックリスト、週末の家事チェックリストなど、場面ごとにリストを作成します。チェックリストは、スマートフォンアプリ(Habitica、Streaksなど)を使うとゲーム感覚で楽しく続けられます。完了したらチェックを入れる達成感が、モチベーションを維持します。

「If-Thenプランニング」という手法も効果的です。「もし〜したら、〜する」という形式で行動を計画します。例えば、「もし会議が終わったら、すぐに議事録を書く」「もし薬を飲んだら、次の分をカバンに入れる」など、特定の状況と行動を結びつけることで、忘れにくくなります。この手法は、認知負荷を減らし、自動的な行動を促進します。習慣化には平均66日かかると言われているので、焦らず継続することが大切です。

根本的な改善に向けたアプローチ

忘れっぽさの根本的な改善には、脳機能へのアプローチが必要です。

脳トレーニングと認知機能の強化

ワーキングメモリを鍛える脳トレーニングは、ADHDの忘れっぽさ改善に効果があることが研究で示されています。「Nバック課題」は、科学的に効果が実証されているトレーニングの一つです。画面に表示される文字や図形を記憶し、N個前に表示されたものと同じかどうかを判断します。最初は2バック(2個前)から始め、徐々に難易度を上げていきます。1日20-30分、週5日行うことで、4-6週間後にワーキングメモリの改善が見られることが報告されています。

デュアルタスク訓練も効果的です。2つのことを同時に行うことで、注意の分配能力を鍛えます。例えば、音楽を聴きながら計算問題を解く、会話をしながら料理をするなど、日常生活の中で意識的に取り入れることができます。最初は簡単な組み合わせから始め、徐々に難易度を上げていきます。

マインドフルネス瞑想も、注意力と記憶力の改善に効果があります。1日10-15分、呼吸に意識を向ける練習をすることで、注意の持続力が向上し、ワーキングメモリも改善することが研究で示されています。瞑想アプリ(Headspace、Calmなど)を使うと、ガイド付きで始めやすいです。また、ヨガや太極拳などの動的瞑想も、身体を動かしながら注意力を鍛えることができ、ADHDの人に適しています。

生活習慣の最適化

睡眠、運動、栄養の改善は、脳機能を最適化し、忘れっぽさを改善します。睡眠不足は、ワーキングメモリと注意力を著しく低下させます。ADHDの人は、7-9時間の睡眠を確保することが特に重要です。規則正しい睡眠リズムを保ち、就寝前のスマートフォン使用を控え、寝室を暗く静かに保つことで、睡眠の質を向上させます。睡眠の質が改善すると、翌日の記憶力と注意力が明らかに向上します。

有酸素運動は、脳由来神経栄養因子(BDNF)を増加させ、海馬(記憶の中枢)の神経新生を促進します。週3-4回、30分以上の中強度の運動(早歩き、ジョギング、サイクリングなど)を行うことで、記憶力と注意力が改善します。特に、朝の運動は、その日一日の認知機能を向上させる効果があります。運動直後は、複雑な認知課題のパフォーマンスが向上することも分かっています。

栄養面では、オメガ3脂肪酸(DHA、EPA)の摂取が重要です。週2-3回の魚の摂取、または、サプリメントの使用により、脳機能が改善することが報告されています。また、鉄分、亜鉛、マグネシウム、ビタミンB群も、脳機能に重要な栄養素です。血糖値の安定も重要で、精製された糖質を避け、複合炭水化物とタンパク質をバランスよく摂取することで、認知機能の安定が図れます。カフェインは適量なら注意力を向上させますが、過剰摂取は逆効果なので注意が必要です。

ストレス管理と感情調整

ストレスは、ワーキングメモリと注意力を著しく低下させるため、適切なストレス管理が忘れっぽさの改善に不可欠です。慢性的なストレスは、コルチゾールレベルを上昇させ、海馬の機能を低下させます。ADHDの人は、ストレスに対する脆弱性が高いため、積極的なストレス管理が必要です。

深呼吸法、漸進的筋弛緩法、自律訓練法などのリラクゼーション技法を日常的に実践することで、ストレスレベルを低下させることができます。特に、「4-7-8呼吸法」(4秒吸う、7秒止める、8秒吐く)は、即効性があり、いつでもどこでも実践できます。定期的な趣味活動、自然との触れ合い、ペットとの交流なども、ストレス軽減に効果的です。

感情調整スキルの向上も重要です。ADHDの人は、感情的になりやすく、その際に重要なことを忘れやすくなります。感情ラベリング(感情に名前をつける)、感情の数値化(0-10で評価)、タイムアウト(一時的に場を離れる)などの技法により、感情をコントロールできるようになります。認知再構成法により、否定的な思考パターンを修正することで、ストレス反応を軽減できます。これらの技法は、専門家の指導を受けながら習得することが効果的です。

医療的アプローチと専門的支援

セルフケアだけでは改善が困難な場合、医療的なアプローチが必要です。

ADHD診断の重要性と流れ

正式なADHD診断を受けることは、適切な治療と支援を受ける第一歩です。診断により、忘れっぽさが性格の問題ではなく、脳の特性であることが明確になり、自己理解が深まります。また、診断書があれば、職場での合理的配慮を求めることができ、障害者手帳の取得により、様々な支援サービスを利用できるようになります。

