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非定型うつ病の治し方は?回復に向けて生活のなかでできること

精神科訪問看護とは

良い日と悪い日を繰り返していて、少しも前に進んでいる実感がない。そのような状態に陥り、日々の変化に戸惑う方は多くいらっしゃいます。調子の良い日があることは本来喜ばしいはずですが、かえってそれが「自分は回復しているのか」という判断を難しくさせています。時には、焦りと自己嫌悪だけが募るように感じられるかもしれません。この記事では、「治し方」を探している方が、いまの自分の状態をどのようにとらえ、日々をどう過ごしていけばよいのかを整理していきます。すぐにすべてが解決する即効性のある方法をお約束するものではありません。しかし、生活のなかで取り組める具体的な視点をお伝えしていきます。

ご不安な気持ちが強い時や、文章を読むのがお辛い時は、無理をせず私たちにお声がけください。

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06-6105-1756 06-6105-1756

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「治し方」を考える前に|回復のとらえ方

治療の具体的な内容に触れる前に、前提となる状態の名前と回復のとらえ方について整理します。世間では「非定型うつ病」という言葉がよく使われます。しかし、これはアメリカ精神医学会の基準である「DSM-5-TR」において、独立した病名として存在するわけではありません。正確には、うつ病エピソードなどに付される「非定型の特徴を伴う」という用語です。つまり、うつ病のなかで特定の際立った特徴を伴う状態を指す言い方になります。

この状態にある方が回復に向かう過程には、特有の難しさがあります。それは、良い日と悪い日の波が極端に現れることです。調子の良い日があるために、本人も周囲の人も、現在の回復の度合いを判断しにくくなります。「昨日まではあんなに動けたのに、今日はまた起き上がれない」という落差を前にすると、まるで振り出しに戻ってしまったかのような錯覚に陥ります。

回復は、毎日少しずつ一直線に良くなっていくものではありません。良くなったり悪くなったりという波を伴いながら、ゆっくりと進んでいくものです。「完全に元通りの自分に戻る」ことだけを唯一のゴールに設定してしまうと、少しでも波が下を向いたときに強い挫折感を味わうことになります。その結果、焦りばかりが大きくなり、かえって心身の負担を増やしてしまいます。元の状態にすぐ戻ろうとするのではなく、今の波とどう付き合っていくかを考える視点を持つことが、回復への第一歩となります。

 

医療機関で行われる治療の柱

医療機関での治療は、いくつかの方法を組み合わせて進められます。一般的には、薬物療法、精神療法、そして生活リズムの調整という三つの柱が中心となります。どれをどのように組み合わせるかは、医師がご自身の状態を総合的に判断して決定します。

治療を進めるうえで、状態は常に変化していきます。最初は薬物療法を中心にして休むことを優先していた時期から、少しずつ生活リズムを整えていく時期へと、方針が変わっていくこともあります。その際、ご自身の状態の変化を医師に正確に伝え続けることが、治療という共同作業のなかで非常に大きな意味を持ちます。「最近こんな波があった」「この場面で調子を崩した」という日々の経過を共有することで、医師はより適切な判断を下すことができます。

医師は、あなた個人の症状の現れ方や生活の背景に合わせた治療を提案しています。疑問や不安があれば、そのまま診察の場で質問して解消していくことが、納得して治療を続けるための助けになります。治療は一度決めたら変わらないものではなく、対話を通じて調整していくプロセスなのです。

 

非定型うつ病の回復でつまずきやすいこと

回復の過程で、焦りや自己嫌悪を生みやすい特有のパターンがあります。なぜその現象が起きるのかを知っておくことで、自分を責める気持ちを和らげることができます。

 

調子の良い日に動きすぎてしまう

この状態には、好きなことや良い出来事に対して気分が明るくなる「気分反応性」という特徴があります。気分が良い日には、本当に体も軽く、アクティブに動くことができます。そのため、これまでの遅れを取り戻そうと、その日に予定を詰め込んでしまいがちです。しかし、その状態は長く続かず、過活動のあとに強い反動がやってきます。結果として、翌日以降に激しい落ち込みを経験するという波を繰り返すことになります。

 

良い日を見て「回復した」と判断してしまう

調子の良い日の姿は、外から見ても非常に元気に見えます。そのため、本人も周囲も、その状態を「すっかり回復した証拠」として受け取ってしまいがちです。しかし、その後に波が下がって崩れたとき、「せっかく治ったと思ったのに元に戻ってしまった」という強い失望を抱くことになります。良い日の状態を基準にしてしまうことが、回復への手応えを失わせる原因になります。

 

過眠と過食で生活リズムが崩れる

定型的なうつ病では、眠れなくなったり食欲が落ちたりすることがよく知られています。しかし、非定型の特徴を伴う場合は、まったく逆の変化が現れます。長時間眠っても眠気が取れなかったり、異常に食欲が増して過食になったりするのです。不眠や食欲不振とは体の状態が異なるため、生活リズムの立て直し方も別の工夫が必要になってきます。

 

