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PTSDの人にかける言葉と接し方|安心を伝える方法

2025.10.09 精神科訪問看護とは

PTSDを抱える人にどんな言葉をかければよいのか悩む方は多いものです。何気ない一言が安心につながることもあれば、逆に傷つけてしまうこともあります。本記事では、PTSDの人にかけるべき言葉と避けるべき言葉、適切な接し方や家族ができるサポート、相談先までわかりやすく解説します。

PTSDとは何か

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、外から見ただけでは分かりにくいものの、本人の心身に長期的かつ深刻な影響を及ぼす障害です。強い恐怖体験や衝撃的な出来事がきっかけとなり、その記憶が時間の経過とともに薄れるどころか繰り返し蘇ることが特徴です。

身近な人が正しく理解し、どのように接するべきかを知ることは、当事者にとって安心を得る大きな一歩になります。ここではまず、PTSDの定義や症状、発症の背景、周囲が知っておくべき理解のポイントを整理していきましょう。

PTSDの定義と主な症状

PTSDとは「Post Traumatic Stress Disorder」の略で、日本語では「心的外傷後ストレス障害」と呼ばれます。日常生活では経験しないほど強烈な恐怖体験やショックな出来事を受けた後に発症する精神障害であり、単なる「心の傷」や「気の持ちよう」とは異なります。

典型的な症状としては、突然過去の体験がよみがえるフラッシュバック、繰り返される悪夢、強い不安感、少しの物音でも過敏に反応する過覚醒、人や場所を避けようとする回避行動などが挙げられます。

これらは本人が意識して抑えることが難しく、日常生活や仕事、学業に大きな支障をもたらします。

「なぜ忘れられないのか」と周囲が疑問に思うこともありますが、脳や神経の仕組みが関係しているため、意思の力では制御できないのです。したがって、まずは病気として正しく認識し、偏見を持たないことが大切になります。

発症の原因と背景

PTSDは、特定の人だけがかかる病気ではなく、誰にでも起こり得る障害です。原因となる出来事には、交通事故や自然災害、火災や事件、戦争や犯罪被害など、生命の危険を強く感じる体験が含まれます。

また、単発的なショックだけでなく、長期にわたる虐待やいじめ、家庭内暴力など、慢性的なストレス環境が発症につながることもあります。

同じ体験をしてもPTSDになる人とならない人がいるのは、性格的傾向やそのときのサポート体制、社会的背景の違いが大きく関わるためです。

特に支援が得られにくい状況にある人や孤立した環境に置かれている人は、症状が重くなる傾向があります。そのため「強い人はならない」「特別な人だけが発症する」といった誤解は避けるべきです。誰でも発症し得る障害だからこそ、社会全体で理解し支える姿勢が必要になります。

周囲が理解すべきポイント

PTSDの人を支える上で周囲が理解しておくべき最も重要な点は、本人の意思では症状をコントロールできないということです。「努力不足」「心が弱い」といった評価は誤りであり、かえって症状を悪化させてしまいます。

PTSDは医学的にも精神医学の診断基準に定められた疾患であり、専門的な治療や支援が必要です。

周囲にできることは、安心できる環境を整え、批判ではなく共感を示すこと、そして適切な支援につなげることです。また、「PTSDの人にかける言葉」をどう選ぶかも大切なポイントです。

安心感を与える言葉は回復の力になりますが、無神経な一言が大きな傷になることもあります。だからこそ、理解を深めたうえで言葉や態度を慎重に選ぶことが、支援の第一歩となります。

PTSDの人にかける言葉の基本

PTSDを抱える人に声をかけるとき、最も大切なのは「相手の心に安心を届けること」です。無神経な一言は症状を悪化させる可能性がありますが、反対に適切な言葉は安心感を与え、回復の支えになります。

ここでは「安心や共感を伝える言葉」「回復を支える励ましの言葉」「無理をさせない配慮の言葉」という3つの観点から、具体的にどのような言葉が効果的なのかを解説していきます。

