こんにちは。株式会社Make Careの代表取締役CEOであり、訪問看護ステーションくるみでマーケティングを担当している石森寛隆です。XではHEROと名乗っていますので、もしよろしければフォローください。
去る2月21日(土)、第5回 全国訪問看護経営管理シンポジウムに登壇し、
今回は「起業3年未満 ビジョンコンテスト」の総評・批評という立場で関わらせてもらった。
全体を通して強く感じたのは、
このシンポジウムそのものが、明確に次のフェーズに入ったということだ。
これまでの回は、
「これから訪問看護を始める人」
「立ち上げ期の悩みを共有する人」
にとって、非常に心強い場だった。
一方で今回扱われていたテーマや議論の前提は、
明らかにミドルクラス以上の経営者を主語にしたものが多かったように思う。
これは良し悪しの話ではない。
むしろ、業界全体が成熟し始めている証拠だと受け取っている。
大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象
“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」
平日・土曜・祝日 9:00〜18:00
【日曜・お盆・年末年始休み】
※訪問は20時まで
対応させていただいております。
ターゲットフェーズは変わったのか
今回のシンポジウムを一言で表すなら、
「訪問看護経営初心者向け」ではなく、
“すでに一定規模を超えた経営者向け”の内容だった。
張本さんの労務管理・コンプライアンス・採算ラインの話も、
菅原さんの看護小規模多機能居宅介護(看多機)のリアルな運営の話も、
正直に言えば、売上3億規模以上を想定していないと、考えても意味を持ちにくいレベルだった。
もちろん、
「将来的にそこを目指す」という前提であれば、
創業期から聞いておく価値はある。
ただ一方で、
「まずはそこに至るまでの話が聞きたい」
「最低限、変なコンサルに引っかからないために何をすべきか知りたい」
という層が、少し置いていかれた感覚を持った可能性も否定できない。
市場規模的に、完全に場を分けるのは難しい。
だからこそ、今後は
同居させつつ、コンテンツを明確にレイヤー分けする設計
が必要になってくるのではないか、そんなことを考えさせられた回でもあった。
張本さんが突きつけた現実
労務・コンプライアンス・採算は三位一体
張本さんの話で一番印象に残ったのは、
労務管理・コンプライアンス・採算ラインは三位一体である
という、極めてシンプルで、しかし重たい事実だった。
経済なき道徳は寝言。
道徳なき経済は罪悪。
これは経営者でなければ語れない言葉だと思う。
ただし、創業期にこの話をそのまま持ち込むと、
正直ズレる。
創業期・創業メンバーの段階で、
労務管理や労働生産性ばかりを気にする人が入ってきたら、
それはもう
「サラリーマンをやってください」
という話になる。
重要なのは、
やる・やらないではなく、いつ、どこから手をつけるか。
小規模を脱し、一定規模に達した瞬間から、
この三位一体の視点は
「意識高い話」ではなく
避けて通れない前提条件になる。
菅原さんが語った看多機のリアル
覚悟なしでは成立しない事業
菅原さんの看多機の話は、とにかくリアルだった。
看多機は、
単体では赤字になりやすい事業であり、
今や建築費・資材費の高騰によって、
初期投資額も半端ではない。
補助金・助成金の範囲内で小さく始める、
という選択肢も確かにある。
ただ、それは本当に
利用者のためになっているのか。
職員のためになっているのか。
その問いを真正面から投げかけていた点が、
非常に印象的だった。
また、
リハ職と看護職のどちらをリーダーにするのか、
その価値観の違いといった話も、
現場をやっていないと出てこない視点だ。
簡単に真似できないと感じたのは、
個人の能力ではなく、
仕組み化・構造化がすでに出来上がっていること、
そして一定規模を持っていること自体が
行政との関係性を含めて強みになっている点だった。
将来的に、地域の総合ステーション的な役割を担っていくのであれば、
看多機は避けて通れない選択肢の一つ。
