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ADHD病院診断ガイド|受診科・検査方法・費用を徹底解説

2025.10.09 精神科訪問看護とは

「集中力が続かない」「忘れ物が多い」「じっとしていられない」こうした症状に心当たりがあり、ADHDかもしれないと感じている方は多いのではないでしょうか。

ADHDの適切な診断を受けることは、自分の特性を理解し、必要な支援を受けるための第一歩です。しかし、どの診療科を受診すればよいのか、どのような検査が行われるのか、費用はどれくらいかかるのかなど、不安や疑問を抱えている方も少なくありません。

本記事では、ADHDの診断を検討している方に向けて、受診すべき診療科、具体的な検査方法、費用、そして診断後に利用できる支援制度まで、包括的に解説します。

ADHDの診断は何科を受診すべきか

ADHDの診断を希望する場合、適切な診療科を選ぶことが重要です。年齢や症状によって受診先が異なるため、ここでは詳しく解説します。

子どもの場合の受診科

子どものADHD診断では、児童精神科が第一選択となります。児童精神科は18歳未満の子どもの精神的な問題を専門に扱う診療科で、ADHDを含む発達障害の診断と治療に精通しています。児童精神科医は、子どもの発達段階を考慮した評価を行い、学校生活や家庭での困りごとに対して包括的なアプローチを提供します。しかし、児童精神科は全国的に数が限られており、初診まで数ヶ月待つことも珍しくありません。

児童精神科が見つからない場合は、小児科の発達外来や小児神経科も選択肢となります。これらの診療科でも、ADHDの診断が可能な医師が在籍していることがあります。また、地域の発達障害者支援センターに相談すると、適切な医療機関を紹介してもらえることがあります。大学病院や総合病院の小児科では、発達障害専門外来を設けているところもあり、専門的な診断を受けることができます。受診の際は、保護者からの詳細な成育歴の聞き取りが重要となるため、母子手帳や園・学校からの連絡帳など、子どもの発達に関する資料を持参することが推奨されます。

大人の場合の受診科

大人のADHD診断は、精神科または心療内科を受診します。最近では「大人の発達障害外来」を設けている医療機関も増えており、ADHDを専門的に診断・治療できる体制が整いつつあります。精神科と心療内科の違いについて、精神科は精神症状全般を扱い、薬物療法を中心とした治療を行います。一方、心療内科は心理的要因による身体症状も含めて診療し、心理療法も積極的に取り入れる傾向があります。ADHDの診断においては、どちらの科でも対応可能ですが、医師の専門性や経験によって診断の精度が異なることがあります。

大人のADHDは、子ども時代から症状があったにも関わらず、見過ごされてきたケースが多く見られます。そのため、診断には幼少期からの詳細な聞き取りが必要となります。可能であれば、親や兄弟など、幼少期を知る家族に同伴してもらうことで、より正確な情報収集ができます。また、職場での困りごとや日常生活での支障について、具体的なエピソードをメモしておくと、診察時に役立ちます。初診時は時間がかかることが多いため、予約時に初診にかかる時間を確認しておくことをお勧めします。

病院選びのポイント

ADHD診断を受ける医療機関を選ぶ際は、いくつかの重要なポイントがあります。まず、発達障害やADHDの診療経験が豊富な医師がいるかどうかを確認することが大切です。医療機関のホームページで医師の専門分野や経歴を確認したり、電話で問い合わせたりすることができます。日本児童青年精神医学会や日本ADHD学会の認定医・専門医がいる医療機関は、専門性が高いと考えられます。

アクセスの良さも重要な要素です。ADHDの診断後も継続的な通院が必要となることが多いため、自宅や職場から通いやすい場所にある医療機関を選ぶことが望ましいです。また、診察の待ち時間や予約の取りやすさも考慮すべき点です。初診まで長期間待つ必要がある場合は、その間に地域の発達障害者支援センターなどで相談を受けることも検討しましょう。さらに、心理検査の実施体制が整っているか、必要に応じて心理士によるカウンセリングを受けられるか、薬物療法以外の支援も提供しているかなども、確認しておくとよいでしょう。費用面では、保険診療か自由診療か、検査費用はどの程度かかるかなども事前に確認することが重要です。

