不眠症は脳の異常が原因?専門家が教える原因と改善策
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不眠が続くと、「もしかして脳の異常が原因なのでは?」と不安に感じる方は少なくありません。日中の集中力低下や倦怠感が重なると、どう改善すべきか分からず、睡眠薬以外の方法を探す方も多いでしょう。
本記事では、不眠症と脳の関係を専門家の知見を踏まえてわかりやすく解説し、根本的な改善につながる具体的な対策も紹介します。
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睡眠を司る脳のメカニズム

私たちの睡眠と覚醒のリズムは、脳に備わった巧妙な仕組みによって調整されています。中心となるのは視床下部・脳幹・松果体といった領域です。
視床下部は眠りと覚醒のバランスを切り替える司令塔として働き、脳幹は覚醒状態の維持を担います。松果体は睡眠ホルモンであるメラトニンを分泌し、体内時計を整えながら自然な眠りを誘う部位です。セロトニンやメラトニン、オレキシンといった神経伝達物質が互いに作用し合い、睡眠サイクルが安定するよう調整しています。
これらのネットワークに乱れが生じると、眠りにつきにくい、途中で目が覚めるなどの不眠症状があらわれることがあります。睡眠は単なる休息ではなく、脳全体が協調して成り立つ繊細なプロセスであることがわかるでしょう。
脳の異常が不眠症を引き起こすメカニズム
不眠症は、単なる生活習慣の乱れだけでなく、脳の具体的な異常も原因の一つです。例えば、神経変性疾患や精神疾患といった脳の機能に影響を及ぼす病態は、睡眠の質を著しく低下させ、慢性的な不眠へとつながる可能性があります。ここでは、これらの疾患が不眠症を引き起こすメカニズムについて詳しく解説します。
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神経変性疾患
アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患は、脳の神経細胞が徐々に失われることで発症し、記憶障害や運動機能障害だけでなく、睡眠にも大きな影響を与えます。これらの疾患では、睡眠を調整する脳の部位(視床下部や脳幹など)がダメージを受けるため、睡眠と覚醒のリズムが乱れやすくなる点が特徴です。
例えば、アルツハイマー病患者では、夜間の覚醒が増加し、日中の過眠が見られるケースが多く、これは睡眠サイクルの調節機能が低下しているためと考えられています。また、パーキンソン病患者では、レム睡眠行動障害(夢の内容が行動として現れる状態)が高頻度で発生し、これが不眠や睡眠の質の低下につながることが知られています。
精神疾患
うつ病、不安障害、統合失調症などの精神疾患は、不眠と深い関わりがあります。これらはセロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質のバランスが崩れることで生じると考えられており、これらの物質は睡眠の調節にも欠かせません。
たとえば、うつ病ではセロトニン系の機能低下によって深い睡眠が減り、中途覚醒が増えるため、強い寝苦しさが続きやすくなります。不安障害では、過剰な心配や緊張が原因で入眠しにくく、睡眠が途切れやすくなる点も特徴です。
精神疾患と不眠は互いに影響し合い、不眠が心の不調を強め、心の不調がさらに眠りを妨げるといった悪循環を生み出すケースも少なくありません。
脳の異常と不眠症を調べる検査方法
不眠症の原因が脳の異常にある可能性を疑う場合、専門医による詳細な検査が必要です。これらの検査は、睡眠の状態を客観的に評価したり、脳の構造的・機能的な問題を発見したりするために行われます。主な検査方法をいくつかご紹介します。
ポリソムノグラフィー(PSG)
ポリソムノグラフィーは、睡眠中の脳波、眼球運動、筋電図、呼吸、心電図、血中酸素飽和度など、複数の生体信号を同時に記録する検査です。一晩入院して行われることが多く、睡眠の質や量、睡眠段階の異常、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠関連呼吸障害、周期性四肢運動障害などを詳細に評価できます。
