最近、ちょっとしたことでイライラしてしまったり、怒りが抑えられなかったりすることはありませんか?「自分は性格が悪いのかも」と思ってしまう人も多いですが、実はそれはうつ病の一症状として現れることがあります。うつ病によるイライラは、脳や心のバランスの乱れによって起こる「仕方のないこと」です。この記事では、うつ病によるイライラの原因から、今日からできる具体的な対処法までを丁寧に解説します。
うつ病でイライラしてしまうのはなぜ?

うつ病と聞くと「気分の落ち込み」「やる気が出ない」といったイメージが強いですが、実際には「イライラする」「怒りっぽくなる」などの感情的変化を伴うことも少なくありません。自分でもコントロールできない怒りに苦しみ、「どうしてこんなにイライラしてしまうのか」と悩む人も多いでしょう。ここでは、うつ病とイライラが深く関係している理由を詳しく説明します。
イライラはうつ病の代表的な症状のひとつ
うつ病は、心のエネルギーが低下することで起こる病気です。そのため、心の余裕がなくなり、些細なことでイライラしたり、怒りを感じやすくなったりします。これは単なる「気分のムラ」ではなく、病気による感情コントロールの機能低下によるものです。
特にうつ病では、自分自身に対しても厳しい目を向けやすく、自己否定や焦燥感が怒りに変わってしまうことがあります。誰かにぶつけるのではなく、自分を責めてしまうタイプの人ほど、内にこもったイライラに苦しむ傾向があります。
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脳内の神経伝達物質バランスの乱れ
うつ病の根本的な原因には、脳内の神経伝達物質である「セロトニン」「ドーパミン」「ノルアドレナリン」などのバランスの乱れがあります。これらの物質は、感情や意欲、ストレスへの耐性を司る重要な役割を担っています。
セロトニンが減少すると、ストレスに対して過敏になり、怒りを抑える機能も低下します。つまり、イライラしやすくなるのは脳の働きが乱れている結果であり、意志の弱さではありません。脳のエネルギー不足が「心の余裕のなさ」として現れているのです。
睡眠不足や疲労の蓄積がイライラを助長する
うつ病では眠れない・夜中に目が覚めるといった「睡眠障害」がよく見られます。睡眠が不足すると脳が十分に休息できず、感情を整理する機能が低下します。結果として、小さな刺激にも過剰に反応してしまうのです。
さらに、慢性的な疲労はストレスホルモンのコルチゾールを増加させ、怒りっぽさを強めます。体が疲れているときは、精神的にも脆くなるもの。十分な睡眠は、うつ病の回復だけでなくイライラを抑えるためにも欠かせません。
ストレスや自己否定感による感情コントロールの低下
うつ病では「自分なんてダメだ」「また失敗した」という否定的思考が強まりやすくなります。この自己否定感が怒りや焦燥感を引き起こし、心のバランスをさらに崩してしまいます。
ストレスが積み重なると、脳は「危険を感じる状態」と認識し、イライラという形で防衛反応を起こします。つまり、イライラはあなたが頑張りすぎているサインとも言えるのです。
「イライラする自分」が苦しい理由
うつ病によるイライラは、単に怒りっぽくなるだけでなく、「こんな自分が嫌だ」と自己嫌悪を引き起こす厄介な症状です。感情を抑えようとしても制御できず、結果的にさらに落ち込む。この悪循環が心を深く傷つけてしまいます。ここでは、なぜ「イライラする自分」がこんなにもつらいのかを心理的側面から掘り下げます。
怒りが抑えられないときに起きている心のメカニズム
イライラの裏側では、脳内で「戦うか逃げるか反応(fightorflight)」が起きています。これはストレス時に自動的に働く生理反応で、体が緊張状態に入る仕組みです。うつ病ではこのスイッチが誤作動を起こし、ささいな刺激でも体が危険信号を出してしまいます。
すると、怒りが過剰に湧き上がり、自分でも抑えられないほど強く感じてしまうのです。このとき必要なのは、「怒らない努力」ではなく「神経を落ち着かせる環境づくり」です。
自己否定と罪悪感の悪循環
怒りを感じたあとに「またやってしまった」「こんな自分は嫌い」と思うことで、さらに気持ちが落ち込みます。この自己否定の感情はストレスを増幅させ、再びイライラを引き起こすという悪循環を作り出します。
