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双極性障害で攻撃的になる理由と家族の正しい対応法

2025.11.07 精神科訪問看護とは

双極性障害のある家族やパートナーが、突然怒りっぽくなったり攻撃的な言葉を投げかけてきたりすると、どう接すればいいのか戸惑う方も多いのではないでしょうか。本人の言動に傷つきながらも、理解したい、支えたいという気持ちを持つ家族は少なくありません。

本記事では、双極性障害で攻撃的になる理由と、家族ができる適切な対応・支援の方法を詳しく解説します。感情に振り回されず、安心して関わるための具体的なヒントをお伝えします。

双極性障害とは|攻撃的な言動が現れる背景を理解する

双極性障害は「躁状態」と「うつ状態」という両極の気分を行き来する精神疾患です。気分の振れ幅が大きく、感情のコントロールが難しくなるため、本人にも家族にも大きな負担をもたらします。ここでは、攻撃的な言動がどのようなメカニズムで起こるのかを理解していきましょう。

双極性障害の種類と特徴

双極性障害には「I型」と「II型」があります。I型は躁状態が非常に激しく、現実感を失うほどの高揚感や怒りを示すことがあります。仕事や家庭生活に影響を及ぼすほどのエネルギーの高まりが特徴で、時に衝動的な行動や暴言に発展することもあります。一方のII型は、軽躁状態とうつ状態を繰り返すタイプです。

気分の変化が比較的穏やかであるため、周囲が病気に気づきにくい反面、長期間にわたる感情の不安定さが人間関係の摩擦を生みやすくします。どちらのタイプも、感情のコントロールが難しくなるという点で共通しています。

躁状態・うつ状態での気分の変化

躁状態では「万能感」「過度な自信」「イライラ」が強まり、自分の意見を絶対視する傾向が現れます。その結果、些細なことで怒りを爆発させたり、相手に対して攻撃的な発言をしてしまうことがあります。

一方、うつ状態では自己否定感が強まり、「誰も理解してくれない」「自分は無価値だ」といった思考が繰り返されます。これにより被害的な考えが生じ、他人を責めるような言葉が出てしまうケースもあります。このように、躁・うつそれぞれの状態で異なる形の「攻撃性」が現れるのです。

攻撃性が現れるメカニズム

脳の中では、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質のバランスが崩れています。特に躁状態のときは、脳の報酬系が過剰に働くため、感情のブレーキが効きづらくなります。

その結果、怒りや苛立ちを抑えられなくなり、周囲に強い言葉を投げつけてしまうことがあるのです。攻撃的な態度は「性格」ではなく「脳の不安定な状態」が引き起こす症状の一つです。正しい理解が、関係悪化を防ぐ鍵となります。

関連記事:双極性障害の末路とは?リスクと回避する具体策を詳しく解説

双極性障害で攻撃的になる理由

攻撃的な態度は、病気の核心部分に関わる現象です。感情を制御する神経活動が乱れ、周囲からの刺激を過剰に受け取るため、強い反応が生じます。次に、その原因を心理的・生理的な側面から見ていきましょう。

躁状態における過剰な自信と衝動性

躁状態では、「自分は何でもできる」という過度な自信が生まれます。エネルギーが高まり、睡眠が減っても活動できるため、周囲から見ると頼もしく映ることもあります。しかしその裏では、感情の制御機能が鈍っており、他人の意見に耳を貸せなくなる傾向があります。

自分の思い通りにならない状況に強いストレスを感じ、怒りを爆発させることがあります。さらに衝動性が高まるため、一瞬の感情で暴言や物に当たるなどの行動を取ってしまうことも少なくありません。本人も冷静になった後に後悔するケースが多く、攻撃的な態度の裏には苦しみと自己嫌悪が潜んでいます。

混合状態におけるイライラや不安

躁とうつが同時に存在する「混合状態」では、心のエネルギーが高いのに気分は落ち込み、強い不安と焦燥感が混ざり合います。この状態では、感情が爆発しやすく、特にイライラや怒りが抑えられないことが多いです。

本人は「どうしても落ち着けない」「自分でも何をしているのかわからない」と感じており、周囲の言葉にも過敏に反応します。このような状態のときに無理に話し合おうとすると、かえって衝突を招くことがあります。攻撃性は本人の混乱の表れであり、意図的なものではないことを理解することが大切です。

