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統合失調症の入院レベルとは?判断基準と入院形態を詳しく解説

2025.10.27 精神科訪問看護とは

統合失調症で入院が必要になるのはどのようなレベルなのでしょうか。幻覚や妄想で日常生活が困難になったり、自傷他害のリスクがある場合は入院治療が検討されます。しかし「どの程度の症状で入院になるのか」「入院形態にはどんな種類があるのか」など、不安や疑問を持つ方も多いはずです。

本記事では、統合失調症の入院が必要となる具体的な判断基準から、4つの入院形態(任意入院・医療保護入院・措置入院・応急入院)、入院期間と治療内容まで詳しく解説します。適切なタイミングでの入院は、症状の早期改善につながります。

統合失調症で入院が必要になるレベル・基準とは

統合失調症の入院判断は、症状の重症度、日常生活への影響、自傷他害のリスク、家族のサポート体制など、複数の要因を総合的に評価して決定されます。統合失調症は、幻覚・妄想などの陽性症状、意欲低下・感情鈍麻などの陰性症状、認知機能障害など多彩な症状を呈する精神疾患で、日本では約100人に1人が罹患するとされています。多くの場合、外来治療で症状をコントロールできますが、急性期や症状が重篤な場合には入院治療が必要となることがあります。

入院の必要性を判断する最も重要な基準は、「本人の安全」と「他者の安全」です。幻覚や妄想に支配されて現実検討能力を失い、自分や他人を傷つける可能性がある場合は、緊急的な入院が必要となります。また、食事や睡眠が取れない、服薬を拒否する、病識がなく治療を受け入れないなど、外来では治療が困難な場合も入院適応となります。統合失調症の入院率は、初回エピソードで約40-60%、再発時で約20-30%と報告されており、適切なタイミングでの入院により、症状の早期改善と社会復帰が期待できます。

入院の判断は、精神科医が診察を行い、症状の評価、リスクアセスメント、家族からの情報収集などを基に行います。本人に病識がない場合や、判断能力が低下している場合は、家族の同意により入院となることもあります。重要なのは、入院は「隔離」ではなく「集中的な治療の場」であり、症状が改善すれば速やかに退院し、外来治療に移行することです。早期の適切な入院治療により、長期的な予後の改善が期待できます。

精神症状が重篤で日常生活が困難な場合

統合失調症の急性期では、幻覚・妄想などの陽性症状が激しく、日常生活が著しく困難になることがあります。幻聴が頻繁で強く、「死ね」「殺せ」などの命令性幻聴により行動がコントロールされる場合は、緊急的な入院が必要です。被害妄想により「誰かに狙われている」「毒を盛られている」と確信し、食事を拒否したり、家に閉じこもったりする場合も、栄養状態の悪化や脱水のリスクがあるため入院適応となります。思考障害により会話が成立せず、支離滅裂な言動が続く場合も、外来での治療は困難です。

陰性症状が重度の場合も入院が検討されます。無為・自閉により、入浴や着替えなどの基本的な身辺整理ができない、部屋から出られない、誰とも話さないなど、セルフケアが完全に破綻している場合は、生活支援と治療を同時に行う必要があります。感情鈍麻により、家族との交流も困難になり、孤立状態に陥ることもあります。このような状態では、構造化された入院環境で、段階的に活動性を高める治療が必要となります。

認知機能障害が重度の場合も、入院での集中的なリハビリテーションが有効です。注意力、記憶力、実行機能の低下により、服薬管理ができない、約束を守れない、簡単な日常的判断ができないなどの問題が生じます。外来では限られた時間での介入しかできませんが、入院では24時間の観察と支援により、認知機能の改善を図ることができます。また、統合失調症の約30%に見られる病識の欠如も、入院治療の適応となる重要な要因です。「自分は病気ではない」と確信し、治療を拒否する場合、入院により服薬の必要性を理解してもらう過程が必要となります。

自傷行為や他害行為のリスクがある場合

統合失調症における自殺リスクは一般人口の約10倍高く、生涯自殺率は約5-10%と報告されています。特に、初回エピソード後の数年間、うつ症状を伴う時期、幻聴による自殺命令がある場合などは、自殺リスクが高まります。「死にたい」という希死念慮の表出、自殺の計画や準備、過去の自殺企図歴などがある場合は、安全確保のため緊急入院が必要です。入院により、24時間の見守り体制、危険物の除去、集中的な薬物療法と精神療法により、自殺リスクを軽減できます。

