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双極性障害で脳が萎縮する?原因・影響・回復の可能性を徹底解説

2025.11.07 精神科訪問看護とは

双極性障害は、感情の波が大きく、躁状態とうつ状態を繰り返す精神疾患です。近年、脳画像研究の進歩によって、双極性障害の方の脳に「萎縮」や「機能低下」がみられるケースが報告されています。

脳の萎縮は感情のコントロールや記憶力に影響し、症状を悪化させる要因となることもあります。この記事では、双極性障害と脳萎縮の関係、原因や影響、治療法や生活習慣による対策まで、専門的な視点から詳しく解説します。

双極性障害とは?症状と脳への影響

双極性障害は、躁状態とうつ状態を周期的に繰り返すことを特徴とした気分障害です。まずは、この病気の基本的な症状や種類、脳への影響を理解することが重要です。

躁状態とうつ状態の特徴

躁状態では、気分が異常に高揚し、睡眠時間が減っても元気が続いたり、衝動的な行動を取ることがあります。一方、うつ状態では、無気力や悲しみ、集中力の低下がみられます。この二つの状態が周期的に訪れるため、本人だけでなく家族の生活にも影響が及びます。

脳の働きとしては、感情を調整する前頭前野や扁桃体の活動が不安定になり、神経伝達のリズムが崩れるといわれています。このような脳内のアンバランスが、感情の波を引き起こす根本的な要因となります。

双極性障害のタイプ(Ⅰ型・Ⅱ型)

双極性障害にはⅠ型とⅡ型の2つのタイプがあります。Ⅰ型は躁状態が顕著で、日常生活や社会生活に支障をきたすほどの高揚が見られます。Ⅱ型は軽い躁状態(軽躁)とうつ状態を繰り返すタイプで、気分の落ち込みが中心となります。

Ⅱ型は見逃されやすく、うつ病と誤診されるケースもあります。どちらのタイプでも脳の機能バランスが乱れやすく、神経ネットワークの働きに負担がかかることが報告されています。特に長期にわたり再発を繰り返すと、脳の構造的変化を引き起こす可能性があります。

脳への負担と神経活動の変化

双極性障害の発作期では、神経伝達物質の分泌が大きく変動します。ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどのバランスが崩れると、脳内の情報伝達が乱れ、情動や思考の調整が困難になります。

MRI研究では、前頭前野や海馬などで神経活動の低下がみられることが確認されています。こうした機能低下が長期的に続くと、脳萎縮のリスクが高まると考えられています。つまり、脳の疲弊が慢性化することが、双極性障害の進行に影響を与えるのです。

双極性障害で脳が萎縮する原因

脳萎縮は単一の要因ではなく、複数の生理的・心理的要素が重なり合って起こります。

神経伝達物質のアンバランス

ドーパミンやセロトニンなど、気分を調整する神経伝達物質の異常は、神経細胞間の通信障害を引き起こします。長期間のアンバランスは、神経細胞の可塑性を低下させ、脳の一部で萎縮を促進する可能性があります。

研究では、特に前頭前野の神経ネットワークに変化がみられることが報告されています。神経伝達の乱れは、脳構造そのものに影響を及ぼす可能性があるのです。

慢性的なストレスとコルチゾールの影響

ストレスが続くと、副腎皮質から分泌されるコルチゾールが増加します。高濃度のコルチゾールは神経細胞を傷つけ、特に海馬の神経再生を妨げることが知られています。慢性的なストレス環境にいると、この影響が積み重なり、脳萎縮を進行させるリスクが高まります。ストレスの管理は脳を守る上で欠かせない要素です。

脳血流や炎症反応の関与

双極性障害では脳内の微小な血流低下や炎症反応が観察されています。炎症性サイトカインが過剰に分泌されると、神経細胞の修復が追いつかず、脳組織の損傷が進みます。MRI解析でも、慢性炎症が神経構造に影響を与えることが示唆されています。炎症と血流の異常は、脳萎縮の隠れた引き金になる可能性があります。