そんな現実を、改めて突きつけられた。
その場で企業価値診断という試み
Exitを考えることは無責任ではない
M&Aのプロによる「その場で企業価値診断」は、
コンテンツとして非常に面白かった。
最終的に、
この事業をどう終わらせるのか。
事業承継なのか、M&Aなのか、
あるいは自分たちで走り切るのか。
訪問看護は、切り売りするための事業ではない。
切れ目のない支援をどう継続させるかという意味で、
Exitを考えることは、むしろ責任ある行為だと思っている。
ただし注意点もある。
短時間でEBITDAベースに組み上げた企業価値算定は、
どうしても現資産価値寄りに見えてしまう。
それを
「M&Aのスタンダード」
と受け取られてしまうと、かなり危険だ。
事業承継型か、戦略的M&Aかで、
企業価値の付け方はまったく違う。
成長速度、将来性、シナジーを見ずに、
EBITDA×何倍、という単純な売買が行われるわけではない。
ここを見誤ると、
売り手が損をする。
面白さと同時に、
ミスリードのリスクも孕んだ企画だったと感じている。
ビジョンコンテスト総評
「想い」より前に、設計と準備
ビジョンコンテストについて、正直な総評を。
設定としては、
「求職者に向けた企業アピール」を行い、
会場参加者が投票する、というもの。
ただ、会場にいるのは主に経営者・管理者だ。
つまりこれは、
実際の求職者ではなく、
求職者をシミュレーションしている経営者に向けたプレゼン
という、少し特殊な構造になっている。
この前提を理解しているかどうかで、
プレゼンの設計は大きく変わる。
もう一つ気になったのは、
ピッチの基本である「時間厳守」。
限られた時間の中で、
資料をどこまで作り込み、
どこまで練習したのか。
その差は、正直に出る。
想いがあることと、
伝え切れることは別だ。
圧倒的だった近藤大晟さんのプレゼン
勝因は「具体」と「言語化」
その中で、
株式会社MEDICAL COMMONS 代表取締役・近藤大晟さんのプレゼンは、
圧倒的だった。
理由はシンプルで、
「具体」だったからだ。
福井という地で、すでに利用者80名弱。
事業として成立し、成功していると言っていい状態。
そして、その実績を
きちんと言語化できていた。
時間が足りなかった点や、
強い緊張感は伝わってきたが、
それを差し引いても、群を抜いていた。
他の登壇者からも「想い」は感じた。
ただ、その想いが個人の原体験に寄りすぎてしまうと、
求職者からすると
「知らんがな」
になってしまう。
想いは大事だ。
でも、想いは実績に裏打ちされて初めて届く。
近藤さんのプレゼンは、
それをはっきりと示していた。
起業3年未満の人が持ち帰るべき学びは、
結局のところ、
経営者の覚悟、実績作り、そして言語化
この三つに尽きると思う。
業界の現在地と、これから
優しすぎた時代の終わり
訪問看護業界は、
これから合併・巨大化が進んでいく。
その中で、小規模事業者が戦っていくには、
よほど戦略的でなければ難しいフェーズに入っている。
国家資格を持つ専門家として、
地域のニーズをどれだけ汲み取り、
社会保険料という公費を原資に、
本当に価値を提供できているのか。
診療報酬改定の方向性を見ても、
国からのメッセージは明確だ。
そして、小規模から脱却した瞬間に、
張本さんが語っていたような意識が、
「当然の前提」として求められる。
個人的には、
総量規制を入れ、
1年以内・3年以内にクリアすべきハードルを設け、
場合によっては強制的な合併・再編を促すくらいの
強権性があってもいいと思っている。
守るべきは、
事業者の自由ではなく、
支援の継続性と、社会保険制度そのものだ。
最後に…訪問看護で起業をしようとしている看護師さんへ
今は、
1,000万〜2,000万円を投じて始める事業でありながら、
医療・介護だから安定、という時代ではもうない。
その中で、
安定・安全・安心に事業を継続できなければ、
利用者さんに対して
切れ目のない支援なんてできない。
その覚悟を背負って、
この地獄の一丁目一番地に、
本当に潜る覚悟があるのか。
それを、
自分自身に問い続けられるかどうか。
それが大事だと思います。




