ギャンブル依存症の家族を見捨てるのは最終手段?後悔しないための選択肢と家族が今できること
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ギャンブル依存症の家族を抱え、絶望に駆られている方も多いのではないでしょうか。ギャンブルにともない繰り返される借金や嘘、信頼の崩壊など、家族が受ける精神的な負担は決して小さいものではありません。
それでも、すべてを諦めてしまう前に、家族としてできることはまだあります。見捨てるという選択を考える前に、本当に必要なサポートは何なのか、どのような距離感で向き合うべきなのかを整理することが大切です。
この記事では、専門家の知見や同じ悩みを経験した家族の声をもとに、現実的で具体的な選択肢を紹介します。
ギャンブル依存症の家族が見捨てる選択に悩む理由

ギャンブル依存症は、個人の問題にとどまらず、その家族に深刻な影響を及ぼします。経済的な困窮、精神的な苦痛、そして家庭内の崩壊といった現実に直面し、多くの家族が心身ともに疲弊しているのが現状です。ここでは、具体的にどのような問題が発生するのかを見ていきましょう。
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経済的な問題|借金と負債の累積
ギャンブル依存症の最も分かりやすい問題の一つが、借金の累積です。はじめは少額の借金から始まり、負けを取り返そうとする「追っかけ」行為によって、雪だるま式に負債が増えていきます。消費者金融からの借り入れに始まり、家族や友人への無心、さらにはヤミ金にまで手を出してしまうケースも少なくありません。
これらの借金は、家族の生活を直接的に脅かします。住宅ローンや教育費、生活費の支払いが滞り、最悪の場合、自己破産や債務整理を検討せざるを得ない状況に追い込まれる場合ももあります。家族の肩代わりにより、一時的に問題が解決したように見えても、依存症が改善されなければ、同じ問題が繰り返される可能性が高いでしょう。
精神的な問題|嘘と裏切り、信頼関係の崩壊
金銭的な問題以上に、家族を深く傷つけるのが、依存症者による嘘と裏切りです。「もう二度としない」「これが最後だから」といった言葉を信じても、ギャンブルは繰り返され、家族は何度も裏切られたと感じます。この繰り返しは、家族の心に深い絶望感、怒り、そして無力感を植え付けます。
また「また嘘をついているのではないか」「何を言っても無駄だ」という不信感が募れば、夫婦間や親子間の信頼関係は崩れてしまうでしょう。依存症者自身も、罪悪感から嘘を重ねる悪循環に陥り、家族とのコミュニケーションは途絶えがちになります。
家族は常に不安や緊張を強いられ、精神的な健康を損なってしまうケースも珍しくありません。
家庭内の問題|暴力、虐待、離婚
ギャンブル依存症は、家庭内の平穏を奪い、深刻な問題を引き起こすことがあります。借金問題や嘘が発覚した際、依存症者が逆上して家族に暴力を振るったり、精神的な虐待を行ったりするケースも存在します。特に、子どもがいる家庭では、子どもの心に深い傷を残し、健全な成長を阻害する要因となりかねません。
また、度重なる問題によって、夫婦関係は修復不可能なほどに悪化し、最終的に離婚に至るリスクも考えられるでしょう。家族が依存症者との関係を断ち切るために、やむを得ず「見捨てる」という選択をせざるを得ない状況になる事例も多くみられます。
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ギャンブル依存症の家族を「見捨てる」という選択
ギャンブル依存症の家族を抱えるなかで「もう限界だ」「見捨てたい」と感じる瞬間は少なくありません。しかし「見捨てる」という言葉の響きには、強い抵抗感や罪悪感が伴うものです。ここでは「見捨てる」という選択が何を意味するのか、そしてその選択がもたらすメリットとデメリットについて、客観的に考えていきましょう。
見捨てることの定義と、その選択をする理由
ギャンブル依存症における「見捨てる」とは、文字通り家族関係を断ち切ることだけを指すわけではありません。多くの場合、依存症者への経済的・精神的支援を停止し、物理的・心理的な距離を取ることを意味します。
家族がこの選択を考えざるを得なくなるのは、度重なる借金、嘘、裏切り、暴力などにより、心身ともに限界に達した時です。自分の人生や他の家族の生活を守るために、最終手段としてこの選択肢が持ち上がります。
