大阪市全域を訪問区域とする『訪問看護ステーションくるみ』の代表、中野誠子が綴る『社長エッセイ』第64弾!
こんばんは。
昨日、区民フェスティバルに訪問看護ステーションくるみとしてブースを出させていただきました。
地域で暮らす方々のさまざまなお話を聞けたり、子どもたちの笑顔を見れたり、地域で生活を支える多職種の方々と交流できたりと、とても有意義な時間でした。
これからも、訪問看護を通して地域貢献を続けていきたいと改めて感じました。
大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象
“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」
平日・土曜・祝日 9:00〜18:00
【日曜・お盆・年末年始休み】
※訪問は20時まで
対応させていただいております。
「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉との出会い
さて、タイトルにもある「ネガティブ・ケイパビリティ」という少し難しそうな言葉。
皆さんは聞いたことがありますでしょうか?
私がこの言葉に出会ったのは、2017年。看護学校で教員をしていた頃です。
当時、精神科の領域責任者として実習先の先生方と挨拶や連携を重ねていました。
ある施設の指導者の方が、こう聞いてこられたのです。
「先生、この言葉知ってる?」
そう言いながら、箒木蓬生(ほうき ほうせい)先生の著書『ネガティブ・ケイパビリティ ―答えの出ない事態に耐える力―』(2017年)を見せてくださいました。
箒木先生は精神科医として多くの著書を出されていますが、この言葉自体はそのとき初めて耳にしました。
その指導者さんは福祉の分野の出身で、看護学生の受け入れにあたり職員教育にも力を入れておられる方でした。
「これを読んでまたご連絡差し上げます」とお伝えし、すぐに本を購入して読み始めたところ、自分の視野がぐんと広がったのを覚えています。
「ネガティブ・ケイパビリティ」とは
この言葉は、詩人ジョン・キーツが残した概念で、
「不確実なものや未解決なものを受け入れる能力」を意味します。
「え?どういうこと?」と思いますよね。
私も最初はそうでした。
そこで箒木先生の本を読みながら、自分なりに思考を整理していきました。
答えを急がず、ただ“そこにいる”という力
人間は、問題が起こるとすぐに「解決しなきゃ」と思うものです。
でも、解決しづらい問題ほど、自分や他人を責めてしまい、考える力まで奪われ、気分が落ち込んでいきます。
そんなときに必要なのが「ネガティブ・ケイパビリティ」です。
「どう解決するか」ではなく、“解決できない状況そのもの”と向き合い、そこに生まれる気持ちや変化を大切にすること。
簡単に言えば、しんどくても、そこにい続けていれば見えてくるものがある。
ということです。
看護師としての気づき
看護師はどうしても「問題解決志向」になりがちです。
それ自体は悪いことではありません。
けれど、精神科の利用者さんや、疾患・障がいを抱える方々と関わるとき、「治すこと」を目的にしすぎると、かえって関係性を難しくしてしまうことがあります。
そんなときこそ、「今起きている状態を、ただ一緒に見つめる」ことが大切だと感じます。
信頼できる同僚や上司、あるいは誰か他者とそのしんどさを共有しながら、“考える時間”を一緒に過ごす。
そこから、新しい気づきが生まれます。
向き合うことで見えてくる、自分の思考のくせ
私もこの本を読んでから、「しんどいことはすぐに解決しようとせず、まず向き合ってみよう」と思えるようになりました。
不思議なことに、そう思うだけで少し気持ちがラクになるんです。
状況を無理に変えようとせず、ただその空間にいること。
すると、自分の思考のクセにも気づけるようになります。
「あ、またこう考えてるな」
「じゃあ、こういう見方もできるかも」
そんなふうに、新しい視点が見えてくるのです。
本を読み終えた私は、すぐにその指導者さんにアポを取り、感じたことを一生懸命にお伝えしました。
「この本を紹介してくださって本当にありがとうございます!」
そう伝えたとき、「先生ならわかってくれると思って勧めたんです」と笑顔で言ってくださった一言。
今でも忘れられません。
それ以来、この本は私の大切な一冊になりました。
今では、悩んでいるスタッフにも読んでもらいながら、一緒に学び直しています。
困ったことが起きたとき、すぐに解決しようとせず、まずは“見つめる”。
その先に、きっと新しい道が見えてくるはずです。