環境・人間関係による刺激の影響

双極性障害の症状は、環境の変化や人間関係のストレスによって悪化することがあります。職場や家庭でのプレッシャー、否定的な言葉、孤立などは、感情の不安定さを強める要因になります。

特に信頼している相手からの批判や拒絶を感じたとき、強い防衛反応として攻撃的な態度が現れることがあります。これは「自分を守るための反応」であり、敵意ではありません。周囲の理解が不足していると、症状がさらに悪化する悪循環に陥ることもあります。

攻撃的な言動の裏にある「自己防衛反応」

多くの双極性障害の方が攻撃的になる背景には、「傷つきたくない」「理解されたい」という切実な気持ちがあります。怒りという形でしか表現できない孤独や悲しみが、その根底にあるのです。

つまり攻撃は「助けて」のサインであり、本人もどう扱えばいいかわからない感情の爆発なのです。家族や友人がこの視点を持つことで、感情的な対立ではなく、共感的なサポートへと転換できます。

関連記事:双極性障害の末期症状とは?進行の兆候と回避策

攻撃的な双極性障害の人への正しい接し方

攻撃的な言動に直面したとき、感情的に反応してしまうのは自然なことです。しかし、相手の状態を理解し、適切に対応することが関係を保つ上で不可欠です。ここでは、具体的な接し方のポイントを紹介します。

状態に応じた距離の取り方

躁状態では相手のエネルギーに飲み込まれやすくなります。無理に話を合わせたり、説得を試みたりすると、逆効果になることがあります。相手が怒りを表しているときは、安全な距離を保ち、静かな環境に避難することが大切です。

逆にうつ状態のときは、静かなサポートが有効です。「話したくなったら聞くよ」といった控えめな関わり方が、安心感を与えます。状況を見極めて距離を調整することが、最も現実的な対応です。

否定せずに受け止めるコミュニケーション

「そんなこと言わないで」「間違っているよ」と否定する言葉は、攻撃性をさらに強めることがあります。まずは相手の感情を認めることが大切です。

「そう感じているんだね」「今はつらいんだね」と受け止めることで、相手の防衛反応を和らげることができます。相手は「理解してもらえた」と感じると、次第に落ち着きを取り戻します。会話の目的は説得ではなく、共感と安心を伝えることです。

相手の「安心感」をつくる言葉の選び方

言葉には大きな力があります。攻撃的な態度を見せる相手に対しても、「あなたを見捨てない」「大切に思っている」というメッセージを伝えることが重要です。この安心感が、感情の暴走を防ぐクッションになります。また、声のトーンや表情にも気を配り、穏やかな態度を心がけましょう。安心感は、相手が自分を落ち着かせるための土台となります。

どうしてもつらいときは距離を置く勇気

どんなに愛情があっても、限界を感じることはあります。自分の心を守ることも支援の一部です。危険を感じるほどの攻撃や暴言が続く場合は、安全を最優先にしてください。専門機関や医療機関へ相談し、一時的に距離を取ることも選択肢です。感情に飲み込まれず、冷静に境界線を保つことが最善の支援です。

家族・パートナーが抱えやすいストレスと限界

双極性障害の方が攻撃的な言動を示すとき、最も影響を受けるのは近くにいる家族やパートナーです。支えたいという気持ちと、繰り返される暴言や態度に心がすり減っていく現実。その中で、支援者側が心身を守ることも、本人を支えるために欠かせない要素です。ここでは、家族やパートナーが抱えやすいストレスと、その対処法について解説します。

攻撃的な言動を受け続ける心の疲労

日常的に怒鳴られたり、心ない言葉を浴びせられたりすると、家族の心は深く傷つきます。「なぜ自分だけが責められるのか」「もう限界だ」と感じる人も多く、慢性的なストレスによって眠れなくなったり、涙が止まらなくなったりすることもあります。このような心の疲労は、時間が経つほどに蓄積し、いずれは家族自身のメンタルにも影響を及ぼします。

支える側が疲れ果ててしまえば、本人を冷静に支えることが難しくなります。まずは「自分も守る必要がある」と認識することが、長期的な支援の第一歩です。自分の心の健康を保つことが、結果的に相手の安定にもつながります。

