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【社長エッセイ】Vol.68 「スルーしろ」って言われても“できてたら”してる。“できない”からしんどいって話

くるみの社長エッセイ精神科訪問看護とは誠子さんシリーズ

大阪市全域を訪問区域とする『訪問看護ステーションくるみ』の代表、中野誠子が綴る『社長エッセイ』第68弾!

 

お子さんのいる利用者さんのお宅へ訪問したときのことです。

何気なく年齢の話になり、私の年齢を伝えると、「ママと同じ歳や」と言われました。

もし私に子どもがいたら、こんなに大きな子がいて、もしかしたら孫がいてもおかしくない年齢なんだなと思い、ゾッとしました。

自分ではまだ若いつもりでいますが、確実に歳を重ねているんだなと実感する出来事が、最近増えています。

「歳をとったな」と感じる瞬間が増えていくのは、ちょっと怖いな、と思う今日この頃です。

 

大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象

“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」

06-6105-1756 06-6105-1756

平日・土曜・祝日 9:00〜18:00 
【日曜・お盆・年末年始休み】

※訪問は20時まで
対応させていただいております。

 

◆「スルーしたらいいやん」と言われても

突然ですが、皆さんは嫌なことを言われたとき、どうしていますか?

私は、つい真剣に聞いてしまって、イライラしてしまいます。

そんな話をすると、決まって友人に言われるのが「スルーしたらいいやん」という言葉。

でも、私の中では“人の話をスルーする”ことに強い抵抗があります。

どんな内容であっても、人の話はきちんと聞くものだと思ってきました。

だからこそ「スルーしたらいいやん」と言われても、「それができたら苦労しないよ」と、心の中で思ってしまうのです。

すると今度は「気にしすぎ」「いちいち反応せんほうがいいよ」と言われる。

きっと、メンタルがしんどい人ほど、こう言われてきた経験があるのではないでしょうか。

でも正直なところ、それができるなら、もうとっくにやっていますよね。

 

◆傷つきやすさは、弱さじゃない

そもそも、傷つきやすい人は「気にしない力が弱い」のではなく、「感じ取る力が強すぎる」だけだと思っています。

空気の変化、声のトーン、ちょっとした言い方、周囲の表情や雰囲気。

そういったものを無意識に拾ってしまうから、人よりも疲れやすくなってしまうのだと思います。

それは決して欠点ではなく、むしろ“高性能なセンサー”を持っている状態なのではないでしょうか。

 

◆精神科の現場で見てきた現実

精神科の現場にいると、こんな声をたくさん聞きます。

「人の目が気になって外に出られない」「SNSの一言で、何日も落ち込んでしまう」

SNSは、顔も知らない人との交流です。

書いた本人はそんなつもりがなくても、文字だけで受け取ることで深く傷ついてしまうことがあります。

そんな人たちに対して「スルーしろ」という言葉は、骨折している人に「走れ」と言うのと同じではないかと、私は思います。

 

◆必要なのは、根性論ではなく「環境」

必要なのは、気合いや根性論ではなく「負担を減らす環境」だと思います。

どうしてもスルーできないなら、SNSを見る時間を減らす、あるいは閲覧範囲を限定する。

人間関係であれば、苦手な人とは距離を取るという選択も、決して悪いことではありません。

でも実際には、

「距離を取ったら何か言われるかもしれない」「嫌われたらどうしよう」

そう思って、なかなか距離を取れない方が多いのも事実です。

けれど、自分にとって心地よくない言葉を浴び続けて、こころが疲弊してしまうのはどう考えてもマイナスです。

自分のこころを守れるのは、自分しかいません。

こころはもう「しんどい」というサインを出しています。

距離を取ってもいいのです。

 

◆訪問看護が大切にしていること

スルーできない自分を変えるより、スルーしなくて済む環境をつくるほうがずっと現実的です。

私たち訪問看護がやっているのも、まさにそれです。

「この人は繊細だから、こう関わろう」「刺激が多すぎないようにしよう」

そうやって環境を調整すると、人は驚くほど安定します。

一人では、自分の気持ちに気づきにくいものです。

だから訪問の際には、利用者さんと一緒に話をしながら、「どうしたら少し楽になるか」を考え、行動につなげていきます。

 

スルーできない人は、弱いわけではありません。

周囲のことを、誰よりも強く感じているだけです。

それは、本来、否定されるものではなく、理解され、守られるべきものだと私は思っています。

「気にしすぎ」と言われてきた人ほど、本当は一番人に優しい人なのかもしれません。

物事の捉え方を少し変えるだけで、こころは少しずつ楽になっていきます。

でも、一人で抱え込むと、どうしても負のループに陥りがちです。

今、もし誰かに「スルーしたらいいやん」と言われて苦しくなっているなら、一度誰かに相談してみてください。

「こんなこと相談したらおかしいかな」と思うかもしれません。

でも、それはおかしいことではありません。

人の話に真剣に向き合ってきた証拠です。

向き合ったからこそ、どうしたらいいかわからなくなっている。

それだけのことです。

環境を少しだけ変えてみる。

それだけでも、こころは変わります。

一気にやろうとしなくて大丈夫です。

少しずつで、十分です。

さて、次は何を書こうかな。

この記事を書いた人

中野誠子

株式会社Make Care 代表取締役社長

中野 誠子

看護師 / (元)重症心身障害児者認定看護師

精神科病棟勤務・看護学校教員として経験を積み、「こころに寄り添う看護」を志す。石森・濱𦚰とともに株式会社Make Careを創業。現在は訪問看護ステーションくるみの代表として現場に立ちつつ、メディアにも積極的に登場し、地域精神医療の啓蒙とアップデートに挑む。

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