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統合失調感情障害とは?症状・診断・治療法をわかりやすく解説

2025.10.28 精神科訪問看護とは

「統合失調症」と「感情障害」。どちらの症状も抱えているかもしれない、そう感じているあなたへ。このページでは、統合失調感情障害について、その症状、診断、治療法を分かりやすく解説します。この病気を正しく理解し、症状をコントロールし、より良い生活を送るための第一歩を踏み出しましょう。専門医の解説や、具体的な治療法、家族のサポートについてもお伝えします。

統合失調感情障害とは? 症状・診断・治療法をわかりやすく解説

統合失調感情障害は、統合失調症にみられる思考や知覚の障害(幻覚、妄想など)と、うつ病や双極性障害といった気分(感情)の障害(抑うつ、躁状態など)の両方の特徴を併せ持つ、複雑な精神疾患です。この疾患は、単に二つの病気の症状が同時に現れるというだけでなく、両方の病態が相互に影響し合い、独特の経過をたどることが特徴です。

患者さんやそのご家族がこの疾患を正確に理解し、適切なサポートを受けるためには、その定義、概要、そして他の主要な精神疾患との違いを明確に把握することが不可欠です。本セクションでは、統合失調感情障害の基本的な側面から、他の精神疾患との鑑別点に至るまでを、分かりやすく解説していきます。

定義と概要

統合失調感情障害は、国際的な診断基準(DSM-5など)において、統合失調症の診断基準を満たす精神病症状と、気分エピソード(うつ病エピソードまたは躁病エピソード)の診断基準を同時に満たす状態と定義されます。しかし、重要なのは、これらの精神病症状が、気分の障害(うつ病エピソードや躁病エピソード)が持続している期間中にのみ出現するわけではない、という点です。

まず、統合失調症との比較です。統合失調症は、主に思考、知覚、感情、行動の障害を特徴とし、幻覚や妄想といった陽性症状、意欲低下や感情鈍麻といった陰性症状が中心となります。一方、統合失調感情障害は、これらの統合失調症様の症状に加え、気分の変動(抑うつや躁状態)が顕著に現れます。統合失調感情障害では、気分の障害が持続する期間中だけでなく、気分の障害がない期間にも精神病症状が一定期間持続することが、統合失調症との鑑別点となります。

次に、うつ病との違いです。うつ病は、持続的な気分の落ち込み、興味や喜びの喪失、意欲低下などを主症状とします。統合失調感情障害における抑うつエピソードは、うつ病と同様の症状を示しますが、統合失調感情障害では、うつ症状と同時に、あるいは気分の障害がない期間にも、統合失調症様の精神病症状が現れる点が異なります。うつ病単独では、通常、幻覚や妄想といった精神病症状は、気分の重症度に応じて一時的に現れるにとどまります。

最後に、双極性障害との違いです。双極性障害は、躁状態(気分が高揚し活動的になる)とうつ状態を繰り返す疾患です。統合失調感情障害では、躁病エピソードやうつ病エピソードに相当する気分の変動が見られますが、双極性障害とは異なり、気分の変動がない期間にも、統合失調症様の精神病症状が持続する点が鑑別点となります。

双極性障害における精神病症状は、通常、躁状態やうつ状態の重症度と強く関連して出現し、気分のエピソードが改善すれば、精神病症状も消失することが多いです。統合失調感情障害では、これらの症状の持続期間や相互の関係性が、診断において重要な要素となります。

統合失調感情障害の症状

統合失調感情障害は、統合失調症に特徴的な症状と、気分障害に特徴的な症状が併存する疾患です。患者さんが経験する症状は多岐にわたり、その理解は適切な支援のために不可欠です。ここでは、陽性症状、陰性症状、そして気分の波という三つの側面から、統合失調感情障害の具体的な症状について解説します。

陽性症状(幻覚・妄想など)

陽性症状とは、病気によって新たに現れる、本来は存在しないはずの体験や思考を指します。最もよく知られているのは幻覚と妄想です。幻覚には、実際にはない声が聞こえる幻聴、実際にはないものが見える幻視、あるいは特定の匂いを感じる幻臭などがあります。特に幻聴は、悪口を言われたり、命令されたりするなど、患者さんを苦しめる内容であることが少なくありません。妄想は、現実とはかけ離れた考えを強く信じ込んでしまう状態です。例えば、「誰かに監視されている」「自分は特別な力を持っている」「周りの人が自分に危害を加えようとしている」といった確信は、周囲との関係に深刻な影響を与えます。