ADHDの診断方法と検査内容

ADHDの診断は、複数の評価方法を組み合わせて総合的に判断されます。ここでは、具体的な診断プロセスと検査内容について詳しく説明します。

問診による詳細な聞き取り

ADHDの診断において最も重要なのは、医師による詳細な問診です。問診では、現在の症状だけでなく、幼少期からの発達歴、学校での様子、家族歴などが詳しく聞かれます。ADHDの診断基準では、症状が12歳以前から存在していることが必要とされるため、子ども時代のエピソードは特に重要です。不注意症状については、宿題を忘れる頻度、物をなくすことの多さ、指示を聞き逃すことなどが確認されます。多動性・衝動性症状については、授業中の離席、順番を待てない、他人の話に割り込むなどの行動が評価されます。

成人の場合は、職場での困りごとも詳しく聞かれます。締め切りを守れない、ケアレスミスが多い、会議中に集中できない、デスクが整理できないなど、具体的な困難について話すことが求められます。また、これらの症状が複数の場面(家庭、職場、社交場面など)で見られることも診断の重要な要件です。さらに、他の精神疾患(うつ病、不安障害、双極性障害など)との鑑別診断も行われます。ADHDと似た症状を示す疾患も多いため、慎重な評価が必要です。家族にADHDや他の精神疾患がある場合は、遺伝的要因も考慮されます。

心理検査・知能検査

心理検査は、ADHDの診断を補助し、認知機能の特徴を把握するために実施されます。代表的な検査として、WAIS-IV(成人用)やWISC-IV(児童用)などの知能検査があります。これらの検査では、言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度の4つの指標が測定されます。ADHDの人は、特にワーキングメモリーと処理速度の指標が低い傾向があることが知られています。ただし、知能検査の結果だけでADHDを診断することはできず、あくまで補助的な情報として活用されます。

連続遂行課題(CPT)は、持続的注意力を評価する検査で、画面に表示される刺激に対して適切に反応する能力を測定します。ADHDの人は、見逃しエラーや誤反応が多く、反応時間のばらつきが大きいという特徴があります。また、実行機能を評価する検査として、ウィスコンシンカード分類課題やストループ課題なども用いられることがあります。これらの検査により、計画性、柔軟性、抑制機能などの実行機能の問題を客観的に評価できます。心理検査は通常、臨床心理士や公認心理師によって実施され、結果は医師の診断に活用されます

評価スケール・質問票

ADHDの症状を定量的に評価するため、標準化された評価スケールが使用されます。代表的なものとして、CAARS(Conners成人ADHD評価スケール)があります。これは自己記入式と観察者評価式があり、不注意、多動性・衝動性、自己概念の問題などを評価します。子どもの場合は、ADHD-RS(ADHD評価スケール)やConners 3などが用いられ、保護者と教師の両方から情報を収集することが一般的です。

ASRS-v1.1(成人ADHDセルフレポートスケール)は、WHOが開発したスクリーニングツールで、18項目の質問で構成されています。これは初診前の自己チェックとしても活用でき、医療機関のウェブサイトで公開されていることもあります。ただし、これらの評価スケールだけで診断することはできず、臨床面接や他の検査結果と合わせて総合的に判断されます。また、症状の重症度を評価し、治療効果を測定するためにも、これらのスケールは定期的に使用されます。日本では、文化的背景を考慮した日本版の評価スケールも開発されており、より正確な評価が可能になっています

ADHDの診断基準と診断プロセス

ADHDの診断は国際的な診断基準に基づいて行われます。診断プロセスを理解することで、受診時の準備や心構えができます。

DSM-5による診断基準

ADHDの診断には、アメリカ精神医学会が発行するDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)の診断基準が広く用いられています。DSM-5では、ADHDを「不注意症状」と「多動性・衝動性症状」の2つの症状群に分類し、それぞれ9項目の症状が挙げられています。診断には、不注意症状、多動性・衝動性症状のいずれか、または両方において、6項目以上(17歳以上の青年・成人では5項目以上)の症状が6ヶ月以上持続している必要があります。

重要な診断基準として、症状が12歳以前から存在していること、症状が2つ以上の状況(家庭、学校、職場など)で確認されること、症状が社会的、学業的、職業的機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしていることが挙げられます。また、症状が他の精神疾患(統合失調症、気分障害、不安障害など)ではうまく説明されないことも必要条件です。DSM-5では、ADHDを「不注意優勢型」「多動・衝動優勢型」「混合型」の3つのタイプに分類していますが、これらは固定的なものではなく、年齢とともに変化することがあります