遺伝的要因と環境要因の相互作用

双極性障害には遺伝的要素が関与しており、家族歴のある人は発症リスクが高いといわれています。しかし遺伝だけでなく、生活習慣やストレス、トラウマなどの環境因子も重なることで、脳構造に変化が生じると考えられています。脳萎縮は多因子的であり、ストレスと脳機能変化の連鎖が大きく関与しています。

脳萎縮が起こる部位とその役割

脳萎縮といっても、どの部分が影響を受けるかによって現れる症状や影響は異なります。特に双極性障害では、感情や記憶、判断に関わる領域に変化が起こりやすいと報告されています。ここでは、萎縮が確認される代表的な部位とその役割を見ていきましょう。

前頭前野の萎縮と感情コントロール

前頭前野は「感情の司令塔」と呼ばれる部分で、人の思考や判断、感情の抑制に深く関わっています。双極性障害のMRI研究では、この前頭前野の灰白質が減少している傾向が確認されています。

前頭前野の機能が低下すると、衝動的な行動や怒りのコントロールが難しくなり、躁状態やうつ状態の波を強める要因となります。前頭前野の萎縮は、感情の安定を乱し、症状の再発リスクを高める大きな要因です。

海馬の萎縮と記憶・学習への影響

海馬は記憶の形成やストレス反応の調整を担う重要な部位です。長期的なストレスやコルチゾールの上昇により、海馬の神経細胞はダメージを受けやすく、双極性障害の患者では健常者に比べて体積が小さいことが報告されています。

海馬が萎縮すると、集中力や短期記憶の低下、思考の整理が難しくなる傾向があります。海馬の健康は、感情の安定と記憶機能の維持に直結しているのです。

扁桃体の変化と情動反応の強化

扁桃体は「恐怖」や「怒り」といった情動反応を司る部位です。双極性障害の研究では、扁桃体の活動が過剰になっているケースが多く、脳内ネットワークの過敏性が指摘されています。萎縮や構造変化が生じると、刺激に対する感情反応が強まり、不安や怒りがコントロールしづらくなります。扁桃体の変化は、情緒の不安定さを増大させる一因といえます。

うつ病・統合失調症との脳構造の違い

双極性障害は、うつ病や統合失調症と症状が重なる部分もありますが、脳の構造変化には明確な違いがあります。その違いを理解することで、診断や治療の方向性がより明確になります。

うつ病との比較:海馬萎縮の程度

うつ病でも海馬の萎縮が報告されていますが、双極性障害の場合は萎縮の範囲が広く、再発の回数が多いほど顕著になる傾向があります。特に躁状態を経験するタイプでは、神経可塑性の回復が遅れることがあり、長期的に見て脳構造への影響が大きくなることが示されています。うつ病よりも複雑な変化を示すのが、双極性障害の脳の特徴です。

統合失調症との比較:前頭前野の異常

統合失調症では前頭前野や側頭葉の灰白質減少が顕著ですが、双極性障害では主に情動調整に関わる領域での変化が目立ちます。つまり、統合失調症が「認知機能の障害」に重点があるのに対し、双極性障害は「感情制御の障害」が中心です。この違いが、診断や治療方針を大きく分けるポイントとなります。

共通する血管・神経ネットワークの変化

両疾患に共通してみられるのが、脳内血流や神経接続ネットワークの乱れです。これらの障害は、感情や判断の調整を担う前頭葉ネットワークに影響を与えます。精神疾患における脳構造の変化は連続的なスペクトラムの一部であり、早期治療が進行を抑える鍵になります。神経ネットワークの保護が、全ての精神疾患で共通する課題です。

関連記事:双極性障害の末期症状とは?進行の兆候と回避策

MRIや画像研究でわかる脳萎縮の実態

近年のMRI技術の進歩により、双極性障害の脳構造変化がより明確に捉えられるようになりました。ここでは、研究で明らかになった具体的な変化や回復の可能性を紹介します。

