不眠症の悩みを漢方で解決!原因と症状に合わせた漢方薬の選び方
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夜にスムーズに眠れなかったり、夜中に何度も目が覚めたり、朝早く起きてしまったりすると、心身に大きな負担がかかります。つらい不眠の悩みを一人で抱え込まず、まずは漢方の視点から原因を見つめ直してみましょう。
この記事では、不眠症の背景にある体質や要因を漢方的に解説し、症状に合わせた漢方薬の選び方を分かりやすくご紹介します。
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漢方医学における不眠症の考え方

漢方医学では、不眠症を「心と体のバランスが崩れた状態」として捉えます。西洋医学が原因を特定して症状を和らげることを中心に考えるのに対し、漢方で重視される点は、不眠が起こる背景そのものを体質や生活習慣、精神状態などを統合的に判断する点が特徴です。
漢方における「気・血・水」とは?
漢方医学では、体の中を巡る「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の3つがちょうどよく整っている状態が健康につながると考えられています。これらは互いに影響し合っており、そのバランスが崩れると不眠といった症状が現れやすくなります。
- 気(き): 生命エネルギーそのもので、活動力や精神活動を司ります。気が不足すると疲労感やだるさが、気が滞るとイライラや気分の落ち込みなどが現れます。
- 血(けつ): 全身に栄養を運び、精神を安定させる働きがあります。血が不足すると、めまいや貧血、精神的な不安定さ、不安感などが生じやすくなります。
- 水(すい): 血液以外の体液全般を指し、体の潤いを保ち、老廃物を排出する役割があります。水の巡りが悪いと、むくみやめまい、冷えなどの症状が出やすくなります。
体質別の不眠症
「気・血・水」のバランスの乱れ方は人それぞれ異なり、それによって不眠の症状も多様に現れます。ここでは、漢方でよく用いられる体質タイプと、それぞれに現れやすい不眠の症状をご紹介します。ご自身の不眠がどのタイプに近いか、ぜひチェックしてみてください。
- 気滞(きたい)タイプ:ストレスの影響を受けやすく、イライラしやすかったり、気分がふさぎやすかったりするタイプです。胸や喉のつかえ感、お腹の張りといった不調が出ることもあります。
不眠の症状としては、寝つきの悪さや夢をよく見る傾向、夜中に何度も目が覚めるといった状態が現れます。ストレスや考えごとで頭が休まらず、心が落ち着かないことが原因で起こりやすい不眠です。
- 血虚(けっきょ)タイプ:顔色が青白く貧血気味で、めまいや立ちくらみ、動悸が起こりやすいタイプです。髪や肌が乾燥しやすく、精神的にも不安を感じやすい傾向があり、ささいな刺激で驚きやすい点も特徴として挙げられます。
不眠の症状としては、寝つきが悪く眠りが浅くなりやすいほか、夜中に目が覚めると再び眠りにつきにくくなることがあります。強い不安感や心細さの影響で気持ちが落ち着かず、安定した眠りを保ちにくい状態が続くケースも少なくありません。
- 水滞(すいたい)タイプ:体がむくみやすく、頭重感やめまいが出やすいタイプです。冷え性で体が重だるく感じることが多く、胃腸の調子を崩しやすい傾向もあります。
不眠の症状としては、寝つきは良くても眠りが浅く、休息感が不足しがちです。夜中にトイレで目が覚めることが多く、冷えやむくみによる体の重さが、安定した睡眠を妨げる原因になるケースもあります。
- 気虚(ききょ)タイプ:疲れやすく、全身にだるさを感じやすいタイプです。食欲が落ちやすかったり胃腸が弱かったりするほか、風邪をひきやすいなど、全体的に体力が不足している傾向があります。
不眠の症状としては、疲れているにもかかわらず寝つきが悪いほか、眠ってもすぐに目が覚める点が特徴です。強い疲労感がかえって眠りを妨げ、十分に休めない状態が続く方もみられます。
不眠症に効果的な漢方薬
漢方薬は、一人ひとりの体質や不眠の原因に合わせて選ぶことが大切です。ここでは、不眠症に用いられる代表的な漢方薬と、その効果についてご紹介します。
代表的な漢方薬とその効果
不眠症の症状や体質は人それぞれ異なります。以下に、代表的な漢方薬とその適応についてまとめました。ご自身の症状や体質と照らし合わせながら、参考にしてください。
- 加味帰脾湯(かみきひとう):心身の疲労によって思考力の低下や不安、動悸、食欲不振などが生じるタイプの不眠に適した漢方です。胃腸が弱く、体力があまりない方に用いられることが多い処方でもあります。
精神的な疲れを和らげ、不安を落ち着かせることで寝つきを良くし、深い眠りにつながりやすくする点が特徴です。寝つきの悪さや浅い眠り、夢を多く見る、朝の疲れが取れにくい、物忘れが気になる、貧血傾向があるといった症状に応用されます。