見捨てることのメリット
ギャンブル依存症の家族から一定の距離を置くことは、苦しみ続けてきた家族自身を守るための選択肢となる場合があります。大きなポイントは、心身への負担が軽減される点です。慢性的な不安や緊張状態から離れると、精神的な余裕を少しずつ取り戻しやすくなります。
また、借金の肩代わりや金銭的援助から手を離せば、家族自身が経済的に追い込まれる事態を防げます。依存症者を支えようとするあまり生活基盤まで崩してしまうと、結果的に共倒れになりかねません。
距離を取る対策は冷たい判断のように感じられるかもしれませんが、家族が自分の生活と将来を守り、健全な状態を取り戻すための現実的な一歩となる可能性があります。
見捨てることのデメリット
一方で、見捨てるという選択には避けて通れないデメリットもあります。特に注意したいのは、後悔や罪悪感が残る点です。家族を突き放したという思いが、時間が経ってから心の負担となり、長く影響するケースも少なくありません。
また、依存症者が孤立を深め、症状が悪化するおそれもあります。家族とのつながりを失うことで支援につながりにくくなり、状況によっては生活や安全面に深刻な影響が及ぶリスクも考えられるでしょう。
こうした影響は、依存症者本人だけでなく、あなた自身や他の家族との関係にも及ぶ可能性があります。見捨てる判断をする前に、どのようなデメリットがあるのかを冷静に理解しておくことが大切です。
ギャンブル依存症の家族を見捨てる以外の選択肢
ギャンブル依存症の家族を抱え、出口の見えない苦しさの中にいると、見捨てるという選択が頭をよぎることもあるでしょう。それは決して特別なことではなく、限界まで向き合ってきたからこそ生まれる感情です。
ただ、その決断を下す前に、別の道が残されている可能性も知っておいてください。ギャンブル依存症は意思の弱さではなく病気であり、適切な治療や支援につながることで回復を目指せます。
ここでは、家族が無理を重ねることなく、現実的に取れる具体的な行動について解説していきます。今の状況を少しでも変えるためのヒントとして、参考にしてみてください。
治療を促す|専門家への相談
ギャンブル依存症は、個人の意思の弱さではなく、脳の報酬系に異常が生じる精神疾患です。そのため、専門的な治療が不可欠となります。
家族がまずできることは、本人を精神科医や依存症治療専門医といった専門家へつなげることです。本人が治療を拒む場合でも、家族だけでも相談機関に足を運び、専門家から本人への接し方や治療への誘導方法についてアドバイスを受ける方法があります。
早期の相談が、回復への第一歩です。専門家は、依存症者の状態を正確に診断し、薬物療法、認知行動療法、集団療法など、その人に状況に合った治療計画を立ててくれます。
自助グループへの参加
ギャンブル依存症からの回復には、本人だけでなく、家族も孤立しない工夫が大切です。
たとえば、GA(ギャンブラーズ・アノニマス)やNA(ナルコティクス・アノニマス)といった自助グループを活用するのもよいでしょう。これらは、同じ悩みを抱える人々が集まり、経験を分かち合い、支え合う場です。
家族向けの自助グループであるギャマノン(Gam-Anon)やアラノン(Al-Anon)も存在し、家族が自身の苦しみを話し、共感を得ることで精神的な安定を取り戻すことができます。
自助グループへの参加は、一人ではないという安心感を与え、回復への具体的なヒントや長期的なサポートを得る貴重な機会となります。
家族カウンセリングの重要性
ギャンブル依存症は、本人だけでなく家族全体を巻き込む病気です。家族カウンセリングは、家族が依存症に対する理解を深め、適切な対応方法を学ぶうえで効果的です。
カウンセリングを通じて、家族は依存症者との健全な境界線の引き方、感情のコントロール、そして自身の精神的な健康を保つ方法を習得できます。また、共依存関係に陥りやすい家族が、そこから脱却し、自立した関係を築くための手助けもしてくれる点もメリットです。家族自身の回復は、ギャンブル依存症患者そのものの回復にも影響します。
ギャンブル依存症の家族ができる支援と控えたい関わり方
ギャンブル依存症の家族に対して、どのように接すれば良いのか、何をしてはいけないのか、判断に迷うことは少なくありません。ここでは、家族が健全な関係を築き、依存症者本人にも良い影響を与えるための具体的な行動指針を解説します。
境界線を引くことの重要性
