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双極性障害で記憶が飛ぶのはなぜ?原因と対処法を徹底解説

2025.11.07 精神科訪問看護とは

双極性障害の治療中に「記憶が飛ぶ」「話した内容を覚えていない」と感じる方は少なくありません。これは単なる物忘れではなく、脳の働きや感情の変動が関係しています。記憶障害が起きる原因には、神経伝達の乱れや薬の副作用、ストレスの影響などが挙げられます。この記事では、双極性障害で記憶が飛ぶ理由とその対処法を、専門的な観点からわかりやすく解説します。

双極性障害と「記憶が飛ぶ」現象の関係

双極性障害を抱える方の中には、「気づいたら時間が過ぎていて、その間の記憶がない」「会話の内容をまったく思い出せない」といった体験をする方が多くいます。これらの現象は、単なる物忘れや不注意ではなく、脳の働きや感情の波と深く関係しています。ここではまず、双極性障害と「記憶が飛ぶ」という現象の関係を明らかにしていきます。

双極性障害で起こる「記憶が飛ぶ」とはどんな状態?

双極性障害の人が経験する「記憶が飛ぶ」とは、過去の出来事を思い出せない、あるいは記憶が部分的に抜けている状態を指します。これは「解離」や「断片的な記憶障害」として表れることが多く、脳の認知機能が一時的に低下しているサインです。

躁状態では活動が過剰になり、注意が分散するため情報が記憶として定着しにくくなります。一方で、うつ状態では脳の働きそのものが低下し、集中力や思考力が落ちるため、記憶の形成が妨げられます。つまり、双極性障害では「覚える力」と「思い出す力」の両方に影響が出やすいのです。

躁状態とうつ状態で異なる記憶の障害

躁状態では、脳が過剰に刺激を受けることで情報の処理速度が速まり、出来事を深く記憶する余裕がなくなります。会話中に複数のことを同時に考えたり、衝動的に行動するため、後で振り返ってもその時の出来事が思い出せないことが多いです。

逆に、うつ状態では脳の働きが鈍くなり、意欲の低下や思考の遅れが生じるため、周囲で起きたことを記憶に残す力が弱まります。このように、躁と鬱の両面で記憶の障害が起きることが、双極性障害特有の特徴です。

認知機能の低下と脳の働きの関係

双極性障害では、「前頭前野」や「海馬」などの記憶や思考を司る脳の領域に機能低下が見られるという研究結果があります。前頭前野は思考の整理や判断に関わり、海馬は新しい情報を記憶に変換する役割を持っています。

これらの部分がストレスや神経伝達物質の乱れにより正常に働かなくなると、記憶力や集中力の低下を招きます。また、長期的に症状を放置すると認知機能全体の衰えに繋がるため、早期に適切な治療を行うことが重要です。

関連記事:双極性障害の末期症状とは?進行の兆候と回避策

双極性障害で記憶が飛ぶ原因

記憶障害の背後には、脳の化学的な変化や生活環境の影響、治療の過程など、複数の要因が関係しています。それぞれの仕組みを理解することが、再発予防や対処法の第一歩です。

脳内神経伝達物質のアンバランス

脳の神経伝達物質であるセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンは、感情や集中力、記憶を司ります。双極性障害ではこれらの物質の分泌バランスが崩れ、脳の情報処理能力が乱れます。

躁状態のときはドーパミンが過剰になり、過集中や衝動的な思考を生じます。一方で、うつ状態ではセロトニンが減少し、意欲や記憶力が落ちる傾向があります。このような化学的不均衡が「記憶が飛ぶ」という現象の根底にあるのです。

薬物療法による副作用の影響

双極性障害の治療では、気分安定薬や抗精神病薬が用いられます。これらは症状の安定化に効果的ですが、体質や用量によっては眠気、注意力の低下、記憶力の鈍化といった副作用を引き起こすことがあります。

特に初期段階では脳が薬に慣れていないため、記憶の抜けや曖昧さを感じる方も多いです。副作用が続く場合は、自己判断で服薬をやめず、必ず主治医と相談して調整を行うことが大切です。

電気けいれん療法(ECT)と記憶障害

重度のうつ状態や薬が効かない場合に行われる電気けいれん療法(ECT)は、症状の改善に高い効果がありますが、一時的に記憶障害を伴うことがあります。特に治療前後の数日間や過去数週間の出来事を思い出せないことがあり、これを不安に感じる人も少なくありません。

