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大人の知的障害|特徴・診断・仕事での対応と支援制度

2025.10.23 精神科訪問看護とは

知的障害は子どもの頃に診断されることが多いイメージがありますが、実は大人になってから初めて診断される方が増えています。

特に軽度の知的障害の場合、学校では「勉強が苦手な子」として見過ごされ、社会に出てから仕事のミスや金銭管理の困難さなどで初めて気づくケースが少なくありません。

本記事では、大人の知的障害の特徴から、仕事での困難への対応、利用できる支援制度まで、成人期の知的障害について包括的に解説します。適切な理解と支援があれば、知的障害があってもその人らしい充実した生活を送ることが可能です。

大人の知的障害とは?成人期に現れる特徴と課題

大人の知的障害は、18歳以前に発症した知的機能と適応行動の制限が、成人期においても継続している状態です。近年、軽度知的障害の場合、子ども時代には見過ごされ、大人になってから初めて診断されるケースが増えています。

知的障害は、知的機能(IQ)と適応行動の両方に制限がある状態で、IQ70程度以下が目安とされます。しかし、大人の知的障害で重要なのは、IQの数値よりも実際の生活や仕事での困難さです。成人期では、就労、金銭管理、対人関係、家事、育児など、より複雑な社会的スキルが求められるため、子ども時代には目立たなかった困難が顕在化することがあります。

特に軽度知的障害(IQ50-69)の場合、学齢期には「勉強が苦手な子」として見過ごされ、社会に出てから仕事でのミスの多さ、指示理解の困難、金銭トラブルなどから初めて障害の可能性に気づくことがあります。また、環境の変化やストレスにより、うつ病や適応障害などの二次障害を発症し、その治療過程で知的障害が判明することも少なくありません。大人の知的障害を理解し、適切な支援につなげることで、その人らしい自立した生活を送ることが可能になります。

大人になってから診断されるケースの増加

近年、成人期になってから知的障害と診断されるケースが増加しており、その背景にはいくつかの要因があります。

軽度知的障害の場合、子ども時代は家族や学校の保護的な環境により、困難さがカバーされていることが多いです。「おとなしい子」「勉強が苦手だけど真面目な子」として、特別な支援なく学校生活を送ることができます。しかし、社会に出ると、自己判断や臨機応変な対応が求められ、支援なしでは対応困難な場面が増えます。

診断技術の向上も要因の一つです。以前は見逃されていた軽度の知的障害が、詳細な心理検査や適応行動評価により診断可能になりました。また、発達障害への理解が広まったことで、成人期の発達相談が増え、その過程で知的障害が発見されることもあります。

社会の変化も影響しています。現代社会では、IT化により仕事が複雑化し、コミュニケーション能力や問題解決能力がより重視されるようになりました。以前なら単純作業で働けた人も、現在では困難を感じることが増えています。

さらに、精神科受診の敷居が下がったことも関係しています。うつ病、不安障害、適応障害などで受診した際に、背景に知的障害があることが判明するケースが増えています。これらの二次障害は、知的障害による慢性的なストレスや失敗体験の蓄積から生じることが多いです。

境界知能(グレーゾーン)との違い

境界知能(IQ70-84程度)は、知的障害の診断基準は満たさないものの、学習や社会適応に困難を示す状態で、「グレーゾーン」とも呼ばれます。

境界知能と軽度知的障害の違いは、主に適応行動のレベルにあります。境界知能の場合、IQは70を超えていても、学習面での困難はあります。しかし、日常生活スキルや社会性は比較的保たれており、適切な配慮があれば自立生活が可能です。一方、軽度知的障害では、IQが70以下で、かつ適応行動にも明確な制限があります。

実際の生活では、境界知能の人も多くの困難を抱えています。複雑な書類の理解、抽象的な概念の把握、計画立案などに困難があり、仕事でのミスや対人関係のトラブルを経験することがあります。しかし、知的障害の診断基準を満たさないため、福祉サービスの対象外となることが多く、「制度の狭間」に置かれやすいという問題があります。

診断の境界線は明確ではなく、同じ人でも検査時の体調や環境により、IQスコアは変動します。また、適応行動の評価も主観的な要素があるため、医師により判断が分かれることもあります。重要なのは、診断名にこだわるのではなく、その人の困難さを理解し、必要な支援を提供することです。境界知能の場合も、職場での配慮、学習支援、生活スキルトレーニングなどにより、生活の質を向上させることができます。

大人の知的障害の程度別特徴と日常生活

大人の知的障害は、軽度、中度、重度、最重度の4段階に分類され、それぞれ異なる特徴と支援ニーズがあります。成人期では、就労、自立生活、対人関係など、より複雑な課題に直面します。