鑑別診断の重要性

ADHDの診断において、他の疾患との鑑別は極めて重要です。ADHDと似た症状を示す疾患は多く、誤診を避けるため慎重な評価が必要です。自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的コミュニケーションの困難さや限定的な興味・反復行動が特徴ですが、注意の問題や多動性を伴うことがあり、ADHDとの鑑別が必要です。実際、ADHDとASDは併存することも多く、両方の診断がつくケースもあります。

気分障害(うつ病、双極性障害)も鑑別が重要です。うつ病では集中力低下や精神運動焦燥が見られ、双極性障害の躁状態では多動性や衝動性が顕著になります。不安障害では、過度の心配により注意が散漫になることがあります。また、学習障害、知的障害、睡眠障害、甲状腺機能異常、薬物の影響なども考慮する必要があります。特に成人では、長年の未診断によりうつ病や不安障害を併発していることが多く、これらの二次障害とADHDの症状を区別することが診断の鍵となります。包括的な評価により、正確な診断と適切な治療計画の立案が可能になります

診断にかかる期間

ADHDの診断プロセスは、通常複数回の受診を要し、初診から確定診断まで1〜3ヶ月程度かかることが一般的です。初診では、主に問診による情報収集が行われ、1〜2時間程度の時間を要します。この際、現在の症状、成育歴、家族歴、既往歴などが詳しく聞かれます。初診時に心理検査の予約を取り、後日実施することが多いです。心理検査は種類によって異なりますが、2〜4時間程度かかることがあり、複数回に分けて実施されることもあります。

2回目以降の受診では、心理検査の結果のフィードバック、追加の問診、評価スケールの記入などが行われます。必要に応じて、家族や配偶者からの情報収集、学校や職場からの情報提供を求められることもあります。また、身体疾患の除外のため、血液検査や脳波検査、MRIなどが実施されることもあります。すべての評価が終了した後、医師が総合的に判断して診断を確定します。診断後は、治療方針の説明、薬物療法の開始、心理教育などが行われます。医療機関によっては、診断プロセスを短縮するため、1日がかりで集中的に検査を行うところもありますが、これは例外的です。

ADHD診断にかかる費用

ADHD診断の費用は、保険適用の有無や検査内容によって大きく異なります。事前に費用を把握しておくことで、安心して受診できます。

保険診療での費用目安

ADHDの診断は基本的に保険診療の対象となり、3割負担の場合の費用目安は以下の通りです。初診料は約1,000〜1,500円程度で、これに診察料が加わります。心理検査については、知能検査(WAIS-IV、WISC-IVなど)が約1,500〜2,000円、その他の神経心理学的検査が各500〜1,000円程度です。複数の検査を組み合わせて実施する場合でも、保険診療では1日の検査料に上限があるため、総額で3,000〜5,000円程度に収まることが多いです。

血液検査や脳波検査などの追加検査が必要な場合は、それぞれ1,000〜3,000円程度の追加費用がかかります。診断確定までの総額は、検査の種類や回数にもよりますが、10,000〜20,000円程度が一般的です。ただし、医療機関によっては初診時に詳細な問診のため長時間の診察枠を設けており、この場合は初診料が高くなることがあります。また、診断書の発行には別途費用(3,000〜5,000円程度)がかかります。自立支援医療制度を利用すると、自己負担が1割に軽減されるため、継続的な通院が必要な場合は申請を検討することをお勧めします

自由診療の場合の費用

一部の専門クリニックでは、自由診療でADHD診断を行っています。自由診療の場合、費用は医療機関が独自に設定するため、保険診療と比べて高額になります。初診料は10,000〜30,000円、心理検査は1種類あたり10,000〜20,000円程度が相場です。包括的な評価パッケージとして、初診から診断確定までを50,000〜100,000円で提供している医療機関もあります。自由診療のメリットは、待ち時間が短い、十分な診察時間が確保される、きめ細やかな検査が受けられるなどが挙げられます。

自由診療を選択する理由として、保険診療では初診まで数ヶ月待ちという状況があります。早急に診断を受けたい場合や、セカンドオピニオンを求める場合に自由診療を利用する人が多いです。また、海外の最新の検査法や治療法を取り入れている医療機関もあり、より詳細な評価を希望する場合に選択されることがあります。ただし、診断後の継続的な治療も自由診療となると経済的負担が大きくなるため、診断は自由診療で受け、その後は保険診療の医療機関に転院するケースもあります。費用については事前に十分な説明を受け、納得した上で受診することが重要です。