MRIで確認される構造変化

MRI研究では、双極性障害の患者において前頭前野、海馬、帯状回などで体積の減少が観察されています。これらは感情制御や意思決定に関わる領域で、機能低下が症状の変動に影響していると考えられます。特に発症年齢が若いほど構造変化が進行しやすい傾向があります。脳画像は、精神疾患の可視化を可能にした重要な手段です。

神経細胞の代謝低下と灰白質の減少

脳の代謝機能を測定するPETやfMRIでは、双極性障害の人における神経活動の低下が確認されています。これは脳細胞のエネルギー利用が減少している状態を意味し、萎縮の進行を促す可能性があります。神経活動の低下は、感情や思考の鈍化に直結するため、治療介入が不可欠です。

脳可塑性と回復の可能性

一方で、脳には「可塑性」と呼ばれる再生能力があります。適切な治療と生活改善により、萎縮した領域の神経機能が部分的に回復することが報告されています。特に運動や学習などの刺激が神経新生を促進することがわかっています。脳は変化し続ける臓器であり、治療によって回復を目指すことが可能です。

関連記事:ADHDと双極性障害は似ている?違いや共通点を解説

脳萎縮が与える影響

脳萎縮は双極性障害の症状や日常生活の質に大きな影響を及ぼします。感情の波や思考の変化に加え、認知や行動面での支障も見られます。ここでは、脳萎縮が引き起こす3つの主要な影響について詳しく解説します。

注意力・集中力の低下

前頭前野は「集中」「判断」「計画」といった高次機能を担う部位です。双極性障害でこの領域が萎縮すると、作業への集中力が続かず、思考が中断しやすくなります。たとえば読書中に内容が頭に入らなかったり、仕事でミスを繰り返したりするケースもあります。

これは単なる疲労ではなく、神経伝達の効率が低下しているサインです。また、情報を取捨選択する力も落ちるため、他人との会話や意思決定にも影響が出ます。脳の集中力低下は、日常生活の能率を下げ、社会生活への影響を広げてしまうリスクがあります。

感情の不安定化とストレス耐性の低下

扁桃体や帯状回の変化によって、感情のコントロールが難しくなることがあります。脳萎縮によって情動抑制が効かなくなり、些細な刺激でも強い怒りや悲しみを感じやすくなるのです。これにより人間関係の摩擦が増え、職場や家庭でのトラブルが起こることも少なくありません。

また、ストレスホルモンであるコルチゾールが過剰分泌されることで、さらに脳への負担が増し、悪循環を生む恐れもあります。感情の不安定さは性格の問題ではなく、脳構造の変化による神経的な反応であることを理解することが大切です。

記憶力・判断力の変化

海馬や前頭前野が萎縮すると、記憶力や判断力に顕著な変化が現れます。たとえば過去の出来事を正確に思い出せなかったり、複雑な情報を整理するのが難しくなったりします。これは単なる「物忘れ」とは異なり、神経ネットワークの情報伝達スピードが低下している状態です。

判断力の低下は、生活習慣や治療の継続にも悪影響を与えることがあり、薬の飲み忘れや生活リズムの乱れにつながることもあります。脳萎縮は日常の選択や行動に影響し、生活の安定を脅かす要因となるため、早期の介入が重要です。

脳萎縮を進行させないための治療法

脳萎縮の進行を抑えるには、脳の神経細胞を守りながら再生を促すアプローチが効果的です。ここでは、医学的な根拠に基づく3つの主要な治療法を紹介します。

薬物療法(気分安定薬・抗精神病薬)

薬物療法は双極性障害の治療の基本であり、脳の神経保護にも寄与します。リチウムは古くから用いられており、気分の波を安定させるだけでなく、神経細胞の再生や炎症の抑制にも効果があるとされています。