安心や共感を伝える言葉

PTSDの人は「自分は理解されない」「一人で苦しんでいる」と感じやすいため、まずは安心や共感を伝える言葉が必要です。

例えば「ここにいるから大丈夫」「その気持ち、分かるよ」「無理に話さなくてもいいから安心して」という一言は、孤独感を和らげます。

大切なのは、相手を評価するのではなく、気持ちをそのまま受け止める姿勢を言葉にすることです。

「そんなことで悩んでいるの?」と否定するのではなく、「大変だったね」「怖かったね」と共感するだけでも、相手の心は軽くなります

PTSDの人にかける言葉として「安心」と「共感」を繰り返し伝えることは、信頼関係を築き、安心できる環境を整える第一歩になります。

回復を支える励ましの言葉

PTSDの人にとって「未来に希望がある」と感じられることは、回復を支える大きな力になります。そのため「少しずつでも進んでいるね」「昨日より落ち着いているように見えるよ」といった、過程を認める言葉が効果的です。

ただし「頑張れ」という言葉は相手を追い詰める可能性があるため、避けたほうが無難です。

代わりに「一緒に少しずつやっていこう」「あなたの努力を見ているよ」と伝えると、プレッシャーを与えずに安心感を届けられます

励ましの言葉は「結果を求めるもの」ではなく、「過程や存在を認めるもの」であることを意識するのがポイントです。

無理をさせない配慮の言葉

PTSDの人は「周囲に迷惑をかけているのでは」と感じ、無理に行動しようとする場合があります。そのため「無理しなくていい」「今日は休んでも大丈夫」という言葉が非常に有効です。

本人が焦って前に進もうとするよりも、安心して自分のペースを保てることのほうが大切だからです。また「できなくても大丈夫」「今は休むことも必要だよ」と伝えることで、自己否定を和らげられます。

PTSDの人にかける言葉として、無理をさせない姿勢を言葉にすることは、長期的な回復につながる大切な配慮となります。

PTSDの人にかけてはいけない言葉

PTSDの人を支える際には、思いやりのある言葉をかけることが大切ですが、一方で「避けるべき言葉」も存在します。

何気ない一言が相手を傷つけたり、症状を悪化させることがあるため、正しい知識を持って言葉を選ぶことが必要です。

ここでは、特に注意すべき「批判や否定につながる言葉」「気持ちの切り替えを促す言葉」「回復を急がせる言葉」の3つを解説します。

批判や否定につながる言葉

「それくらいで落ち込むなんて」「弱いね」といった否定的な言葉は、本人をさらに追い詰めてしまいます。

PTSDの人はすでに自責の念を強く抱いていることが多く、批判はその思いを強化し、孤立感を深めるだけです。

周囲の人は励ましのつもりでも言ってしまいがちですが、結果的に信頼関係を壊す原因になります。否定や批判は支えになるどころか、症状を悪化させる危険な言葉です

「気持ちの切り替え」を促す言葉

「早く忘れなよ」「気にしなければいい」という言葉は、一見ポジティブに聞こえますが、PTSDの人にとっては大きなプレッシャーになります。

本人は忘れたくても忘れられない状況に苦しんでいるため、その現実を軽視する言葉は「理解されていない」と感じさせてしまいます。

こうした発言は、本人をさらに孤独に追いやる結果となりかねません。「忘れろ」「気にするな」という言葉は、共感ではなく突き放しとして伝わってしまいます

回復を急がせる言葉

「もう大丈夫でしょ」「そろそろ普通に戻れるよ」といった言葉は、相手に焦りや無力感を与えます。回復には時間がかかるのが当然であり、ペースは人それぞれです。

急かす言葉をかけると「期待に応えられない自分は駄目だ」と感じさせ、さらに症状を悪化させるリスクがあります。

回復を急がせる言葉は、安心よりも絶望を与えてしまうため絶対に避けるべきです

PTSDの人への接し方のポイント

PTSDの人を支える際は、言葉選びだけでなく日常の接し方そのものが大きな影響を与えます。相手の気持ちを尊重する姿勢や生活環境への配慮が、安心感を生み、回復を後押しします。

