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不安障害の原因を徹底解説|遺伝・環境・脳機能の3方向から理解する

精神科訪問看護とは

不安障害は、強い不安や恐怖を長期間感じ続けてしまう精神疾患の一つです。「自分でもコントロールできない不安が続く」「理由もなく動悸や息苦しさを感じる」といった状態に悩む方も少なくありません。

不安障害は心の弱さではなく、脳や体、環境など複数の要因が重なって起こる病気です。この記事では、最新の医学的視点から不安障害の原因を詳しく解説し、理解を深めることで改善への第一歩をサポートします。

不安障害とはどのような病気か

不安障害とは、強い不安や恐怖が長期間続き、生活に支障をきたす疾患です。心配や緊張は誰にでもありますが、不安障害ではその反応が過剰に働き、脳や体にストレス反応が固定化してしまいます。

脳内で「危険を感じる神経回路」が過敏に作動し、危険ではない状況にも警戒信号を出し続けるのです。

不安障害の主な原因

不安障害は単一の原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って起こります。遺伝的素因、脳内の神経伝達物質の乱れ、過去のトラウマやストレス、そして個人の性格傾向などが関係します。ここでは、不安障害の主要な5つの原因を解説します。

遺伝的な要因

不安障害には「生まれ持った不安を感じやすい気質」が関係しているといわれています。双子を対象とした研究では、一卵性双生児の片方が発症した場合、もう一方も発症する確率が一般人口より高いことが確認されています。

これは、不安を感じやすい遺伝的傾向が存在することを示しています。ただし、遺伝が直接的に病気を引き起こすわけではありません。むしろ環境要因や生活習慣、ストレスとの組み合わせによって発症リスクが高まるのです。遺伝は「不安を抱えやすい素地」を作るに過ぎず、環境次第で症状の有無が大きく変わります。

脳内の神経伝達物質の異常

脳の中では、感情や思考をコントロールするために神経伝達物質が働いています。特にセロトニン、ノルアドレナリン、GABA(ギャバ)は不安のコントロールに深く関係します。セロトニンが不足すると、感情の安定を保てず、不安が過剰に高まる傾向があります。

一方、ノルアドレナリンが過剰に分泌されると、体が「危険が迫っている」と誤認し、動悸や息苦しさが現れます。さらに、GABAが減少すると神経の鎮静作用が弱まり、不安を抑えにくくなります。ストレスや睡眠不足、加齢によってこれらのバランスが崩れることも、不安障害の発症に関与します。

環境的な要因(ストレス・トラウマ)

過去の体験や長期間のストレスも不安障害の大きな原因です。幼少期の虐待、いじめ、事故、災害、親との不和などは脳に「恐怖記憶」として刻まれ、将来のストレス反応に影響を及ぼします。成人後も、仕事や家庭のプレッシャー、人間関係の摩擦などが不安の引き金になります。

長期間のストレスは脳の扁桃体を過敏にし、「安心する」という感覚を感じにくくすることがあります。また、環境的要因は回避行動を強化し、外出や人との関わりを避けるようになって悪循環を生みます。

性格・気質の影響

不安障害を発症しやすい人には一定の性格傾向があります。几帳面で責任感が強い、完璧主義、他人にどう思われるかを気にする、人の期待に応えようとしすぎる、こうした特徴がある人はストレスに対して敏感に反応します。

「失敗してはいけない」「怒らせてはいけない」と考えやすい人ほど、慢性的な緊張状態に陥りやすいのです。こうした気質は変えにくい部分もありますが、認知行動療法によって思考のパターンを柔軟に変えることで、不安の感じ方を和らげることができます。

薬物・アルコールなどの影響

薬物やアルコールも、不安障害を引き起こす一因となります。抗不安薬や睡眠薬を長期間服用している場合、突然やめることで離脱症状が起こり、不安が強くなることがあります。また、アルコール依存も不安症状と密接に関係します。

飲酒は一時的にリラックス効果をもたらしますが、翌日に不安が増大する「リバウンド不安」を引き起こします。アルコールや薬物に頼る習慣は、一見落ち着くように見えても、不安を慢性化させる原因になるのです。

不安障害の種類と症状

不安障害には複数のタイプが存在し、原因や症状の出方が異なります。ここでは、代表的な3つのタイプを紹介します。

パニック障害

突然、激しい動悸や息苦しさ、めまいなどが起こり、「このまま死ぬのではないか」という強い恐怖を感じるのがパニック障害です。

発作自体は数分〜数十分で収まりますが、再び起こるのではという「予期不安」によって外出や人前を避けるようになります。パニック障害の根底には、脳の誤作動による「危険信号の誤発」があります。治療では薬物療法と心理療法を併用し、身体感覚への過敏さを軽減していきます。

