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【CEOエッセイ】Vol.022 その行為、カスハラです。でも——

2025.04.25 HEROさんシリーズくるみの社長エッセイ

こんにちは。株式会社Make CareのCEOであり、訪問看護ステーションくるみでマーケティングを担当している石森寛隆です。
XではHEROと名乗っていますので、もしよろしければフォローください。

うちの事業所では、「カスハラ(カスタマーハラスメント)対策」の一環として、
独自のチラシをつくって、重要事項説明書ホームページに掲載しています。

訪問看護ステーションくるみにおけるカスハラ・パワハラを防止するポスターです。

「その行為、カスハラです!!」
大きな文字と、少しコミカルなイラストで描かれたこのチラシには、
怒鳴る、暴れる、無断で録音・撮影する、土下座を強要する——
支援者が実際に受けてきた「被害のリアル」が並んでいます。

これはどこかから拾ってきたものではなく、僕自身が監修・構成し、厚生労働省による「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を参考にして作ってもらったチラシです。

訪問看護の現場で働くスタッフの声をもとに、「現場を守るための最低限の線引き」としてつくりました。

大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象

“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」

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カスハラは、確かにある

訪問看護、とくに精神科に特化している現場では、支援者に対する理不尽な言動や圧力が珍しいことではありません。

・話し合いの場で突然怒鳴り声を上げられる
・「そんなこと言っていいの?SNSに書くよ」と脅される
・夜中に何度も電話が鳴り、出なければ「見捨てた」と責められる
・スタッフの顔を無断で撮影され、謝罪を強要される

もちろん、こうした行動のすべてが“悪意から出ている”とは限りません。
精神疾患や依存症、発達特性によって、衝動性や対人不安が高まるなかで起こることもあります。

でも、だからといって、支援者が疲弊し、壊れていいわけではありません。

僕たちは、「支援者だって守られるべき存在だ」という当たり前のことを、もっとはっきり伝えていいと思っています。
それが、このチラシをつくった出発点でした。

線を引く。でも、それで終わらせたくない

チラシをつくって、掲示や説明資料に入れるようになってから、
利用者さんやそのご家族に対して「これは越えてはいけない行為です」と伝えやすくなった。
スタッフの中でも、「これを境界線にしよう」という共通認識が持てるようになった。

実際、現場で困難を抱えていた看護師が、
このチラシを見せながら話をすることで、
利用者さんとの関係が少し落ち着いた例もある。

「守ってもらえてる」と感じることで、安心して働けるようになったスタッフもいた。

けれど、その一方で、僕自身にはずっと引っかかっていた思いがある。

線の“向こう側”にいる人を、誰が見るのか

たとえば、僕たちが「暴言や誹謗中傷は許しません」と掲げたとき。
それは、誰かを“支援の対象”から外すというメッセージにもなりかねない。

実際、ある利用者さんはこう言った。

「じゃあ、怒鳴ったら支援してもらえないってこと?
怒鳴ることしかできへんくらい、しんどいのに?」

この言葉は、僕の胸に刺さった。

僕たちがカスハラとして分類している行為の中には、
“意思疎通の手段”が極端に乏しい状況で、
どうしようもなく噴き出してしまった感情のかたまりもある。

もちろん、どこまでいっても暴力や威圧は容認できない。
でも、「怒鳴ってしまったら即アウト」「情緒が不安定なら即ブラックリスト」
そうやって線引きを厳格にすればするほど、
“いちばん助けを求めている人”が、先に外れてしまうんじゃないかという不安もある。

支援者である前に、人として

線を引くことは、必要だ。
僕たちが健全に働き、続けていくためには、自分たちの安全や尊厳を守らなければならない。
それが守れない支援は、長くは続かない。

でも、その線の向こう側に誰かが立っているとしたら、
「あなたのことは支援できません」とだけ言って、終わってしまっていいのか?