程度の判定は、IQスコアと適応行動の両方を考慮して行われます。成人期の適応行動評価では、職業スキル、金銭管理、健康管理、余暇活動、社会的責任などが重視されます。同じ程度でも、個人差は大きく、環境や支援の質により実際の生活能力は大きく異なります。

重要なのは、どの程度であっても、適切な支援により生活の質を向上させることが可能だということです。軽度では一般就労も可能ですが、適切な職場環境の選択が重要です。重度でも、福祉的就労や日中活動により、社会参加と自己実現が可能です。成人期の支援では、本人の意思を尊重し、自己決定を支援することが特に重要になります。

軽度知的障害の大人の特徴と生活

軽度知的障害(IQ50-69程度)の大人は、適切な支援があれば、ある程度自立した生活が可能ですが、複雑な判断や抽象的思考に困難があります。

日常生活では、基本的な身辺自立は可能で、食事、入浴、着替えなどは自分で行えます。簡単な調理や洗濯もできますが、献立を考えたり、衣類の適切な管理は困難なことがあります。買い物はできますが、予算管理や計画的な買い物は苦手で、衝動買いや金銭トラブルに巻き込まれやすいです。

就労面では、単純作業や定型的な仕事は可能で、製造業、清掃業、飲食業などで働く人が多いです。しかし、複数の指示を同時に処理したり、優先順位をつけたりすることは困難です。また、暗黙のルールや社会的な「空気」を読むことが苦手で、職場での人間関係に悩むことがあります。

コミュニケーションでは、日常会話は可能ですが、抽象的な話題や複雑な説明の理解は困難です。冗談や皮肉が理解できず、文字通りに受け取ってしまうことがあります。書類の記入や契約内容の理解も困難で、悪質商法の被害に遭いやすいという問題もあります。

社会生活では、公共交通機関の利用は可能ですが、乗り換えや時刻表の理解に困難があることがあります。医療機関の受診はできますが、症状を適切に説明したり、医師の説明を理解したりすることは困難です。結婚して家庭を持つ人もいますが、子育てには支援が必要な場合が多いです。

中度・重度・最重度の大人の特徴と必要な支援

中度以上の知的障害の大人は、生涯にわたる継続的な支援が必要ですが、適切な支援により充実した生活を送ることができます。

中度知的障害(IQ35-49程度)の大人は、日常生活の多くの面で支援が必要です。身辺自立は部分的に可能ですが、質の面で支援が必要です。例えば、服は着られても季節に合った選択ができない、歯は磨けても磨き残しが多いなどです。簡単な家事は可能ですが、段取りや時間配分は困難です。就労は、福祉的就労(就労継続支援B型事業所など)が中心で、パン作り、清掃、リサイクル作業などの作業を行います。グループホームでの生活が適切な場合が多く、世話人の支援を受けながら地域生活を送ります。

重度知的障害(IQ20-34程度)の大人は、生活全般にわたる支援が必要です。言語は単語や二語文程度で、要求の表現は可能ですが、複雑なコミュニケーションは困難です。身辺自立は部分的で、食事、排泄、更衣などに介助が必要です。日中は生活介護事業所で、創作活動、軽作業、レクリエーションなどに参加します。施設入所やグループホームでの生活が一般的で、24時間の支援体制が必要です。

最重度知的障害(IQ20未満)の大人は、全面的な介護が必要です。言語理解・表出は極めて限定的で、基本的欲求の表現程度です。身体機能の障害を合併することが多く、医療的ケアが必要な場合もあります。しかし、音楽を楽しむ、好きな人に反応するなど、その人なりの表現があり、生活の質を高める支援が重要です。

大人の知的障害が仕事で直面する困難と対応

大人の知的障害者が仕事で直面する困難は多岐にわたりますが、適切な配慮と支援により、多くの人が就労を継続できます。職場での理解と環境調整が、成功の鍵となります。

知的障害者の就労における困難は、仕事内容の理解、作業の遂行、対人関係、時間管理など様々な面で現れます。しかし、これらの困難は、本人の努力不足ではなく、障害特性によるものです。適切な支援があれば、多くの知的障害者が貴重な労働力として活躍できます。

企業側のメリットも大きく、知的障害者は、適性に合った仕事では高い集中力と正確性を発揮することが多いです。また、真面目で誠実な勤務態度は、職場の雰囲気を良くする効果もあります。障害者雇用により、企業の社会的責任(CSR)を果たし、多様性のある職場環境を実現できます。重要なのは、障害特性を理解し、個々の能力に応じた業務配分と支援体制を整えることです。