ギャンブル依存症の家族と向き合ううえで、特に大切なのが境界線を引くという考え方です。依存症者の問題と家族自身の生活を切り分け、相手の行動によって心身や日常が過度に振り回されないようにするための線引きを指します。
例えば、借金の肩代わりはしない、ギャンブルの話題が出た場合は会話を終える、暴言や威圧的な態度があればその場を離れるなど、あらかじめ対応ルールを決めておく必要があります。さらに、そのルールを感情に左右されず、一貫して守る姿勢も欠かせません。
境界線を設ける対応は、家族自身の心と生活を守る手段であると同時に、依存症者本人が自分の行動と向き合うきっかけにもなります。支える姿勢と、すべてを引き受ける対応は別物だと理解しておくことが重要です。
適切な距離感の維持
精神的、あるいは物理的に適切な距離を保つ姿勢も、共依存を防ぎ、家族自身の生活を守るうえで欠かせません。依存症者の問題に常に感情的に巻き込まれていると、家族が疲弊し、共倒れに陥るおそれがあります。
依存症者の言動に一喜一憂せず、自分の感情を冷静に保つ意識が大切です。状況によっては、一時的な別居など、物理的な距離を置く判断も効果的な手段となります。
適切な距離を確保することで、家族は冷静な視点を取り戻しやすくなり、依存症者に対しても、より現実的で建設的な関わり方を考える余裕が生まれます。
経済的な支援の是非
ギャンブル依存症の家族にとって、経済的な問題は避けて通れません。しかし、借金の肩代わりや、ギャンブル資金となる可能性のある金銭的支援は避けるべきです。
このような支援は、一時的に問題を解決したように見えても、結果的に依存症を悪化させ、依存症者が自身の問題と向き合う機会を奪ってしまいます。「もう二度としないから」という言葉を信じてお金を渡しても、ほとんどの場合、ギャンブルに使われてしまうのが現実です。
経済的な支援は、依存症者の回復を妨げ、家族自身もさらなる苦境に立たせる危険性が非常に高いことを理解してください。
肩代わりと共依存には注意
ギャンブル依存症の家族との関わりで、特に注意したいのが「肩代わり」と「共依存」です。肩代わりとは、依存症者が起こした問題を家族が処理したり、本来負うべき責任を引き受けたりする状態を指します。
例えば、借金の督促電話への対応や職場への虚偽説明なども、肩代わりに該当する行為です。これらは一時的に状況を落ち着かせるように見えても、依存症者が自分の行動の結果と向き合う機会を失わせ、回復を遠ざけてしまいます。
一方、共依存とは、家族が依存症者の問題に過度に関与し、結果として問題行動を支えてしまう関係性です。世話を焼き続けたり、問題解決に奔走したりすることで「自分が支えなければこの人は立ち行かなくなる」という思いが強まり、依存症者の自立を妨げてしまうケースも少なくありません。
知らず知らずのうちに共依存に陥っていないか、家族自身が一度立ち止まり、客観的に振り返る視点が大切です。
ギャンブル依存症を見捨てる前に頼れる場所を見つける

ギャンブル依存症という複雑な問題に一人で立ち向かうことは非常に困難です。しかし、頼れる専門家や相談窓口は数多く存在します。適切なサポートを見つけることが、解決への第一歩となります。
ギャンブル依存症の専門医
ギャンブル依存症は意志の弱さではなく、治療が必要な病気です。そのため、回復を目指すうえでは、専門医による診断と治療が役立ちます。自己判断や家族だけの対応では限界です。専門的な支援を取り入れることが、回復への適切なステップといえます。
依存症を専門とする医師は、脳や心理の仕組みを踏まえながら、薬物療法や認知行動療法などを組み合わせ、依存行動の抑制や精神的な安定を支援します。症状や背景に応じた治療方針が立てられる点も、専門医に相談する大きなメリットです。
また、専門医の受診は本人だけでなく、家族にとっても大きな意味を持つ存在です。病気として正しく理解できるため、感情的な対応を避けやすくなり、今後の関わり方や距離の取り方を冷静に考えられます。無理に説得するのではなく、専門家につなぐ視点を持つことが回復への第一歩です。
精神科医・カウンセラー
ギャンブル依存症は、本人だけでなく家族の心にも大きな負担を与える問題です。精神科医やカウンセラーは、依存症者本人の治療に加え、家族の心のケアや関わり方についても専門的な支援を行います。
カウンセリングを通じて、家族が抱えやすいストレスや不安、怒り、共依存といった問題を整理し、無理のない距離感や対応の方向性を見つけることが可能です。感情を吐き出しながら客観的な視点を得られる点も、大きなメリットといえるでしょう。