対人場面で一気に崩れる

対人関係において、批判や拒絶に対して過敏に反応してしまう「拒絶過敏性」という特徴を伴うことがあります。他者のささいな言動に深く傷つきやすく、それがきっかけで気分の波が大きく下がってしまいます。そのため、回復に向けたリハビリの過程であっても、人と関わる場面そのものが大きな負担となり、一気に調子を崩すリスクを抱えやすいのです。

 

生活のなかで取り組めること

ここから紹介するのは、日々の生活のなかでご自身が取り組める工夫です。これらは治療の代わりになるものではなく、治療と並行して取り組めることです。取り入れる範囲やタイミングは、主治医に相談しながら決めてください。

 

活動量を「良い日」に合わせない

日々の予定を立てるとき、調子の良い日の自分を基準にしてしまうと、波が下がったときに何もできなくなり、自己嫌悪に陥ります。そうならないためには、調子の悪い日でも無理なく続けられる活動量を基準に設定してください。調子の良い日であっても、あえてその基準以上の活動は控え、余力を残したまま一日を終えるようにします。このように波の下限に合わせて動くことで、過活動とその後の激しい落ち込みという悪循環を防ぐことができます。

 

起床の時間を先に整える

過眠の症状があり、一日中寝て過ごしてしまうような場合、生活リズムを整えるのは簡単ではありません。そのようなときは、まず「起きる時間」から整えることに焦点を当てます。眠る時間をコントロールしようとしても、なかなかうまくいかずに焦るばかりです。それよりも、起きる時間を先に固定するほうが、実際の行動として取り組みやすいのです。朝起きるタイミングの目安を作ることで、その後の日中の過ごし方にも少しずつリズムが生まれやすくなります。

 

気分ではなく、決めた手順で動く

「やる気が出たら動こう」「気分が向いたら始めよう」という基準を採用していると、気分の波にそのまま生活が振り回されてしまいます。行動を始めるきっかけを、気分以外のものに置き換える工夫をしてみます。あらかじめ決めておいた小さな手順に沿って、機械的に手足を動かすという方法です。例えば、朝起きたらまず窓のそばに立つなど、考える前にできる小さな行動を繰り返すことで、気分の波に左右されずに生活の骨組みを維持しやすくなります。

 

崩れた日の記録を残す

自分の気分の波がどのようなタイミングで大きく崩れるのか、そのパターンを把握することは、波を乗りこなすための大きな助けになります。どんな出来事があった後や、どのような対人場面の後に調子が落ちたのかを、手元に書き残しておきます。文章として残すことで、自分が負担を感じやすい状況が客観的に見えてきます。これは、次回の診察で医師に日々の経過を伝えるための、具体的で役立つ材料にもなります。

 

やってしまいがちで、逆効果になること

焦りや不安から、ついやってしまいがちな行動があります。これらがなぜ回復を遠ざけてしまうのかを整理しておきます。

調子の良い日に予定を詰め込む 気分が明るくなると、つい色々なことをこなしたくなります。しかし、その活動は将来のエネルギーを前借りしているようなものです。反動による強い落ち込みを招き、波の振れ幅をさらに大きくしてしまいます。

自己判断で通院や服薬をやめる 調子が良くなったと感じたときや、逆に変化が感じられないときに、自分の判断で通院を中断したり服薬をやめたりすることは避けてください。治療のプロセスに空白ができ、症状が不安定になる原因となります。変更を希望する場合は、医師に相談せずに変えることは避け、必ず診察の場で意向を伝えます。

「完全に治ってから」と考えて、すべての活動を止めたままにする 波があることを恐れるあまり、すっかり良くなるまで何もせずにいようと考えるかもしれません。しかし、一切の活動を止めてしまうと、生活リズムが失われ、少しの刺激で過剰に反応するようになります。小さな活動を続けることが、波をなだらかにする助けになります。

誰にも言わずに一人で抱える 自分の状態を周囲に理解されないと感じ、誰にも相談せずに一人で耐えようとすることがあります。孤立は不安を強め、客観的な視点を失わせます。医療機関などの専門家とつながり続けることが、孤立を防ぐ第一歩になります。

他人の回復スピードと比べる インターネットや身近な人の回復の様子を見て、自分と比べて落ち込むことはよくあります。状態の背景や環境は一人ひとり全く異なります。他人の経過を基準にすると、自分の小さな前進を見失ってしまいます。

 

回復の見通しをどう考えるか

回復に向けた道のりを歩むなかで、見通しが立たない不安に押しつぶされそうになることがあるかもしれません。この状態の経過には、大きな個人差があります。そのため、いつまで続くのかという見通しは、主治医が日々の変化を見ながら個別に判断していくものとなります。

回復のプロセスは、決して右肩上がりに進むわけではありません。良くなったり、また以前の状態に戻ったように感じたりを繰り返しながら進んでいきます。「もう治らないのではないか」「ずっとこのままなのではないか」と強い絶望を感じる時期があること自体は、決して珍しいことではありません。波が下がったときには、どうしても悲観的な考えに染まりやすくなるからです。