自傷行為も入院の重要な適応です。リストカット、過量服薬、頭を壁に打ち付ける、火傷を負わせるなどの自傷行為は、統合失調症の急性期や、幻聴・妄想に支配された状態で見られることがあります。これらの行為は、精神的苦痛の表現、幻聴への対処、現実感の確認などの意味を持つことがありますが、生命に危険を及ぼす可能性があるため、保護的環境での治療が必要です。

他害リスクも重要な入院適応です。統合失調症による他害行為は稀ですが、被害妄想により特定の人物を「敵」と認識したり、幻聴の命令により攻撃的になったりすることがあります。家族への暴力、器物破損、放火などのリスクがある場合は、本人と周囲の安全のため入院が必要です。ただし、統合失調症患者の多くは他害行為を行わず、むしろ被害者になりやすいことも理解しておく必要があります。入院は、適切な治療により症状を改善し、社会復帰を目指すための一時的な措置であり、症状が改善すれば速やかに退院となります。

病識がなく治療を拒否している場合

統合失調症の特徴的な問題として、病識の欠如があります。約50-80%の患者が、程度の差はあれ病識の問題を抱えているとされています。「自分は病気ではない」「薬は毒だ」「医師や家族が自分を陥れようとしている」などの確信により、治療を拒否することがあります。このような場合、外来での治療継続は困難で、症状の悪化、再発のリスクが高まります。服薬中断により、約80%が1年以内に再発するというデータもあり、継続的な治療の重要性は明らかです。

病識がない場合の入院は、多くの場合、医療保護入院という形態をとります。本人の同意は得られませんが、精神保健指定医の診察により入院の必要性が認められ、家族等の同意により入院となります。入院中は、薬物療法により症状を改善させながら、疾病教育を通じて病識の獲得を目指します。症状が改善してくると、徐々に病識も改善することが多く、退院後の治療継続につながります。

治療拒否の背景には、薬の副作用への恐怖、スティグマ(偏見)、過去の治療での嫌な経験などもあります。入院では、これらの不安や恐怖に対して、時間をかけて説明し、信頼関係を構築することができます。また、家族への心理教育も重要で、病気の理解、対応方法、再発予防などについて学ぶ機会となります。病識の改善は、長期的な予後を左右する重要な要因であり、入院治療の重要な目標の一つです。

統合失調症の症状経過と入院のタイミング

統合失調症の経過は、前駆期、急性期、回復期、安定期の4つの段階に分けられ、それぞれの時期で入院の必要性が異なります。前駆期は、明確な精神病症状が出現する前の段階で、不眠、不安、集中力低下、社会的引きこもりなどの非特異的な症状が見られます。この時期は通常、外来治療で対応可能ですが、機能低下が著しい場合は、診断的評価と集中的治療のため入院することもあります。早期介入により、その後の経過を改善できる可能性があります。

急性期は、幻覚・妄想などの陽性症状が顕著な時期で、最も入院が必要となる時期です。初回エピソードの場合、診断の確定、薬物療法の導入、心理教育などを目的に入院することが多いです。再発の場合も、症状が重篤であれば入院が検討されます。急性期の入院期間は、通常1-3か月程度ですが、症状の重症度や治療反応性により異なります。早期の適切な治療により、症状の改善と機能回復が期待できます。

回復期から安定期にかけては、通常外来治療に移行しますが、残遺症状が強い場合、リハビリテーションが必要な場合、家族のサポートが得られない場合などは、継続的な入院やデイケア、訪問看護などの中間的なサービスを利用することもあります。統合失調症は慢性疾患であり、長期的な治療と支援が必要ですが、適切な治療により、多くの患者が地域で自立した生活を送ることができます。

前駆期から急性期への移行

統合失調症の前駆期は、数週間から数年続くことがあり、この時期の適切な介入が重要です。前駆期の症状として、睡眠障害(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒)、不安・緊張の増大、集中力・記憶力の低下、社会的機能の低下(学業成績の低下、欠勤・欠席の増加)、知覚の変化(音が大きく聞こえる、色が鮮やかに見える)などがあります。これらの症状が持続し、日常生活に支障をきたす場合は、精神科受診が推奨されます。