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):ストレスや精神的な緊張が強く、イライラしやすかったり怒りっぽくなったりするほか、胸苦しさや動悸、便秘などの症状を伴う不眠に適した漢方です。比較的体力があり、精神面が興奮しやすいタイプの方に用いられることが多い処方でもあります。
精神的な高ぶりを鎮め、ストレスによって生じるさまざまな不調を落ち着かせ、安定した睡眠へと導く点が特徴です。寝つきの悪さや夜中の覚醒、悪夢、精神的な不安や興奮、高血圧傾向といった症状に応用されます。
- 酸棗仁湯(さんそうにんとう):心身が疲れ切ってしまい、精神的な疲労や不安が強いために寝つけなかったり、眠りが浅くなったりする不眠に適した漢方です。体力があまりなく、心臓のドキドキを感じやすい方に用いられることが多い処方でもあります。
精神を落ち着かせ、興奮を鎮めることで自然な眠りを促す作用があり、寝つきの悪さや浅い眠り、熟睡感の不足、動悸、倦怠感などの症状に対応します。
- 桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう):神経が過敏になりやすく、疲れやすい上に、わずかな刺激でも驚きやすいといった状態に伴う不眠に適した漢方です。動悸や夢を多く見る、寝汗が出るといった症状がみられることもあり、虚弱体質で冷えやすい方に用いられることが多い処方でもあります。
神経の過敏さを和らげ、心身のバランスを整えることで安らかな眠りをサポートする点が特徴です。寝つきの悪さや浅い眠り、夜中の覚醒、不安感、神経過敏といった症状に幅広く対応します。
- 抑肝散(よくかんさん):ストレスやイライラが強く、怒りっぽくなりやすいほか、興奮しやすかったり筋肉が緊張しやすかったりする状態に伴う不眠に適した漢方です。歯ぎしりや寝言など、睡眠中の異常行動が見られる場合にも用いられることがあります。
興奮を抑えて精神の高ぶりを鎮め、穏やかな眠りを促す働きが特徴です。イライラして寝つけない、夜中に目が覚めて気持ちが落ち着かない、歯ぎしりや寝言が増えるといった症状にも対応します。
漢方薬の選び方
漢方薬を選ぶ際に最も重要なのは、自分の「証(しょう)」を正しく把握することです。証とは、体質や体調、不眠の原因となるタイプを指し「虚証・実証」や「寒証・熱証」といった分類を総合的に判断して処方が決まります。
例えば、体力がありイライラしやすい方は「実証・熱証」の傾向があり、興奮を鎮める漢方が適している場合があります。一方、疲れやすく胃腸が弱い方は「虚証・寒証」が見られ、体を温めて気力を補う漢方が合うでしょう。自己判断でも選定可能ですが、より安全で効果的に使うためには、漢方医や薬剤師など専門家への相談がおすすめです。
漢方薬の効果を高めるために

漢方薬は、単に飲むだけでなく、その服用方法や日々の生活習慣と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。ここでは、漢方薬の効果を最大限に引き出すためのポイントをご紹介します。
服用方法と注意点
漢方薬は、西洋薬とは異なる服用方法や注意点があります。効果を最大限に引き出すため、以下の点を意識しましょう。
服用タイミング
一般的に、漢方薬は食前や食間に服用することが推奨されます。これは、胃の中に食べ物がない状態で飲むことで、成分の吸収を良くするためです。ただし、胃腸が弱い方は食後の服用が適している場合もあるため、医師や薬剤師の指示に従ってください。
飲み方
顆粒や粉末の漢方薬は、少量のぬるま湯に溶かして飲むと、吸収が早まり、効果を感じやすくなることがあります。味や匂いが気になる場合は、オブラートに包んで飲むのも良いでしょう。
効果を実感するまでの期間
漢方薬の中には早めに効果を感じられるものもありますが、体質を整える目的で使う場合は、数週間から数ヶ月かけて徐々に変化が表れることが一般的です。焦らず、継続すると、本来の効果が発揮されやすくなります。
副作用と他の薬との併用
漢方薬も医薬品であるため、まれに胃部不快感や下痢などの副作用が現れることがあります。また、他の薬との飲み合わせによって、予期せぬ作用が生じる可能性もあります。持病がある方や、他の薬を服用している方は、必ず事前に医師や薬剤師に相談しましょう。
生活習慣との組み合わせ
漢方薬の効果をさらに高めるためには、日々の生活習慣の見直しが不可欠です。漢方薬は体のバランスを整える手助けをしますが、その効果を補完し、不眠改善を加速させるための生活習慣を心がけましょう。規則正しい生活リズム、適度な運動、リラックスできる時間を持つこと、そして寝る前の過ごし方など、心身ともに健やかな状態を保つことが、質の高い睡眠へと繋がります。
漢方薬以外の不眠症対策
漢方薬による体質改善と並行して、日々の生活習慣を見直すことは、不眠症改善において非常に重要です。ここでは、今日から実践できる具体的なセルフケア方法をご紹介します。
食事