不眠症の原因が、実は無意識のうちに起きている呼吸停止や体の動きにある場合を特定するのに効果的です。
脳波検査(EEG)
脳波検査は、頭皮に電極を装着し、脳の電気的活動を記録する検査です。脳波のパターンから、てんかんなどの神経疾患や、睡眠中の脳活動の異常を検出できます。不眠症の原因として、脳の興奮状態や覚醒システムの異常が疑われる場合に、その手掛かりを得るために行われることがあります。
頭部MRI・CT検査
頭部MRI(磁気共鳴画像)やCT(コンピュータ断層撮影)は、脳の構造を詳細に画像化する検査です。MRIは脳組織の微細な変化を捉えやすく、脳腫瘍、脳梗塞、脳出血、脳萎縮などの構造的な異常を発見するのに優れています。CTは短時間で広範囲を撮影でき、緊急時や骨の異常の評価に適しており、不眠症の診断にも使われるケースがあります。
これらの検査は、不眠症の診断だけでなく、その背後にある深刻な疾患を見つけるためにも不可欠です。自身の不眠に不安を感じる場合は、早めに専門医に相談し、適切な検査を受けることを検討しましょう。
脳に異常がある場合の不眠症の治療法
脳の異常が不眠症の根本原因である場合、その異常の種類に応じた専門的な治療が不可欠です。ここでは、主要な治療法について解説します。
薬物療法
不眠症に対する薬物療法は、症状の緩和と睡眠の質の改善を目的とします。脳の異常が背景にある場合、その異常自体を治療する薬と、不眠症状を直接的に和らげる薬が併用されるケースがあります。
一般的に使用されるのは、睡眠導入剤(ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系)や、抗うつ薬、抗不安薬などです。これらは脳内の神経伝達物質に作用し、睡眠を促したり、不安や抑うつ症状を軽減することで不眠を改善します。ただし、副作用や依存性のリスクもあるため、医師の指導のもとで適切に使用することが大切です。
認知行動療法
認知行動療法(CBT-I:Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia)は、不眠症に対する非薬物療法として最も効果が確立されている治療法の一つです。薬物療法と異なり、根本的な思考や行動パターンに働きかけることで、患者さん自身が睡眠を改善する力を養います。
具体的には、不眠に関する誤った認識や不安を修正する「認知療法」と、睡眠を妨げる行動を改善する「行動療法」を組み合わせます。睡眠衛生教育、刺激制御法、睡眠制限療法、リラクゼーション法などが含まれ、慢性的な不眠に悩むケースにも効果的です。
その他の治療法
薬物療法や認知行動療法以外にも、不眠症のタイプや脳の異常に応じて、以下のような治療法が検討されることがあります。
- 経頭蓋磁気刺激(TMS):脳の特定の部位に磁気刺激を与え、神経活動を調整することで、うつ病に伴う不眠などに効果が期待されます。
- 光療法:体内時計の乱れが原因で不眠が生じている場合に、特定の波長の光を浴びることで概日リズムを整えます。
- アロマテラピーやハーブ療法:補助的な手段として、リラックス効果のあるアロマやハーブが用いられることもありますが、科学的な根拠は限定的です。
これらの治療法は、医師と十分に相談し、個々の症状や脳の状態に合わせて選択しましょう。
自分でできる不眠症対策:生活習慣の見直し
不眠症の改善には、医療的なアプローチだけでなく、日々の生活習慣を見直すことも大切です。ここでは、今日から実践できる具体的な対策について解説します。
睡眠環境を整える
質の高い睡眠を得るためには、寝室の環境が大きく影響します。まず、温度と湿度を快適に保ちましょう。一般的に、室温は20℃前後、湿度は50~60%が理想とされています。
次に大切なポイントは、光の調整です。寝る前には部屋の照明を暗くし、スマートフォンやPCなどのブルーライトを避けましょう。遮光カーテンを活用して、朝まで光が入らないようにするのも効果的です。
