双極性障害は、躁状態とうつ状態という対照的な気分の波を繰り返す精神疾患です。特に躁状態では、気分の高揚や衝動的な行動が見られる一方で、本人に自覚がないことも多く、社会生活や人間関係に大きな影響を及ぼします。
本記事では「双極性障害躁状態」というテーマで、症状の特徴、発症メカニズム、治療方法、再発予防までを包括的に解説します。正しい理解と早期のサポートが、回復への第一歩となります。
双極性障害の躁状態とは

躁状態とは、気分が異常に高揚し、活動が過剰になる状態です。単なる明るさや積極性とは異なり、現実的な判断力が低下し、日常生活や仕事に支障をきたす点が特徴です。
躁状態の定義と特徴
躁状態は、精神医学的には「少なくとも1週間以上、異常な高揚気分または易怒的気分が続く状態」と定義されます。眠らなくても元気、話し続ける、思考が飛ぶ、浪費や多弁などが典型的な症状です。
自分が万能に感じたり、リーダーシップを発揮しているように錯覚することも多く、周囲の忠告を聞かなくなります。また、自分の発言や行動を客観的に判断できなくなるため、トラブルを起こしても反省できません。
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軽躁状態との違い
軽躁状態は、躁状態ほど深刻ではないものの、気分が高揚して活動的になる段階です。たとえば、普段より社交的になり、仕事がはかどるように見えることもあります。しかし、それは一時的なもので、無理を続けると体調不良やうつ状態への移行を招きます。
軽躁状態は周囲が「少し元気になった」と誤解しやすく、医療機関への受診が遅れる傾向があります。本人にとってもポジティブな状態に感じられるため、自覚しにくい点が問題です。うつ期との落差が激しい人ほど、この軽躁状態の観察が重要となります。
躁状態が起きる期間とサイクル
躁状態の持続期間は1週間以上、長い場合は数ヶ月に及ぶこともあります。うつ状態と交互に現れることが多く、これを「エピソード」と呼びます。周期性は人によって異なり、1年に数回繰り返す人もいれば、数年に1回だけ発症する人もいます。
また、季節性があるケースも多く、春や秋など環境変化の多い時期に発症が増える傾向があります。この周期を見極めることは、治療計画や再発予防に非常に重要です。家族や医療者が日記やアプリで気分の変動を記録しておくことで、早期発見と再発防止に繋がります。
躁状態で見られる主な症状
躁状態は、精神面・行動面・身体面でさまざまな症状を示します。症状の幅が広く、初期の兆候を見逃すと重症化しやすいため、早期の気づきが重要です。
精神面の変化
躁状態では、異常な自信や万能感が現れます。「自分は特別な力を持っている」「何でもできる」と感じ、現実的な判断が鈍くなります。話すスピードが速くなり、考えが飛躍的になるため、会話がかみ合わなくなることもあります。
また、怒りっぽくなったり、些細なことで感情が爆発するケースも見られます。これは脳内のドーパミン過剰分泌による影響と考えられています。結果的に、周囲との衝突や孤立を生みやすくなります。
行動面の特徴
衝動的な行動が目立つようになります。代表的なのは浪費、ギャンブル、過度なSNS発信、性的な逸脱行動などです。短期間で多くの計画を立て、次々と行動に移しますが、継続性はなく途中で放棄する傾向があります。
仕事面でも過剰な自信から無理な判断を行い、トラブルに発展することがあります。本人は快感を伴うため、異常行動だと自覚しにくいのが特徴です。家族や同僚が異変に気づいた段階で早めに受診を促すことが、悪化防止につながります。
身体的な変化
躁状態では睡眠時間が著しく減ります。3〜4時間しか眠らなくても平気と感じ、活動を続けるケースが多く見られます。食欲が増加する、体重が急変する、手足が落ち着かないなどの身体症状も伴います。
睡眠不足と過剰な興奮は脳への負担を高め、最終的にうつ状態へ急転するリスクを高めます。特に長期間の睡眠障害は、再発を繰り返す要因となります。身体のサインを軽視せず、体調の変化にも注意を払うことが重要です。
躁状態の原因と発症メカニズム