うつ病の人はもともと真面目で責任感が強い傾向があり、「他人を傷つけたくない」「迷惑をかけたくない」という意識が罪悪感を強めます。結果的に、自分で自分を追い込んでしまうのです。
人間関係のトラブルがさらにストレスを増幅させる
イライラを抑えきれずに家族や職場の人に強い言葉をぶつけてしまうと、人間関係がぎくしゃくすることがあります。そのことで「また失敗した」と落ち込み、孤立感が深まるという悪循環に陥ります。
人間関係の悪化は、うつ病の症状をさらに悪化させる要因にもなりかねません。感情が爆発しそうなときは、距離をとる、静かな場所に避難するなど「関係を壊さない工夫」も大切です。
イライラを我慢し続けることの危険性
「怒ってはいけない」「我慢しなければ」と感情を抑え続けると、ストレスが蓄積し、身体症状として現れます。頭痛や胃痛、動悸などが増えるほか、パニック発作を起こす人もいます。感情を押し殺すことは、ガスの抜けない圧力鍋のようなもの。限界を超えた瞬間に爆発してしまう危険があるため、適度に感情を外に出すことは決して悪いことではありません。
うつ病によるイライラへの対処法

うつ病によるイライラは、「感情を抑える」ことよりも、「どう向き合うか」を知ることが大切です。怒りを消すのではなく、上手に扱う方法を身につけることで、心の負担を軽くできます。ここでは、すぐに実践できる7つの対処法を紹介します。
まずは深呼吸で「反応」を遅らせる
イライラを感じたとき、私たちの体は自動的に緊張状態に入ります。そこで有効なのが深呼吸です。鼻から3秒かけて吸い、口から6秒かけて吐き出すだけでも、自律神経のバランスが整い、脳が冷静さを取り戻します。
呼吸に意識を集中することで、「怒りの波」をやり過ごせるのです。深呼吸は、感情を抑えるためではなく、気持ちを落ち着かせる“間”をつくる行為。続けることでイライラを和らげる効果が高まります。
イライラの原因(トリガー)を書き出す
自分がどんなときに怒りを感じるのかを具体的に記録してみましょう。日記のように書く必要はなく、「上司の一言で腹が立った」「家事が思い通りに進まない」など簡単なメモで十分です。イライラの原因を“可視化”することで、客観的に感情を見つめることができます。
ポイントは「なぜ」より「どんなとき」に注目すること。分析ではなく観察のつもりで書くと、次第に自分の感情パターンがつかめます。
環境を一時的に離れる・距離をとる
イライラが募ったときは、無理に我慢するよりも、環境を変えることが有効です。職場ならトイレに行く、外に出て深呼吸をする、少し席を外すなど、短時間でも構いません。物理的に「その場を離れる」ことで脳が冷静さを取り戻します。
怒りのピークは通常90秒ほどで収まるといわれており、その間をやり過ごせば爆発を防げます。
十分な睡眠と食事のバランスを整える
睡眠不足や食生活の乱れは、脳の働きを鈍らせ、感情を安定させる力を低下させます。うつ病の症状として夜眠れない場合でも、昼間に短時間の仮眠を取る、同じ時間に寝る努力をするなど、体内リズムを整えることが重要です。
また、糖分やカフェインの摂りすぎはイライラを悪化させることがあるため注意しましょう。バランスの取れた食事を意識し、ビタミンB群やトリプトファンを含む食品(バナナ・納豆・卵など)を積極的に取り入れることが効果的です。
軽い運動や日光浴でセロトニンを増やす
セロトニンは「幸福ホルモン」と呼ばれ、気分の安定や睡眠の質の改善に関わります。ウォーキングやストレッチ、ヨガなどの軽い運動を1日20分ほど行うだけでも、脳内のセロトニンが増えやすくなります。さらに朝の光を浴びることでも分泌が促されるため、起きたらカーテンを開ける習慣をつけましょう。体を動かすことは、心を整える第一歩です。
信頼できる人に話を聞いてもらう
人に話すことは、心の整理にとても効果的です。話すことで頭の中が整理され、「自分はこんなことで悩んでいたのか」と気づくことがあります。家族や友人に話しにくい場合は、カウンセラーや訪問看護師などの専門家に相談するのもおすすめです。
「話す」ことは「手放す」ことでもあります。誰かに自分の気持ちを聞いてもらうだけで、心の重荷が軽くなります。
医療機関や訪問看護を利用して心を守る