ここでは「相手の気持ちやペースを尊重する」「フラッシュバックやトリガーに配慮する」「無理に話を聞き出さない姿勢」「支援者自身もストレスを抱え込まない」という4つのポイントについて解説します。

相手の気持ちやペースを尊重する

PTSDの人は「周囲の期待に応えなければ」と感じやすく、自分のペースを乱してしまうことがあります。しかし回復は人それぞれであり、急かすことは逆効果です。

「あなたのペースで大丈夫」「無理しなくていいよ」と伝え、相手が安心して行動できる環境をつくることが大切です。

接するときは必ず相手のペースを尊重し、焦らせないことが最優先です。

フラッシュバックやトリガーに配慮する

PTSDの人は特定の音や匂い、場所、話題が引き金となり、強い不安や恐怖に襲われることがあります。そのため「この話題は避けようか?」と事前に確認する、あるいは安全な環境を整える配慮が求められます。

トリガーを無視して日常生活を押し進めることは、再体験症状を強めるリスクがあります。フラッシュバックやトリガーへの細やかな配慮は、信頼関係を築くための必須条件です。

無理に話を聞き出さない姿勢

つい「詳しく教えて」「全部話して楽になった方がいい」と思う人もいますが、これは逆効果です。PTSDの人にとって、過去の体験を語ることは大きな負担であり、再び強いストレスを与える可能性があります。

本人が話したいときに自然に聞き、ただ受け止めることが安心につながります。無理に聞き出すのではなく、本人が話したいときに寄り添う姿勢を持つことが大切です。

家族や支援者もストレスを抱え込まない

PTSDの人を支える家族や友人も、長期間のサポートで強いストレスを感じやすくなります。自分を犠牲にして支え続けると、共倒れになる危険もあります。

専門家や支援機関に相談したり、自分の休養時間を確保することは決してわがままではなく必要な行動です。

支援者自身の心身を守ることが、結果的にPTSDの人を長期的に支える力になります。

家族や身近な人ができるサポート

PTSDを抱える人にとって、家族や身近な人の存在は大きな安心材料となります。医療や専門機関での支援はもちろん重要ですが、日常生活の中で寄り添い支える姿勢が回復の力につながります。

ここでは「安心できる環境を整える」「支える意思を日常的に伝える」「専門家へ早めに相談する」という3つの具体的なサポート方法を解説します。

安心できる環境を整える

家庭や身近な場所が落ち着ける空間であることは、PTSDの人にとって欠かせない支えになります。大きな音を避ける、静かで安全な環境を保つ、無理な予定を入れないといった配慮が役立ちます。

また、日常生活のルーティンを整えることも、本人に安定感を与える要素となります。安心できる環境を整えることは、言葉以上に強力なサポートになります。

支える意思を日常的に伝える

PTSDの人は「自分は孤独だ」「誰にも理解されない」と感じやすいため、日常的に支える意思を伝えることが重要です。「いつでも味方だよ」「あなたのことを大切に思っているよ」といったシンプルな言葉で十分効果があります。

特別な表現でなくても、繰り返し伝えることが孤立感を和らげ、安心感を高めます。小さな声かけを積み重ねることで、本人は安心して日常を過ごせるようになります。

専門家へ早めに相談する

家族や友人だけで支えるのには限界があります。症状が続いている、生活に支障が出ていると感じたら、早めに専門家へ相談することが大切です。

精神科や心療内科、カウンセラーへの相談に加え、地域の保健センターや精神保健福祉センターを活用する方法もあります。専門家に早期につなげることで、適切な治療を受けやすくなり、回復の道を安心して歩めます。

家族だけで抱え込まず、専門家と連携することが長期的なサポートにつながります。

PTSDの相談先と支援制度

PTSDを抱える本人や支える家族にとって、「どこに相談すればよいのか分からない」という悩みは少なくありません。症状が続いて生活に支障をきたしている場合、適切な相談先や支援制度を活用することが、回復に向けた大切な第一歩になります。