抗精神病薬(オランザピン、クエチアピンなど)も、感情の極端な変化を防ぎ、脳内の神経伝達物質のバランスを整える役割を果たします。服薬の継続は副作用の管理を含めて医師との連携が重要です。薬物療法は脳萎縮の進行を防ぐ最も確立された手段のひとつです。

心理療法と認知行動療法の併用

心理療法は、患者自身が自分の感情の波を理解し、ストレスに対処する力を高めることを目的としています。特に認知行動療法(CBT)は、思考の歪みを修正し、再発予防に効果を発揮します。

これにより、過剰な不安や自己否定的な思考を減らし、脳のストレス反応を抑えることができます。また、心理教育によって病気の理解を深めることで、治療への意欲も向上します。心理療法は薬だけでは補いきれない脳の安定性を支える重要な支援です。

定期的な通院と再発予防プログラム

双極性障害は長期的な治療が必要な慢性疾患です。定期的な通院によって症状の変化を早期に発見し、適切な対応を取ることで、脳萎縮の進行を抑えることができます。再発を防ぐためのプログラムでは、睡眠・食事・服薬の記録を行い、自分の状態を客観的に把握するセルフモニタリングが推奨されます。

これにより、脳への負担を減らし、再発を未然に防ぐことが可能になります。治療の継続こそが、脳機能の回復と安定を支える最も確実な道です。

生活習慣でできる脳の健康ケア

生活習慣の改善は、治療と並行して脳の健康を支える大切な柱です。脳萎縮の進行を防ぐためには、日々の行動を少しずつ見直すことが効果的です。

規則正しい睡眠と体内リズムの維持

睡眠不足は感情の制御を担う前頭前野の働きを弱めます。毎日同じ時間に寝起きし、7時間前後の睡眠を確保することが理想です。夜更かしや昼夜逆転を避け、就寝前のスマートフォン使用を控えることでメラトニンの分泌を促します。規則正しい睡眠は、脳のリズムと感情の安定を守る第一歩です。

バランスの取れた食事とオメガ3脂肪酸の摂取

脳の60%以上は脂質で構成されており、その質が神経機能に影響します。青魚やアマニ油などに含まれるオメガ3脂肪酸は、神経細胞膜を保護し、炎症を抑える働きがあります。ビタミンB群やマグネシウムも神経伝達の安定に役立つため、バランスの取れた食事を意識することが大切です。食事改善は、脳の修復を促す自然な治療法です。

軽い運動と有酸素活動による血流改善

ウォーキングやヨガなどの有酸素運動は、脳の血流を改善し、神経細胞の新生を促します。特に週3回以上の中程度の運動は、海馬の体積を増やす効果があると報告されています。運動を継続することで、脳内の神経成長因子(BDNF)が増加し、ストレス耐性も向上します。軽い運動の継続が、脳の回復力を高める鍵です。

ストレスマネジメントとマインドフルネス

ストレスの蓄積は脳萎縮を悪化させる主要な要因です。マインドフルネス瞑想は、脳の扁桃体活動を抑制し、前頭前野の働きを強化することがわかっています。呼吸を整え、現在の自分に意識を向ける習慣は、ストレスホルモンを減少させ、心身の安定をもたらします。心を落ち着ける時間を持つことが、脳を守る習慣となります。

アルコール・喫煙の制限

アルコールやニコチンは神経細胞を損傷し、脳の回復を妨げる要因です。少量でも長期的に摂取すると、脳の血流低下や炎症を引き起こすことがあります。禁煙や節酒を目標に、周囲のサポートを得ながら段階的に減らしていくことが望ましいです。生活習慣の改善は、治療と並行して脳機能を守る強力な手段です。

まとめ

双極性障害における脳萎縮は、感情や記憶、判断力など多方面に影響を与えます。しかし、適切な治療と生活改善により、脳の可塑性を活かした回復が十分に可能です。薬物療法・心理療法・生活習慣の見直しを継続することで、脳の健康を保ち、再発を防ぐことができます。

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この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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