躁状態は、遺伝的・生理的・心理的・環境的な複数の要因が重なって発症します。
脳内神経伝達物質の関係
脳内ではドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニンといった神経伝達物質が気分をコントロールしています。躁状態ではこれらの物質のバランスが崩れ、興奮が過剰になります。特にドーパミンが過剰に分泌されると、快感・自信・創造性が高まる反面、抑制が効かなくなります。
遺伝的素因も強く、親族に双極性障害の既往があると発症リスクが高まると報告されています。環境要因が引き金となり、この生物学的脆弱性が表面化することが多いのです。
ストレスや生活リズムの影響
睡眠不足、長時間労働、強いストレスなどが発症の引き金になります。体内時計の乱れはホルモンバランスを崩し、脳内神経の働きを変化させます。特に夜勤や不規則な生活を続ける人は発症リスクが高く、安定した生活リズムが重要です。
また、ライフイベント(転職・離婚・出産など)も心理的負担を増大させ、躁状態を誘発することがあります。心身のストレスに敏感な人は、日常的なセルフケアを意識することが予防につながります。
薬物・アルコールとの関連
抗うつ薬の誤用やアルコール依存は躁状態を誘発することがあります。抗うつ薬は気分を引き上げる効果がありますが、双極性障害の人が使用すると躁転(うつから躁への切り替え)が起こる場合があります。
また、アルコールや覚醒剤の乱用は脳の興奮を増幅し、躁状態を悪化させます。自己判断で薬を中止したり飲酒を続けると、症状がコントロールできなくなる危険性があります。医師の指導のもとで適切な服薬・禁酒を行うことが必須です。
薬物・アルコールとの関連
抗うつ薬の誤用やアルコール依存は躁状態を誘発することがあります。抗うつ薬は気分を引き上げる効果がありますが、双極性障害の人が使用すると躁転(うつから躁への切り替え)が起こる場合があります。
また、アルコールや覚醒剤の乱用は脳の興奮を増幅し、躁状態を悪化させます。自己判断で薬を中止したり飲酒を続けると、症状がコントロールできなくなる危険性があります。医師の指導のもとで適切な服薬・禁酒を行うことが必須です。
躁状態の診断と治療
躁状態の診断は、本人の自覚症状だけでなく、家族や周囲の情報が重要になります。治療では薬物療法と心理社会的支援が組み合わされます。
診断の流れ
精神科医による問診では、症状の持続期間や行動の変化を詳細に確認します。DSM-5(精神疾患の診断基準)に基づき、躁状態の有無や重症度を判断します。本人は自覚が乏しいため、家族や職場からの情報提供が診断の精度を高めます。
また、うつ病と誤診されることも多いため、過去に「異常に元気だった時期」があったかどうかを慎重に聞き取ることが重要です。診断がついた後は、継続的な治療と生活支援が行われます。
薬物療法
主な治療は気分安定薬(リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンなど)です。これらは脳の神経活動を安定させ、躁・うつ両方の再発を防ぐ効果があります。必要に応じて抗精神病薬が併用されることもあります。
薬の効果はすぐには現れず、数週間から数ヶ月かかる場合もあります。副作用や飲み忘れに注意し、医師と相談しながら調整を行うことが大切です。
心理社会的療法
薬物療法に加えて、心理的支援や家族療法が行われます。認知行動療法(CBT)は、思考と行動のパターンを見直し、感情の波をコントロールする訓練として有効です。また、家族療法では、家族が症状を理解し、適切な距離でサポートする方法を学びます。
職場復帰支援やデイケアなどの社会的リハビリも重要で、本人が孤立しないよう環境を整えることが再発防止につながります。
躁状態と社会生活の関わり
躁状態は、家庭・職場・対人関係にさまざまなトラブルを引き起こすことがあります。
家庭内トラブル
躁状態では、家族に対して攻撃的になったり、浪費によって家庭の経済状況を悪化させることがあります。感情の起伏が激しく、家族が混乱するケースも多いです。周囲が「我慢する」だけでは限界があり、専門機関や支援サービスの利用が有効です。
家族も病気を理解し、感情的にならず冷静に接することが大切です。症状が落ち着いた後、信頼関係を再構築するには時間がかかりますが、支援者の介入によって改善は可能です。
仕事への影響
躁状態のときはエネルギッシュに見えますが、実際は集中力や判断力が低下しています。過剰な発言やミスが増え、職場でのトラブルにつながることがあります。自分の能力を過信して過大な計画を立てる傾向もあり、結果的に信頼を損なうこともあります。
職場では、上司や人事が本人の症状を理解し、業務量の調整や休職制度を活用できるよう支援することが求められます。
周囲のサポート体制
家族や友人が躁状態に早く気づくためには、普段からの観察が大切です。言動や睡眠、食事の変化を記録しておくと、早期発見につながります。また、訪問看護や地域支援センターを利用することで、医療と生活の両面から支援が可能になります。
躁状態の再発予防と日常ケア

躁状態は再発率が高いため、日常生活の中でのセルフケアが極めて重要です。
生活リズムの安定化
睡眠・食事・運動のリズムを一定に保つことが最も効果的です。特に睡眠時間の確保は脳の安定に欠かせません。夜更かしやスマホの長時間利用を控え、規則正しい生活を意識します。体内時計が整うことで、神経伝達物質のバランスも回復しやすくなります。医師と相談しながら、無理のない範囲での運動も取り入れるとよいでしょう。
ストレスマネジメント
ストレスは躁状態の最大の引き金です。感情を抑え込むのではなく、信頼できる相手に話したり、リラクゼーションを取り入れることが有効です。音楽や読書、自然とのふれあいなど、心を落ち着ける習慣を見つけましょう。
また、無理な目標設定を避け、余裕を持った生活設計をすることも再発防止につながります。心身のバランスを整えることが、安定した日常を取り戻す第一歩です。
専門機関との連携
定期的な通院と医師とのコミュニケーションを継続することが再発予防の基本です。訪問看護や地域支援を受けることで、薬の管理や生活リズムの調整をサポートしてもらえます。家族や支援者も、症状の初期サインに気づけるよう情報を共有しておくことが大切です。
まとめ
双極性障害の躁状態は、本人の努力だけではコントロールが難しい症状です。しかし、正しい治療と支援によって安定した生活を取り戻すことができます。生活リズムの維持と周囲の理解が回復の鍵です。
躁状態やうつ状態など精神的な不調でお悩みの方は、訪問看護を利用するのも一つの手です。相談をすることが大切なので、ぜひ「訪問看護ステーションくるみ」へご相談ください。地域の医療機関や福祉施設と連携し、あなたの生活を全力でサポートします。
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