僕は、そうは思わない。

怒りや暴言の背景には、孤独や絶望や、どうしようもない傷があることを、
僕たちは何度も見てきたはずだ。

だから僕たちは、
「線を引くこと」と「見捨てないこと」は両立できる
ということを信じたい。

見捨てない覚悟

「じゃあ、もう支援しなくていいですよね?」

これは、ある支援現場で実際に利用者さんから言われた言葉だ。
その方は、感情の波が大きく、言葉も荒れがちで、こちらの話がまったく届かない日もあった。
支援スタッフは全員が消耗し、交代を重ね、最後には「もう無理かもしれない」と声を漏らしていた。

その状況で、僕たちが一歩引いたときに返ってきたのが、そのひと言だった。

「見捨てられるぐらいなら、最初から期待なんてしなかったのに」

この言葉に、僕は何度も揺さぶられてきた。
もちろん、すべてのケースで支援が続けられるわけじゃない。
心身が限界を迎えているスタッフに無理を強いることはできない。
安全確保ができなければ、支援そのものが破綻する。

でも、それでも、その人の背景にある「信じたかった」「支えてほしかった」という声に、僕はどうしても背を向けきれない。

チラシに書いた「その行為、カスハラです!!」という言葉。
それは、支援者を守るための“盾”であると同時に、
“この先、どう向き合っていくのか”を僕たち自身に問いかける言葉でもある。

カスハラ行為そのものを容認することはできない。
でも、それが「人間そのものを拒絶する理由」になってはいけないと思う。

困りごとの裏にある苦しみ、
怒りの奥にある寂しさ、
暴言の背景にある傷つき——
それらを見ようとし続ける覚悟がなければ、
僕たちは「支援者」ではなくなってしまう。

ときに、僕たちは「支援しないこと」を選ばなければいけないこともある。
でもその判断の奥に、「それでもあなたのことを想っている」というメッセージを、
ほんの少しでも滲ませられるか。
僕たちは、そんな“言葉にならない支援”を重ねている。

線を引くことと、支えること

僕たちは、常に両方の立場に立っている。
「支援する人」であると同時に、「守られるべき人」でもある。
利用者に対して、支援を届ける立場であると同時に、
組織や社会に対しては、自分自身の安全や尊厳を守ってほしいと願う一人でもある。

その狭間で、どれだけの人が揺れているんだろう。
どこまで許すべきか。どこから拒まなければならないか。
この線引きは、毎回、簡単に割り切れるものじゃない。

正直、チラシを作ったときも、迷いはあった。
「こんなふうに“禁止リスト”を並べてしまって、本当にいいのか?」
「これで関係性が壊れたり、信頼を損なったりしないか?」
でも、やっぱり“言葉にしておくこと”は必要だった。

目に見える形で線を引くこと。
それは、ときに相手との距離を生むけれど、
その線を越えようとしないための約束にもなる。

そして大切なのは、その線を壁にしないことだと思ってる。

「ここから先は支援できません」と突き放すのではなく、
「この線は、あなたを傷つけないためのルールでもあるんです」と伝えられること。
その境界線の上に、もう一度小さな橋をかけていくこと。
それが、支援の現場で僕たちが試されている“もう一つの姿勢”なんだと思う。

暴言や暴力に対して毅然とすることと、
人を見捨てないことは、両立できる。

それはきれいごとでも理想論でもなく、
日々、葛藤しながら現場に立つすべての支援者が、
無意識のうちにやっている「ものすごく高度な技」だと思う。

僕たちはそのことを、もっと自覚していい。
もっと誇りにしていい。

「守る」と「支える」。
そのどちらかではなく、両方を諦めないチームでありたい。
このチラシに込めた本当の願いは、そこにある。

その言葉の向こうにあるもの

「その行為、カスハラです。」

この短い言葉に、
どれだけの現場の疲れや、傷や、願いが詰まっているんだろう。

誰かを責めるためじゃない。
誰かを切り捨てるためでもない。
ただ、支援する側の人間も、
同じように心があって、傷ついて、限界がある。
そのことを、忘れないでほしかっただけなんだと思う。

でもその一方で、僕はいつも思ってる。
「その行為はカスハラです」と伝えながらも、
その行為をしてしまうほどにしんどい誰かに、
どうやって関わり続けることができるのか。

現場では、毎日のように揺れ動く。
怒鳴られても、泣かれても、責められても、
「それでも、あなたのことを大切に思っている」と言える強さを持ち続けられるか。
言葉で伝えられなかったとしても、
その姿勢が、背中やまなざしや沈黙に滲んでいくように。

それが、支援という営みの本質なんだと思う。

このチラシをつくったとき、僕は「支援者を守ること」だけを考えていた。
でも今は思う。
本当に守りたいのは、“関係性”そのものなんだって。

線を引いても、心は閉じない。
強くあっても、優しさは失わない。
その矛盾のなかで、僕たちは、今日も誰かのそばにいる。

そして、何より——
僕たちは、ひとりじゃない。

いま、現場で心が折れそうになってる人へ。
線を引くことに疲れてしまった人へ。

もし、もう一度だけその人と関われるなら、
その線の上に、小さな橋をかけてみませんか?

 

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