統合失調症とADHDは症状の一部が似ており、発症や併発に気づかない場合があります。
併発すると日常生活に支障が出る場合もあるため、それぞれの共通点や違いを理解し、早めに診断を受けることが重要です。
この記事では、統合失調症とADHDの違いや共通点、併発する点について詳しく解説します。
統合失調症とADHDは似ている?
統合失調症とADHDの症状には、いくつか共通点があります。
主な共通点となるのは、統合失調症の「陰性症状」と、ADHDの「注意欠如」です。
「陰性症状」は、統合失調症において感情や行動の意欲が抑制される症状を指します。
発症前と比べて集中力が低下したり、ぼんやりすることが増えたりするのが陰性症状の特徴です。
一方、ADHDは生まれつき注意力が散漫であったり、集中力が続かなかったりする場合があり、ぼーっとするような様子が見られる方も珍しくありません。
これらの共通点から、ADHDの方が統合失調症になった場合にすぐ気づけないケースもあります。
統合失調症とADHDの違い
この章では、統合失調症とADHDについて、それぞれの症状や原因、治療方法などの違いを解説します。
症状や特徴の違い
統合失調症とADHDでは、それぞれ以下のような特徴や症状が見られます。
統合失調症 | ADHD |
・妄想
・幻覚/幻聴 ・集中力の低下 ・意欲の低下 ・ぼんやりとする ・会話が成り立たなくなる |
・注意力の不足
・忘れ物やなくしものが多い ・じっとしていられない ・喋りすぎてしまう ・突発的に行動する ・順番を待てない |
症状や特徴を比較すると「妄想」や「幻覚」「会話の不成立」などの違いから、統合失調症とADHDは全く別の疾患であると分かります。
参照:厚生労働省/精神障害(精神疾患)の特性(代表例)
参照:厚生労働省/発達障害の理解
原因の違い
統合失調症とADHDは、どちらも脳内の神経伝達物質である「ドーパミン」が原因で発症すると考えられていますが、作用の仕方が異なります。
統合失調症は、脳内のドーパミンが過剰になるために起こるとされています。
一方、ADHDはドーパミンが不足して注意力や集中力が低下すると言われており、統合失調症とは症状が出現する原因が真逆です。
また、統合失調症は生まれつき発症すると決まっているわけではありませんが、ADHDは障害がある「発達障害」の一種であり、出生時から気質を持っているケースが多い点も違っています。
治療や支援方法の違い
統合失調症の治療は、主に薬物療法や精神療法などを実施します。
ドーパミンの調整や、ストレス・不安の少ない生活を心掛けるなどして、時間はかかりますが症状の改善が期待できる病気です。
一方、ADHDは生まれつきの脳の構造が原因で生じるため、完治は難しいとされています。
そのため、特性を考慮した生活環境の調整や症状を抑えるための薬物療法により、障害とうまく付き合いながら生活していく方法を身に付けるのを目標に、支援を行うのが一般的です。
統合失調症とADHDは併発する場合もある
ADHDと統合失調症は、併発するケースもあります。
海外の研究によると、統合失調症の方の約47%がADHDの検査で陽性であり、23%は両方の症状を持ち合わせていたと報告されています。
両者が併発した場合、注意力の低下や幻覚・幻聴などの症状が併存するため、日常生活に大きな支障がでる可能性があります。
治療や支援の方法が異なるため、適切な診断と治療、支援を受けるのが重要です。
参照:Social media and its relationship with mood, self-esteem and paranoia in psychosis
統合失調症やADHDを疑う場合の相談先
統合失調症やADHDの疑いがある場合、まずは精神科で検査を受けましょう。
専門医の検査によって、統合失調症とADHDの症状や併発を明らかにし、適切な治療を受けられます。
また、統合失調症やADHDで医療機関を受診する場合「自立支援医療制度」を利用して医療費の負担を軽減できる可能性があります。
通院による費用面の不安を抱えている方は、自治体の窓口で申請を行い、負担を減らしましょう。
さらに、生活に密着したサポートや、症状・服薬の管理が必要な場合は、訪問看護を利用するのもよいでしょう。
訪問看護では、看護師が自宅に訪問し、症状と生活スタイルに合わせた個別のケアを行います。
妄想や幻覚に悩んでいる方、ADHDで生きづらさを感じている方は、訪問看護の利用も検討してみてください。
統合失調症とADHDの可能性があるなら精神科へ相談しよう
統合失調症やADHDの症状がある場合、精神科で診断と治療を受けましょう。
どちらの場合も、適切な治療や環境調整を行い、長期的にサポートを受けるのが重要です。
統合失調症とADHDが併発する可能性もあるため、早めに精神科を受診し、診断を受けてみてください。
『訪問看護ステーションくるみ』では、統合失調症やADHDの方に対するサポートを提供しています。
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