職場で現れる具体的な困難と症状

知的障害者が職場で経験する困難は、認知機能の制限と社会的スキルの未熟さから生じます

指示理解の困難として、複雑な指示や抽象的な説明が理解できません。「適当にやっておいて」「臨機応変に対応して」といった曖昧な指示では、何をすればよいか分かりません。複数の指示を同時に与えられると混乱し、優先順位がつけられません。口頭指示だけでは忘れやすく、メモを取ることも困難な場合があります。

作業遂行の困難として、新しい作業を覚えるのに時間がかかり、通常の何倍もの練習が必要です。手順が変わると対応できず、イレギュラーな事態でパニックになることがあります。ミスに気づきにくく、同じ間違いを繰り返すことがあります。作業速度は遅いことが多いですが、慣れれば一定のペースで正確に行えます。

時間管理の困難として、時間の概念が曖昧で、作業にかかる時間を見積もれません。締切の管理ができず、計画的に仕事を進められません。休憩時間を守れない、始業時間に遅れるなどの問題も生じます。

対人関係の困難として、職場の暗黙のルールが理解できません。上司と同僚の区別、敬語の使い分け、プライベートと仕事の境界などが曖昧です。雑談についていけず、孤立しやすくなります。悪意なく不適切な発言をして、トラブルになることもあります。

仕事を続けるための環境調整と配慮

知的障害者が安定して就労を継続するためには、職場環境の調整と合理的配慮が不可欠です。

業務の構造化として、作業を単純化し、一度に一つのことに集中できるようにします。作業手順を視覚化し、写真や図解付きのマニュアルを作成します。チェックリストを活用し、作業の抜け漏れを防ぎます。定型的な業務を中心に配置し、イレギュラーな対応は最小限にします。

指示の工夫として、具体的で簡潔な指示を心がけます。「この書類を3部コピーして、ホチキスで留めて、田中さんの机に置いてください」のように、具体的に伝えます。一度に多くの指示を与えず、一つずつ確認しながら進めます。重要な指示は文書化し、いつでも確認できるようにします。

時間管理の支援として、タイムスケジュールを視覚化し、時計やタイマーを活用します。作業時間の目安を示し、ペース配分を支援します。定期的な声かけで、進捗を確認します。

対人関係の支援として、ジョブコーチや支援員を配置し、職場での困りごとに対応します。同僚への障害理解を促進し、協力体制を構築します。休憩時間の過ごし方など、職場のルールを具体的に説明します。

物理的環境の調整として、集中しやすい座席配置(壁際、パーティション設置など)を工夫します。視覚的な刺激を減らし、整理整頓された環境を維持します。必要に応じて、クールダウンスペースを確保します。

障害者雇用と一般就労の選択

知的障害者の就労形態には、障害者雇用枠での就労と一般就労があり、それぞれメリット・デメリットがあります

障害者雇用は、従業員43.5人以上の企業に義務付けられている法定雇用率(2.3%)に基づく雇用です。メリットとして、障害への理解と配慮が期待できます。ジョブコーチ支援などの公的支援を受けやすく、職場定着率も高いです。同じ障害を持つ仲間がいることもあり、孤立しにくい環境です。デメリットとして、職種が限定されることがあり、キャリアアップの機会が少ない場合があります。また、「障害者」というレッテルを感じる人もいます。

一般就労は、障害を開示せずに働く、または開示しても一般枠で働くことです。メリットとして、職種の選択肢が広く、キャリアアップの可能性があります。給与水準も障害者雇用より高い傾向があります。デメリットとして、障害への配慮を受けにくく、ストレスが大きくなりやすいです。ミスや困難を「能力不足」と評価され、自己肯定感が低下するリスクがあります。

選択のポイントとして、障害の程度と必要な配慮の内容を考慮します。軽度で配慮が最小限なら一般就労も可能ですが、継続的な支援が必要なら障害者雇用が適切です。本人の希望も重要で、「障害者として」働くことへの抵抗感がある場合は、段階的なアプローチも考えられます。

近年は、障害者雇用でも能力を評価し、昇進の機会を提供する企業が増えています。また、一般就労から障害者雇用への転換も可能で、柔軟な選択ができるようになっています。

大人の知的障害者が利用できる支援制度

大人の知的障害者が利用できる支援制度は多岐にわたり、生活、就労、経済面など、様々な側面から自立を支援します。これらの制度を適切に活用することで、地域での安定した生活が可能になります。

