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不安障害に効く漢方とは?心と体を整える自然療法の力

精神科訪問看護とは

不安障害 漢方

「いつも不安で胸がざわつく」「夜になると理由もなく焦りを感じる」——こうした症状に悩む人が近年増えています。これは単なる性格の問題ではなく、「不安障害」という医学的な状態かもしれません。

薬による治療も大切ですが、体質や心のバランスを重視した東洋医学の「漢方薬」が注目されています。副作用が少なく、長期的に心身を整えることができる点が支持されている理由です。本記事では、不安障害に有効とされる漢方薬の種類・特徴・注意点を専門的に解説します。

不安障害とは?心と体に現れるサイン

不安障害は、日常生活に支障をきたすほど強い不安や恐怖を感じる状態が続く精神疾患です。自覚がないまま我慢を重ねている人も多く、早めの対応が重要です。

不安障害の種類と特徴

不安障害には「全般性不安障害」「パニック障害」「社交不安障害」「強迫性障害」などがあります。どれも強い不安や恐怖が共通していますが、発作の出方や原因は異なります。たとえばパニック障害は急な動悸や息切れを伴い、全般性不安障害は常に漠然とした不安が続きます。漢方では、これらの背景にある「気の滞り」や「血の不足」に注目します。

関連記事:不安障害の治し方や種類について解説|訪問看護を利用するのも選択肢の1つ

心と体のつながり

不安は心だけの問題ではなく、自律神経やホルモンバランスにも深く関係しています。ストレスにより交感神経が優位になると、心拍数が上がり、呼吸が浅くなり、さらに不安感が強まります。この悪循環を断ち切るには、心と体を同時に整えるアプローチが必要です。

現代社会が抱える背景

スマートフォンやSNSによる情報の過多、職場や家庭でのプレッシャー、人間関係の希薄化など、現代人は常に緊張状態にあります。その結果、心の緊張が解けないまま睡眠不足や消化不良が続き、不安障害を発症するケースが増えています。

不安障害の治療に漢方が注目される理由

不安障害の治療と聞くと、多くの方が抗不安薬や抗うつ薬を思い浮かべるのではないでしょうか。ここでは、なぜ漢方が不安障害に向いているのかを詳しく見ていきましょう。

自然な回復を促すアプローチ

漢方は、体の「気・血・水(き・けつ・すい)」の流れを整えることで自然治癒力を高めます。不安やストレスで乱れた自律神経を穏やかに調整し、呼吸や睡眠リズムを整える効果が期待できます。

また、ストレスによって胃腸が弱ると、脳との連携が乱れて不安が増す「脳腸相関」が悪化します。半夏厚朴湯や加味帰脾湯などはこのような心身のつながりを整え、心の安定をサポートします。症状を抑えるだけでなく、根本から立て直すのが漢方の魅力です。

長期的な心身の安定

漢方は、西洋薬のような即効性はありませんが、持続的な安定を目指す治療法です。体質改善を重ねることで、不安を感じにくい状態をつくります。

特に「疲れやすい」「冷え性」「眠りが浅い」といった慢性的な不調を抱える人に向いています。こうした症状を放置せず整えることで、再発しにくい安定した心の状態へ導きます。漢方は“治す”だけでなく、“再発を防ぐ”治療法でもあります。

心理療法との相性の良さ

不安障害の治療では、認知行動療法などの心理療法も重要です。漢方はこの心理療法の効果を高めるサポート役としても有効です。

体の緊張や睡眠不足を改善することで、心の訓練に集中できるようになります。柴胡加竜骨牡蛎湯などはイライラや過敏な神経を落ち着かせ、カウンセリングを受けやすい状態に整えます。身体が安定すると、心の回復力も自然と高まります。

不安障害に効果がある代表的な漢方薬

漢方薬と一口に言っても、その効果や体質への適応は多様です。不安障害の症状や体質に合わせて選ばれる処方には、いくつかの代表例があります。ここでは臨床現場でもよく用いられる漢方薬を、それぞれの特徴と適応とともに紹介します。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