陰性症状(感情の鈍麻・意欲低下など)

陰性症状は、健康な時に持っていた感情、意欲、活動性などが失われたり、低下したりする症状です。具体的には、表情が乏しくなり、感情の起伏が少なくなる「感情の平板化」、何事にも興味を持てず、行動を起こす意欲が湧かなくなる「意欲の低下」、会話の内容が乏しくなったり、言葉が出てきにくくなったりする「思考の貧困」などが挙げられます。

また、以前は楽しめた活動から喜びを感じられなくなる「快感消失」や、人との関わりを避けるようになる「社会的引きこもり」も含まれます。これらの陰性症状は、日常生活を送る上での基本的な機能を低下させ、社会生活への復帰を困難にする要因となります。

気分の波(躁状態・うつ状態)

統合失調感情障害の大きな特徴の一つは、気分の極端な変動、すなわち「気分の波」です。これは、気分障害で見られる躁状態とうつ状態が、統合失調症様の症状と同時に、あるいは交互に出現するものです。躁状態では、気分が異常に高揚し、活動的になり、睡眠時間が短くても元気でいられたり、次々とアイデアが浮かんで止まらなかったりします。多弁になったり、自尊心が過剰に高まったり、些細なことで怒りっぽくなることもあります。

対照的に、うつ状態では、気分が深く沈み込み、悲しみや絶望感に襲われます。興味や喜びを感じられなくなり、疲労感、集中力の低下、不眠または過眠、食欲の変化などが現れます。これらの気分の波は、病状の安定性を損ない、生活の質を大きく低下させる可能性があります。

関連記事:統合失調症の治療法を徹底解説|薬物療法から社会復帰まで

統合失調感情障害の診断

統合失調感情障害の診断は、患者さんの精神状態を詳細に評価し、特定の基準に照らし合わせることで行われます。このプロセスには、専門的な知識を持つ医師による慎重な評価が不可欠です。病気の特定に至るまでには、いくつかの段階を踏みます。ここでは、診断基準の確認から、実際の診察や検査に至るまでの流れを解説します。

診断基準

統合失調感情障害の診断は、主にアメリカ精神医学会が発行する『精神疾患の診断・統計マニュアル』(DSM-5)などの国際的に認められた診断基準に基づいて行われます。この障害と診断されるためには、気分の障害(うつ病エピソードまたは躁病エピソード)の症状と、統合失調症の特徴である幻覚、妄想、まとまりのない会話、まとまりのない行動、陰性症状といった精神病症状が同時に、あるいは期間をずらして出現している必要があります。

さらに、これらの症状が、気分の障害のエピソードよりも長く持続していること、そして、他の精神疾患や物質(薬物、アルコールなど)の影響、あるいは身体疾患によるものではないことが除外される必要があります。これらの基準を総合的に満たすかどうかが、診断の鍵となります。

診察と検査

診断を進めるにあたり、医師はまず患者さん本人や、可能であれば家族などからの詳細な問診を行います。これには、現在の症状、発症時期、症状の経過、既往歴、家族歴、生活環境などが含まれます。患者さんの訴えを丁寧に聞き取ることで、病状の全体像を把握します。次に、症状の客観的な評価のために、心理検査が実施されることがあります。これには、認知機能、思考過程、感情状態などを評価するための様々な質問紙やテストが含まれます。

さらに、精神症状の原因が身体的な疾患にある可能性を排除するため、必要に応じて血液検査や画像検査(MRI、CTスキャンなど)といった身体検査が行われることもあります。これらの診察と検査の結果を総合的に判断し、統合失調感情障害であるかどうかの診断が下されます。

統合失調感情障害の治療法

統合失調感情障害は、統合失調症の症状と気分障害の症状が併存する複雑な疾患であり、その治療には多角的なアプローチが不可欠です。症状の急性期における安定化から、長期的な再発予防、そして社会生活への適応支援まで、患者さんの状態やニーズに応じたきめ細やかな治療計画が求められます。