支援制度の利用には、多くの場合、療育手帳の取得が前提となります。療育手帳は、都道府県・政令指定都市が発行する障害者手帳で、知的障害の程度により等級が設定されます。手帳があることで、各種サービスの利用、税制優遇、公共料金の割引などが受けられます。

制度の情報は複雑で、窓口も多岐にわたるため、相談支援専門員のサポートを受けることが重要です。相談支援専門員は、個別のニーズに応じて、利用可能な制度を提案し、申請手続きを支援します。また、制度は頻繁に改正されるため、最新の情報を確認することも大切です。

療育手帳制度と取得のメリット

療育手帳は、知的障害者が各種支援を受けるための基本となる証明書で、多くのメリットがあります

療育手帳の取得手続きは、18歳以上の場合、知的障害者更生相談所で判定を受けます。判定では、知能検査(WAIS-IVなど)と適応行動の評価、生活状況の聞き取りが行われます。等級は自治体により異なりますが、多くは重度(A)と中軽度(B)の2区分、または最重度・重度・中度・軽度の4区分です。

経済的メリットとして、所得税・住民税の障害者控除(本人:27万円、特別障害者:40万円)があります。自動車税・軽自動車税の減免、NHK受信料の減免(全額または半額)も受けられます。公共交通機関では、JR運賃が本人と介護者で50%割引、バス・地下鉄も多くの自治体で割引があります。

福祉サービスの利用では、障害福祉サービス(居宅介護、生活介護、就労支援など)の利用が可能になります。障害者総合支援法に基づくサービスは、手帳がなくても利用可能ですが、手帳があると手続きがスムーズです。

就労面では、障害者雇用枠での就職が可能になり、法定雇用率の対象となります。ハローワークの専門援助部門での支援、職業訓練の優先受講なども受けられます。

その他、公共施設(博物館、動物園、プールなど)の入場料減免、公営住宅の優先入居、携帯電話料金の割引なども受けられる場合があります。

障害年金制度の概要と申請方法

障害年金は、知的障害により日常生活や就労に制限がある人に支給される公的年金で、経済的な自立を支える重要な制度です。

障害基礎年金は、20歳前に障害の原因となった傷病がある場合に支給されます。知的障害は先天性または発達期の障害のため、多くの場合これに該当します。等級は1級(月額約85,000円)と2級(月額約68,000円)があり、1級は日常生活に常時介護が必要なレベル、2級は日常生活に著しい制限があるレベルです。

申請手続きは、20歳になったら市区町村の年金窓口で行います。必要書類は、診断書(精神の障害用)、病歴・就労状況等申立書、療育手帳の写しなどです。診断書は、初診日から1年6か月経過後のものが必要ですが、知的障害の場合は20歳時点のものを使用します。

審査のポイントは、日常生活能力の程度です。食事、清潔保持、金銭管理、通院、対人関係などの能力が評価されます。就労していても、援助や配慮を受けている場合は支給対象となることがあります。

所得制限があり、前年の所得が一定額を超えると、支給停止または減額されます。ただし、本人の所得のみが対象で、家族の所得は関係ありません。

更新手続きは、通常1-5年ごとに必要で、診断書の再提出が求められます。症状が固定している場合は、永久認定となることもあります。

成年後見制度と権利擁護

成年後見制度は、知的障害により判断能力が不十分な人の権利と財産を守る制度で、悪質商法や経済的搾取から保護します

成年後見制度には、法定後見と任意後見があります。知的障害者の多くは法定後見を利用し、判断能力の程度により、後見、保佐、補助の3類型があります。後見は判断能力を欠く状態、保佐は判断能力が著しく不十分な状態、補助は判断能力が不十分な状態が対象です。

申立手続きは、家庭裁判所に対して行います。申立人は、本人、配偶者、4親等内の親族、市町村長などです。必要書類は、申立書、診断書、本人の戸籍謄本、後見人候補者の住民票などです。費用は、申立手数料、鑑定費用、後見人報酬などがかかります。

後見人の役割は、財産管理(預貯金管理、不動産管理、年金受給など)と身上監護(医療契約、施設入所契約、福祉サービス利用契約など)です。ただし、結婚、離婚、養子縁組などの身分行為は代理できません。

メリットとして、悪質商法から守られ、取消権により被害を回復できます。適切な財産管理により、経済的な安定が図れます。必要な契約を適切に行え、サービス利用がスムーズになります。

注意点として、選挙権は保障されますが、一部の資格(会社役員など)に制限があります。後見人報酬が継続的に発生し、経済的負担となることもあります。また、後見人との相性の問題もあり、変更は容易ではありません。