診断は、精神科または心療内科で受けることができます。成人ADHD外来がある医療機関を選ぶと、より専門的な診断を受けられます。診断プロセスは、詳細な問診から始まります。現在の症状、子ども時代の様子、家族歴、既往歴などが聴取されます。CAARS、ASRS などの標準化された評価尺度を用いて、症状の程度を定量的に評価します。

心理検査も重要な診断ツールです。知能検査(WAIS)により、認知機能のプロファイルを評価し、ワーキングメモリの弱さなどADHDに特徴的なパターンを確認します。持続的注意力を評価するCPT(連続遂行課題)も実施されることがあります。診断には通常2-3回の受診が必要で、総合的な評価により診断が確定されます。診断後は、個々の症状と生活状況に応じた治療計画が立てられます。

薬物療法による記憶力の改善

ADHD治療薬は、忘れっぽさの改善に顕著な効果を示すことがあります。メチルフェニデート(コンサータ)は、ドーパミンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、前頭前皮質の機能を改善します。これにより、ワーキングメモリが強化され、注意力が向上し、忘れ物やミスが減少します。多くの患者が「頭の中がすっきりした」「物事を覚えていられるようになった」と報告しています。

アトモキセチン(ストラテラ)は、ノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害し、注意力と実行機能を改善します。効果発現まで4-6週間かかりますが、24時間効果が持続するため、朝の忘れ物が減るなどの利点があります。グアンファシン(インチュニブ)は、ワーキングメモリの改善に特に効果があることが報告されており、忘れっぽさが主症状の場合に選択されることがあります。

薬物療法の効果は個人差が大きく、適切な薬剤と用量を見つけるまでに時間がかかることもあります。副作用(食欲低下、不眠、頭痛など)とのバランスを考慮しながら、医師と相談して調整します。薬物療法により基本的な脳機能が改善することで、行動療法や環境調整などの他の対策も効果的に機能するようになります。薬物療法は「杖」のようなもので、それだけに頼るのではなく、総合的なアプローチの一部として位置づけることが重要です。

認知行動療法とカウンセリング

認知行動療法(CBT)は、ADHDの忘れっぽさに対して、薬物療法と同等またはそれ以上の長期的効果を示すことがあります。CBTでは、忘れっぽさにつながる思考パターンと行動パターンを特定し、より適応的なものに変えていきます。例えば、「どうせ忘れるから意味がない」という否定的な思考を、「対策を取れば改善できる」という建設的な思考に置き換えます。

ADHDに特化したCBTプログラムでは、時間管理、組織化、計画立案などの具体的なスキルを体系的に学びます。問題解決訓練により、忘れっぽさが引き起こす問題に対して、効果的な解決策を見つける能力を養います。メタ認知訓練により、自分の思考プロセスを客観的に観察し、コントロールする能力を向上させます。

カウンセリングでは、忘れっぽさによる失敗体験から生じた自己否定感や不安に対処します。過去の失敗を振り返り、それが性格の問題ではなく、脳の特性によるものであることを理解し、自己受容を促進します。また、忘れっぽさが人間関係に与えた影響について話し合い、関係修復の方法を探ります。グループセラピーでは、同じ悩みを持つ人々と経験を共有し、実践的な対処法を学び合うことができます。これらの心理的アプローチは、薬物療法と併用することで、より効果的な改善が期待できます。

まとめ:ADHDの忘れっぽさと向き合う

ADHDの忘れっぽさについて、原因から対策まで包括的に解説してきました。

ADHDの忘れっぽさは、ワーキングメモリの弱さ、注意の問題、時間感覚の歪みなど、脳の機能的特性が原因です。これは性格や努力の問題ではなく、適切な対策により大幅に改善可能です。

実践的な対策として、メモとリマインダーの活用、環境の構造化、ルーティン化が効果的です。「とりあえずメモ」と「清書メモ」の2段階システム、多層的なリマインダー設定、物の定位置決めとラベリング、If-Thenプランニングなど、具体的な方法を組み合わせることが重要です。

根本的な改善には、脳トレーニング、生活習慣の最適化、ストレス管理が必要です。ワーキングメモリトレーニング、マインドフルネス瞑想、適切な睡眠と運動、栄養改善により、脳機能を向上させることができます。

医療的アプローチも重要な選択肢です。正式な診断により適切な支援を受けられるようになり、薬物療法により脳機能が改善し、認知行動療法により対処スキルを身につけることができます。

ADHDの忘れっぽさは、一生付き合っていく特性かもしれませんが、適切な理解と対策により、その影響を最小限に抑えることができます。完璧を目指すのではなく、自分に合った方法を見つけ、少しずつ改善していくことが大切です。

失敗しても自分を責めず、「次はどうすればいいか」を考える前向きな姿勢が重要です。周囲の理解とサポートを得ながら、自分らしい生き方を見つけていきましょう。忘れっぽさは確かに困難をもたらしますが、それはあなたの価値を決めるものではありません。適切な対策と支援により、充実した人生を送ることは十分可能です。

この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

訪問看護師募集中