ここでは、統合失調感情障害の主要な治療法である薬物療法、精神療法、そしてリハビリテーションについて、それぞれの目的、具体的な内容、期待される効果、そして留意すべき点などを詳しく解説します。これらの情報を参考に、ご自身の病状に合った治療法について、医療専門家と十分に話し合うことが重要です。

薬物療法

統合失調感情障害の治療の根幹をなすのは薬物療法です。主に、統合失調症の症状(幻覚、妄想、思考障害など)を抑えるための抗精神病薬が用いられます。これらの薬剤は、脳内の神経伝達物質のバランスを調整することで、陽性症状の軽減に寄与します。

また、統合失調感情障害では気分症状(うつや躁)も顕著であるため、病状に応じて気分安定薬や抗うつ薬が併用されることが一般的です。例えば、気分安定薬は感情の波を穏やかにし、抗うつ薬は抑うつ気分を改善するのに役立ちます。薬物療法においては、効果を最大限に引き出し、副作用を最小限に抑えるために、医師が患者さんの状態を慎重に評価し、最適な薬剤と用量を選択します。副作用としては、眠気、口渇、便秘、体重増加、あるいは錐体外路症状(ふるえ、こわばりなど)が現れることがあります。

これらの副作用は、薬の調整や対症療法で対応可能な場合も多いため、自己判断で服薬を中断せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。治療の継続と服薬アドヒアランス(指示通りに薬を飲むこと)は、再発予防のために極めて重要です。

精神療法

精神療法は、薬物療法だけでは対応しきれない心理的・社会的な側面からのサポートを提供します。特に認知行動療法(CBT)は、統合失調感情障害の患者さんに対して有効性が示されています。CBTでは、病気によって生じる非現実的な考え方(例えば、被害妄想や過度な悲観論)や、それに伴う不適応な行動パターンに焦点を当てます。

患者さんとセラピストが協力して、これらの思考や行動をより現実的で建設的なものへと変えていく練習を行います。これにより、症状への対処能力を高め、抑うつ気分や不安感を軽減し、生活の質(QOL)の向上を目指します。

また、支持的精神療法は、患者さんの抱える苦悩や感情を丁寧に傾聴し、共感的な態度で接することで、安心感や自己肯定感の回復を促します。患者さんが自身の病気や感情を理解し、受け入れ、主体的に回復プロセスに取り組むことを支援する上で、精神療法は非常に重要な役割を果たします。

その他の治療法(リハビリテーションなど)

薬物療法や精神療法に加えて、社会生活技能訓練(SST)や作業療法といったリハビリテーションは、患者さんの社会復帰を促進し、自立した生活を送るための基盤を築く上で不可欠です。SSTでは、日常生活や対人関係で必要とされる具体的なスキル(例:挨拶、自己主張、問題解決、他者との交渉など)を、ロールプレイングなどを通して段階的に習得します。これにより、コミュニケーション能力や対人関係の質が向上し、孤立感の軽減につながります。

作業療法では、患者さんの興味や能力に応じた活動(例:趣味、軽作業、家事、学習など)を通して、生活リズムの確立、集中力や意欲の向上、そして就労に向けた準備などを支援します。これらのリハビリテーションは、患者さんが社会とのつながりを回復し、自己効力感を高めることを目的としています。

さらに、家族への心理教育やサポートも、患者さんの回復を支える上で非常に有効です。家族が病気について正しく理解し、適切な関わり方を学ぶことで、家庭環境が安定し、患者さんの回復をより効果的に支援できるようになります。

関連記事:統合失調症の入院レベルとは?判断基準と入院形態を詳しく解説

統合失調感情障害の治療と生活

統合失調感情障害と診断された方が、より穏やかで充実した日々を送るためには、適切な治療の継続に加え、日々の生活習慣の工夫や、周囲からの理解とサポートが不可欠です。このセクションでは、患者さんご自身が日常生活で心がけるべき具体的な注意点と、支えるご家族やご友人ができることについて解説します。病気と向き合いながら、その人らしい生活を築いていくための実践的な情報を提供します。

