産後から1年以上経過した方の中には、「気分が落ち込む」「育児と家事を両立できず嫌になる」と悩む方もいるでしょう。
産後1年以上経過している場合には「産後うつではないはず……」と思い込んでしまう方もいるかもしれません。
しかし、産後1年以上経過していても産後うつの症状は現れると研究でわかっています。
そこで今回は、産後うつが現れる時期や原因、対処法について解説します。
「産後うつ」は産後1年以上経っても発症するのか?
これまで、産後うつは産後数ヶ月で発症するケースが多いとされてきました。
しかし、東北大学大学院が行った分析によると、産後1年経過してからでも症状は現れるとの結果が出ています。
研究結果から明らかになった点は、以下の通りです。
・長期にわたって産後うつ症状を評価したところ、産後1年のうつ症状の有病率は12.9%であり、産後1ヶ月(13.9%)とほぼ変わらなかった
・産後1年にうつ症状が見られた者のうち、約半数は産後1ヶ月時点ではうつ症状を呈していなかった
この結果から、産後1ヶ月の時点でうつ症状が出ていなかったから大丈夫と考えるのではなく、1年程度は精神面の健康を気遣う必要があるといえるでしょう。
参照:東邦大学/産後うつは産後1年経過しても出現する ~長期的なスクリーニングやケアの体制構築の必要性~
産後うつの原因
産後うつは一つの原因でなく、いくつかの要因が重なって発症するとされています。
産後うつの原因を大きく2点に分けて説明します。
・身体面の変化
ホルモンの変化や出産でダメージを受けた身体で育児が始まること、授乳や夜泣きによる睡眠不足、疲労
・精神面の変化
慣れない育児への不安、子どもと二人で過ごす時間が多く孤独を感じる、生活の変化や気を張ることによるストレス
また同研究結果より、妊娠中に見られた心理的不調が、産後1ヶ月、産後1年のうつ症状と関連していたことが分かっています。
産後うつを発症する原因を知っておけば、効果的な対応にもつながるでしょう。
参照:東邦大学/産後うつは産後1年経過しても出現する ~長期的なスクリーニングやケアの体制構築の必要性~
産後うつの乗り越え方|効果的な対処法4つ
出産後1年が経っても、産後うつを発症するおそれがあると分かったところで、次は産後うつを乗り越えるための対処法をご紹介します。
休息をとる
睡眠不足や育児による身体的・精神的な疲労が積み重なっている方は、周囲のサポートを得て睡眠や休息をとることが重要です。
身近な家族や育児サポートを利用して赤ちゃんを預かってもらい、休む時間を確保しましょう。
まとまった睡眠をとるために、人工ミルクを取り入れたり搾乳して保存しておいたりするのもよい方法です。
とくに夜間の授乳をミルクに変えれば、夫にも協力してもらいやすくなるでしょう。
気分転換をする
ストレスを感じているときには、趣味に時間をつかったり子どもと離れて外出したり、気分を変えることが大切です。
ストレスをため込まず、自分に合った方法で対処できれば、精神的負担を軽減できます。
育児から離れる時間をつくるには、家族の協力が必要不可欠です。
家族の協力が難しい場合には、自治体のサポートを受けることも1つの選択肢です。
関連記事:産後うつをケアできるリフレッシュ方法やリラクゼーションとは?
育児に対する考え方を変えてみる
「完璧主義」の方や「家事育児はこうあるべき」などという考えをお持ちの方は、精神的負担を感じやすいとされています。
育児は思い通りにいかなくて当たり前、子ども一人ひとり成長スピードも性格も異なることを念頭に置いておきましょう。
忙しいときや余裕がないときには、人の助けを借りることが大切です。
医療機関を受診する
精神科や心療内科などの医療機関を受診するのも、1つの方法です。
受診の目安としては、以下の状態が続いた場合です。
・産後うつの症状が見られて2週間以上経っても改善しない場合や悪化している場合
・頭痛、食欲不振、不眠などの何らかの身体的な症状を伴っている
・日常的な活動をつらく感じている
・自分や子どもを傷つけたいという思考がある
このようなときは、早めに受診し専門家に相談しましょう。
関連記事:産後うつの有効な治療法とは?早期対策の重要性についても解説
産後うつでは家族の対応やサポートが重要|夫にできることは?
最後に、育児がつらいと感じている方や産後うつを発症している方に対して、夫や家族ができることを紹介します。
・休息やリフレッシュする時間をとれるよう話し合う
・本人の話を聞き、悩みやつらさを理解する
・家族や地域で子どもを育てるという意識をもつ
子育てをする上で一番身近な夫のサポートは大切です。
「一緒に育児しよう」という気持ちを持っていることが伝わると、妻は家事育児を頼みやすくなるでしょう。
「産後うつ」は産後1年以上が経っても発症する可能性がある
産後うつは、産後数ヶ月だけでなく1年が経過しても発症するリスクはあるとされています。
育児は、家族と協力しながら取り組むことが大切です。
なかなか家族に協力を得られない場合には、地域の支援センターなどに相談するのもよいでしょう。
産後から1年以上経っても、育児に対する不安やつらさなどの精神的負担を抱えている方は、医療機関の受診と併せて訪問看護の利用もおすすめです。
病院を受診した際に、自宅での支援を希望していることを伝えてみましょう。
お困りの方は、一度『訪問看護ステーションくるみ』にぜひご相談ください。
利用者さま一人ひとりに合った支援やケアを提供いたします。