ここでは「精神科・心療内科での受診」「保健所や精神保健福祉センター」「公的支援制度の活用」について解説します。

精神科・心療内科での受診

最も基本的な相談先は、精神科や心療内科といった医療機関です。医師による診断のもと、薬物療法や認知行動療法などエビデンスに基づいた治療が受けられます。

早期に受診することで、症状の悪化を防ぎ、安心して生活を取り戻す可能性が高まります。PTSDが疑われる場合は、ためらわず精神科・心療内科を受診することが重要です。

保健所・精神保健福祉センター

地域の保健所や精神保健福祉センターは、無料または低負担で相談できる窓口として利用できます。匿名で相談できる場合も多く、まず「誰かに話してみたい」というときの第一歩として有効です。

必要に応じて医療機関や支援団体につなげてもらえるため、身近な相談窓口として覚えておくと安心です。保健所や精神保健福祉センターは、気軽に相談できる身近な公的窓口です。

公的支援制度の活用

PTSDの症状が長期にわたる場合、医療費や生活面での負担が大きくなることがあります。その際は、自立支援医療制度による医療費助成、精神障害者保健福祉手帳による就労・生活支援、障害年金などの公的制度を利用できます。

これらの制度を適切に活用することで、経済的負担を減らし、治療や生活の継続がしやすくなります。公的支援制度を利用することで、治療と生活を両立しやすくなります。

PTSDと向き合うための心構え

PTSDの回復は一朝一夕に実現できるものではなく、長期的な視点が必要になります。本人だけでなく、支える家族や周囲の人も「焦らず、支え合いながら歩んでいく」という心構えを持つことが大切です。

ここでは「回復は時間を要することを理解する」「周囲のサポートの継続が重要」「自分自身のケアも忘れない」という3つのポイントを解説します。これらを意識することで、無理のない支援を長く続けられるようになり、本人の安心と回復を後押しできます。

回復は時間を要することを理解する

PTSDの回復には、数か月から数年という長い時間がかかる場合があります。治療を受けていても波があり、良くなったり悪化したりを繰り返すことも珍しくありません。

そのため、本人が「まだ治らない」と落ち込んだときに、焦らず寄り添い続ける姿勢が必要です。家族や周囲も「急いで良くならなければ」とプレッシャーをかけるのではなく、「時間をかけても大丈夫」という理解を持つことが支えになります。

PTSDの回復は時間がかかるのが自然であり、焦らず見守る姿勢が重要です。

周囲のサポートの継続が重要

PTSDを抱える人にとって、周囲の継続的な支えは大きな安心感になります。一時的に励まされても、その後放置されると「結局理解されていない」と感じ、孤独感が深まってしまいます

小さな声かけや、変わらない日常の中でのサポートを続けることが信頼につながります。「あなたは一人じゃない」「いつでもそばにいる」と伝え続けることで、本人は少しずつ安心を取り戻せます。

PTSDの支援は短期ではなく、継続的に寄り添い続けることが最も大切です。

自分自身のケアも忘れない

家族や支援者は、本人を支えることに集中するあまり、自分自身の健康や心を犠牲にしてしまうことがあります。しかし支える側が疲れ果ててしまっては、長期的にサポートを続けることはできません。

専門家や支援機関を頼る、気分転換の時間をつくる、同じ立場の人とつながるなど、自分を守る方法を取り入れることが重要です。支援者自身が元気であることが、本人にとって最大の支えにもなります。

支援する側もセルフケアを意識し、自分を大切にすることが長期的な支援の鍵です。

まとめ

PTSDの人にかける言葉は、相手の心に安心を与える大切な支えになります。「無理しなくて大丈夫」「ここにいるから安心して」といった共感や配慮の言葉は回復を後押ししますが、「早く忘れなよ」「もう平気でしょ」といった否定や焦らせる言葉は逆効果です。

周囲が正しい理解を持ち、安心できる環境を整え、専門家や支援機関の力を借りながら長期的に寄り添うことが、PTSDと向き合ううえで何より重要です。

この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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