検査費用を抑える方法

ADHD診断の費用を抑えるためには、いくつかの方法があります。まず、地域の発達障害者支援センターや精神保健福祉センターで事前相談を受けることで、適切な医療機関の紹介を受けられ、不必要な検査を避けることができます。これらの公的機関での相談は無料で、専門スタッフが症状の整理や受診準備のサポートをしてくれます。また、大学病院や公立病院は、私立のクリニックと比べて検査費用が抑えられることが多いです。

健康保険の高額療養費制度を活用することも検討しましょう。月額の医療費が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。また、医療費控除を利用すると、年間の医療費が一定額を超えた場合、税金の還付を受けることができます。診断書や領収書は必ず保管しておきましょう。学生の場合は、大学の保健センターや学生相談室で初期的な評価を受けられることがあり、提携医療機関への紹介も受けられます。企業に勤めている場合は、産業医や従業員支援プログラム(EAP)を通じて、費用補助を受けられる可能性もあります。事前に利用可能な制度を確認し、計画的に受診することが大切です。

診断後に利用できる支援制度

ADHDと診断された場合、様々な支援制度を利用することができます。これらの制度を活用することで、生活の質の向上が期待できます。

精神障害者保健福祉手帳

ADHDと診断された場合、精神障害者保健福祉手帳の取得が可能です。この手帳は、精神障害のために日常生活や社会生活に制限がある人を支援するための制度です。手帳は障害の程度により1級から3級に分類され、ADHDの場合は主に2級または3級に該当することが多いです。申請には、初診から6ヶ月以上経過していることが条件で、医師の診断書が必要です。手帳の有効期限は2年間で、更新手続きが必要です。

手帳を取得することで受けられる支援は多岐にわたります。所得税・住民税の障害者控除、公共交通機関の運賃割引、公共施設の利用料減免、携帯電話料金の割引などがあります。また、障害者雇用枠での就職が可能になり、職場での合理的配慮を受けやすくなります。自治体によっては、独自の支援制度を設けているところもあり、医療費助成、福祉タクシー券の交付、駐車禁止除外指定などが受けられることがあります。手帳の取得は任意であり、必要に応じて利用を検討することができます。プライバシーも保護されており、本人の同意なく情報が開示されることはありません。

自立支援医療制度

自立支援医療(精神通院医療)制度は、ADHDを含む精神疾患の通院治療にかかる医療費の自己負担を軽減する制度です。通常3割負担の医療費が1割負担になり、所得に応じて月額の上限額が設定されます。対象となるのは、指定医療機関での診察、薬物療法、デイケア、訪問看護などです。ADHDの治療薬は高額なものが多いため、この制度を利用することで経済的負担を大幅に軽減できます。

申請手続きは、市町村の障害福祉担当窓口で行います。必要書類は、申請書、医師の診断書(意見書)、健康保険証、所得を証明する書類などです。診断書の作成には費用がかかりますが、制度利用による医療費削減効果を考えると、十分に元が取れます。有効期限は1年間で、継続する場合は更新手続きが必要です。更新時は、2回に1回は診断書の提出が不要な簡易更新が可能です。この制度は、精神障害者保健福祉手帳がなくても利用でき、手帳取得前から医療費負担を軽減できる重要な支援制度です。

就労支援サービス

ADHDの診断を受けた人は、様々な就労支援サービスを利用することができます。ハローワークの障害者専門窓口では、障害特性に配慮した職業相談、職業紹介、就職後の定着支援などを受けられます。専門の相談員が、個々の特性や希望に応じた求人の紹介、応募書類の作成支援、面接対策などをサポートします。障害者雇用枠での就職を希望する場合、企業側も法定雇用率の達成のため積極的に採用を行っており、一般枠と比べて配慮を受けやすい環境で働くことができます。

就労移行支援事業所では、一般企業への就職を目指す訓練を受けることができます。最長2年間、ビジネスマナー、パソコンスキル、コミュニケーション訓練などを学び、実習を通じて実践的な就労スキルを身につけます。ADHDの特性に応じた個別支援計画が作成され、苦手な部分を補う方法や、強みを活かす方法を学べます。就労継続支援A型・B型事業所では、一般企業での就労が困難な場合でも、福祉的な配慮のもとで働く機会が提供されます。また、ジョブコーチ支援制度では、職場に専門スタッフが訪問し、本人と職場の両方をサポートすることで、職場定着を促進します