前駆期から急性期への移行は、徐々に進行することもあれば、急激に起こることもあります。「周りの人が自分の悪口を言っている」という被害的な考えから、確信的な被害妄想へと発展したり、「声が聞こえるような気がする」という状態から、明確な幻聴へと変化したりします。この移行期は、本人も家族も混乱しやすく、適切な対応が遅れることがあります。早期の精神科受診により、症状の進行を防ぎ、入院を回避できる可能性があります。

急性期に入ると、幻覚・妄想が顕著となり、現実検討能力が低下します。「テレビが自分のことを言っている」(関係妄想)、「考えが他人に伝わってしまう」(思考伝播)、「誰かに操られている」(被影響妄想)などの症状が現れます。この時期は、病識がなく、治療の必要性を理解できないことが多いため、家族や周囲の適切な対応が重要です。症状が重篤化する前に医療機関を受診し、必要に応じて入院治療を受けることで、症状の慢性化を防ぐことができます。

急性期における入院治療の重要性

統合失調症の急性期は、最も集中的な治療が必要な時期であり、入院治療のメリットが大きい時期です。急性期の入院により、24時間の症状観察が可能となり、症状の詳細な評価、適切な診断、最適な薬物選択が可能になります。外来では限られた情報しか得られませんが、入院では、睡眠パターン、食事摂取量、日中の活動性、対人交流の様子などを詳細に観察できます。これらの情報は、治療方針の決定に重要です。

薬物療法の導入と調整も、入院の大きな利点です。抗精神病薬の開始時は、副作用のモニタリングが重要で、錐体外路症状、起立性低血圧、心電図変化などを注意深く観察する必要があります。入院では、これらの副作用に迅速に対応でき、安全に薬物を増量できます。また、服薬アドヒアランスも確実で、薬物の効果を正確に評価できます。治療抵抗性の場合は、クロザピンなどの特殊な薬物療法も、入院で安全に導入できます。

急性期の入院は、本人の安全確保だけでなく、家族の負担軽減にもつながります。急性期の患者の世話は、家族にとって大きなストレスとなり、家族関係の悪化、家族の精神的健康の悪化につながることがあります。入院により、家族は一時的に介護から解放され、冷静に今後の対応を考える時間を持てます。また、家族教育プログラムに参加することで、病気の理解を深め、退院後の対応方法を学ぶことができます。急性期の適切な入院治療は、長期的な予後の改善、再発予防、社会復帰の促進につながる重要な介入です。

回復期から安定期の管理

回復期は、急性症状が改善し、現実検討能力が回復してくる時期です。幻覚・妄想は軽減または消失しますが、陰性症状(意欲低下、感情鈍麻)や認知機能障害が残存することがあります。この時期の入院継続の必要性は、残存症状の程度、機能回復の状況、退院後の環境などにより判断されます。リハビリテーションプログラムへの参加、服薬自己管理の練習、日常生活スキルの再獲得などを目的に、入院を継続することもあります。

退院準備期には、段階的な社会復帰を目指します。外出、外泊を繰り返し、退院後の生活をシミュレーションします。デイケアやナイトケアなどの部分入院を経て、完全な退院に移行することもあります。退院前カンファレンスでは、医療チーム、本人、家族が参加し、退院後の治療計画、緊急時の対応、利用する社会資源などを確認します。この準備期間が、退院後の安定した地域生活につながります。

安定期は、症状が安定し、外来治療で管理可能な時期です。しかし、統合失調症の再発率は高く、服薬中断により1年以内に約80%、5年以内に約90%が再発するとされています。安定期でも、ストレス、服薬中断、物質使用などにより再発することがあり、早期の兆候(不眠、不安、幻聴の再出現など)を見逃さないことが重要です。再発の兆候が見られた場合は、外来での薬物調整、訪問看護の導入、短期入院などにより、本格的な再発を防ぐことができます。安定期の適切な管理により、入院を回避し、地域での自立した生活を維持することができます。

精神科の入院形態と法的根拠

精神科の入院には、精神保健福祉法に基づく4つの入院形態があり、それぞれ異なる要件と手続きが定められています。任意入院は本人の同意に基づく入院で、最も一般的な形態です。医療保護入院は、本人の同意が得られないが医療と保護が必要な場合の入院です。措置入院は、自傷他害のおそれがある場合の強制入院です。応急入院は、緊急時の一時的な入院です。これらの入院形態は、本人の人権と治療の必要性のバランスを考慮して設計されています。

