医療の皮を被った「公金チューチュー」の正体。制度のバグを突く集金ゲームを解剖する。
こんにちは。株式会社Make Careの代表取締役CEOであり、訪問看護ステーションくるみでマーケティングを担当している石森寛隆です。XではHEROと名乗っていますので、もしよろしければフォローください。
先に言っておきます。今日のコラムは、かなり口が悪くなります。 僕のPC画面には今、ある求人広告が映し出されています。特定の社名は出しませんが、そこに並ぶ薄っぺらな文字列を見ていると、ふつふつと怒りが湧き上がってくる。
あまりにイライラしすぎて、こんなポストをしてしまいました。
昨日、田邉さん(@seishinkango)から送られてきたリンクを、じっくり読んだらジワジワと怒りが沸いてイライラが止まらない😡こっちは真面目に精神疾患に向き合って、いろんなトラブルと対峙しながら毎日、必死でやっとるんよ。なんなん。こんなんがいるから色眼鏡で見られ続けるねん。信じられん。
— HERO(株式会社Make Care 代表取締役CEO) (@hero_houkan) December 18, 2025
「精神科特化」を名乗るって、
“軽度だけ受けます”って意味じゃない。むしろ逆で、
重度だろうと逃げない覚悟を示す言葉。訪問看護は医療保険であり、
利用者の選択の自由があって、
断らないのが原則。… https://t.co/37RprbELfD— HERO(株式会社Make Care 代表取締役CEO) (@hero_houkan) December 18, 2025
これは、僕たちが心血を注いでいる「精神科訪問看護」への冒涜であり、日本の社会保障制度をハッキングして私腹を肥やす「医療モドキ」の動かぬ証拠です。あえて成田悠輔氏のような冷徹な視点で、この構造的な「気持ち悪さ」を徹底的に解剖してやろうと思います。
メガネも一緒だしねw
大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象
“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」
平日・土曜・祝日 9:00〜18:00
【日曜・お盆・年末年始休み】
※訪問は20時まで
対応させていただいております。
精神科特化で「軽度専門」という名の職務放棄
まず、その求人には臆面もなくこう書かれています。 「軽度精神障害の方の看護」「身体介護を伴う看護業務、点滴や採血、
入浴介助、営業活動は一切ありません。」
これ、皆さんはどう感じますか? 僕は「ふざけるな」と思いました。 「精神科特化」を看板に掲げながら、「重症者は受けない」「面倒な医療処置はしない」と宣言する。この滑稽さを例えるなら、「『火の用心』の呼びかけはするけれど、実際に火が出ている現場には行かないし、消火活動もしない消防署」のようなものです。
火事現場に行かない消防署に存在意義はあるか?
消防車(看護師免許)は持っている。でも、火(病気やトラブル)には触れたくない。そんな組織に、一体何の存在意義があるのでしょうか。
僕たちは日々、精神疾患の混沌とした現場に向き合っています。 いつ爆発するか分からない感情の波、予期せぬ自傷行為、生活の破綻。それらから逃げず、泥臭く対峙し続けることで、ようやく「看護」という関係性が築ける。
「軽度しか見ない」というのは、ビジネス用語で言えば単なる「チェリーピッキング(いいとこ取り)」に過ぎません。手間がかからず、リスクが低く、それでいて国からの報酬(診療報酬)は満額もらう。そこに「救いたい」という理念など1ミリも存在しません。あるのは、公金をいかに効率よく抜き取るかという、浅ましい計算だけです。
物理法則を無視した「施設内スタンプラリー」の実態
さらに僕の失笑を買ったのが、その「1日の流れ」です。 10時から19時までの間に、7件、8件と訪問が詰め込まれている。