生活上の注意点

  • ストレス管理: 日常生活におけるストレス要因を把握し、それらを軽減または回避する方法を見つけることが重要です。リラクゼーション技法(深呼吸、瞑想)、趣味への没頭、信頼できる人との対話などが有効です。過度な刺激やプレッシャーを避ける環境作りも大切です。
  • 規則正しい生活: 毎日決まった時間に起床・就寝し、食事や活動のスケジュールを一定に保つことで、生活リズムが整い、気分の安定につながります。不規則な生活は症状を悪化させる可能性があるため、ルーティンを確立することが推奨されます。
  • 健康的な食事: バランスの取れた栄養摂取は、心身の健康維持に不可欠です。加工食品や過剰な糖分、カフェインの摂取は控えめにし、野菜、果物、全粒穀物などを中心とした食事を心がけましょう。
  • 十分な睡眠: 質の高い睡眠を確保することは、精神的な回復と安定のために非常に重要です。寝室の環境を整え、就寝前のカフェインやアルコールを避け、リラックスできる習慣を取り入れるなど、睡眠衛生に配慮しましょう。
  • 適度な運動: 定期的な運動は、気分転換になり、不安や抑うつ感を軽減する効果が期待できます。ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない範囲で継続できる運動を見つけることが大切です。
  • 服薬の継続: 処方された薬は、症状のコントロールと再発予防のために非常に重要です。自己判断で中断せず、医師の指示に従って継続して服用することが、治療の基盤となります。

家族や友人へのサポート

  • 病気への理解を深める: 統合失調感情障害について正しく学び、病気の症状が本人の意思とは関係なく現れることを理解することが第一歩です。患者さんの言動を否定せず、病気の一部として受け止める姿勢が大切です。
  • 傾聴と共感: 患者さんの話に耳を傾け、感情に寄り添うことが重要です。無理に説得しようとせず、穏やかな口調で、否定せずに話を聞くことで、安心感を与えることができます。
  • 日常生活の支援: 具体的な家事や通院の付き添いなど、生活面でのサポートは助けになります。しかし、過剰な干渉は避け、本人の自立心を尊重しながら、できる範囲で手助けすることが望ましいです。
  • 緊急時の対応計画: 症状が悪化した場合や、本人が危険な状態になった場合の連絡先や対応方法を事前に確認しておくと安心です。必要であれば、医療機関や専門家へ速やかに連絡を取りましょう。
  • 支援者自身のケア: 患者さんを支える側も、精神的・肉体的な負担が大きくなりがちです。休息を取り、自身の健康管理も怠らないようにしましょう。必要であれば、家族会への参加や専門家への相談も検討してください。
  • 専門家との連携: 患者さんの治療計画について、担当医や支援者と情報共有し、連携を取ることで、より一貫したサポートが可能になります。

相談窓口と支援団体

統合失調感情障害で一人で悩んでいませんか? 本セクションでは、患者さんご本人やご家族が安心して療養や社会復帰に取り組めるよう、頼れる相談窓口や支援団体についてご紹介します。専門機関、医療機関、患者会など、様々なリソースを知ることで、一歩踏み出すお手伝いができれば幸いです。

相談先 提供される支援
精神保健福祉センター 専門的な相談、情報提供、各種サービスへの連携、家族相談
医療機関(精神科・心療内科) 医師による診断・治療、カウンセリング、リハビリテーション、服薬指導
患者会・家族会 当事者同士の交流、情報交換、体験談の共有、精神的な支え
NPO法人・地域支援センター 就労支援、生活支援、ピアサポート、社会復帰に向けたプログラム

まとめ

本記事では、統合失調感情障害について、その定義、多岐にわたる症状、診断プロセス、そして効果的な治療法について詳しく解説しました。また、患者様が日常生活を送りやすくするための具体的な注意点や、利用可能なサポート体制についても触れました。

統合失調感情障害は、統合失調症の症状と気分障害(うつ病または躁病)の症状が同時に現れる複雑な疾患です。正確な診断と早期の介入が、予後を大きく左右します。治療は、薬物療法、心理社会的療法、そして周囲のサポートを組み合わせることが重要です。

病気と向き合うことは容易ではありませんが、適切な治療とサポートがあれば、症状を管理し、充実した人生を送ることは十分に可能です。ご本人、ご家族、そして支援者の皆様が、希望を持って回復への道を歩んでいけるよう、この記事がその一助となれば幸いです。

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この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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