入院形態の選択は、患者の状態、病識の有無、リスクの程度などにより決定されます。統合失調症の場合、初回入院の約30-40%が任意入院、50-60%が医療保護入院、5-10%が措置入院となっています。病識がある軽症例では任意入院、病識がない中等症例では医療保護入院、自傷他害のリスクが高い重症例では措置入院となることが多いです。入院形態は固定的ではなく、症状の改善により、措置入院から医療保護入院へ、医療保護入院から任意入院へと変更されることもあります。

精神科入院における人権擁護は重要な課題です。精神医療審査会による入院の妥当性の審査、定期病状報告、退院請求・処遇改善請求の制度などにより、不当な入院や行動制限を防ぐ仕組みがあります。また、インフォームドコンセント、最小限の行動制限の原則、開放処遇の推進などにより、入院中も可能な限り本人の自由と尊厳を守ることが求められています。

任意入院(本人の同意による入院)

任意入院は、本人が入院に同意し、自ら入院を希望する形態で、精神科入院の理想的な形です。統合失調症でも、病識がある場合、症状に苦痛を感じている場合、家族や医師の説得を受け入れた場合などは、任意入院となります。任意入院のメリットは、本人の自己決定権が尊重され、治療への動機づけが高いことです。また、原則として開放処遇(自由に病棟を出入りできる)で、行動制限も最小限となります。

任意入院の手続きは比較的簡単で、本人が入院同意書に署名することで成立します。ただし、判断能力があることが前提で、重度の精神症状により判断能力が著しく低下している場合は、任意入院は適切ではありません。入院中は、本人の申し出により、原則として退院できます。ただし、精神保健指定医が、医療と保護のため入院継続が必要と判断した場合は、72時間に限り退院を制限できます。この間に、医療保護入院への切り替えを検討することもあります。

任意入院でも、病状により一時的な行動制限(隔離、身体拘束)が必要になることがあります。自傷他害のおそれがある場合、医療を受けることが困難な場合などは、精神保健指定医の判断により、必要最小限の行動制限が行われます。ただし、行動制限は治療の手段であり、懲罰ではないことを理解し、可能な限り早期に解除することが原則です。任意入院は、本人の協力により、効果的な治療が可能となり、早期の症状改善と退院が期待できます。

医療保護入院(家族等の同意による入院)

医療保護入院は、精神保健指定医が入院治療の必要性を認め、本人の同意が得られない場合に、家族等の同意により入院となる形態です。統合失調症では、病識の欠如により治療を拒否する場合に多く用いられます。家族等とは、配偶者、親権者、扶養義務者、後見人などを指し、該当者がいない場合は市町村長の同意により入院となることもあります。2014年の法改正により、保護者制度が廃止され、家族の負担が軽減されました。

医療保護入院の要件は、①精神障害者であること、②医療と保護のため入院の必要があること、③任意入院が行われる状態にないこと、の3つです。精神保健指定医の診察により、これらの要件を満たすと判断された場合に入院となります。入院時には、本人に対して、入院の理由、退院請求の権利などを書面で説明する義務があります。また、入院後10日以内に、精神医療審査会に入院届を提出し、入院の妥当性が審査されます。

医療保護入院中は、定期的な病状報告(12か月ごと)が義務付けられ、入院継続の必要性が審査されます。また、退院支援委員会を開催し、早期退院に向けた取り組みを行います。本人は、退院請求や処遇改善請求を行う権利があり、精神医療審査会が審査します。医療保護入院は、本人の意思に反する入院ですが、適切な治療により病識が改善すれば、任意入院への切り替えや退院が可能となります。家族の理解と協力が、治療の成功に重要な役割を果たします。

措置入院と応急入院(緊急時の対応)

措置入院は、精神障害により自傷他害のおそれがある場合の入院で、都道府県知事(政令市長)の権限により行われます。警察官通報、検察官通報、一般通報などにより、措置入院の必要性が検討されます。2名の精神保健指定医の診察により、両名が入院の必要性を認めた場合に、措置入院となります。統合失調症では、急性期の興奮状態、幻覚妄想に支配された暴力行為、自殺企図などがある場合に適用されます。措置入院は、公費負担医療となり、入院費用は公費でまかなわれます。

