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寝てしまう病気とは?原因・症状と対策を解説

2025.10.08 精神科訪問看護とは

日中に強い眠気に襲われたり、突然眠り込んでしまう経験はありませんか?「疲れているだけ」と思いがちですが、実は「寝てしまう病気」と呼ばれる睡眠障害や体調不良が隠れている可能性があります。代表的なものにはナルコレプシーや過眠症、睡眠時無呼吸症候群などがあり、放置すると生活や健康に深刻な影響を及ぼすこともあります。

本記事では、寝てしまう病気の原因や症状、診断方法、治療・セルフケアまでを詳しく解説し、早期の対策につなげられるようにご案内します。

寝てしまう病気とは?基本的な意味と背景

なぜ「寝てしまう病気」と呼ばれるのか

「寝てしまう病気」とは、本人の意思に関わらず突然眠ってしまう、あるいは強い眠気に襲われる症状を指す総称です。多くの場合、単なる睡眠不足や疲労と区別がつきにくく、周囲から「怠けている」と誤解されることがあります。

しかし、医学的には過眠症やナルコレプシーなどの睡眠障害をはじめ、ホルモン異常や精神疾患、さらには生活習慣病の一症状として眠気が現れるケースも少なくありません。日常生活や社会生活に大きな支障をきたすため、早期に原因を特定することが重要です。

眠気と疲労・生活習慣の違い

多忙な生活や睡眠不足で眠気を感じるのは自然な反応ですが、寝てしまう病気に該当する眠気はそれとは質が異なります。たとえばナルコレプシーでは、十分な睡眠をとっていても日中に突然強烈な眠気が襲い、仕事や授業中に意識を失うように眠り込んでしまいます。

生活習慣による眠気は休養で改善しますが、病気による眠気は休んでも解消しにくく、繰り返し起こるのが特徴です。そのため「眠いのは疲れのせい」と自己判断せず、継続的に眠気が続く場合は医療機関に相談する必要があります。

受診を検討すべき症状の目安

病的な眠気を疑うべき目安として、日常生活に支障をきたすレベルかどうかが挙げられます。たとえば運転中に強い眠気でハンドルを取られそうになる、会議中や食事中に突然眠り込む、数時間の昼寝をしても疲れが取れないなどのケースです。さらに、夜間の睡眠が十分であるにもかかわらず日中の眠気が改善しない場合や、抑うつ症状や頭痛など他の症状を伴う場合も注意が必要です。このような状況に該当する人は、睡眠外来や神経内科、精神科などでの診察を検討しましょう。

寝てしまう病気の代表例

ナルコレプシー(居眠り病)の特徴

ナルコレプシーは、突然強い眠気が襲い、本人の意思に反して眠ってしまう病気です。日本では約600人に1人の割合で見られ、10代後半から20代前半に発症することが多いといわれています。

代表的な症状には「情動脱力発作(大笑いや驚きで急に力が抜ける)」「睡眠麻痺(金縛り)」「入眠時幻覚」などがあり、日常生活に大きな影響を与えます。周囲から「怠けている」と誤解されやすい点も社会的な問題で、理解とサポートが求められる病気です。

特発性過眠症・反復性過眠症との違い

過眠症にはナルコレプシー以外にも「特発性過眠症」や「反復性過眠症」があります。特発性過眠症は、夜に十分眠っているにもかかわらず強い眠気が続き、長時間の昼寝でも改善しないのが特徴です。一方、反復性過眠症(クライネ・レビン症候群)は、数日から数週間続く強い眠気のエピソードが年に数回繰り返される希少疾患です。いずれも生活や学業に深刻な影響を及ぼすため、専門的な診断と治療が欠かせません。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)による影響

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まることで体内の酸素濃度が低下し、日中に強い眠気を引き起こす病気です。肥満や顎の形態などが原因となることが多く、未治療のまま放置すると高血圧や心筋梗塞、脳卒中など重大な合併症を招くリスクがあります。

日中の居眠りだけでなく、朝の頭痛や熟睡感のなさ、集中力の低下などがある場合は早期に検査を受けることが大切です。

低血糖・ホルモンバランスによる眠気(PMS・更年期など)

低血糖状態では脳に十分なエネルギーが行き渡らず、突然の強い眠気や倦怠感が生じることがあります。また、女性ではPMS(月経前症候群)や更年期におけるホルモンバランスの変化によって眠気が強くなるケースもあります。これらは一見すると睡眠障害と似ていますが、内分泌の異常が背景にあるため、内科や婦人科での診断が必要です。

うつ病や精神疾患に伴う眠気

うつ病や双極性障害などの精神疾患では、症状の一部として過眠が現れることがあります。特にうつ病の中でも「非定型うつ病」では、過食や過眠といった特徴的な症状が出やすいとされています。精神的なストレスや不安感が眠気を悪化させるため、心療内科や精神科での相談が重要です。