そのようなとき、現在の状態を判断する材料として「良い日の調子の良さ」を基準にしない視点を持ちます。目を向けるべきなのは、調子が崩れたあとに、再び日常のペースに戻ってくるまでの負担が変わってきているかという点です。以前なら立ち直るのに何日もかかっていたものが、少しずつ早くペースを取り戻せるようになっているのなら、それは確かな回復の兆しです。波の存在をなくすことではなく、波が来てもどうにかやり過ごせるようになっていくことが、前進の証なのです。

 

仕事や日常生活への戻り方

休養を経て、仕事や本来の日常生活に少しずつ戻っていく段階でも、特有の難しさが伴います。ここで無理をしてしまうと、波が大きく崩れる原因となります。

復帰のタイミングを考えるとき、良い日の元気な状態を基準にしないことが肝心です。「調子が良いからフルタイムで働けるはずだ」と判断してしまうと、波が下がった日に出社できなくなり、再び自信を失ってしまいます。常に波があることを前提に、悪い日でもなんとかこなせる程度の負荷から始めてください。最初は短い時間や少ない日数から始め、段階的に負荷を戻していく考え方が、結果的に復帰を長続きさせます。

職場に戻る際、自分の状態や配慮してほしいことをどこまで周囲に伝えるか悩むかもしれません。これについて、すべてを包み隠さず話さなければならないという決まりはありません。自分が働きやすくなるために必要な情報だけを選び、伝える範囲は本人が決めてよいものです。

また、復帰した後に再び調子を崩し、休まざるを得なくなることもあります。これを「復帰に失敗した」「自分はダメだ」と責める必要はありません。実践を通して、今の自分にとっての適切な負荷の境界線が分かったという一つの結果に過ぎません。その経験を次のステップに活かすためのデータとして捉え、主治医と相談しながら再び調整を図っていけばよいのです。

 

一人で抱えないために

この状態を抱えながら生活していくことは、想像以上に孤独な道のりになりがちです。気分反応性があるために、周囲からは「怠けている」「わがまま」と誤解を受けやすく、家族にすら理解されないと感じる場面が多いからです。

そのような孤立を防ぐためにも、治療は医師との共同作業であるという視点を確認しておきます。診察の場は、単に薬をもらうだけの場所ではありません。自分の生活のなかで何が起き、どんな波があったのかという経過を伝えることが、治療そのものの一部になります。専門家と状況を共有し続けることが、一人で抱え込まないための確実な方法です。

さらに、通院の負担が大きくなってきたり、日々の生活のなかでの具体的な取り組みを継続的に相談したいと考えたりした場合には、精神科訪問看護を利用するという選択肢もあります。専門のスタッフが定期的に関わることで、生活の場での実践的なサポートを受けることができます。自分一人で波を乗りこなそうとするのではなく、利用できる専門的なサポートを組み合わせながら、日常を整えていく道を探ってみてください。

 

よくある質問

  1. 自力で治すことはできますか? 生活面の工夫やリズムの調整は、治療を支えるための土台となるものですが、それ自体が治療の代わりになるわけではありません。医師の診察を受けずに自己判断で治療を中断してしまうと、症状が不安定になるリスクが高まります。
  2. どのくらいで治りますか? 回復のペースや経過には、本当に大きな個人差があります。そのため、一概にどれくらいの期間と決めることはできません。日々の波の変化を客観的に見ながら、主治医が個別に判断していくものとなります。
  3. 完治しますか? これは明確に治療の対象となる状態です。ただし、回復のかたちは人によって異なります。全く波がなくなることを目指すのではなく、波があっても生活に支障が出ない状態を維持できるようになるなど、さまざまな到達点があります。
  4. 調子が良い日は無理をしてもいいですか? 良い日の状態を基準にして予定を組むことは避けるのが無難です。調子が良い日にこそあえて余力を残しておくという考え方が、その後にやってくる反動の落ち込みを防ぎ、気分の波をなだらかにするための助けになります。

 

まとめ

非定型の特徴を伴う状態の回復は、一直線に進むものではなく、良いときと悪いときの波を伴いながらゆっくりと進んでいくものです。この波があること自体は、本人の努力不足ではありません。

日々の生活を組み立てるときは、調子の良い日の自分を基準にするのではなく、波が下がった日でも無理なく続けられるペースを探す視点を持ちます。焦りや自己嫌悪に押しつぶされそうになったときは、決して一人で判断して行動を変えることはせず、主治医と経過を共有し、相談しながら進めていく姿勢を保ち続けてください。

 

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この記事を監修した人

中野誠子

株式会社Make Care 代表取締役社長

中野 誠子

看護師 / (元)重症心身障害児者認定看護師

精神科病棟勤務・看護学校教員として経験を積み、「こころに寄り添う看護」を志す。石森・濱𦚰とともに株式会社Make Careを創業。現在は訪問看護ステーションくるみの代表として現場に立ちつつ、メディアにも積極的に登場し、地域精神医療の啓蒙とアップデートに挑む。

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