措置入院中は、症状の改善により自傷他害のおそれがなくなれば、速やかに措置解除となります。ただし、引き続き入院治療が必要な場合は、医療保護入院や任意入院に切り替わることもあります。措置入院は、最も強制力の強い入院形態ですが、あくまで治療を目的としたものであり、社会防衛や処罰を目的とするものではありません。近年は、措置入院者の退院後支援の強化が図られ、地域での継続的な支援体制の構築が進められています。

応急入院は、精神障害により直ちに入院させなければ、医療と保護を図る上で著しく支障がある場合の72時間以内の入院です。家族等の同意が得られない場合に、精神保健指定医1名の診察により入院となります。統合失調症の急性増悪で、家族と連絡が取れない場合などに適用されます。72時間以内に、家族等の同意を得て医療保護入院に切り替えるか、本人の同意を得て任意入院に切り替える必要があります。応急入院は、緊急避難的な措置であり、その後の適切な入院形態への移行が重要です。

関連記事:統合失調症の家族向け|接し方と支援方法の完全ガイド

統合失調症の入院治療の内容と期間

統合失調症の入院治療は、薬物療法を中心に、精神療法、リハビリテーション、環境調整などを組み合わせた包括的なアプローチです。入院初期は、診断の確定、症状の評価、治療方針の決定に重点が置かれます。詳細な問診、心理検査、血液検査、画像検査などにより、統合失調症の確定診断と、他の精神疾患や身体疾患の除外を行います。同時に、安全で構造化された環境を提供し、規則正しい生活リズムの確立を図ります。

治療の中核となる薬物療法では、第二世代抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾールなど)が第一選択となることが多いです。薬物の選択は、症状プロフィール、副作用プロフィール、過去の治療反応などを考慮して決定されます。入院では、薬物の効果と副作用を詳細にモニタリングし、最適な用量を決定できます。治療抵抗性の場合は、クロザピンや電気けいれん療法なども検討されます。

入院期間は、症状の重症度、治療反応性、社会的要因などにより大きく異なります。統合失調症の平均入院期間は、日本では約90日(3か月)ですが、短期入院(1か月以内)から長期入院(1年以上)まで幅があります。近年は、早期退院と地域ケアの推進により、入院期間は短縮傾向にあります。入院費用は、医療保険が適用され、自立支援医療により自己負担が軽減されます。高額療養費制度もあり、経済的負担は一定程度に抑えられます。

薬物療法と副作用管理

統合失調症の入院治療において、薬物療法は最も重要な治療法です。急性期には、幻覚・妄想などの陽性症状の改善を目的に、抗精神病薬を開始します。第二世代抗精神病薬は、第一世代に比べて錐体外路症状が少なく、陰性症状や認知機能にも効果があるとされ、第一選択となります。薬物の開始は低用量から始め、効果と副作用を見ながら徐々に増量します。入院では、1日複数回の観察により、細かな調整が可能です。

副作用管理は、治療成功の鍵となります。錐体外路症状(パーキンソニズム、アカシジア、ジストニア、遅発性ジスキネジア)は、患者のQOLを低下させ、服薬アドヒアランスを悪化させます。入院では、これらの症状を早期に発見し、抗コリン薬の併用、薬物の変更などで対応します。代謝系副作用(体重増加、糖尿病、脂質異常症)も重要で、定期的な血液検査、体重測定、食事指導などを行います。

薬物療法の効果判定には、通常4-6週間かかります。この期間、入院により確実な服薬と詳細な観察が可能となり、効果不十分な場合の迅速な対応が可能です。治療抵抗性統合失調症(2種類以上の抗精神病薬を十分量、十分期間使用しても改善しない)の場合は、クロザピンの使用を検討します。クロザピンは、無顆粒球症のリスクがあるため、入院での導入と、定期的な血液検査が必要です。また、修正型電気けいれん療法も、薬物療法が無効な場合の選択肢となります。入院により、これらの特殊な治療も安全に実施できます。

