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【CEOコラム】Vol.057 会社は人の人生を所有しない。

HEROさんシリーズくるみの社長エッセイ

定年を65歳に引き上げた理由と、引き留めなかったという選択

こんにちは。株式会社Make Careの代表取締役CEOであり、訪問看護ステーションくるみでマーケティングを担当している石森寛隆です。XではHEROと名乗っていますので、もしよろしければフォローください。

今回は、定年制度の話を書こうと思います。
ただし、これは就業規則の解説でも、採用広報でもありません。

「会社は、人の人生を所有しない。」

この言葉は、僕たち経営者にとって、時に厳しく、しかし常に誠実であるべき姿勢を問いかけます。

人手不足が叫ばれる現代、定年延長は多くの企業にとって単なる「人材確保の手段」となりがちです。
当社も定年を65歳に引き上げましたが、それは誰かを囲い込むためではありませんでした。

先月、あるベテラン看護師が定年を機に退職されました。
まだまだ現役で活躍できる人材です。
正直、引き留めたい気持ちはありました。
しかし、僕たちはある選択をしました。
なぜ引き留めなかったのか? そして、定年延長の裏に隠された真の意図とは?

今回は、制度論ではなく、「会社と人生」というテーマで、一人の経営者としての僕なりの覚悟を綴ろうと思います。

大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象

“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」

06-6105-1756 06-6105-1756

平日・土曜・祝日 9:00〜18:00 
【日曜・お盆・年末年始休み】

※訪問は20時まで
対応させていただいております。

定年退職を迎えた、ある看護師さんの話

60歳定年・65歳まで再雇用という制度の中で

先月末、ある看護師さんが定年を迎え、退職されました。
くるみでは、60歳定年・65歳まで再雇用制度あり、という規定があります。
その中での、いわゆる「定年退職」です。

