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【社長エッセイ】Vol.64 ポジティブという言葉に拒否感を感じてしまう自分がいる

くるみの社長エッセイ精神科訪問看護とは誠子さんシリーズ

大阪市全域を訪問区域とする『訪問看護ステーションくるみ』の代表、中野誠子が綴る『社長エッセイ』第64弾!

 

急に寒くなってきて、秋が大好きな私は戸惑いを隠せません。

「秋を満喫しよう!」と思い、モンブランを食べましたが、今年の秋は短かったなぁと少し悲しい気持ちになりました。

 

さて、皆さんは「ポジティブ」という言葉をご存じですか?

もちろん知っていますよね(笑)。

もともと心理学の用語で、「肯定的」「前向き」「積極的」といった意味合いを持つ言葉です。

ただ、私はこの「ポジティブ」という言葉が正直あまり好きではありません。

なんなら“拒否感”すらあります。

なぜかというと、私自身がネガティブな思考を持つことが多かったり、少し冷たい人間だと感じるからです。

「ネガティブな感情=悪者」「ポジティブこそ正義」とされる風潮が、どうしても許せないのです。

 

大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象

“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」

06-6105-1756 06-6105-1756

平日・土曜・祝日 9:00〜18:00 
【日曜・お盆・年末年始休み】

※訪問は20時まで
対応させていただいております。

 

「ポジティブになりなさい」と言われるつらさ

たぶん、もっときちんと学べばポジティブの意味づけも変わるのかもしれません。

でも、そこまで学ぶ気力が湧かないほど拒否感があるのです。
数年前に『ポジティブ心理学』という本が流行りましたが、私はそれを見た瞬間、「無理!」と感じてしまいました。

読んでもいないのに(笑)。

 


白黒思考と看護師としての配慮

なぜここまで拒否反応を示すのか。

結局のところ、自分の思考に問題があるのだと思います。
私はもともとネガティブ思考。

 

「ニコニコしながら前向きに!」なんて言われると、まるで自分の存在を否定されているような気がしてしまうのです。

極端かもしれませんが、私は白黒はっきりつけたがる性格。

“ポジティブを求められたら、100%完璧にポジティブでいなければならない”と感じてしまうのです。

 

そんな自分だからこそ、「ポジティブな言葉を使う人」にも拒否感を持ってしまうことがあります。

だからこそ、訪問看護師として利用者さんにかける言葉には、特に気を配るようにしています。

それでも私は人間。完璧ではありません。

だからこそ、自分の言動を振り返りながら、日々自分を見つめ続けています。

 

言葉に囚われる自分に気づく

「ポジティブ」が悪いわけではない。

でもなぜ、こんなにも拒否感が拭えないのか。
それはきっと「ポジティブになりなさい」と言われているように感じてしまうから。

「自分の行動や考え方を変えればうまくいくよ」と言われているような気がして、苦しくなるのです。

ただ、全く前向きに考えられないかというと、そうでもありません。

私は“ポジティブ”という言葉に拒否感があるだけで、前向きに考えようとすること自体はあります。

そう考えると、私は言葉に囚われすぎているのかもしれません。

言葉を大事にしているからこそ、一つひとつに引っかかってしまう。

それもまた、私の性格だと思います。

 

「三百六十五歩のマーチ」に教えられたこと

突然ですが、皆さんは「三百六十五歩のマーチ」という歌をご存じですか?

私と同じ熊本出身の水前寺清子さんの名曲です。
「一日一歩、三日で三歩、三歩進んで二歩さがる」

このフレーズを、かつて病棟のカラオケ大会で患者さんと一緒に歌っていたときのこと。

「ここでしんどかったら下がっても大丈夫なんですね」と話したら、患者さんが「大丈夫、後ろに下がってるんじゃなくて“浮いて進んでる”って思ったら?」と答えてくれたんです。

その言葉に、私は「なるほど!!」と心が軽くなりました。

自分の歩いたあとには花が咲く――。

しんどくても頑張っていこう、そう思いながら今まで歩んできた気がします。

この歌の歌詞、全部が「そうそう! そやねん!」と思えるものばかり。

ぜひ歌詞を見ながら聴いてみてください。

 

他者の力を借りながら生きる

私は自分にない力を、いつも他者から借りています。

自分ひとりでできることには限界があります。
もちろん、誰にでも打ち明けられるわけではありません。

でも、自分のことをよく知ってくれている人に話すことで、少しずつ力をもらえる。

そんなふうに、ネガティブ思考のままでも、今も私は生きています。

皆さんも、無理に思考を変えようとせず、“自分のことを理解してくれる他者”を増やすことから始めてみてください。

そして、時にはその“他者”が看護師でもいいのです。

「しんどい」「どうにかしたいけど、友人が少なくて…」

そんなときこそ、訪問看護を受けてみてください。

人との関係を築く経験を重ねながら、“自分を知ってくれる人”を少しずつ増やしていけたらと思います。

 

私は、きっとこれからも「ポジティブ」という言葉に拒否感を持ち続けるでしょう。

でも、少しずつでもその言葉に近づけるよう、今日も利用者さんと向き合いながら歩いていきたいと思います。

この記事を書いた人

中野誠子

株式会社Make Care 代表取締役社長

中野 誠子

看護師 / (元)重症心身障害児者認定看護師

精神科病棟勤務・看護学校教員として経験を積み、「こころに寄り添う看護」を志す。石森・濱𦚰とともに株式会社Make Careを創業。現在は訪問看護ステーションくるみの代表として現場に立ちつつ、メディアにも積極的に登場し、地域精神医療の啓蒙とアップデートに挑む。

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