精神療法とリハビリテーション

入院中の精神療法は、薬物療法の効果を高め、病識の獲得、再発予防、社会復帰を促進する重要な治療です。個人精神療法では、支持的精神療法を中心に、症状の理解、ストレス対処、問題解決などを扱います。急性期は短時間の面接を頻回に行い、回復期は週1-2回の定期的な面接を行います。認知行動療法(CBT)は、妄想や幻聴への対処、陰性症状の改善に有効とされ、入院中から導入することもあります。

集団療法も重要な治療法です。心理教育グループでは、病気の知識、薬の必要性、再発予防などを学びます。SST(社会生活技能訓練)では、対人スキル、日常生活スキル、症状管理スキルなどを練習します。作業療法では、手工芸、園芸、調理などの活動を通じて、集中力、持続力、協調性などを向上させます。レクリエーション療法では、スポーツ、音楽、ゲームなどを通じて、楽しみながら社会性を回復します。

リハビリテーションは、機能回復と社会復帰を目的とした包括的なアプローチです。認知リハビリテーションでは、注意力、記憶力、実行機能などの認知機能の改善を図ります。コンピュータを使った認知トレーニング、紙と鉛筆を使った課題、日常生活場面での練習などを組み合わせます。職業リハビリテーションでは、就労準備性の評価、職業スキルの訓練、就労支援などを行います。入院中から、院内作業、外勤作業などを通じて、働く準備を整えます。家族心理教育も重要で、家族が病気を理解し、適切な対応方法を学ぶことで、退院後の再発予防につながります。

平均的な入院期間と退院の目安

統合失調症の入院期間は、国や地域により大きく異なります。日本の平均入院期間は約90日ですが、欧米では2-4週間と短い傾向があります。この違いは、医療制度、社会資源、文化的要因などによります。日本でも、近年は入院期間の短縮が進んでおり、急性期治療後の早期退院と、地域での継続的な支援が推進されています。初回入院は比較的短期間(1-2か月)で、再入院は更に短期間となる傾向があります。

退院の目安は、①急性症状の改善(幻覚・妄想の消失または軽減)、②病識の改善(病気の理解と治療の必要性の認識)、③服薬アドヒアランスの確立、④日常生活能力の回復、⑤退院後の生活環境の整備、などです。これらすべてが完全に満たされる必要はなく、外来治療で管理可能なレベルに達すれば退院となります。退院前には、外出・外泊を繰り返し、退院後の生活をシミュレーションします。

退院後の支援体制の構築も重要です。外来通院の継続、訪問看護の導入、デイケア・ナイトケアの利用、就労支援、住居の確保などを、入院中から準備します。ケアマネジメント(ACT、包括的地域生活支援)により、多職種チームが連携して支援することもあります。家族の協力も重要で、家族が病気を理解し、適切なサポートができるよう、家族教育を行います。退院は治療の終了ではなく、地域での治療の開始であり、継続的な支援により、再入院を防ぎ、地域での安定した生活を維持することが目標となります。

関連記事:統合失調症の治療法を徹底解説|薬物療法から社会復帰まで

まとめ

統合失調症の入院が必要となるレベルは、幻覚・妄想により日常生活が困難、自傷他害のリスクがある、病識がなく治療を拒否している場合などです。症状の重症度だけでなく、本人の安全、他者の安全、治療の必要性を総合的に判断して入院適応を決定します。早期の適切な入院により、症状の改善と社会復帰が期待できます。

統合失調症の経過は、前駆期、急性期、回復期、安定期に分けられ、急性期が最も入院の必要性が高い時期です。急性期の入院により、24時間の観察、安全な薬物導入、集中的な治療が可能となります。回復期から安定期は外来治療が中心となりますが、再発予防のための継続的な管理が重要です。

入院形態には、任意入院、医療保護入院、措置入院、応急入院の4種類があり、本人の状態により選択されます。任意入院が理想的ですが、病識がない場合は医療保護入院となることが多いです。いずれも治療を目的とし、人権に配慮した運用がなされています。

入院治療は、薬物療法を中心に、精神療法、リハビリテーションを組み合わせた包括的アプローチです。平均入院期間は約3か月ですが、早期退院と地域ケアが推進されています。退院の目安は症状改善、病識獲得、服薬継続、生活能力回復などです。

統合失調症は適切な治療により回復可能な疾患です。入院は一時的な集中治療の場であり、退院後の継続的な外来治療と地域支援により、多くの患者が地域で自立した生活を送ることができます。

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この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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