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心気症とは?症状・原因・治療法と向き合い方

2025.10.08 精神科訪問看護とは

「病気ではないか」と過度に不安を抱き、検査で異常が見つからなくても体の不調を強く感じてしまう状態を「心気症(しんきしょう)」といいます。医学的には「心気障害」と呼ばれることもあり、近年では「健康不安症」と表現されることもあります。自分の健康状態に過剰な意識を向け続けることで、日常生活や人間関係に大きな影響を及ぼすことが少なくありません。

本記事では、心気症の症状・原因・診断基準・治療法・セルフケアまでをわかりやすく解説し、正しい理解と向き合い方を紹介します。

心気症とは?基本的な意味と定義

心気症の基本的な特徴

心気症とは、医学的な検査で異常が確認されていないにもかかわらず、「自分は深刻な病気にかかっているのではないか」と強く思い込んでしまう精神的な状態を指します。風邪や頭痛といった一時的な体調不良でも重篤な病気に結びつけて考えてしまい、不安が増幅して症状がさらに強く感じられるという悪循環に陥ります。

単なる「心配性」との違いは、その不安が長期にわたり持続し、日常生活や社会生活に支障をきたす点にあります。心気症は、本人の努力や気合いでは解消できない精神疾患の一つと理解する必要があります。

心気症と心気障害・健康不安症の違い

心気症という言葉は日常的にも使われますが、医学的には「心気障害」という診断名で扱われます。さらに近年では、精神疾患の診断基準の改訂により「健康不安症(Illness Anxiety Disorder)」と呼ばれることが多くなっています。いずれも「病気への過剰な不安やこだわり」が共通点ですが、診断基準や定義には時代や診断体系によって微妙な違いがあります。つまり、「心気症」「心気障害」「健康不安症」はほぼ同じ意味を持ちながらも、使われる場面によってニュアンスが異なる言葉といえます。

ICD-10・DSM-5における診断基準

心気症の診断は、国際的に定められた診断基準に基づいて行われます。ICD-10では「心気障害(Hypochondriacal Disorder)」として定義され、「深刻な病気にかかっているという持続的な信念」が6か月以上続くことが条件とされています。

一方、DSM-5では「健康不安症(Illness Anxiety Disorder)」として分類され、軽微な身体症状に対して過剰な不安を抱き、医療機関を頻繁に受診するなどの行動が特徴とされています。いずれの基準においても、症状の持続性と生活への支障が重要な診断ポイントとなります。

心気症の主な症状

心の症状(不安・抑うつ・こだわり)

心気症ではまず精神的な症状が顕著に表れます。最も代表的なのは「強い不安感」であり、体の些細な変化を「大きな病気の兆候」と思い込むことで不安が増幅します。その結果、抑うつ感や無力感が伴うことも多く、日常生活への意欲低下や集中力の低下につながります。

また「何度検査しても安心できない」「インターネットで症状を調べ続ける」といったこだわり的な行動も見られ、心身の疲労を悪化させる要因になります。

身体の症状(動悸・頭痛・しびれなど)

心気症では心理的要因によって身体症状も強く感じられる傾向があります。典型的には、動悸や胸の痛み、頭痛、吐き気、手足のしびれなどが挙げられます。これらは自律神経の乱れによる一過性の症状であることが多いのですが、本人にとっては「命に関わる病気かもしれない」と深刻に受け止められます。身体の不調を実際よりも重く感じることが特徴であり、症状の訴えが多様かつ繰り返し現れることが心気症の大きな特徴です。

慢性的な不安感と日常生活への支障

心気症の人は、常に「病気ではないか」という不安を抱えて生活しています。この慢性的な不安は、仕事や学業に集中できない、外出を控える、対人関係を避けるといった行動制限につながります。

さらに医療機関を頻繁に受診し、同じ検査を繰り返すケースも多く、本人にとっても家族にとっても大きな負担となります。結果的に、心気症は本人だけでなく周囲の生活にも影響を及ぼす疾患といえるのです。