16:00 / 5件目 16:30 / 6件目
「……なんなん、これ。移動時間はどこに消えた?」
30分刻みの訪問スケジュールに隠されたカラクリ
30分刻みのスケジュール。これ、普通の訪問看護では物理的に不可能です。 彼らが「どこでもドア」を開発していない限り、答えは一つしかありません。これは、「施設内訪問看護(囲い込みモデル)」です。
自社が運営する、あるいは提携している施設(サ高住や有料老人ホーム)に利用者を詰め込み、看護師を「各部屋を回るスタンプ係」として走らせる。移動コストをゼロにし、30分という「算定の最低ライン」で次々と切り上げる。
彼らがやっているのは「ケア」ではありません。「診療報酬という公金を、タイムカードのように打刻する作業」です。これを看護と呼ぶのは、全国で必死に走り回っている訪問看護師たちへの侮辱です。
経営数字から見る「極悪な生産性」と社会保障費の浪費
ここで、経営者として少し数字の話をしましょう。なぜ彼らがこれほどまでに「軽度」と「施設」にこだわるのか。
売上倍増!!「公金ハッキング」の裏側
精神科訪問看護基本療養費(I)に諸々の加算をつければ、1件あたりの報酬は1万円を超えます。 通常のステーションが、移動を含めて1日4〜5件回るのが限界であるのに対し、この「施設スタンプラリー」モデルで1日8件回ればどうなるか。
通常モデル: 日商 5万円(移動時間という「埋没コスト」が発生する)
スタンプラリーモデル: 日商 8万円〜10万円(移動コストほぼゼロ)
看護師1人あたりの月間売上は、通常100万円〜120万円程度ですが、このモデルなら160万円〜200万円を叩き出せます。しかも「軽度」しか見ないから、緊急訪問の手当も、残業代も、高価な医療機器の維持費もかからない。
一見、効率的なホワイト経営に見えるかもしれません。しかし、その利益の源泉は「本来は手厚いケアが必要な人に向けるべき公金の横流し」です。 看護が必要ないレベルの軽度者に、必要のない頻度で訪問し、診療報酬という「みんなの財布」から金を抜き取る。これを経営努力と呼ぶなら、泥棒も立派な経済活動になってしまう。
こうした事業者が増えれば、当然、国は「精神科訪問看護は儲かりすぎだ」と判断し、全体の報酬単価を下げにかかります。真面目に重症患者を支え、薄利で踏ん張っているステーションが、彼らの強欲のせいで真っ先に潰される。これが、僕がこのモデルを「社会保障のガン」だと断じる理由です。
甘い言葉が招く「看護師キャリアの焼却処分」
そして最後に、一番言いたいこと。 このモデルは、「看護師という専門職のキャリア」をも破壊しています。
「楽して稼げる」求人の代償はあなたの専門性
「医療処置なし」「楽に稼げる」という甘い言葉で看護師を釣る。しかし、そこで数年働いて得られるものは何ですか? アセスメント能力も、危機管理能力も、他職種連携のスキルも身につかない。ただの「御用聞き」として消費され、気づいた時には「他の現場では使い物にならない看護師」が出来上がっている。
これは、尊い人材の「焼却処分」です。
結論:本物だけが生き残る時代へ
僕は、株式会社として利益を最大化することを肯定します。でも、その利益は「社会に対する圧倒的な価値提供」の対価でなければならない。 制度のバグを突いて弱者を食い物にする利益に、価値なんてありません。
こうした「ノイズ」は、いずれ市場と、そして厳格化される制度によって淘汰されるでしょう。その時、彼らが積み上げた砂上の楼閣がどう崩れ去るのか、僕は高みの見物と決め込むことにします。
僕たちは、そんな「まがいもの」には目もくれず、これからも泥臭く、圧倒的な「質」で精神科看護の王道を突き進みます。
信じられるのは、数字と、実績と、現場の汗だけです。 「ヨソはヨソ、ウチはウチ」。 ですが、本気でこの業界を変えたいと思うなら、どちらの側に立つべきかは、もう明白ですよね。
改めて、僕たちはビジョンマップに乗っ取ってこれから先も邁進していきます。