ストレスや緊張が強く、動悸や不眠がある方に向く漢方です。神経の高ぶりを抑え、心身の興奮状態を沈めます。仕事のプレッシャーや人間関係で常に緊張している人に効果的です。
過剰な緊張を和らげ、心の波を穏やかに保つ作用があります。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

喉のつかえ感や呼吸の浅さがある場合に処方されます。ストレスで「気」が滞っている状態を改善し、気分をリラックスさせます。会議や外出前などに緊張が強まるタイプの方に適しており、胃腸の調子を整える効果もあります。

加味逍遙散(かみしょうようさん)

主に女性に多く処方される漢方で、イライラや情緒不安定、冷え、月経前の不安に効果があります。ホルモンバランスを整える作用があり、更年期障害にも使われます。精神的なストレスと身体的な不調の両方を改善するのが特徴です。

抑肝散(よくかんさん)

ストレスで怒りっぽくなる、神経が過敏で眠れないといった人に適します。高齢者や子どもの神経過敏にも使われ、穏やかな鎮静効果があります。心のイライラを鎮め、安定した感情を取り戻す処方です。

加味帰脾湯(かみきひとう)

心配性で考えすぎる人、眠りが浅く疲れやすい人に効果的です。血と気を補うことで、思考の過剰な動きを落ち着かせます。特に精神的な疲労からくる不安に強く、倦怠感や胃腸虚弱にも対応します。

関連記事:精神科領域で効果が期待できる漢方薬を紹介|有効性や服用時の注意点も解説

体質別で見る漢方の選び方

不安障害の症状は似ていても、その根本原因は人それぞれです。東洋医学では、心と体のバランスの乱れ方を「体質」として捉え、その傾向に応じて最適な処方を選びます。

たとえば同じ「不眠」でも、エネルギー不足から眠れない人と、ストレス過多で眠れない人では、選ぶ漢方がまったく異なります。ここでは代表的な3つの体質タイプと、それぞれに合った漢方の特徴を詳しく解説します。

「気虚」タイプ(エネルギー不足による不安)

「気虚(ききょ)」とは、生命エネルギーである「気」が不足している状態を指します。朝から体がだるい、息切れしやすい、声が小さいといった特徴があります。精神的な不安や集中力の低下も見られ、慢性的な疲労を訴える方に多いタイプです。

このタイプは、ストレスよりも“エネルギーの欠乏”が不安の引き金になっています。心を支える体力そのものが足りないため、ちょっとしたことで不安が高まりやすいのです。代表的な処方は「加味帰脾湯(かみきひとう)」や「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」。どちらも胃腸の働きを助け、血と気を補う作用があります。

体を温めるスープや温かいお茶を取り入れ、冷たい飲み物を控えることも効果的です。さらに、早寝早起きや適度な運動を心がけることで、気の巡りが整い不安が軽くなります。
体力を立て直すことが、心の回復の第一歩です。

「気滞」タイプ(ストレスによる不安)

「気滞(きたい)」タイプは、ストレスや緊張で「気」の流れが滞り、体内でエネルギーがうまく巡らない状態です。胸の圧迫感、のどの詰まり、ため息が多いなどの症状が現れます。感情の起伏が激しく、怒りっぽい傾向も見られます。

仕事のプレッシャー、人間関係のストレス、完璧主義などで気が滞ると、精神的にも体調的にもバランスを崩します。このタイプに向く代表的な処方が「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」と「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」です。どちらも気の循環を促し、心身の緊張をやわらげます。

生活面では、香りのよい柑橘類やハーブティーなどを取り入れると、気分のリセットに役立ちます。深呼吸や軽いストレッチ、1日5分の散歩など、気を外に巡らせる工夫をすることが大切です。

「血虚」タイプ(栄養・休息不足による不安)

「血虚(けっきょ)」は、血の量や質が不足している状態です。顔色が青白く、立ちくらみや冷え性、不眠を伴う人に多く見られます。血が不足すると心に栄養が行き届かず、情緒が不安定になりやすいのです。