家族自身が心身のバランスを保つことは、依存症者と長く向き合ううえで欠かせません。限界を感じる前に、専門家のサポートを活用する選択肢も検討してみてください。
相談窓口リスト(全国対応)
専門家や支援の必要性を感じていても、実際にはどこに相談すればよいのか分からず、立ち止まってしまう方も少なくありません。ギャンブル依存症に関する悩みは一人で抱え込むほど、状況が複雑になりがちです。
そこで、ギャンブル依存症について相談できる公的機関や民間団体の窓口を以下にまとめました。まずは気負わず、今の状況を話してみることから始めてみてください。
- 精神保健福祉センター: 各都道府県・政令指定都市に設置されており、精神科医や保健師が精神的な問題に関する相談に応じています。ギャンブル依存症に関する相談も可能です。
- 保健所: 地域住民の健康に関する相談を受け付けており、ギャンブル依存症に関する情報提供や専門機関の紹介を行っています。
- ギャンブラーズ・アノニマス(GA): ギャンブル依存症者本人のための自助グループです。全国各地でミーティングが開催されており、同じ苦しみを抱える仲間と経験を分かち合い、回復を目指します。
- ギャマノン: ギャンブル依存症者の家族のための自助グループです。家族が抱える悩みや苦しみを共有し、支え合う場となります。
- 消費者ホットライン(188): 借金問題など、消費者トラブルに関する相談を受け付けています。多重債務に陥っている場合は、まずこちらに相談することも有効です。
これらの窓口は、匿名での相談も可能な場合が多く、秘密は厳守されます。一人で抱え込まず、まずは専門家の意見を聞いてみることが、具体的な解決への第一歩となるでしょう。
体験談|私たちが「見捨てる」以外の選択を選んだ理由
ギャンブル依存症の家族の体験談から学ぶこと
ギャンブル依存症の家族と向き合う日々は、大きな負担を伴います。それでも「見捨てる」以外の選択肢を選び、状況を少しずつ変えてきた家族は少なくありません。
ここでは、実際の家族の体験談を紹介します。苦悩や葛藤の中でどのように向き合い、前に進んできたのかを知ることで、今後の行動を考えるヒントが得られるはずです。
体験談1:夫の借金問題と向き合った妻Aさんのケース
夫がギャンブル依存症による多額の借金を抱え、家庭は崩壊寸前の状況でした。何度も嘘を重ねられ、離婚を考えたこともありますが、子どもたちの存在が決断を踏みとどまらせました。
こうしたなか、夫がやめたいと涙ながらに打ち明けてきたことをきっかけに、最後のチャンスだと考え、専門の相談機関に連絡しました。夫は治療に消極的でしたが、家族の将来を考え治療を開始。
私自身も家族カウンセリングを受け、依存症への理解と適切な関わり方を学びました。再発の不安はありましたが、専門家に相談しながら冷静に対応を続けた結果、夫は少しずつ生活態度を改め、仕事や家計にも向き合うようになりました。
この経験から、一人で抱え込まず、専門家の力を借りることの大切さを実感しています。
体験談2:息子との関係を再構築した母Bさんのケース
成人した息子がギャンブル依存症に陥り、貯金の使い込みや借金が発覚したとき、私は強い怒りと悲しみから勘当も考えました。それでも見捨てきれず、まず家族会に参加。そこで同じ立場の親と出会い、共依存や適切な距離の取り方を学びました。
以降は金銭的な肩代わりをやめ、治療と自助グループへの参加を勧める方針に転換。息子は反発しましたが、毅然とした姿勢を保つことで治療に同意しました。
現在、関係は完全ではないものの、落ち着いて会話できる関係を少しずつ取り戻しています。この経験から、支援につなぎ、境界線を守ることが回復への一歩だと実感しています。
まとめ:希望を捨てずに、前に進むために
今回は、ギャンブル依存症の家族を抱える方が直面しやすい苦しみや葛藤、そして「見捨てる」という決断を考える前に取れる選択肢についてお伝えしてきました。深い孤独の中にあっても、あなたは決して一人ではありません。
ギャンブル依存症は意思の弱さではなく、治療と支援を必要とする病気です。苦しんでいるのは本人だけではなく、支える家族も同じです。経済的な問題や精神的な疲弊を抱えながら向き合ってきたあなた自身も、守られるべき存在だといえます。
自分の心と生活を大切にしながら、専門家や支援につながる一歩を踏み出すことが、状況を変えるきっかけになります。無理をせず、できるところから行動を始めてみてください。