【社長エッセイ】Vol.62 障害を抱える家族を家でみる中で訪問看護として何ができるのか ~厚生労働省「精神保健福祉の今後の施策推進に関する検討会資料」を読んで~
2025.09.26 くるみの社長エッセイハムさんシリーズ精神科訪問看護とは大阪市全域を訪問区域とする『訪問看護ステーションくるみ』の代表、中野誠子が綴る『社長エッセイ』第62弾!
やっと朝夕は気温が下がり、日が沈むのも早くなってきました。
コーヒーを選ぶときに「そろそろホットにしようかな」と思う瞬間が増え、秋の訪れを感じています。
秋は私の生まれた季節でもあり、美味しいものがたくさん出回る大好きな時期。
しっかり堪能したいと思います。
さて今回は、タイムリーな話題について。
厚生労働省が公開した「精神疾患に係る医療提供体制」に関する資料を目にしました。
精神疾患に係る医療提供体制について
精神疾患に係る医療提供体制について(その2)
福祉新聞には「精神科の入院、強度行動障害は対象外 厚労省、訪問看護で対応」という見出しがあり、「え?どういうこと?」と頭にたくさんのハテナが浮かびました。
頭ごなしに否定するつもりはありませんが、今の地域資源の状態ではどうしても不足が多く、家族の負担が大きすぎると感じたのです。
そこで、厚労省のホームページから約170ページに及ぶ資料を読み、私なりに考えたことをまとめてみます。
大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象
“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」
平日・土曜・祝日 9:00〜18:00
【日曜・お盆・年末年始休み】
※訪問は20時まで
対応させていただいております。
◆地域ケア病棟の役割と課題
資料を読むと、
入院機能の見直しとして、急性期は治療に専念し、ケアミックス病棟は地域移行を担う
そんな役割分担が示されていました。
特に「地域ケア病棟」では短期入所や休息入院を整備していく方向が示されています。
これは大変重要で、ぜひ実現してほしい施策です。
しかし現場を知る立場から言えば、退院支援はやることが膨大で、さまざまな疾患の治療も並行して行うなか、人員が不十分では意味を成しません。
◆家族の負担と訪問看護の限界
強度行動障害など重度の障害をもつ方を地域で支える場合、家族が主体となって見守るケースが大半です。
ショートステイや福祉サービスを活用しても、長時間のケアはどうしても家族にのしかかります。
訪問看護が入れるのは30~90分、週に数回。
家族は自身の老いと子どもの行き場のなさに不安を募らせています。
この状況で訪問看護に期待が高まるのであれば、私たち自身が「訪問看護とは何か」を改めて問い直し、施策も合わせて再構築していく必要があると感じます。
◆地域で支えるために必要なこと
私たちが今できることは何か、日々考えながら仕事をしています。
他サービスとの連携を強化する
地域ケア病棟といつでも連携し、家族の休息や病状悪化時の入院をスムーズに行える体制をつくる
家族が選択できるサービスの幅を増やす
これこそが「地域でみる」ということだと思います。
ただ現実には、多職種での連携は難しく、十分にできていない部分も多いのが現状です。レスパイト(休息)の受け皿があるだけで、家族の安心感は大きく変わるはず。
そのためには、強度行動障害など重度の障害を支えられる看護師の育成が急務です。
◆人材育成と教育の課題
精神科訪問看護の専門性が求められる一方で、現場には精神科勤務経験のない職員も多くいます。
算定研修は受けても、実際の現場経験や知識が不足し、不安を抱えながら訪問しているのが実情です。
この前提で国が施策を語るのであれば、精神科病棟での研修を受けられる仕組みづくり、人材育成に国として関与してほしいと強く思います。
また、精神科訪問看護の役割は広がっており、受診支援や他科の同行訪問まで求められる動きもあります。
今のシステムでは到底まかないきれません。
地域包括ケアを進めるなら、具体的に「何をどう加えるのか」まで議論が必要です。
◆これからの訪問看護に必要な視点
私は訪問看護師として地域で支援するようになり、今年で5年目を迎えます。
病院とは違う視点に今でも戸惑うことがありますが、患者さん・利用者さん・家族を取り巻く環境は常に変化しています。
その流れに柔軟に対応しながら、継続してケアできるステーションでありたい。
そして国の施策を踏まえつつ、「文句」ではなく「今自分にできること」を考え、行動し続けたいと思っています。
今回は少し真面目に書きました。
次はもう少し柔らかいテーマを選ぼうかなと思っています。
