解離性同一障害の接し方をわかりやすく解説|無理のない関係づくりのヒント
精神科訪問看護とは
大切な人が解離性同一性障害かもしれないと感じたとき、どのように接すればよいのか分からず、不安や戸惑いを抱える方は少なくありません。
この記事では、解離性同一性障害の基礎知識から、良好な関係を築くために意識したい接し方やコミュニケーションのポイント、周囲としてできるサポートのあり方までをわかりやすく解説します。
解離性同一性障害(DID)を持つ人との接し方の基本

解離性同一性障害(DID)を持つ方との関係を築くうえで、最も大切なポイントは、相手を尊重し、安心できる環境を提供することです。ここでは、良好な関係を築くための基本的な接し方のポイントを具体的に解説します。
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理解と共感を示す
解離性同一性障害のある方と向き合う際は、病気への正しい理解と、当事者が抱える苦しさに寄り添う姿勢が求められます。解離性同一性障害は、強いストレスやつらい体験から心を守るために生じた反応であり、本人にとっては現実の中で起きている深刻な苦痛です。
このような特性を踏まえ、見聞きする言動を否定したり、無理に正そうとしたりせず、当事者の認識や体験を尊重する関わりが重要になります。感情や状態を受け止める姿勢は安心感につながり、信頼関係を築くきっかけとなるでしょう。
病気について学びながら、行動の背景にある思いや事情を理解しようとする姿勢が大切です。
話を丁寧に聞く
解離性同一性障害のある方に安心感をもってもらうためには、当事者の話に丁寧に耳を傾ける姿勢が欠かせません。話の途中で遮ったり、内容を否定したり、すぐに解決策を示そうとせず、まずは最後まで聞く姿勢が大切です。
交代人格が現れた場合も、それぞれの存在を一人の語り手として尊重し、そのときに語られている内容に意識を向けて話を聞きましょう。判断を加えずに受け止める関わりは、当事者に安心感を与え、この場なら自分の気持ちを話しても大丈夫だと感じてもらうきっかけにつながります。
人格を尊重する
解離性同一性障害の大きな特徴は、複数の人格(解離パーツ)が存在する点です。障害に悩む方と接する際は、それぞれの人格の存在を認め、尊重する姿勢が求められます。特定の人格だけを優遇したり、逆に否定したりしないように注意しましょう。各人格にはそれぞれの役割や、抱えている感情、記憶があります。
それぞれの個性を理解しようと努め、対話の際は「今、誰と話しているのか」を意識し、その人格に応じた接し方を心がけることが大切です。すべての解離パーツを尊重する意識が、当事者全体の安定につながります。
本人のペースを尊重する
解離性同一性障害の回復は、非常に個人的で時間のかかるプロセスです。周囲が焦って変化を促したり、回復を急かしたりすることは、当事者にとって大きなプレッシャーとなり、かえって症状を悪化させる可能性があります。
無理に統一を促すのではなく、当事者自身のペースを尊重しましょう。治療や適応には時間がかかることを理解し、長期的な視点を持って、忍耐強く寄り添う姿勢が大切です。焦らず、一歩一歩、共に歩む気持ちで接してください。
安心できる環境を作る
解離性同一性障害のある方を支えるには、安心して過ごせる環境づくりが欠かせません。日常の流れをできるだけ一定に保ち、急な予定変更や大きな変化を避けることで、不安や混乱を和らげやすくなります。
また、精神的な安心感を育むためには、安定した関係性を保ち、継続して信頼を示す姿勢も大切です。秘密を守る、約束を守る、批判や非難を控えるといった関わりは、当事者にとって安心して戻れる居場所につながります。
解離性同一性障害との接し方|避けたい言動と注意したいポイント
解離性同一性障害を持つ方との関係において、良かれと思って行った言動が、かえって相手を傷つけたり、信頼関係を損ねたりするケースも少なくありません。ここでは、特に避けるべき言動について具体的に解説します。
病気やつらさを否定する言動を避ける
解離性同一性障害に対して、症状を気のせいだと片づけたり、単なる気持ちの問題として扱ったりする言動は、当事者に大きな負担を与えます。病気そのものを否定する表現や、努力不足と受け取られかねない言葉は、深い傷となり、不安や孤立感を強めてしまう点にも注意が必要です。