また、音についても留意する必要があります。騒音が気になる場合は耳栓を使用したり、ホワイトノイズを活用したりして、静かで落ち着ける環境を作りましょう。
食事と運動の重要性
日中の食事と運動も睡眠の質に深く関わっています。食事では、就寝前のカフェインやアルコールの摂取は避けましょう。これらは一時的に眠気を誘うことがあっても、深い睡眠を妨げ、夜中に覚醒する原因となります。逆に、トリプトファンを多く含む乳製品やバナナなどは、睡眠ホルモンであるメラトニンの生成を助けるため、夕食に取り入れるとよいでしょう。
運動に関しては、適度な有酸素運動が睡眠の質を高めることが科学的に証明されています。ウォーキングやジョギング、水泳などを日中に30分程度行うのが理想的です。ただし、就寝直前の激しい運動は体を興奮させ、かえって眠りを妨げる可能性があるため避けましょう。夕方までに済ませるのがポイントです。
ストレスを軽減する方法
現代社会では、ストレスが不眠の大きな要因となることがあります。対策としてまず挙げられるのが入浴です。就寝の1~2時間前にぬるめのお湯にゆっくり浸かると、体温がいったん上がり、その後下がる過程で自然な眠気が訪れやすくなります。
また、瞑想やマインドフルネスも効果的です。数分間だけでも呼吸に意識を向けると、心の緊張がほどけやすくなります。寝る前に軽いストレッチや深呼吸を取り入れるのもおすすめです。さらに、日記を書くことでその日の出来事や感情を整理し、頭をクリアに保つことができ、ストレスの軽減にもつながります。
脳の異常による不眠症は何科に相談する?

不眠症の症状が長く続いたり、日常生活に支障をきたしたりする場合は、自己判断せずに専門家への相談を強くおすすめします。不眠症の原因は多岐にわたり、脳の異常が関わっているケースもあるため、適切な診断と治療を受けることが大切です。
まず、不眠症でどの医療機関を受診すべきかですが、主に以下の選択肢があります。
- 精神科・心療内科: ストレスや精神的な問題(うつ病、不安障害など)が不眠の原因となっている場合に適しています。精神的な側面から睡眠障害を診てくれます。
- 睡眠外来: 睡眠障害全般を専門とする医療機関です。不眠症だけでなく、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群など、さまざまな睡眠の問題に対応しています。脳波検査など専門的な検査が可能です。
- 内科: 他の身体疾患(甲状腺機能亢進症、慢性疼痛など)が不眠の原因となっている可能性がある場合や、まずは一般的な健康状態を確認したい場合に受診を検討できます。
初診時には、ご自身の不眠の症状について具体的に伝えることが大切です。いつから、どのような状況で眠れないのか、日中の眠気や倦怠感の有無、服用している薬、既往歴、生活習慣などを詳しく医師に伝えると、より正確な診断につながります。
専門家は、単に睡眠薬を処方するだけでなく、不眠の原因を特定し、薬物療法、認知行動療法、生活習慣の改善指導など、多角的なアプローチで治療計画を立ててくれます。一人で悩まず、質の高い睡眠を取り戻すために、ぜひ専門家の力を借りましょう。
まとめ:質の高い睡眠を取り戻すために
この記事では、不眠の種類や睡眠を司る脳のメカニズム、神経変性疾患や精神疾患がどのように不眠を引き起こすのかを解説してきました。不眠症は単に「眠れない」というだけではなく、脳の働きや精神面の不調、さらには脳の異常が関わる場合もある複雑な状態です。
不眠の背景を明らかにするには、専門的な検査が重要であり、その結果に応じて薬物療法や認知行動療法、生活習慣の改善など、多様な治療法が選択されます。特に、睡眠環境を整えることや、適切な食事・運動、ストレス管理といった日常で取り組める対策は、質の高い睡眠を取り戻すうえで大きな助けになります。
不眠に悩んでいる方は、一人で抱え込まず専門家に相談し、早期に適切なケアを受けることが大切です。健やかな眠りは、心身の健康を支える基盤となります。今日からできる小さな一歩を踏み出し、より充実した毎日を送りましょう。