診断を受けない場合でも利用できる支援

ADHDの診断基準を満たさない場合や、診断を受ける前の段階でも、様々な支援を利用することができます。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、発達障害の診断の有無に関わらず、発達障害の可能性がある人とその家族を支援する公的機関です。全都道府県・政令指定都市に設置されており、相談は無料で受けることができます。センターでは、日常生活の困りごとの相談、医療機関の情報提供、福祉サービスの利用支援、就労相談など、幅広い支援を提供しています。専門の相談員が、個々の状況に応じた助言や情報提供を行い、必要に応じて他の支援機関との連携も図ります。

センターの大きな特徴は、診断前の段階から相談できることです。「ADHDかもしれない」という不安を抱えている人に対して、症状の整理、セルフケアの方法、受診の必要性の判断などをサポートします。また、家族向けの支援も充実しており、ペアレントトレーニング、家族教室、ピアサポートグループなどが開催されています。学校や職場への啓発活動も行っており、合理的配慮の調整や環境整備のアドバイスも提供しています。地域によっては、心理検査の実施、ソーシャルスキルトレーニング、余暇活動支援なども行っています。継続的な相談が可能で、ライフステージに応じた支援を受けることができます

教育機関での支援

学校教育においては、診断の有無に関わらず、学習や生活に困難を抱える児童生徒への支援体制が整備されています。通常学級に在籍しながら、週に数時間、個別指導を受けることができる「通級による指導」は、ADHDの特性に応じた支援を提供します。ここでは、注意力を高めるトレーニング、感情コントロールの方法、学習方法の工夫などを学ぶことができます。また、特別支援教育コーディネーターが中心となって、個別の教育支援計画を作成し、児童生徒のニーズに応じた配慮を行います。

スクールカウンセラーは、児童生徒の心理的な支援を行う専門職で、定期的な面談を通じて、学校生活の困りごとに対応します。保護者の相談にも応じ、家庭での関わり方についてアドバイスを提供します。また、スクールソーシャルワーカーは、家庭環境の問題にも対応し、必要な福祉サービスにつなぐ役割を担います。大学では、障害学生支援室が設置されており、履修登録の支援、試験時間の延長、レポート提出期限の配慮などの合理的配慮を提供しています。これらの支援は、診断書がなくても、困りごとの内容に応じて利用可能な場合が多く、まずは相談してみることが大切です。

民間の支援サービス

診断の有無に関わらず利用できる民間の支援サービスも充実してきています。発達障害専門の学習塾や療育機関では、個々の特性に応じた指導を受けることができます。これらの施設では、認知特性を評価し、効果的な学習方法を提案したり、ソーシャルスキルトレーニングを提供したりしています。オンラインでのサポートも増えており、遠方に住んでいても専門的な支援を受けることが可能です。

コーチングサービスは、ADHDの特性を持つ人の目標達成をサポートする個別支援です。時間管理、整理整頓、優先順位の付け方など、日常生活で困っている具体的な課題に対して、実践的な解決策を一緒に考えます。定期的なセッションを通じて、習慣化を促し、自己管理能力の向上を図ります。また、当事者会や家族会などのピアサポートグループも各地で活動しており、同じ悩みを持つ人々との交流や情報交換ができます。オンラインコミュニティも活発で、匿名で参加できるものも多く、気軽に相談や情報収集ができます。これらのサービスは有料のものが多いですが、自分に合った支援を選択できる利点があります。

まとめ:ADHDの診断と支援を受けるために

ADHDの診断を検討している方にとって、適切な情報を得て、必要な支援につながることは非常に重要です。本記事で解説した内容を踏まえ、診断と支援を受けるための重要なポイントをまとめます。

ADHDの診断は、児童精神科、精神科、心療内科などの専門医療機関で受けることができます。診断プロセスには、詳細な問診、心理検査、評価スケールの記入などが含まれ、通常1〜3ヶ月程度の期間を要します。費用は保険診療で10,000〜20,000円程度が目安ですが、自由診療の場合はより高額になります。診断基準は国際的なガイドラインに基づいており、症状が12歳以前から存在し、複数の場面で機能障害を引き起こしていることが必要です。

診断後は、精神障害者保健福祉手帳や自立支援医療制度などの公的支援を利用でき、医療費の軽減や様々な福祉サービスを受けることができます。また、診断がつかない場合でも、発達障害者支援センターや教育機関での支援、民間のサービスなど、利用可能な支援は多くあります。

最も重要なのは、一人で悩まず、専門家に相談することです。ADHDは適切な支援により、その特性を強みに変えることも可能です。まずは地域の発達障害者支援センターに相談し、自分に合った支援の道筋を見つけていくことをお勧めします。早期の適切な支援により、より充実した生活を送ることができるでしょう。

この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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