大人の知的障害者のための就労支援サービス

知的障害者の就労を支援する機関やサービスは充実しており、個々の能力と希望に応じた働き方を実現できます。これらのサービスを適切に活用することで、安定した就労と職場定着が可能になります。

就労支援は、一般就労を目指す人から、福祉的就労が適切な人まで、幅広いニーズに対応しています。重要なのは、本人の意欲と能力を適切に評価し、無理のない就労を実現することです。段階的なステップアップも可能で、福祉的就労から一般就労への移行を支援する仕組みもあります。

近年は、障害者雇用に積極的な企業が増え、知的障害者の就労機会は拡大しています。また、テレワークの普及により、通勤が困難な人にも就労の可能性が広がっています。支援機関の連携も進み、切れ目ない支援が提供されるようになっています。

ハローワークと障害者職業センター

公的な就労支援機関は、無料で専門的なサービスを提供し、就職から職場定着まで一貫した支援を行います

ハローワークの専門援助部門では、障害者専門の職業相談員が配置されています。障害者求人の紹介、履歴書作成支援、面接練習などを行います。障害者就職面接会を定期的に開催し、企業と直接面談する機会を提供します。トライアル雇用制度により、3か月間の試用期間を設け、適性を確認してから本採用に移行できます。職場定着支援として、就職後も定期的にフォローアップを行います。

地域障害者職業センターでは、より専門的な支援を提供します。職業評価により、適性、興味、能力を詳細に評価し、適職を提案します。職業準備支援として、12週間程度の通所プログラムで、基本的な労働習慣を身につけます。ジョブコーチ支援では、職場に専門スタッフを派遣し、本人と事業主の両方を支援します。職場復帰支援(リワーク)により、休職中の人の復職を支援します。

これらの機関は連携しており、ハローワークで相談後、必要に応じて職業センターを紹介されることもあります。また、両機関とも、障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所とも連携し、包括的な支援を提供しています。

利用は無料で、療育手帳があればスムーズですが、手帳がなくても医師の診断書があれば利用可能です。

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)

障害者就業・生活支援センター(通称:なかぽつ)は、就業と生活の両面から一体的な支援を提供する機関です。

就業支援として、就職に向けた準備から職場定着まで、継続的にサポートします。職業準備訓練のあっせん、求職活動支援、職場実習の調整などを行います。就職後も、定期的な職場訪問、本人と事業主の間の調整、職場での困りごとの相談に応じます。転職を希望する場合も、キャリアアップを含めた相談が可能です。

生活支援として、日常生活や社会生活上の相談に応じます。生活リズムの確立、金銭管理、健康管理などの支援を行います。住居の確保、余暇活動、対人関係の相談にも応じます。必要に応じて、福祉サービスの利用調整も行います。

センターの特徴は、登録制で長期的な支援を受けられることです。就職前から就職後まで、同じ支援者が継続的に関わるため、信頼関係を築きやすいです。また、企業への支援も行い、障害者雇用のノウハウを提供します。

全国に300か所以上設置されており、各地域の実情に応じた支援を提供しています。地域の関係機関(ハローワーク、福祉事業所、医療機関など)とのネットワークを持ち、連携した支援が可能です。

利用は無料で、登録すれば継続的な支援を受けられます。就労だけでなく、生活全般の相談ができるため、安心して利用できます。

まとめ

大人の知的障害は、18歳以前に発症した知的機能と適応行動の制限が成人期も継続している状態で、近年は成人後に初めて診断されるケースが増えています。特に軽度知的障害は、子ども時代には見過ごされやすく、就労や自立生活で困難に直面して初めて気づくことがあります。

程度別では、軽度は適切な支援で自立生活が可能、中度は継続的な支援が必要、重度・最重度は全面的な支援が必要ですが、どの程度でも適切な支援により充実した生活を送ることができます。

仕事では、指示理解、作業遂行、時間管理、対人関係などで困難がありますが、環境調整と合理的配慮により就労継続が可能です。障害者雇用と一般就労の選択は、個々のニーズと能力に応じて決定します。

支援制度として、療育手帳、障害年金、成年後見制度などがあり、経済的・法的な支援を受けられます。就労支援機関として、ハローワーク、障害者職業センター、なかぽつなどが、就職から職場定着まで継続的にサポートします。

大人の知的障害者も、適切な理解と支援により、その人らしい自立した生活を送ることが可能です。重要なのは、本人の意思を尊重し、能力を最大限に活かせる環境を整えることです。社会全体で知的障害への理解を深め、共生社会の実現を目指すことが求められています。

この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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