当事者は自分自身も症状に戸惑いながら日々を過ごしており、周囲からの理解を求めています。否定や非難を避け、つらさの存在を認める姿勢が、安心感や信頼関係につながるでしょう。
無理に人格を呼び出そうとする
解離性同一性障害の特性である交代人格に対して、好奇心から注目したり、特定の人格を意図的に呼び出そうとしたりする関わりは、当事者に強いストレスを与えかねません。交代は本人の意思とは関係なく起こる場合が多く、外部からの無理な介入は精神的な負担を増やすおそれがあります。
どの人格が現れていても、その存在を一人の人として尊重し、落ち着いた姿勢で接することが、当事者の安心感につながります。
過去のトラウマを深く詮索する
解離性同一性障害の原因には、過去の深刻なトラウマが関係していることが少なくありません。しかし、当事者の同意なく、あるいは専門家ではない立場で、過去の辛い経験を深く詮索することは避けるべきです。
不用意な詮索は、当事者にとって再トラウマ化のリスクを高め、精神状態を不安定にさせる可能性があります。過去の経験について話すかどうかは、本人の意思とペースを尊重し、もし話してくれたとしても、聞き役に徹しましょう。
信頼を損なう行動を避ける
解離性同一性障害のある方にとって、周囲との信頼関係は安心して日常を過ごすための重要な土台です。信頼が積み重なることで、気持ちの安定や安全感につながります。
一方で、約束を軽く扱ったり、打ち明けられた内容を第三者に伝えたりする行為は、当事者に大きな不安や動揺を与えかねません。関係性に影響を及ぼすおそれもあるため、小さな約束であっても誠実に守る姿勢が求められます。
過度な期待や責任を押し付ける
「早く良くなってほしい」「もっと頑張れば治るはず」といった過度な期待や、能力以上の責任を当事者に押し付けることも避けるべきポイントです。回復には時間がかかり、波があることを理解し、本人のペースを尊重しましょう。
回復を急がせたり、プレッシャーをかけたりすると、かえって当事者の負担となり、症状を悪化させる可能性もあります。無理のない範囲でサポートし、見守る姿勢が大切です。
解離性同一性障害を持つ方とのコミュニケーションのコツ
解離性同一性障害を持つ方とのコミュニケーションは、一見難しく感じるかもしれません。しかし、いくつかのコツを押さえることで、より円滑で安心できる関係を築けます。ここでは、具体的な会話例を交えながら、効果的なコミュニケーション方法をご紹介します。
具体的な会話例
解離性同一性障害を持つ方とのコミュニケーションでは、状況に応じた適切な対応が求められます。特に人格が交代した際や感情が不安定な時、記憶がないと訴えられた時などは、相手に寄り添い、安心感を与える言葉を選ぶことが重要です。以下では、具体的な会話例をシチュエーション別に紹介します。
人格が交代した際
- NG例: 「また別人になったの?」「いつものあなたに戻ってよ」
- 交代人格を否定する言葉は、当事者を混乱させ、傷つける可能性があります。
- OK例: 「こんにちは。あなたは〇〇さん(交代人格の名前)ですか?」「何か困っていることはありますか?」
- 交代人格を尊重し、穏やかに接することで、相手は安心して自己表現しやすくなります。
感情が不安定になった際
- NG例: 「なんでそんなに怒っているの?」「落ち着いてよ、大したことないでしょ」
- 感情を否定したり、軽視したりする言葉は、孤立感や不信感を与えます。
- OK例: 「今、とてもつらい気持ちなのですね」「何か私にできることはありますか?」
- 感情を受け止め、共感を示すことで、当事者は気持ちを整理しやすくなります。
記憶がないと訴えられた際
- NG例: 「昨日話したこと覚えてないの?」「嘘でしょう、そんなはずないよ」
- 記憶がないことを疑う言葉は、当事者を追い詰め、苦しめます。
- OK例: 「そうだったのですね、教えてくれてありがとう」「もし必要なら、私が覚えている範囲でお話ししましょうか?」
- 記憶がないことを理解し、サポートする姿勢を見せることで、信頼関係が深まります。
これらの例のように、相手の状況を理解し、尊重する言葉を選ぶことが、良好なコミュニケーションの第一歩となります。