罪悪感や無力感への対処法

攻撃的な態度を取られても、「この人も苦しんでいる」「私がもっと優しくできたら」と自分を責めてしまう家族は少なくありません。しかし、双極性障害の症状は意思や努力でコントロールできるものではなく、家族が原因で起きているわけでもありません。無理に支えようとすればするほど、疲労と無力感が増していきます。

そんなときは「できる範囲で関わる」ことを意識しましょう。すべてを抱え込むのではなく、必要に応じて休息を取る勇気を持つことが大切です。あなたが倒れてしまっては、誰も支えることができません。自分を責めず、できたことを肯定的に受け止める習慣をつけましょう。家族も「共に回復の道を歩む存在」であって、犠牲者ではありません。

自分を守るためのサポート体制を作る

攻撃的な言動を受け続ける中で孤立してしまうと、心が限界を迎えます。そのため、外部のサポートを得ることが欠かせません。家族会や支援団体では、同じ悩みを持つ人たちが集まり、体験を共有し合うことで安心感が得られます。また、カウンセラーや訪問看護師に相談することで、具体的な対処法や支援制度の情報を得ることができます。

自分の限界を理解し、必要な支援を受けることは「逃げ」ではなく「戦略的な選択」です。支える側が心を保てる状態でいることが、本人の安定につながります。孤立せず、支援ネットワークを持つことが、共倒れを防ぐ最大の予防策です。

医療・支援機関の活用方法

双極性障害の攻撃的な症状を和らげるには、専門的な支援が不可欠です。医療だけでなく、訪問看護や地域支援など、複数のサポートを組み合わせることで、本人と家族の両方を支えることができます。ここでは、具体的な活用方法を紹介します。

精神科・心療内科への受診タイミング

「怒りがコントロールできない」「家族との衝突が増えた」と感じた時点で、早めに受診を検討することが重要です。双極性障害は再発率が高い病気ですが、早期の治療によって安定した生活を取り戻すことが可能です。治療の中心は薬物療法で、気分安定薬や抗精神病薬などが使われます。

同時に、医師の指導のもとで生活リズムの改善やストレス管理を行うことも大切です。家族が同伴して診察を受けることで、医師に実際の様子を伝えやすくなり、より適切な治療方針を立てられます。受診をためらわず、早期に行動することが回復への近道です。

訪問看護・カウンセリングの活用

訪問看護は、医療従事者が定期的に自宅を訪れ、服薬管理や症状観察、生活支援を行うサービスです。通院が難しい人や、家庭でのトラブルが多い人にとって大きな支えとなります。看護師が病状を見守り、医師と連携して治療を続けることで、再発や悪化を防ぐことができます。

また、カウンセリングでは、本人が抱える不安や怒りを言葉で整理し、感情のコントロール方法を学ぶことができます。家族もカウンセリングを受けることで、心理的負担を軽減し、より建設的な関わり方を身につけることができます。医療と心理の両面から支援を受けることが、長期的な安定につながります。

家族支援プログラムや地域連携の利用

精神保健福祉センターや自治体の支援課では、双極性障害の家族を対象とした学習会や相談会が開催されています。病気の理解を深めるだけでなく、同じ悩みを持つ家族とつながることができる貴重な場です。訪問看護ステーションや地域包括支援センターなども、医療機関と連携して支援体制を構築しています。

家族が孤立せず、専門職とつながることで、危機的状況を回避しやすくなります。また、福祉サービスの利用により、日常生活の負担を軽減できる場合もあります。病気を「家庭内だけの問題」にせず、地域全体で支える意識を持つことが、回復への大きな一歩です。

まとめ

双極性障害による攻撃的な言動は、脳や心の不安定さから生じる「症状」であり、人格ではありません。本人も苦しんでいることを理解することが、第一歩です。周囲が冷静に対応し、無理をせず支援を分担することで、関係は少しずつ改善していきます。感情的なぶつかり合いを避け、理解と共感をもって接することが大切です。

そして、限界を感じたときは専門機関に頼ってください。訪問看護ステーションくるみでは、精神科に特化した訪問看護を行い、双極性障害の方とその家族を支えています。医師や地域の支援機関と連携しながら、症状の安定と再発防止をサポートしています。攻撃的な言動に悩んでいる方や支える家族の方は、ぜひ「訪問看護ステーションくるみ」へご相談ください。

この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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