ただ、その退職は、
年齢で区切られた“終わり”とは、少し違う意味を持っていました。

「定年を機に、新しい人生を歩みたい」

本人は、こう話してくれました。

「定年を機に、新しい人生を歩みたいと思いました」
「看護人生の中で、やり残したことがあるんです」
「これからは、ボランティアにも、もっと時間を使いたい」

その言葉を聞いたとき、
胸の奥が、静かに、でも確かに熱くなりました。

正直に言えば、引き留めたい気持ちはあった

正直に言えば、引き留めたい気持ちはありました。
まだまだ一緒に働きたいと思っていましたし、
今も、これからも、十分に現役で力を発揮できる人だと思っていました。

だから、その気持ちは、ちゃんと言葉にして伝えました。

ただ、その先を、無理に続けることはしませんでした。

彼女が、訪問看護ステーションくるみに残したもの

元教員であり、誠子さんの元同僚

彼女は元教員で、
共同創業者である中野誠子の元同僚でもあります。

僕が出会ったのは、
彼女がすでに人生の後半に差しかかっていた頃でした。

一番しんどい時期に、一番元気だった人

正直に言います。
くるみには、事業としても、組織としても、
本当にしんどかった時期があります。

そのとき、彼女はスタッフの中で最年長でした。
それにもかかわらず、
・誰よりも元気に
・誰よりも淡々と
・何ひとつ文句を言わず

訪問に出続けてくれました。

精神科訪問看護は、
体力だけでなく、感情や判断力も使う仕事です。

それでも彼女は、
「じゃあ、行ってきますね」
と、いつも同じトーンで現場に向かっていました。

若い看護師の教育に、心血を注いだ人

彼女が本当にすごかったのは、
若いスタッフへの向き合い方でした。
・年齢や経験を振りかざさない
・正論で押しつけない
・「教える」より「一緒に考える」

今のくるみの教育文化の土台には、
間違いなく、彼女の姿勢が染み込んでいます。

とても、とても大事な人です。
今も、入ってくれた当初も、そしてこれからも。

高齢スタッフと定年制度について考えてきたこと

年齢で一律に線を引くことへの違和感

定年という制度に、僕は以前から違和感を持っていました。

60歳という数字に、
どれほどの必然性があるのか。

体力でしょうか。
能力でしょうか。
意欲でしょうか。

現場で見てきた限り、
年齢と仕事の価値は、ほとんど相関しません。

高齢スタッフが持つ、現場での価値

むしろ、
・経験値が高い
・感情の波が安定している
・自分の役割を理解している

こうした点では、
高齢スタッフの方が圧倒的に強い場面も多い。

高齢スタッフは「守る対象」ではなく、
組織を支える存在だと僕は思っています。

教育は、マニュアルではなく「姿勢」で伝わる

若い人は、技術で育ちます。
でも、姿勢は、人で育つ。
・利用者さんとの距離感
・困難な場面での感情の扱い方
・チームに対する態度

こうしたものは、
どれだけマニュアルを整えても、完全には伝わりません。

彼女は、
「高齢だから残っていた」のではなく、
組織に不可欠な教育的存在でした。

引き留める、という選択について

引き留めること自体は、悪ではない

僕は、「引き留める=悪」だとは思っていません。

必要としていることを伝えるのは、
むしろ誠実な行為だと思っています。

今回も、正直に伝えました。

「まだまだ一緒に働きたい」
「あなたは、まだ現役だと思っている」

これは、嘘ではありません。

それでも、無理に引き留めなかった理由

ただ、その先を強く続けなかった。

なぜか。

それは、
その人の人生を、会社の都合で止める覚悟がなかったからです。

引き留めるという行為は、
相手の時間を、自分たちの側に引き寄せる行為でもあります。

その時間に対して、
本当に責任を持てるのか。

そう考えたとき、
僕は「無理に引き留めない」という選択をしました。

退職しても、戻ってこられる場所でありたい

退職を「別れ」にしないという考え方

一つだけ、心の中で強く願ったことがあります。

もし、人生のどこかで、
「また、くるみに戻りたい」
と思うことがあったら。

そのときに、
気兼ねなく、
遠慮なく、
戻ってこられる場所でありたい。

退職は、縁切りではない。
会社は、人生の終着点でなくていい。

人生の通過点であっていい。

定年を65歳に引き上げた本当の理由

引き留めるためでも、人手不足対策でもない

今回、定年を65歳に引き上げました。

これは、
誰かを囲い込むためでも、
縛るためでもありません。

選択肢を、増やしたかった。
・続けたい人が、続けられる
・辞めたい人が、胸を張って辞められる
・戻りたい人が、戻れる

そのすべてを、等しく肯定できる制度にしたかった。

会社は人の人生を所有しない

でも、
人の人生に、誠実でありたい。

必要としていることは伝える。
感謝も、尊敬も、ちゃんと言葉にする。
それでも、最後の選択は、本人に委ねる。

それが、組織としての成熟だと僕は思っています。

経営者としての覚悟

彼女が、これからどんな人生を歩むのか。
それは、僕には分かりません。

でも、
看護人生でやり残したことに向き合い、
誰かのために時間を使い、
自分で選んだ時間を生きていく。

その姿を、心から応援しています。

そして、もしまた、
人生のどこかで道が交わることがあったら。

「おかえりなさい」
それだけでいい。

これは、制度の話ではありません。
経営者としての、覚悟の記録です。

最後に…メッセージを送らせてください。

このコラムの主人公であるあなたへ。

定年という節目で、
一度、肩書きを降ろし、
それでもなお「誰かのために生きる時間」を選んだあなたの姿は、
僕にとって、そしてくるみにとって、
これからもずっと誇りです。

一番しんどい時期に、
一番元気に、
一番文句を言わず、
ただ現場に立ち続けてくれたこと。
若いスタッフに、技術以上の「姿勢」を残してくれたこと。
そのすべてに、心から感謝しています。

この先、どんな道を歩んでも、
あなたは、くるみの一部です。
もしまた、人生のどこかで、
「戻りたいな」と思うことがあったら、
いつでも、気兼ねなく帰ってきてください。

この曲を添えて、
「お疲れさまでした」ではなく、
「これからも、良い旅を」
という気持ちを送ります。

Mr.Children「終わりなき旅」

この記事を書いた人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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