関連記事:パニック障害の初期症状とは?自宅でできる4つの対処法と精神科での治療のポイント

社交不安障害

社交不安障害(社会不安障害)は、人前で話す、注目される、食事をするなど日常的な場面で強い不安を感じる障害です。脳の扁桃体が過剰に反応し、人の視線を「脅威」として認識します。

過去に恥ずかしい思いをした経験や、過剰な自己意識が発症に関与します。社交不安障害は単なる“あがり症”ではなく、脳の反応が過敏に働いている医学的な疾患です。治療では、状況への慣れを促す「曝露療法」が有効とされています。

全般性不安障害

全般性不安障害は、特定の状況に限らず「常に心配してしまう」状態が続く障害です。仕事や家族、健康など、日常のあらゆることに過剰な不安を感じます。頭痛や肩こり、胃の不快感など身体症状も伴うことが多く、生活の質を下げる要因になります。

不安の焦点が次々に移るのが特徴で、心が常に休まらない状態になります。薬物療法と心理療法を併用することで改善が期待できます。

不安障害を悪化させる要因

不安障害は、治療を受けることで回復が見込める病気ですが、生活習慣や考え方、環境によって悪化することもあります。悪化の背景には、脳や心の働きだけでなく、日々の過ごし方が密接に関係しています。症状が強くなる前に、自分の生活を見直し、悪循環を防ぐことが大切です。ここでは、不安を悪化させやすい主な要因を3つの視点から解説します。

過度な自己否定

自分に対して厳しすぎる思考は、不安障害を長引かせる最大の原因の一つです。「自分はダメだ」「うまくやれない」「周りに迷惑をかけている」といった自己否定的な考え方は、脳内でストレスホルモンの分泌を促し、不安を感じやすくする神経回路を強化してしまいます。つまり、自己否定の言葉は“脳の危険信号”として働き、不安を持続させてしまうのです。

また、完璧主義な人ほど「失敗してはいけない」と自分を追い詰めやすく、常に緊張状態に置かれます。こうした状態が続くと、身体的にも疲労が蓄積し、心身のバランスが崩れてしまいます。

改善のためには、自分を否定するのではなく「うまくいかないこともある」「努力している自分も認めよう」と考え方を切り替えることが大切です。認知行動療法などの心理的支援を受けることで、自己否定のパターンを客観的に見直しやすくなります。

睡眠不足・生活リズムの乱れ

睡眠不足や生活リズムの乱れは、不安を悪化させる大きな要因です。睡眠中、脳は情報を整理し、ストレスを処理する働きをしています。しかし睡眠時間が不足したり、夜更かしや不規則な生活を続けたりすると、脳の回復機能が低下します。その結果、感情をコントロールする前頭葉の働きが弱まり、ささいな刺激にも過剰に不安を感じるようになります。十分な睡眠は「脳のリセットボタン」として機能し、不安を抑えるために不可欠です。

 また、睡眠の質が悪いとセロトニンやメラトニンといった神経伝達物質の分泌が乱れ、情緒不安定になりやすくなります。夜中にスマートフォンの画面を見る、カフェインを摂りすぎるなどの行動も要注意です。

寝る前の1時間はデジタル機器を避け、照明を落としてリラックスできる環境を整えるとよいでしょう。朝に太陽光を浴びることで体内時計が整い、心身のリズムを回復させることができます。

孤立・サポート不足

不安障害を抱える人の多くが、周囲に相談できずに一人で悩みを抱え込んでしまいます。孤立は、不安の増幅を引き起こす最大のリスクです。人は本来、他者とのつながりによって安心感を得る生き物です。孤独な環境は「自分は誰にも理解されない」という思考を強化し、不安を増大させてしまいます。

家族や友人、同僚など、身近な人とコミュニケーションを取ることが回復の助けになります。特に、「話す」こと自体が不安の軽減につながることが科学的にも証明されています。感情を言葉にすることで脳内の扁桃体の活動が鎮まり、過剰な恐怖反応が落ち着くのです。

さらに、専門家によるカウンセリングや訪問看護などの支援を受けることで、症状の変化に合わせた的確なアドバイスやケアを受けることができます。 孤立を防ぐためには、「助けを求めることは弱さではなく、回復への積極的な一歩」と認識することが重要です。

地域支援センターや医療機関、訪問看護ステーションなど、信頼できる支援先を持つことで、不安の悪循環から抜け出しやすくなります。

情報過多と不安の増幅

現代では、インターネットやSNSを通じて膨大な情報に触れる機会が増えています。健康やメンタルに関する情報を検索するうちに、「自分の症状がもっと深刻なのでは」と感じ、不安が増すケースも少なくありません。不安を解消するための情報収集が、かえって不安を強化する“情報依存”に陥ることもあるのです。