代表的な処方は「加味逍遙散(かみしょうようさん)」や「帰脾湯(きひとう)」。これらは女性の更年期障害や月経不順にも用いられ、ホルモンバランスを整える作用があります。血虚タイプの人は無理を重ねる傾向があり、真面目で頑張りすぎる性格の方に多いといわれます。栄養をしっかり摂ること、睡眠時間を確保することが回復の鍵です。

貧血を防ぐ鉄分・たんぱく質・ビタミンB群を意識し、入浴やマッサージで血流を促進させましょう。

漢方を取り入れる際の注意点と安全性

漢方は安全なイメージを持たれがちですが、正しい服用方法を守らないと逆効果になることもあります。ここでは、漢方を安心して取り入れるための基本ポイントを紹介します。

まず大切なのは、専門家の診断を受けることです。体質や症状の変化に応じて処方を調整することが必要です。次に、副作用や飲み合わせにも注意が必要です。自然由来でも体に負担がかかる場合があります。最後に、継続する意志と生活改善が効果を引き出すポイントです。

専門家による診断を受ける

「なんとなく効きそう」という理由で自己判断すると、症状を悪化させる可能性があります。漢方医や薬剤師は、舌の色・脈の速さ・体の冷えなどを総合的に判断し、個別に合う処方を決めます。特に長期服用の場合は、定期的な診察を受けて効果を確認することが大切です。

副作用とアレルギーへの配慮

漢方にも副作用があります。甘草を多く含む処方ではむくみや高血圧が出ることがあり、柴胡を含む薬は体質によって胃の不快感を起こすことがあります。初めて飲むときは少量から始め、体調の変化を観察しましょう。“自然の薬だから安全”とは限りません。

西洋薬との併用について

抗不安薬や抗うつ薬と漢方の併用は可能ですが、同じ作用を持つ成分が重なると副作用が強まる恐れがあります。必ず主治医に服薬状況を伝え、調整を受けてください。特にSSRI系薬剤を服用している人は、併用によりセロトニンの作用が変化する可能性があるため、医師の監督下で使用しましょう。

不安障害の改善を支える生活習慣

漢方の効果を引き出すには、日常生活の整え方も大切です。薬で体を支えながら、生活リズムや食事、睡眠を整えることで、自然回復力が最大限に発揮されます。

睡眠リズムの安定

睡眠は心の安定に直結します。毎日同じ時間に寝起きし、寝る前のスマートフォン使用を避けましょう。ぬるめの入浴やアロマの香りが効果的です。カフェインを夕方以降に摂らないことも、不安感を減らすポイントです。

軽い運動と呼吸法

ウォーキングやヨガなど、軽い運動は血流を改善し、脳内ホルモンを整えます。呼吸法では「4秒吸って、6秒吐く」リズムを意識すると、副交感神経が優位になりリラックスできます。体を動かすことで、心も自然に前向きになります。

周囲とのつながりを持つ

孤独は不安を増幅させます。家族や友人、医療者などに気持ちを打ち明けることは、回復への大切な一歩です。訪問看護や地域支援を利用することで、安心して生活を続けることができます。「一人で頑張らない」ことが、最も大切な治療法です。

まとめ

不安障害は、心と体の両面からケアすることが大切です。漢方薬は、自律神経やホルモンの乱れを整え、体質の改善を通じて心を安定させる力を持っています。焦らず、自分に合った方法で続けることで、穏やかな毎日を取り戻すことができます。

精神的な不安や症状の悪化でお悩みの方は、専門のサポートを受けることをおすすめします。訪問看護を利用することで、生活面からのケアも受けられます。ぜひ「訪問看護ステーションくるみ」へご相談ください。

この記事を監修した人

石飛美春

株式会社Make Care Webクリエイター

石飛 美春

看護師 / Webクリエイター

看護師として臨床を経験後、一度Web業界に転身。ものづくりの楽しさを知る一方で、やはり人と関わる現場に戻りたいという想いから、訪問看護ステーションくるみに入職。現在は訪問業務とあわせて、Web制作の経験を活かし、HPやSNSの更新を担当している。

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