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【社長エッセイ】Vol.37 私の人生に大きな影響を与えた人 ~病院編2~

2024.10.02 くるみの社長エッセイ精神科訪問看護とは誠子さんシリーズ

大阪市全域を訪問区域とする『訪問看護ステーションくるみ』の代表、中野誠子が綴る『社長エッセイ』第37弾!

 

最近ようやく朝晩が少し涼しくなってきましたね!

私の大好きな秋が近づいてきたなぁ~と、うれしさ100倍の中野です。

秋は体を動かしたり本を読んだり美味しいものを食べたり……嬉しいことがたくさんあって大好きな季節です。

今年こそ京都に紅葉を見にいきたいなぁと企んでいます(笑)。

 

さて、前回に引き続き、私の人生に大きな影響を与えてくれた方との出会いについてお話ししていきます。

今回お話しするのは、療養病棟で一緒に働いたSさんです。

Sさんは精神科慢性期病棟から異動になって不安まみれだった私に笑顔で話しかけてくれた方です。

Sさんからは「患者さんへ向かう姿勢」を教えてもらったと思っています。

 

Sさんの第一印象はとにかく笑顔が素敵ということ。

忙しくてバタバタしているときも、夜勤のときもいつも笑顔で患者さんのところへ行き、優しく声をかけられていました。

看護師以外の方が読むと「当たり前じゃない?」と思うかもしれません。

しかし、異動したばかりで思うように業務や患者さんのお名前を覚えられず不安に押しつぶされそうななか、夜勤もあったりして、日々余裕が持てず必死になって働いていた私にとって「常に穏やかな雰囲気で患者さんに笑顔で接する」Sさんはすごいと思っていました。

 

あるとき、こんな状況を目にしました。

気分に波がありイライラしていることも多く、よく他の患者さんとトラブルになってしまう患者さんがいました。

もちろんスタッフにも表情を変えず返事だけするような、少し気難しい方でした。

でも、そんな患者さんもSさんと関わるときだけは笑顔で話をしている姿を見かけたのです。

 

その患者さんが笑顔で人と関わられている姿を見たのは初めてだったので驚きましたが、どうしても気になり、私はその患者さんのお部屋を担当させていただいた際に思い切ってSさんのことを聞いてみました。

Sさんの名前を出した途端ニコッと微笑み「あの看護師さんはな、いい人やで。いつもどんなときも自分に笑顔で話してくれるからな。病気の人という目で見ないんだよ、あの看護師さんは。それがうれしいね。僕と話してくれてるって思うねん」と仰られました。

その話を聞いて自分を振り返ったとき、自分は病状の観察に重点を置いていたかもしれないと思い、自分に嫌気がさしました。

 

このことを夜勤のときにSさんに話しました。

そうするとSさんから「中野さんは何を大事に看護をしているの?」と聞かれました。

何を大事に……? となりましたが、

「服薬を確実にしていただけるように、症状コントロールできるようにって思ってます。他にもありますけどすぐは出てこない……」と答えると、

「それも大事だけど患者さんの人生について考えたことある? 私たちが見ているのは患者さんの人生の一部。患者さんについて知らないと理解できないかもしれないね」と。

Sさんからのその言葉を聞いたとき、業務優先で看護を考えていた自分に愕然とし悲しくなりました。

 

そんな私の様子を見たSさんは続けて、

「それも大事なのよ。でも大事なのはその人の理解。私はね、重症心身障害児者の子たちと関わってたことがあるの。そこでね、自分の姿勢や気持ちが相手に伝わるって感じたの。そこも気をつけてみていったらいいと思うよ」

と話をしてくださいました。

 

この話で私は衝撃を受けました。

2年以上経って私は何をしてきたんだろうと悲しくなってしまうとともに自分を責めました。

そして「Sさんの看護を見たい!」と、意識をしながらよく見るようにしてみました。

Sさんが患者さんに関わられると、いつも話さない方が自分から話をされていたり、寝たきりの方の表情が緩んでいたりしていました。

いつも笑顔で話しやすい雰囲気を作られている、ということがわかったのです。

 

Sさんとの出会いで「看護は自分が何かをすることが大事だ」と思っていた自分に気づけました。

「それじゃダメだ」と考えながら試行錯誤し、それから少しずつ努力をして今に至ります。

 

私が患者さん、利用者さんと関わるうえで大事にしていることは、Sさんから学んだことが多いです。

私が精神科を辞めると決めてSさんにご挨拶に行ったとき、次の職場の話になり「私、Sさんみたいな看護師さんになりたいから重症心身障害児者施設に行きます」と伝えました。

うれしそうに泣いてくださったのを今でも覚えています。

 

今の自分の看護観を作り上げるなかで精神科で勤務したこの5年間はとても大きくて、学びしかありません。

障がいについては考えても考えても答えが出ずに苦しみましたが、考えても答えがないことに挑む楽しさも知ることができました。

Sさんのように優しい笑顔の看護師さんになれているのかな? といつも自問自答します。

人と人との関わりのなかで生まれる空間、そこで行われるケア、相互作用がお互いを癒やし、さらに笑顔に結びついていくと感じています。

私もいつかSさんのような看護師さんになれるように日々頑張ります!

 

さて、次は重症心身障害児者施設での話になっていきます。

ここの話は濃くなりますよ~!

楽しみにしていてくださいね。

 

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