ナルコレプシーの詳しい特徴

症状(情動脱力発作・睡眠麻痺・入眠時幻覚)

ナルコレプシーには、他の睡眠障害とは異なる特徴的な症状が見られます。代表的なのが「情動脱力発作」で、大笑いや驚きといった強い感情をきっかけに突然体の力が抜け、倒れ込んでしまうことがあります。

また、眠りに入る直前に体が動かなくなる「睡眠麻痺(金縛り)」や、夢のようなリアルな幻覚を見る「入眠時幻覚」も多くの患者に報告されています。これらの症状は社会生活に大きな支障をきたし、患者本人の不安やストレスを増大させる要因となります。

発症年齢と遺伝的要因

ナルコレプシーは10代から20代前半に発症するケースが多く、学業や就職といった人生の大事な時期に重なるのが特徴です。遺伝的要因も関与しており、特定の遺伝子型(HLA-DQB1*06:02)を持つ人の発症率が高いことが知られています。ただし遺伝だけでなく、免疫系や脳内神経伝達物質の異常が複合的に関わっていると考えられており、原因の全容はまだ解明されていません。

日本人に多いとされる理由

研究によると、ナルコレプシーは欧米に比べて日本や東アジアでの有病率が高いとされています。これは遺伝的背景の違いや生活習慣の影響が関与している可能性があります。また、学校や仕事の文化的背景として長時間の活動が求められることも、症状が目立ちやすい要因のひとつと考えられています。そのため、日本では社会的理解と医療体制の整備が特に重要視されています。

誤解されやすい「怠け癖」との違い

ナルコレプシーの症状は、周囲から「サボっている」「怠けている」と誤解されやすいのが大きな問題です。しかし、実際には脳の覚醒システムに障害がある医学的な病気であり、本人の努力や気合で改善できるものではありません。誤解によって学業や仕事に支障をきたし、社会的孤立や精神的ダメージを受ける患者も少なくありません。病気への正しい理解が、患者の生活の質を守る第一歩となります。

寝てしまう病気の原因とメカニズム

脳の覚醒システムの異常

寝てしまう病気の多くは、脳の覚醒を司るシステムの異常によって起こります。特にナルコレプシーでは、覚醒状態を維持するために必要なオレキシンという神経伝達物質が不足していることが知られています。オレキシンの分泌が低下すると、日中に突然睡眠が入り込んでしまい、強い眠気や居眠りを繰り返すことになります。

レム睡眠とノンレム睡眠の乱れ

通常の睡眠は、深い眠りであるノンレム睡眠と夢を見るレム睡眠が交互に繰り返されます。しかし、ナルコレプシーや過眠症では、このリズムが崩れてレム睡眠が日中に入り込みやすくなります。その結果、突然夢のような幻覚を体験したり、急に力が抜けるなどの症状が生じます。このように、脳の睡眠制御システムの不調が病気の根本にあります。

生活習慣・ストレス・薬の影響

寝てしまう病気は脳の機能障害だけでなく、生活習慣やストレス、薬の副作用によっても悪化することがあります。夜更かしや不規則な勤務形態、過度なカフェインやアルコールの摂取は睡眠の質を低下させ、日中の眠気を助長します。また、一部の薬(抗うつ薬や抗ヒスタミン薬など)にも眠気を誘発する作用があり、病気との区別が難しくなるケースもあります。

診断方法と検査について

睡眠ポリグラフ検査(PSG)

睡眠障害の診断には「睡眠ポリグラフ検査(PSG)」が用いられます。脳波や心電図、呼吸の状態、筋肉の動きなどを一晩かけて記録し、睡眠の質や異常を確認する検査です。睡眠時無呼吸症候群の有無や、レム睡眠・ノンレム睡眠のバランスを調べるのに有効です。

反復睡眠潜時検査(MSLT)

MSLTは、日中に短時間の昼寝を複数回行い、入眠までの時間を測定する検査です。ナルコレプシーでは、5分以内に眠りに入るケースが多く、さらに入眠直後にレム睡眠が始まる「入眠時レム睡眠」が複数回観察されるのが特徴です。この結果から、病的な眠気かどうかを客観的に評価できます。

血液検査やホルモン検査

低血糖やホルモンバランスの乱れによる眠気を疑う場合には、血液検査や内分泌系の検査も行われます。糖尿病や甲状腺機能低下症なども眠気の原因になるため、幅広い可能性を考慮することが必要です。

受診すべき診療科(睡眠外来・精神科・神経内科)

眠気の原因が特定できない場合は、まず睡眠障害を専門とする「睡眠外来」や神経内科を受診するのが適切です。また、うつ病など精神的要因が関わっている場合は精神科や心療内科での診察も重要です。症状に応じて複数の診療科を組み合わせることが、正確な診断と治療に繋がります。

治療方法と対策

薬物療法(中枢刺激薬・抗うつ薬など)

