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【CEOコラム】Vol.066 医療・福祉を「起業エンタメ」にすることへの違和感

HEROさんシリーズくるみの社長エッセイ

こんにちは。株式会社Make Careの代表取締役CEOであり、訪問看護ステーションくるみでマーケティングを担当している石森寛隆です。XではHEROと名乗っていますので、もしよろしければフォローください。

起業エンタメが溢れる時代の中で

最近、SNSやYouTubeを眺めていると、「起業」や「挑戦」をテーマにしたコンテンツが、本当に増えたなと感じます。

誰かが夢を語り、誰かが背中を押し、そして誰かが、それをエンタメとして創造し、それを消費する。

それ自体は、決して悪いことじゃないと思う。
挑戦の物語が誰かの勇気になることも、確かにある。

ただ、そんな流れの中で、
ふと引っかかる瞬間が増えてきた。

それが、医療・福祉という領域まで、同じテンポ・同じ文脈で語られるようになってきたことに要因がある。

そんなことをXにポストしてみた。

なぜ、医療・福祉の語られ方に違和感を覚えるのか

ポストに書いたように、正直に言うと、僕は「令和の虎」や「リアルバリュー」など、いわゆる起業エンタメそのものが嫌いなわけじゃない。
挑戦する人の物語は面白いし、夢を語る姿に胸が熱くなることもある。

ただ、最近になって、医療・福祉という業界が、そうした“起業エンタメ”の文脈で語られる場面を目にするたびに、
どうしても拭えない違和感を覚えるようになった。

あぁ、そうか。
僕が引っかかっているのは、ここなんだな、と気づいて、コラムに綴ることにした。

大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象

“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」

06-6105-1756 06-6105-1756

平日・土曜・祝日 9:00〜18:00 
【日曜・お盆・年末年始休み】

※訪問は20時まで
対応させていただいております。

医療・福祉は「普通の起業」とは構造が違う

医療・福祉は、公費を前提とした事業だ。
利用者は、サービスを自由に選べる立場にないことも多い。

そして何より、事業の失敗や撤退の影響を、真っ先に、そして最も重く受けるのは、現場と利用者だ。

これは、失敗しても撤退しても「自己責任」で完結するスタートアップとは、
構造的にまったく違う。

だから僕は、医療・福祉はどちらかと言えば「社会起業」に近い領域だと思っている。

もちろん、
儲けること自体が悪だと言いたいわけじゃない。
経営が成り立たなければ、理念も現場も守れない。
利益も、成長も、必要だ。

ただし、語り方には、明確な責任が伴う。

「儲けて何が悪い」への違和感の正体

よく聞く言葉がある。
「儲けて何が悪いのか」。

この言葉自体を、僕は否定しない。
問題は、そこじゃない。

僕が引っかかるのは、
何を背負って儲けているのかを語らないまま、
“成功物語”だけが切り出されていく構造だ。

医療・福祉を舞台にして、
・年商
・拡大スピード
・派手なストーリー

だけが消費されていく。

その裏にある、
・制度理解
・人材確保の現実
・継続できなかった場合のリスク
・撤退したとき、誰が困るのか

そういった話は、ほとんど語られない。

結果として、医療・福祉が
「分かりやすく夢を語れるビジネス」としてエンタメ消費されていく。

僕は、そこに強い違和感を覚えている。

発信が悪いわけじゃない。問題は「役割」

ここで誤解してほしくないのは、
僕は「発信」そのものを否定しているわけではない、ということだ。

むしろ、発信は必要だと思っている。

医療・福祉業界の発信には、
・業界の認知を高め
・社会的意義を伝え
・視座やイメージを引き上げる

という役割がある。

一方で、医療・福祉を軸にしながら、経営者として多角的に取り組み、
現実の事業として実装し続ける人たちもいる。

これは、優劣の話じゃない。
役割の違いだ。

問題なのは、
このどちらの役割も引き受けていないのに、
医療・福祉を“消費できる成功物語”として語ってしまうことだ。

精神科訪問看護は、なぜステルス的に発展してきたのか

ここで、訪問看護、特に精神科訪問看護という領域について、もう一つ付け加えておきたい。

この業界は、長らくステルス的に発展してきた会社が多い。

それは決して、広報や宣伝分野のスペシャリストがいなかったから、
という単純な話じゃない。

むしろ僕は、「知られたくなかった」感覚さえあったんじゃないかと思っている。

制度の隙を突いて、荒稼ぎをしてきた人たちにとって、制度の存在や仕組みが広く知られることは、自分たちの首を絞める行為でもある。

知られなければ、
指摘されない。
疑問も持たれない。
制度の隙は、隙のままで居続ける。

だから、誰も積極的に広めようとしなかったし、
業界としても声を上げてこなかった。

それでも、制度は広く知られるべきだ

医療・福祉の制度は、
一部の人がうまく使いこなして儲けるための道具じゃない。

必要な人が、
必要なときに、
必要な範囲で使えるように、
広く世間に共有されるべき社会装置だと思っている。

実際、
制度を知らなかったがゆえに、
本来受けられたはずのサービスを受けられず、
・不必要な入院が長期化したり
・もっと高額な公費が別の形で使われたり

そんなケースは、枚挙にいとまがない。

社会保険料削減という視点から見ても、おかしい

これは、僕らが掲げている
「社会保険料の削減」という考え方と、
明確に矛盾している。

知られていれば防げた支出。
適切に使われていれば抑えられた公費。

それを放置して、制度を「知られないまま」にしておくことは、
結果的に、社会全体の負担を増やしているだけだ。

それでも、経営は必要だ

誤解のないように言っておくと、
僕は「きれいごと」だけで
この業界が回るとは思っていない。

理念だけでは、人も守れない。
想いだけでは、事業は続かない。

だからこそ、
経営は必要だし、
数字も、戦略も、資金も重要だ。

ただし、
医療・福祉の経営は、
静かで、地味で、逃げない覚悟が前提になる。

派手な成功談よりも、
・続けること
・壊さないこと
・誰かの生活を、今日も明日も支え続けること

僕は、医療・福祉を「夢のあるビジネス」にしたいわけじゃない。
逆に、「夢のないビジネス」に見せたいわけでもない。

必要な人に、
必要な支援が、
必要なだけ届く構造を、
ちゃんと社会の中に残したいだけ。

派手に語らなくていい。でも、誤魔化さずに語りたい。

静かに、正確に、逃げずに。
それが、僕がこの業界で発信を続ける理由だ。

この記事を書いた人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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