イライラが続き、生活に支障が出ている場合は、早めに医療機関を受診しましょう。抗うつ薬や抗不安薬、心理療法などを組み合わせることで、脳のバランスを整える治療が行われます。また、通院が難しい場合は精神科訪問看護を利用する方法もあります。
訪問看護では、専門スタッフが自宅に来て生活や服薬をサポートしてくれるため、安心して回復を目指せます。サポートを受けることは弱さではなく、「回復する力」です。
イライラが強いときに避けたいNG行動
感情的になってしまったとき、人は衝動的な行動を取りがちです。しかし、その行動が結果的にストレスを悪化させることもあります。ここでは、うつ病によるイライラが強いときに避けたいNG行動を紹介します。
感情を我慢し続ける
「怒ってはいけない」「我慢すれば解決する」と思い込むことは危険です。感情を抑えすぎると、心のエネルギーが枯渇し、うつ症状が悪化することがあります。イライラを感じたら、まず自分の中で認めることが大切です。「今、腹が立っているな」と自覚するだけでも感情は落ち着きやすくなります。抑えるのではなく、認める――それが健全な第一歩です。
自己否定的な言葉を使う
「自分なんてダメだ」「なんでこんなことで怒るんだ」と自分を責めると、心がますます疲弊します。否定的な言葉は脳にストレス反応を起こし、さらにイライラを助長します。代わりに「今は疲れているだけ」「仕方ない」と言い換えてみましょう。思考の癖を少し変えるだけで、感情の波は穏やかになります。
アルコールや刺激物で紛らわせる
イライラをまぎらわすためにお酒やタバコ、カフェインなどに頼る人もいますが、これは逆効果です。アルコールは一時的に気分を落ち着かせるように感じますが、脳の神経伝達を乱し、翌日に不安や怒りを強めることがあります。刺激物で気持ちを誤魔化すよりも、休息や対話を選ぶほうが回復につながります。
孤立する・誰にも話さない
「誰にも迷惑をかけたくない」と一人で抱え込むことは、うつ病を悪化させる大きな原因です。人とのつながりは、心の安定を保つために欠かせません。孤立を避け、信頼できる相手に「少し聞いてほしい」と言う勇気を持ちましょう。誰かに話すことで、心は確実に軽くなります。
うつ病によるイライラを和らげる生活習慣

うつ病のイライラを軽減するためには、日常生活の中で「小さな整え方」を積み重ねることが効果的です。ここでは、心のバランスを整えるための生活習慣を紹介します。
朝の光を浴びて体内時計をリセット
朝の光を浴びると、体内時計がリセットされ、セロトニンの分泌が活性化します。朝起きたらすぐにカーテンを開けて、5分ほど外の光を浴びましょう。これにより睡眠リズムも安定し、夜の寝つきが良くなります。生活のリズムが整うことは、感情の安定にも直結します。
栄養バランスの取れた食事を意識する
脳と心の健康には、栄養が欠かせません。特にうつ病の回復には、セロトニンの原料となるトリプトファン、脳の働きを支えるビタミンB群、神経を落ち着かせるマグネシウムなどが有効です。豆腐、バナナ、青魚、ナッツなどを意識的に取り入れることで、感情が安定しやすくなります。体を整えることは、心を守ることと同義です。
軽い運動で自律神経を整える
激しい運動でなくても、1日10分程度のウォーキングやストレッチで十分です。体を動かすことで血流が良くなり、脳がリラックスモードに切り替わります。特に夕方の軽い運動は睡眠の質を高め、翌日のイライラ軽減にもつながります。
笑う・好きなことをする時間をもつ
笑うことは脳に「安心してよい」というメッセージを送ります。お笑い番組を観る、動物の動画を見るなど、小さな笑いで構いません。また、好きな趣味に没頭する時間を作ることも大切です。音楽、読書、料理など、自分が心地よいと感じる時間を積極的に取り入れましょう。
まとめ
イライラは、うつ病が心と体に「限界です」と知らせているサインです。怒りを抑えるのではなく、原因を理解し、自分を責めずに受け止めることが大切です。日常生活のリズムを整え、信頼できる人や専門家とつながることで、心の波は少しずつ穏やかになります。焦らず、ゆっくりと、あなたのペースで回復を目指しましょう。
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