非言語コミュニケーションの活用
言葉だけでなく、非言語的な要素もコミュニケーションにおいて欠かせません。穏やかな表情、安心させる声のトーン、適切な距離感は、言葉以上に相手に安心感を与える可能性があります。
例えば、相手が不安を感じている時には、焦らず、ゆっくりとした口調で話しかけ、アイコンタクトを取りすぎないように配慮するのも良いでしょう。また、物理的な空間においても、当事者が「安全だ」と感じられるような環境作りを心がけることが大切です。
一貫性のある態度を保つ
解離性同一性障害のある方と関わる場面では、接する側の言動に一貫性を持たせる姿勢が重要です。日によって態度が変わったり、伝える内容にばらつきがあったりすると、当事者は混乱し、不安や不信感を抱きやすくなります。
変わらない理解と共感の姿勢を示し続けることで、当事者は安心して関わりやすくなり、信頼関係の形成につながります。一貫した態度は、この人は自分を理解しようとしてくれていると感じてもらうための基盤となるでしょう。
【立場別】解離性同一性障害との接し方
解離性同一性障害を持つ方との接し方は、関係性によって求められる配慮やサポートの内容が異なります。ここでは、家族、友人、同僚というそれぞれの立場から、具体的に何ができるのかを解説します。
家族としてできること
家族は、解離性同一性障害のある方にとって最も身近で、日常をともに過ごす存在です。その一方で、感情の揺れへの対応や生活上の負担、周囲から十分な理解を得られない苦しさに直面する場面も少なくありません。
家庭が安心できる場所であるかどうかは、本人の安定に大きく影響します。生活のリズムをできるだけ一定に保ち、急な変化を控えると、不安を和らげやすくなるでしょう。
また、感情の表れや言動を否定せず、つらさに耳を傾ける姿勢が信頼関係を支えます。治療面では専門家と連携し、方針を共有しながら支える姿勢が大切です。同時に、家族自身も無理を重ねず、心身を休める意識を持つ必要があります。
友人としてできること
友人として解離性同一性障害のある方と関わる際は、寄り添う姿勢と同時に、無理のない距離感を意識する姿勢が大切です。話を打ち明けてくれたときは、遮らずに耳を傾け、感じている気持ちを受け止める姿勢が安心感につながります。解決策を示そうとせず、話してくれてうれしいという思いを伝えるだけでも、支えになるでしょう。
また、本人が社会とのつながりを保てるよう、体調や気分を尊重しながら外出や趣味に誘うのも一つの関わり方です。断られた場合でも、気持ちを責めずに受け止める配慮が求められます。
必要に応じて相談先の情報を伝えるなど、専門的な支援へつなぐ役割を担う場面もありますが、押しつけにならない言い方を心がけましょう。友人として支える際は、自分自身の心身の負担にも目を向け、無理を感じたときは距離を調整する姿勢も大切です。
同僚としてできること
職場で解離性同一性障害のある同僚と接する場面では、業務面の配慮と周囲の理解が欠かせません。病状に関する情報は非常に繊細なため、本人の同意なく共有したり、詮索したりしない姿勢が信頼関係を守るポイントです。
業務に関しては、上司や人事担当者と連携し、体調や状態に応じた業務量や進め方を検討すると、負担の軽減につながります。休憩を取りやすい環境や、集中しやすい配置も一助となるでしょう。
また、病気を理由に距離を取ったり特別扱いしたりせず、一人の同僚として尊重する態度が安心感を生みます。必要に応じて本人の同意を得たうえで、人事担当者や産業医と情報を共有し、職場全体で支える体制を整える姿勢も不可欠です。精神疾患への理解を深める取り組みを進めると、働きやすい職場づくりにもつながります。
解離性同一性障害との接し方で困ったときの相談先
解離性同一性障害を持つ方との関わりの中で、「どうしたらいいか分からない」「自分も辛い」と感じることは決して珍しくありません。一人で抱え込まず、専門機関や支援グループの力を借りることは、当事者にとっても、支える側にとっても非常に重要です。ここでは、困ったときに頼れる主な相談先をご紹介します。
精神科・心療内科
解離性同一性障害の診断と治療の中心となるのが、精神科や心療内科です。専門医の診察を受けることで、症状の特徴や状態に応じた治療方針が検討されます。
