強迫性障害とは、大きな不安により特定の行動(手洗いや戸締まりの確認など)を繰り返し、なかなかやめられない精神疾患です。自分の意思とは関係なく症状があらわれるため、日常生活や社会活動に支障をきたす方もいます。
本記事は、強迫性障害の治療法のひとつである「薬物療法」について解説します。また、効果があるとされる薬や漢方薬の紹介や、服用時の注意点についてもまとめました。薬物療法を続けながらの生活に不安がある方は、訪問看護の利用も選択肢のひとつです。
強迫性障害の症状は「強迫観念」と「強迫行為」
強迫性障害の症状としては、以下の「強迫観念」と「強迫行為」の2つが見られます。
症状 | 詳細 |
強迫観念 | 「不合理」かつ「過剰」であるとわかっていながらも、偏った思考が頭から離れないこと |
強迫行為 | 強迫観念から生じた不安を取り除くために繰り返してしまう行動 |
自分で意味のないこととわかっていても、自分ではなかなか強迫行為をやめられないことが特徴です。たとえば、戸締りをしたか不安になり家に戻って何度も確認したり、不吉な数字へのこだわりが異常に強くなったりします。
なかには自分だけでなく、周囲を巻き込んで行動を強要してしまうこともあり、人間関係のトラブルに発展するおそれもあります。症状が強くなると、日常生活や社会活動をスムーズにこなせなくなり、苦痛やストレスを感じ悩む方も少なくありません。
強迫性障害における薬物療法
強迫性障害の治療法は、精神療法と薬物療法がメインです。ここでは、強迫性障害に対して使用される、薬や漢方薬について解説します。
強迫性障害に対しての薬物療法は、強迫観念による強い不安を和らげ、精神療法の効果を高める目的があります。
なお、薬物療法以外の治療法に関しては、こちらの「強迫性障害に対する2つの治し方を解説|自宅で治療するには訪問看護も検討しよう」の記事もあわせてお読みください。
抗うつ薬
強迫性障害の治療に使われる代表的な薬剤は、抗うつ薬のひとつである「選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)」です。うつ病の治療にも使われ、脳内の神経伝達物質である「セロトニン」の分泌量を調節(増やす)する働きがあります。
SSRIにはいくつかの種類があり、主に「パロキセチン」「フルボキサミン」が選択され、両者は保険適用内での服用が可能とされている薬です。
抗精神病薬
SSRIだけでは効果が見られない場合には、強療法として抗精神病薬を併用することがあります。使用される抗精神病薬には、「リスペリドン」や「オランザピン」などがあり、ドパミンを阻害する作用が期待できるとされています。
抗精神病薬以外にも状況に応じて、抗不安薬が選択される場合もありますので、気になる症状がある場合には、正しく医師へ伝えることが大切です。
漢方薬
漢方薬にも、強迫性障害に対して効果があるとされているものがあります。漢方薬は強い不安に対して、気の発散を促したり、自律神経の緊張を和らげたりする作用が有効とされています。
不安やストレスに効果を発揮する漢方薬はさまざまな種類があり、たとえば「桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」「四逆散(しぎゃくさん)」などです。患者さまの状態にあった漢方薬が選択されます。
強迫性障害における薬物療法での注意点
精神病薬や漢方薬のなかには、効果が出るまでに時間がかかる薬もあるため、長期的に服用するケースも多いです。そのとき効果がないからといって、薬を勝手に増やしたり中断したりすることは、治療の経過に支障をきたす原因になりかねません。薬物療法では、医師の指示通り服用することが大切です。
また、薬には少なからず副作用があります。副作用が少ないとのイメージがある漢方薬でも、副作用が出現する可能性はゼロではありません。
たとえばSSRIのパロキセチンには、副作用として吐き気や眠気、混乱などがあります。しかし、副作用の出現や程度には個人差があるため、全くあらわれない方もいます。薬を服用後、気になる症状が見られる場合や、効果が得られず不安を感じる場合などには、早めに医師へ相談しましょう。
強迫性障害には薬物療法が有効|まずは医療機関を受診しよう
強迫性障害では、カウンセリングや精神療法のほかにも、薬物療法が有効とされています。強迫性障害の症状がつらいと感じたり、日常生活に支障をきたしていたりする場合には、精神科や心療内科などの医療機関を受診しましょう。
その後の生活や服薬管理に不安を抱いている方は、訪問看護の利用もおすすめです。『訪問看護ステーションくるみ』は、精神科に特化した訪問看護ステーションです。
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