心気症の原因とリスク要因

心理的要因(性格傾向・ストレス)

心気症の背景には、心理的な要因が大きく関与します。例えば、几帳面で完璧主義的な性格傾向を持つ人は、自分の健康状態に過度な関心を向けやすい傾向があります。また強いストレスや不安が続くと、心身の小さな不調を「大きな病気」と結びつけやすくなります。過去に家族や知人が病気で苦しんだ経験がある場合も、不安を強める要因となります。

生物学的要因(脳機能・神経伝達物質)

近年の研究では、心気症に脳の機能や神経伝達物質の異常が関与している可能性が指摘されています。特にセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の働きが不安や抑うつの調整に関わっており、バランスが崩れることで症状が悪化すると考えられています。

こうした生物学的な要因は、心気症が「単なる気の持ちよう」ではなく、医学的に理解すべき疾患であることを示しています。

社会的要因(家庭環境・過去の病歴)

心気症は社会的な要因とも深く関係しています。幼少期から過保護な家庭環境で育った場合、健康への過度な心配を学習しやすい傾向があります。また、過去に自身が大きな病気を経験したり、身近な人が病気で苦しむ姿を見たりした場合も心気症を発症しやすくなります。仕事や人間関係など社会的ストレスの影響も無視できず、多面的な要因が複雑に絡み合って症状が生じるといえます。

心気症の診断と検査

診断基準(ICD-10/DSM-5)

心気症の診断は、ICD-10やDSM-5といった国際的な診断基準に基づいて行われます。ICD-10では「少なくとも6か月間、重篤な病気にかかっているという信念が持続していること」が条件とされます。DSM-5では「健康不安症」とされ、軽度の身体症状を過剰に解釈し、不安が6か月以上持続している場合に診断が検討されます。いずれの場合も、生活に支障が出ているかどうかが診断の重要なポイントです。

鑑別が必要な疾患(うつ病・不安障害など)

心気症の診断を行う際には、似た症状を示す他の疾患との鑑別が必要です。例えば、うつ病や全般性不安障害では心気症と同様に強い不安感が見られます。また、身体表現性障害では実際の身体症状が強く現れるため、医師は心理的要因と身体的要因を慎重に見極める必要があります。正確な診断を行うことで、適切な治療法を選択できるのです。

医師による問診・心理検査の流れ

診断は、医師による丁寧な問診から始まります。症状の経過や不安の程度、生活への影響を確認し、必要に応じて心理検査や身体検査が行われます。検査で異常が見つからない場合でも、心気症の可能性を否定するのではなく、精神的要因を含めて総合的に評価します。患者が安心できるよう、繰り返し説明と支援が行われることが診断過程の重要なポイントです。

心気症の治療法

薬物療法(抗不安薬・抗うつ薬など)

心気症の治療では、症状に応じて薬物療法が行われる場合があります。代表的なのは抗不安薬や抗うつ薬で、神経伝達物質のバランスを整えることで不安や抑うつを軽減します。薬はあくまで補助的な手段であり、医師の指導のもとで適切に使用することが重要です。副作用や依存のリスクもあるため、漫然と服用するのではなく、治療計画の一部として慎重に取り入れる必要があります。

精神療法(認知行動療法・精神分析)

薬物療法に加え、精神療法も心気症の治療に有効です。特に認知行動療法(CBT)は、症状を悪化させる「思考の癖」に気づき、より現実的な考え方に修正していく方法として広く用いられています。また精神分析や支持的精神療法も、不安の背景にある心理的要因を整理し、自己理解を深めることに役立ちます。専門家との対話を通じて、不安に振り回されない心の持ち方を養うことが目標となります。

生活習慣の改善(睡眠・運動・食生活)