しかし、多くのケースでは時間の経過とともに記憶は回復します。医師の説明をよく聞き、必要に応じて家族や支援者と記録を共有することが有効です。

ストレス・睡眠不足による脳機能の低下

慢性的なストレスや睡眠不足は、脳の神経細胞にダメージを与え、記憶形成を阻害します。双極性障害の人は感情の起伏が激しく、日常のストレス耐性も下がりやすいため、特に注意が必要です。

睡眠不足はホルモンバランスを乱し、脳内の修復プロセスを妨げることで、記憶障害を悪化させます。定期的な休息と睡眠リズムの維持は、脳の健康を守る最も基本的な対策です。

双極性障害で記憶が飛びやすい人の特徴

同じ診断を受けていても、記憶障害の程度は人によって異なります。ここでは、特にリスクが高い傾向を紹介します。

躁状態が長引きやすい人

躁状態が続くと脳が常に活性化された状態になり、思考や行動が加速します。その結果、行動の一部が短期記憶として残らず、後になって思い出せないことが増えます。周囲からは「記憶が飛んでいるようだ」と見られることもあり、本人が気づかないケースも多いです。

過去のトラウマや強いストレスを抱える人

過去の心理的ショックやトラウマを持つ人は、無意識にその記憶を封じ込めようとする防衛反応が起きることがあります。この反応が強い場合、現在の出来事まで思い出しづらくなることがあります。双極性障害における記憶の断絶には、このような心理的要素も関係しています。

薬を自己判断で中断してしまう人

症状が落ち着いたと感じて薬をやめてしまうと、脳内の神経伝達物質が急激に変化し、再び躁やうつの波が強く出てしまいます。このような状態の繰り返しは脳への負担を蓄積させ、記憶力の低下を引き起こします。服薬管理は、医師と相談のうえで計画的に行うことが欠かせません。

不規則な生活リズムを送っている人

夜更かしや過食、飲酒など、生活リズムの乱れは脳の修復を妨げます。特に睡眠リズムが崩れると、脳の記憶整理が行われないまま新しい情報が積み重なり、混乱を招きます。規則正しい生活を維持することで、記憶の安定性は大きく向上します。

記憶が飛ぶタイミングとその背景

双極性障害では、記憶が飛ぶ時期や状況に一定の傾向があります。感情の高ぶりやエネルギーの低下、ストレスなどが脳に負担をかけ、情報処理を一時的に遮断してしまうのです。ここでは代表的なタイミングを解説します。

躁状態で興奮が強いとき

躁状態では、脳が常にフル稼働しているような状態になります。アイデアが次々と浮かび、行動が止まらず、思考のスピードが上がる一方で、情報の整理が追いつかなくなります。このため、出来事の記録が脳内にうまく残らず、後から思い出せないことが増えます。

たとえば、買い物や会話の内容、移動経路などをすっかり忘れてしまうことも珍しくありません。興奮の高まりが脳を「記憶より行動優先」にしてしまうため、記憶が飛んだように感じるのです。

うつ状態でエネルギーが極端に低下しているとき

うつ状態では脳の代謝が低下し、記憶を作る力が弱まります。思考が鈍り、集中できず、周囲の出来事を処理する余裕がなくなります。そのため、「人に会ったことは覚えているけど内容が思い出せない」「何もしていない時間が長く感じる」といった感覚を抱きます。

また、うつ状態では自己否定感が強まり、「記憶が抜ける=自分がだめ」と感じやすくなりますが、これは病気の特徴であり、責める必要はありません。

急な感情の変化やストレスを受けたとき

強いストレスや衝撃的な出来事に直面したとき、人の脳は「防御反応」として一部の記憶を遮断することがあります。

これを「解離反応」と呼び、双極性障害の人では特に起こりやすい傾向があります。職場でのトラブル、人間関係の衝突などが引き金になり、感情の急変とともに記憶が抜けるケースもあります。感情の波が大きいほど、脳の記憶機能は影響を受けやすくなります。

双極性障害で記憶が飛ばないための生活習慣改善法

記憶の安定には、日々の生活リズムを整えることが最も有効です。脳の健康を支える基礎を作ることで、記憶障害を防ぐ力を高められます。

十分な睡眠をとる

睡眠は脳が情報を整理・固定する時間です。眠りが浅いと、短期記憶が長期記憶に移行せず、記憶の抜けが増えます。理想は1日7時間前後の質の高い睡眠。就寝前にスマートフォンやテレビを避け、一定の時間に寝起きする習慣をつけましょう。睡眠が安定することで感情の波も穏やかになり、記憶の維持に良い影響を与えます。

