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【CEOコラム】Vol.043 幻聴と僕〜Mr.Children「幻聴」と重なる体験〜

2025.09.08 HEROさんシリーズMr.Childrenくるみの社長エッセイ

こんにちは。株式会社Make Careの代表取締役CEOであり、訪問看護ステーションくるみでマーケティングを担当している石森寛隆です。XではHEROと名乗っていますので、もしよろしければフォローください。

今日は僕自身の話をしたいと思います。このコラムでも何度かお話しさせていただいていますが、僕も精神疾患を抱えていて、日常的に幻聴があります。
誰もいない部屋で突然声が聞こえたり、自分を責めるような言葉が耳に飛び込んできたり。
最初は「おかしくなったのか」と怖くてたまらなかったものですが、精神科に通ったり、訪問看護に触れながら、時に人に支えられて、「幻聴と共に生きる」という視点を少しずつ持てるようになってきました。

そして、その過程で大きな支えになったのが、Mr.Childrenの「幻聴」という曲でした。

大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象

“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」

06-6105-1756 06-6105-1756

平日・土曜・祝日 9:00〜18:00 
【日曜・お盆・年末年始休み】

初めて幻聴に気づいた夜

今でも忘れられないのは、初めて幻聴を自覚した夜のことです。24歳くらいの時だったかと思います。
仕事で疲れ切って、深夜に一人で机に向かっていたとき。
静まり返った部屋の中で、誰かが「お前は失敗する」「全部終わりだ」と囁いたのです。

最初は外の声かと思い窓を開けて確認しました。でもそこには誰もいませんでした。

耳を澄ますほどに声ははっきりしていき、心臓の鼓動が早くなっていく。布団に潜っても、頭の奥で声は消えない。その夜は一睡もできませんでした。

それ以来、僕の生活に幻聴は割り込んでくるようになりました。

会議中に「黙っておけ」と聞こえたり、電車の中で「降りろ、危ない」と命令されて慌てて途中下車したり。

誰もいないのに、確かに声は存在している。そのたびに「自分は壊れてしまったのか」と感じ、情けなさや恐怖でいっぱいになりました。

過去、電車に乗れない話をこのコラムでも書いたのですが、
【CEOエッセイ】Vol.015 電車に乗れない僕の話──パニック障害と、精神科受診の話。
この要因の一つとして、幻聴があります。

日常の中に入り込む幻聴

幻聴は決して派手な出来事ではなく、日常の隙間に入り込んできます。
夜に一人でいるとき、ふいに「死ね」という言葉が響くこともあれば、仕事で集中しているときに「無理だ、やめろ」と繰り返されることもあります。

一番つらいのは、誰かと話している最中に声が割り込んでくるときです。
相手の話に集中したいのに、頭の中では別の声が「信じるな」「お前を利用している」とささやいてくる。
その場では必死に笑顔を保ちながら、心の中ではぐちゃぐちゃにかき乱されている。幻聴の存在を隠すことに疲れ果てる日も少なくありませんでした。

それでも、いくつかの工夫で少しずつ折り合いをつけられるようになりました。
紙に声の内容を書き出して「これは幻聴だ」と確認すること。
音楽を大音量で聴いて声を上書きすること。
人と短いメッセージをやりとりして、現実に意識を戻すこと。どれも完全な解決ではありませんが、日常を維持するための手段として僕を助けてくれています。

Mr.Children「幻聴」に映し出された自分

そんなときに出会ったのが、Mr.Childrenの「幻聴」でした。

「遠くで すぐそばで 僕を呼ぶ声がする

そんな幻聴に 耳を澄まし追いかけるよ」

この歌詞を聴いた瞬間、涙が止まりませんでした。
まさに僕が日々体験していることだからです。
声に追われ、耳を澄まし、逃れられない感覚。それは僕の孤独を代弁しているようでした。

さらに心に刺さったのは、

「一歩 また一歩 確実に進む

そんなイメージも忘れずに」

この部分に、僕は救いを見ました。
幻聴は多くの場合つらい声です。でも、時に優しく背中を押してくれるように聞こえる瞬間もあります。
大切な人の存在を思い出させてくれるような声。

今は、それを完全に否定するのではなく、意味を見つけることもできるんじゃないかと感じています。

幻聴を抱える経営者として

僕は訪問看護事業を経営しています。
経営者として判断を下し、仲間と共に未来を描く役割を担っています。でも同時に、幻聴を抱える一人の人間です。

正直に言うと、幻聴が強いときは仕事どころではありません。
「お前にはできない」「どうせ失敗する」という声が頭の中で響き続ける。自信を奪われ、逃げ出したくなることもある。
そんなときはただ時間が過ぎるのを待つしかないことだってありました。

それでも僕は、幻聴と共に経営を続けています。
幻聴があるからこそ、同じように苦しむ人の気持ちを理解できると思うからです。
精神疾患を持つことは、決して経営者としての「弱さ」ではなく、むしろ一つの「視点」だと今は考えています。

幻聴と共に生きるということ

幻聴はなくならないかもしれません。けれど、幻聴を抱えながらも生きることはできます。
声に押し潰される日もあれば、「幻聴」という曲を聴いて「まだ歩ける」と思える日もある。その繰り返しです。

僕は幻聴を「なくすべきもの」ではなく「共に生きるもの」として受け止めるようになりました。
否定するだけでは自分を傷つける。でも「ある」と認め、その中で自分の声を信じること。そこにこそ、生きる力があるのだと思います。

おわりに

幻聴は、精神科の診断に並ぶ言葉でありながら、実際にはもっと複雑で、もっと人間的な体験です。
Mr.Childrenの「幻聴」は、その体験を音楽として描き出し、僕に「声に支配されずに生きる」勇気をくれました。

僕はこれからも幻聴と共に生きていきます。
怖い夜もあるし、負けそうな瞬間もある。でも、音楽や人とのつながりが、幻聴をただの苦しみではなく「歩むためのきっかけ」に変えてくれると信じています。

「遠くで すぐそばで 僕を呼ぶ声がする」

その声に怯えるのではなく、自分の歩みを確かめるための合図として受け止めながら。今日もまた、一歩を踏み出します。

この記事を書いた人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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