寝てしまう病気の中でも、ナルコレプシーや重度の過眠症では薬物療法が中心となります。代表的なのは中枢神経刺激薬で、日中の強い眠気を抑える効果があります。また、情動脱力発作がある場合には抗うつ薬やレム睡眠を調整する薬が用いられることもあります。薬は医師の判断のもとで処方されるため、自己判断で服用することは避けるべきです。症状に合わせて適切に使い分けることで、日常生活の質を大きく改善できます。

生活習慣の改善(睡眠衛生の整え方)

薬物療法と並行して、生活習慣の改善も重要です。規則正しい生活リズムを心がけ、毎日同じ時間に就寝・起床することで体内時計を安定させることができます。また、寝室の環境を整えて良質な睡眠を確保することも効果的です。具体的には、就寝前にスマホやパソコンを使用しない、カフェインやアルコールの摂取を控える、適度な運動を習慣化するなどが挙げられます。こうした工夫が症状の軽減に繋がります。

昼寝・休憩の取り方

過眠症の患者にとって、適切な昼寝は症状を和らげる有効な手段です。長時間眠ってしまうのではなく、10~20分程度の短い仮眠を日中に取り入れると、眠気が軽減し集中力が回復します。また、事前に休憩時間を決めてスケジュール化しておくことで、無理に起き続けようとせず自然な眠気を調整できます。学校や職場で周囲の理解を得ることが、安心して休憩を取るための大切なポイントです。

家族や職場への理解を得る工夫

寝てしまう病気は外見からはわかりにくいため、周囲の理解が不足しがちです。患者本人が正しく病気を説明し、医師の診断書やパンフレットを活用して周囲に伝えることで誤解を減らせます。特に職場や学校では、症状を隠そうとするよりも、休憩や作業調整が必要であることを共有するほうが長期的に良好な環境を築けます。社会的サポートの有無が、患者の生活の安定に直結するのです。

日常生活でできるセルフケア

睡眠リズムを整えるコツ

セルフケアの基本は「睡眠リズムを整える」ことです。週末に寝だめをするのではなく、平日も休日もできるだけ同じ時間に起床・就寝することが望ましいです。朝はカーテンを開けて自然光を浴びると体内時計がリセットされ、夜の眠気がスムーズに訪れやすくなります。規則的なリズムを繰り返すことで、脳と体が安定した睡眠サイクルを維持できるようになります。

食事・運動・光のコントロール

食生活や運動も眠気のコントロールに影響します。糖質を摂りすぎると血糖値の乱高下で眠気が生じるため、バランスの良い食事を心がけましょう。軽い有酸素運動は睡眠の質を高め、日中の眠気を軽減します。

また、夜間に強い光を浴びると体内時計が乱れるため、就寝前は照明を暗めに設定すると効果的です。光・食事・運動の3要素を整えることは、セルフケアの柱となります。

スマホやカフェインとの付き合い方

寝る直前のスマホやPC使用は、ブルーライトが脳を覚醒させ睡眠を妨げます。就寝の1時間前にはデジタル機器の使用を控えるのが理想です。また、コーヒーやエナジードリンクなどカフェインの摂取は午後以降に避けると夜の睡眠が深まりやすくなります。眠気を一時的に抑える手段としてカフェインを利用する場合もありますが、依存せず計画的に取り入れることが重要です。

相談窓口・医療機関・支援サービス

睡眠障害専門外来

強い眠気や居眠りが続く場合は、睡眠障害を専門とする外来を受診するのが最適です。多くの大学病院や大規模病院には睡眠外来が設置されており、専門的な検査と治療を受けることができます。正しい診断が症状改善の第一歩となります。

精神科訪問看護やカウンセリング

精神疾患との併発がある場合には、精神科訪問看護やカウンセリングが有効です。定期的に専門家が生活をサポートすることで、服薬管理や日常生活の安定が図れます。孤立を防ぐ意味でも、外部サポートを取り入れることが望ましいです。

患者会・サポート団体の活用

日本にはナルコレプシーや睡眠障害に関する患者会が存在し、情報提供や交流の場を提供しています。同じ悩みを持つ人とのつながりは孤独感を和らげ、治療や生活改善へのモチベーションにも繋がります。公的機関やNPOが運営する支援サービスを積極的に活用することが勧められます。

まとめ

「寝てしまう病気」は単なる生活習慣の問題ではなく、脳やホルモンの異常など医学的な要因が関わる場合が多くあります。強い眠気が続くときは自己判断せず、専門医の診断を受けることが重要です。薬物療法や生活習慣の改善によって症状が軽減されるケースも多く、早期発見が回復の鍵となります。また、周囲の理解やサポートを得ることで、患者は安心して社会生活を送ることができます。

日常生活のサポートに関してもご相談があれば、「訪問看護ステーションくるみ」へご相談ください。

この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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