心気症の症状を和らげるためには、生活習慣の改善も欠かせません。規則正しい睡眠は不安感を軽減し、適度な運動は自律神経の安定に役立ちます。さらにバランスの良い食生活を心がけることで、心身の回復をサポートできます。こうした日常の工夫は、治療の効果を高めるだけでなく、再発予防にもつながります。

セルフケアと日常での対処法

不安を和らげるセルフケア方法

セルフケアとしては、リラクゼーション法や呼吸法、マインドフルネス瞑想が効果的とされています。また「症状を調べすぎない」「不安になったら一度紙に書き出す」など、思考を客観視する習慣も有効です。趣味や社会活動に積極的に参加することも、意識を健康不安から逸らす助けになります。

家族や周囲のサポートの仕方

家族や周囲の人が心気症を理解し、適切に関わることも重要です。頭ごなしに「気にしすぎ」と否定するのではなく、不安に寄り添いながら必要に応じて専門機関への相談を勧める姿勢が求められます。本人の安心感を支えるサポートが、治療の効果を高める鍵となります。

相談できる場所(心療内科・カウンセリング・訪問看護)

心気症の疑いがある場合は、心療内科や精神科の受診が第一歩となります。加えて、公的な相談窓口や心理カウンセリングを活用することで、不安を抱え込まずに済む環境を整えることができます。訪問看護サービスを利用できるケースもあり、医療従事者の支援を受けながら安心して生活を続けることが可能です。

心気症と似ている病気との違い

不安障害との違い

不安障害は、将来起こるかもしれない出来事や漠然とした危険に対して不安を感じるのが特徴です。例えば「事故に遭うのではないか」「失敗するのでは」といった将来志向の不安が中心となります。一方、心気症は「自分は病気にかかっているのではないか」という現在の健康状態に特化した不安が続きます。不安の対象が異なる点が、両者を区別する重要なポイントです。

うつ病との違い

うつ病では抑うつ気分や意欲低下が主症状であり、生活全般への活力が失われることが特徴です。心気症は健康不安が中心で、「重い病気ではないか」という思い込みが強くなります。ただし、長く続く心気症の不安から二次的にうつ病を発症することもあり、両者はしばしば関連し合います。診断と治療のためには区別が欠かせません。

身体表現性障害との違い

身体表現性障害は心理的な要因が強い身体症状として現れる病気で、痛みやしびれなど実際の不調が主体です。心気症でも身体症状は訴えられますが、中心となるのは「病気であるはずだ」という恐れです。症状そのものが主か、不安が主かという点で異なります。ただし重なる部分も多いため、専門的な鑑別が必要です。

心気症に関するよくある質問(FAQ)

「ただの心配性」とはどう違う?

心配性は一時的な不安で生活に大きな支障をきたしませんが、心気症は不安が長期にわたり続き、仕事や人間関係に深刻な影響を与えます。症状の持続性と生活機能への影響度が、診断を分ける大きなポイントです。

心気症は完治する?

心気症は適切な治療やサポートで大きく改善できる疾患です。「完治」という表現は難しい場合もありますが、多くの人が不安をコントロールし、日常生活を問題なく送れるレベルまで回復できます。

心気症の人への接し方は?

否定せず不安に寄り添う姿勢が大切です。「気にしすぎ」と突き放すと不安を強めるため、共感しながら必要に応じて専門機関につなげましょう。安心感を与える関わりが症状改善の助けになります。

まとめ

心気症とは、医学的に異常が見つからなくても「病気ではないか」という強い不安が続き、生活に影響を与える精神疾患です。症状は心身の両面に現れ、背景には心理的・生物学的・社会的要因が関わります。診断には国際的な基準が用いられ、薬物療法や精神療法、生活習慣の改善などで治療が可能です。

「ただの心配性」とは異なり、適切な治療とサポートで改善が期待できる病気です。不安が長引く場合は、早めに専門機関へ相談することが大切です。

心気症ついてのサポートに関するご相談は、「訪問看護ステーションくるみ」へご連絡ください。

この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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