治療は精神療法を軸とし、必要に応じて薬物療法を組み合わせる形で進められるのが一般的です。初めて受診する場合は、解離性障害の診療経験がある医療機関を選ぶと、安心して相談しやすくなります。
カウンセリング機関
精神科医による治療と並行して、臨床心理士や公認心理師によるカウンセリングも効果的です。カウンセリングでは、心の状態を深く掘り下げ、トラウマへの対処法や、感情の調整、対人関係の改善などをサポートします。
当事者だけでなく、家族や周囲の人が、どのように接していくべきかについて相談することも可能です。
精神保健福祉センター・保健所
地域には、精神的な健康に関する相談に応じる公的な窓口として、精神保健福祉センターや保健所があります。これらの機関では、専門のスタッフが無料で相談を受け付けており、適切な医療機関や支援サービスの情報提供、社会資源の活用方法などについてアドバイスを受けることができます。匿名での相談も可能な場合が多いので、気軽に利用してみましょう。
自助グループ・家族会
同じような悩みを持つ当事者やその家族が集まり、経験や感情を共有する自助グループや家族会も大切な支援の場です。ここでは、日々の困りごとや成功体験を分かち合うことで、孤独感が和らぎ、新たな視点や対処法を見つけることができます。互いに支え合い、共感し合える仲間がいることは、大きな心の支えとなるでしょう。
解離性同一性障害をめぐる無理解や偏見への向き合い方

解離性同一性障害に対する社会の誤解や偏見は、当事者だけでなく、その周囲で支える人々にとっても大きな負担となります。しかし、適切な対処法を知ることで、これらの困難を乗り越え、より良い環境を築くことが可能です。
ここでは、周囲の無理解や偏見にどのように向き合い、対処していくべきか具体的な方法をご紹介します。
正しい知識を伝える
偏見は、病気への理解が十分でない状態から生まれやすいものです。解離性同一性障害について周囲に理解を広げるには、正確な情報を分かりやすく伝える姿勢が欠かせません。
専門用語を多用せず、症状の特徴や当事者が感じている負担、望ましい関わり方を具体的に伝えると、受け取る側も理解しやすくなるでしょう。丁寧な説明を重ねることで、誤解や思い込みが和らぎ、偏見の軽減につながります。
無理に理解を求めない
解離性同一性障害について、すべての人に十分な理解を得るのは簡単ではありません。理解が進まない相手に対して、説明を重ねたり、気持ちを分かってもらおうと無理をすると、かえって心の負担が大きくなる場合もあります。
状況によっては距離を調整する選択も、自分や当事者を守る一つの方法です。安心して過ごせる環境を優先し、理解を示してくれる人との関係を大切にする姿勢が、心の安定につながります。
信頼できる人に相談する
周囲からの無理解や偏見に向き合う場面では、一人で抱え続けると心の負担が大きくなりがちです。信頼できる友人や家族に気持ちを打ち明けたり、精神保健福祉士やカウンセラーなどの専門家に相談したりすると、気持ちの整理につながります。第三者の視点や共感に触れることで、心が少し軽くなり、自分に合った向き合い方を見つけやすくなるでしょう。
自身の心の健康を守る
解離性同一性障害のある方を支える立場では、周囲の無理解や偏見に触れ、強いストレスを感じる場面もあります。支援を続けるためには、自分自身の心の状態にも目を向ける姿勢が欠かせません。日常の中で趣味の時間を確保したり、気持ちを落ち着かせる活動を取り入れたり、十分な休息を意識すると、心の負担を和らげやすくなります。
まとめ:解離性同一障害の接し方を通してできること
解離性同一性障害のある大切な人と向き合う際は、正しい理解を持ち、共感をもって寄り添う姿勢が何より大切です。回復までの道のりは人それぞれであり、焦らず本人のペースを尊重しながら関わり続ける姿勢が求められます。
また、支援を一人で抱え込む必要はありません。精神科医やカウンセラーなど専門家の力を借りることで、より安定したサポートにつながります。
長く支え続けるためには、あなた自身の心身の状態にも目を向け、休息や相談を取り入れながら無理のない関わりを心がけましょう。あなたの穏やかな関わりが、当事者にとっての安心につながります。