15年という時間を、同じ理容師に髪を切ってもらっている。
それはたぶん、今の時代では少し珍しいことかもしれない。
この15年、僕の肩書きも、働き方も、生活も大きく変わった。
けれど、変わらずに月に一度、髪を整えてもらう場所だけは、ずっと同じだった。
そこには「なんとなく」の安心感ではなく、
「この人に任せておけば大丈夫」という確かな信頼がある。
今回のコラムでは、僕の“色”をつくってきてくれた理容師、庄司さんとの15年を紹介したい。
きっかけは小さな偶然。
でも、それがやがて人生に欠かせない時間へと育っていった。
そんな関係性のことを、少しだけ綴ってみたいと思う。
大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象
“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」
はじまりの出会い
15年前、なんとなく足を運んだ「ヒロ銀座ヘアーサロン」。あの日のことを、今でも少しだけ覚えている。
特に強い目的があったわけではない。ただ、ふらっと立ち寄っただけだった。
最初に担当してくれたのは、明るくてテキパキした女性の理容師さんで、初めてでも安心できる空気を作ってくれる人だった。
ところが、その担当者が突然いなくなってしまった。
辞めたのか異動だったのか、今となってはわからないけれど、
次に僕の髪を切ることになったのは、当時アシスタントとして働いていた庄司さんだった。
マッサージ、髭剃り、シャンプー――それまでの庄司さんは、いわば“補佐役”だった。
でも、どの作業も驚くほど丁寧で、まさに痒いところに手が届く。
そんな印象を持っていたからこそ、「この人に任せてみよう」と思うのに時間はかからなかった。
静かに始まった信頼関係
庄司さんに髪を切ってもらうようになってから、特に大きな“転機”があったわけではない。
けれど、静かに、着実に、信頼は積み重なっていった。
彼のすごさは、「言わなくても伝わる」ことだ。
僕が細かくオーダーをしなくても、そのときの髪の長さ、全体のバランス、季節や気分までを考慮して、最適な仕上がりにしてくれる。
まるで僕の頭の中を見透かしているかのようなカット。
それは、15年経った今も変わらない。
むしろ、その“阿吽の呼吸”は年を重ねるごとに深まっているように思う。
自分のスタイルを任せられる安心感。これ以上の贅沢はない。
色をまとい、印象を操る
ある日、庄司さんに提案された。「ピンク、いけると思いますよ」。
それまで、服にピンクを取り入れることはあっても、髪にその色を乗せるなんて考えたこともなかった。
けれど、彼の提案に乗ってみたところ、これが驚くほどしっくりきた。
その日から、僕の髪に色が宿った。ピンク、グレー、ブルー――
髪色が変わると、服装の自由度も広がった。
最初は「印象を変えたい」という思いから選んだ色も、今では「自分を整えるスイッチ」になっている。
ちなみに最近は、ピンクにしても誰も驚かなくなった。
周囲もすっかり見慣れていて、特別な反応が返ってくることはほとんどない。
でも、自分の中では大きな変化がある。
色を変えることで、心の状態をリセットしたり、再起動したりする。
そんなふうに、髪が僕の内面とリンクしている。
独立という節目、Salon de Lavieへ
庄司さんが「独立することになった」と話してくれたのは、もう10年以上前のことになる。
ヒロ銀座サロンでの経験を経て、彼は自分の店「Salon de Lavie」をオープンさせた。
気がつけば、その店ももう10年を超える。
内装や空気感はまさに“高級理髪店”。
客層も富裕層が多く、経営者やクリエイティブな仕事をしている人たちが多く訪れる。
けれど、そこには気取った空気はなく、ただ居心地の良い空間がある。
経営者としても優れている彼は、多店舗展開にも成功し、組織をまとめる立場にある。
その一方で、僕の髪を今でも変わらず整えてくれている。
その姿を見ていると、職人としての誇りと、経営者としての胆力、その両方を感じるのだ。
髪を預けるということ
ご存知の通り、僕は、生活保護を受けていた時期もあった。
それでも、「庄司さんのカットだけは削れなかった」。
髪を切ることは、見た目を整えるためだけじゃなかったからだ。
“整える”という行為そのものが、戦闘モードへのスイッチだった。
どれだけ生活が苦しくても、庄司さんに会い、髪を整えてもらうと、少し前を向けるようになった。
背筋が伸び、顔が上がる。
そんな時間が、僕にとってどれほど大切だったか、今でもよくわかる。
僕にとって庄司さんは、ただの理容師ではない。
“信頼を預けられる人”。
“自分を仕立て直してくれる人”。
そして、“人生の節目に静かに寄り添ってくれる人”なのだ。
最後に伝えたい感謝
髪を切ること。
それは日常のひとコマかもしれない。
でも、僕にとっては違った。
月に一度、あるいは2ヶ月に一度、自分の輪郭を整え、気持ちをリセットするための大切な儀式だった。
15年間、変わらぬ信頼で僕の髪を預かってくれた庄司さん。
経営者同士として、マネジメントの悩みを共有した日も、
「どうしましょうか?」「お任せしますよ」の会話から始まった日も、
すべてが心のどこかに刻まれている。
これからも、たぶん僕は髪のことをあまり多くは語らない。
でも、「任せます」と言い続けることで、
僕はこの信頼の証を守っていきたいと思っている。
庄司さん、これからも、僕の色をつくってください。
そしてまた、いつもの椅子で、静かに言葉を交わしましょう。
- SALON DE LAVIE 個人サロンで
- 庄司さんと僕
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