適度な運動を続ける

運動は脳内に「BDNF(脳由来神経栄養因子)」という物質を増やし、神経細胞の働きを強化します。ウォーキングやヨガなどの軽い運動を続けることで、ストレスホルモンが減少し、認知機能が向上します。特に朝の軽い散歩は、体内時計を整え、気分の安定にもつながります。継続が何より大切です。

栄養バランスのとれた食事を心がける

脳の働きを維持するためには、糖質だけでなくタンパク質、ビタミンB群、オメガ3脂肪酸などをバランスよく摂取することが重要です。青魚、ナッツ、緑黄色野菜を意識的に取り入れると良いでしょう。逆に、ジャンクフードや過剰な糖分摂取は脳の炎症を悪化させる可能性があります。食事は「脳の薬」と考えて整えることがポイントです。

アルコールやカフェインの摂取を控える

アルコールは脳の神経伝達を妨げ、記憶を一時的に遮断します。双極性障害の人が摂取すると、気分の波を増幅させる危険もあります。また、カフェインの過剰摂取は睡眠を浅くし、疲労を蓄積させます。完全に禁止する必要はありませんが、控えめにすることで脳への負担を減らせます。

ストレスマネジメントを習慣化する

呼吸法、瞑想、趣味の時間など、心を落ち着かせる習慣を持つことは非常に有効です。ストレスを溜めすぎると感情の波が激しくなり、記憶障害を悪化させるため、日々の小さな解放が大切です。無理に頑張ろうとせず、休む勇気を持つことが安定への第一歩になります。

記憶が飛んだときの対処法と心の持ち方

もし「記憶が飛んでしまった」と感じたときは、焦らず冷静に対処することが重要です。記憶を取り戻すよりも、「今できること」を意識する方が回復を早めます。

メモや日記で記録を残す

出来事を記録することで、記憶の穴を埋める手助けになります。スマートフォンのメモや音声記録でも構いません。短いメモでも「昨日何をしたか」が分かるだけで、安心感につながります。継続的に書くことで、記憶の再構築が促されます。

信頼できる家族や友人に相談する

記憶の抜けを自分だけで抱えると不安が強くなります。信頼できる人に「最近記憶が曖昧で」と打ち明けることで、客観的な情報を得られる場合があります。また、他者からの言葉で出来事を思い出すきっかけになることも多いです。サポートを受けることは弱さではなく、回復の一歩です。

主治医に状況を共有し、治療を見直す

記憶の飛びが頻繁に起きる場合、薬の副作用や症状の変化が関係していることがあります。医師に記録を見せながら相談すると、適切な調整や治療法の変更が可能です。医療者と連携して「今の自分に合う治療」を見つけることが、最も安全な方法です。

焦らずに自分を責めないこと

「覚えていない自分」に対して罪悪感を持つ方もいますが、これは脳の機能的な問題であり、努力不足ではありません。自己否定はストレスを増やし、さらに記憶を悪化させます。「今の自分を受け入れ、ゆっくり整える」ことが回復の鍵です。

専門医に相談する重要性

自己判断では限界があります。記憶の不調を感じたら、早めに医師へ相談することで悪化を防げます。

正確な診断と治療の見直し

記憶障害の背景には、薬の影響、脳機能の変化、ストレスなど複数の要因が隠れています。専門医による正確な診断を受けることで、根本原因を明確にし、効果的な対処ができます。無理に我慢せず、早期の受診を心がけましょう。

副作用の確認と薬の調整

薬の種類や量を調整することで、記憶障害の副作用を軽減できる場合があります。自己判断で服薬を中断すると症状が悪化するため、必ず医師と相談しながら調整を行うことが必要です。

心理療法や認知行動療法の活用

薬だけでなく、心理的なアプローチも重要です。認知行動療法では、感情の波に気づき、考え方の癖を整えるトレーニングを行います。感情のコントロールが身につくことで、記憶の安定にもつながります。

関連記事:双極性障害の末路とは?リスクと回避する具体策を詳しく解説

まとめ

双極性障害による「記憶が飛ぶ」現象は、脳の働きと感情の変化が複雑に絡み合う結果として起こります。しかし、適切な治療と生活改善で多くの方が安定した生活を取り戻しています。焦らず、自分を責めずに、専門家と一緒に取り組むことが大切です。

また、日常生活での支援や服薬管理、心のケアが必要な方は、訪問看護を活用するのも効果的です。

双極性障害でお悩みの方は、ぜひ「訪問看護ステーションくるみ」へご相談ください。大阪市・寝屋川市・守口市・門真市・枚方市を中心に、医師や福祉機関と連携しながら、あなたとご家族を全力で支えます。

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この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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