睡眠の質は、日々の食事の内容によって大きく左右されます。特に意識したいポイントは、眠りに役立つ栄養素をしっかり摂ることです。
例えば、乳製品や大豆製品、ナッツ類、バナナなどに含まれるトリプトファンは、睡眠ホルモンであるメラトニンの材料となり、自然な眠りを助けます。海藻類や全粒穀物、ほうれん草に多いマグネシウムは筋肉や神経の緊張を和らげ、リラックスを促す要素の一つです。さらに、牛乳やチーズ、小魚などに含まれるカルシウムにも神経の興奮を抑える働きがあります。
一方、コーヒーや紅茶、緑茶などのカフェイン類、アルコール、刺激の強い料理は睡眠を妨げる原因になるため控えめにしましょう。夕食は就寝の2~3時間前までに済ませ、消化に良いものを少なめにすることが理想です。満腹のまま眠ると胃腸が働き続け、深い眠りにつきにくくなります。
運動
適度な運動は、心身のリラックスを促し、睡眠の質を高める効果が期待できます。特に、ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなどの有酸素運動は、体温を一時的に上げ、その後の体温下降と合わせて自然な眠気を誘います。ただし、激しい運動は交感神経を刺激してしまうため、就寝直前は避け、夕方から就寝の3時間前までに行うのがおすすめです。
入浴
入浴は、体を温めることで血行を促進し、心身のリラックス効果を高めます。就寝の1~2時間前に、38~40℃程度のぬるめのお湯にゆっくりと浸かるのが理想的です。体温が徐々に下がる過程で、自然な眠気が訪れやすくなります。アロマオイル(ラベンダーやカモミールなど)を数滴垂らしたり、好きな香りの入浴剤を使ったりするのも、リラックス効果を高めるのに役立ちます。
寝具
快適な睡眠環境を整えるうえで、寝具選びが欠かせません。体圧を分散し、体のラインに合ったマットレス、首や頭を適切にサポートする枕、季節に合わせた保温性・吸湿性のある掛け布団を選ぶことで、寝返りが打ちやすくなり、質の高い睡眠につながります。また、寝室の環境も大切です。室温は20~22℃、湿度は50~60%を目安に保ち、光や音を遮断して、心からリラックスできる空間を作りましょう。
不眠症を専門家(漢方医)に相談する
不眠症の改善を目指す上で、自己判断での漢方薬の選択や服用は、期待する効果が得られなかったり、かえって症状を悪化させたりするリスクがあります。特に、複数の症状が絡み合っている場合や、長期間不眠に悩んでいる場合は、専門家である漢方医に相談しましょう。
漢方医への相談ポイント
漢方医に相談する際は、自分の状態をできるだけ正確に伝えることが、最適な漢方薬を見つけるための大切なポイントになります。市販薬やセルフケアでは改善が見られないときや、不眠以外の不調も気になるときは、一度専門家に相談するのがおすすめです。
相談先を選ぶ際には、漢方の専門資格を持つ医師や経験豊富な薬剤師がいるかどうかを確認しましょう。さらに、丁寧な問診を通して体質(証)をしっかり見極めてくれるか、症状の変化に合わせて処方を調整してくれる継続的なサポートがあるかどうかも大切な要素です。
よくある質問
不眠症の改善に漢方薬を検討する際、多くの方が抱く疑問や不安をQ&A形式でまとめました。ぜひ参考にしてください。
Q1: 漢方薬は即効性がありますか?
漢方薬は西洋薬のようにすぐに効果が現れるものではなく、体質改善を促しながら徐々に効果を発揮します。そのため、数日から数週間、場合によっては数ヶ月服用を続けることで、本来の体調を取り戻し、質の良い睡眠へと導かれるケースが一般的です。
Q2:西洋薬(睡眠導入剤など)との併用は可能ですか?
基本的に併用は可能ですが、必ず医師や薬剤師に相談してください。漢方薬と西洋薬にはそれぞれ異なる作用機序があるため、相互作用や副作用のリスクを避けるためにも、専門家の判断を仰ぐことが大切です。自己判断での併用は避けましょう。
Q3:漢方薬の費用はどのくらいかかりますか?
医療機関で処方される漢方薬は、保険が適用される場合が多く、自己負担を抑えて利用できます。一方、市販の漢方薬は保険適用外となり、種類や内容量によって価格が大きく変わります。保険の有無で費用の差が出るため、まずは受診して相談するか、市販薬で試すかによって費用感が異なる点を押さえておくと安心です。
Q4:妊娠中でも服用できますか?
妊娠中は、服用できる漢方薬とそうでないものがあります。胎児への影響を考慮し、必ず事前に医師や薬剤師に相談し、指示に従って服用してください。自己判断での服用は大変危険ですので、絶対に避けてください。
まとめ:漢方をうまく活用して不眠症ケアをしよう
漢方において、不眠症は心と体のバランスが崩れたときに起こると考えられています。気・血・水の巡りや体質の違いによって症状の現れ方が変わるため、自分の「証」を理解することが改善への第一歩です。体質に適した処方を選ぶことで、不眠の要因に働きかけ、睡眠の質を底上げできます。
セルフケアで改善しにくい場合や複数の不調を抱える場合は、専門家に相談して適切なケアを受けましょう。