特にSNSでは他人の成功や幸せな投稿を見ることで自己否定が強まり、孤独感や劣等感が悪化する場合もあります。信頼できる医療機関や公的機関の情報を選び、必要以上に検索しないことが大切です。情報の取り扱い方を見直すだけでも、心の負担を大幅に減らすことができます。

不規則な食生活と運動不足

食事や運動はメンタルと密接に関わっています。糖質の摂りすぎやジャンクフード中心の食生活は、血糖値の急上昇・下降を引き起こし、情緒を不安定にします。また、ビタミンB群やマグネシウム、トリプトファンなど、脳内の神経伝達物質を作る栄養素が不足すると、セロトニンの生成が低下し、心が落ち込みやすくなります。「食事は脳のエネルギー源」であり、不安をコントロールする土台です。

 一方、運動不足も不安の温床となります。軽い有酸素運動やストレッチを行うだけで、脳内の血流が改善し、ストレスホルモンの分泌が減少します。特にウォーキングやヨガは、リラックス効果が高く、不安症状を和らげるのに効果的です。無理のない範囲で体を動かすことを習慣にしましょう。

不安障害を改善するためのアプローチ

不安障害を改善するためには、薬物療法や心理療法だけでなく、生活環境の整備とサポート体制づくりが欠かせません。治療を継続しながら、生活全体を見直すことが回復への近道になります。

精神科・心療内科での治療

精神科や心療内科では、症状や原因に合わせて薬物療法と心理療法を組み合わせて行います。抗不安薬や抗うつ薬は脳内の神経伝達物質のバランスを整え、不安を和らげます。治療の目的は「不安をなくすこと」ではなく、「不安と共に安定して生きる力を取り戻すこと」です。

薬だけに頼らず、心理士や精神科医との定期的なカウンセリングを通じて思考の傾向を理解し、再発を防ぐ取り組みを行います。治療の経過は人によって異なるため、焦らず医師と相談しながら少しずつ改善を目指すことが重要です。

認知行動療法(CBT)

認知行動療法では、不安を生み出す思考パターンに気づき、現実的な考え方に修正していきます。人は「不安な思考→身体反応→回避行動」というサイクルを無意識に繰り返しています。CBTでは、このサイクルを意識的に止め、現実に即した視点で出来事を捉える練習をします。「不安を避ける」のではなく「不安と向き合う」訓練が、長期的な回復につながります。

セラピストと一緒に、不安を感じる場面を段階的に体験する“曝露法”を取り入れることも多く、成功体験を重ねることで自己効力感が高まります。最近ではオンラインで受けられるプログラムも増えており、継続しやすい環境が整っています。

生活習慣の見直しとサポート活用

心の回復には、体の健康が欠かせません。十分な睡眠とバランスの取れた食事、軽い運動を取り入れることで、脳内の神経伝達物質が整いやすくなります。さらに、社会的なつながりを保つことも大切です。家族や友人、専門機関と定期的にコミュニケーションを取ることで、孤立感を防ぎます。「誰かに頼る」という行動は、回復への前向きな力になります。

訪問看護や地域支援サービスでは、医療だけでなく生活面でのサポートも受けられます。例えば服薬管理、相談支援、日常生活の助言など、継続的に寄り添う支援体制が整っています。支援を受けることで安心感が生まれ、不安障害の再発防止にもつながります。

関連記事:不安障害の支援方法を徹底解説:症状別アプローチと回復に向けた支援の重要性

まとめ

不安障害の原因は、遺伝や脳の働き、環境、性格などが重なって発症します。原因を知ることは、自分を理解し、責めずに治療へ進むための大切な一歩です。不安障害は適切な治療と支援で確実に改善が見込まれる病気です。精神的な不安を感じている方は、一人で悩まず専門家に相談してください。

地域連携を行う「訪問看護ステーションくるみ」では、医師や福祉機関と連携しながら、あなたとご家族を丁寧に支えます。どうか一人で抱え込まず、ご相談ください。

この記事を監修した人

石飛美春

株式会社Make Care Webクリエイター

石飛 美春

看護師 / Webクリエイター

看護師として臨床を経験後、一度Web業界に転身。ものづくりの楽しさを知る一方で、やはり人と関わる現場に戻りたいという想いから、訪問看護ステーションくるみに入職。現在は訪問業務とあわせて、Web制作の経験を活かし、HPやSNSの更新を担当している。

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