大阪市全域を訪問区域とする『訪問看護ステーションくるみ』の代表、中野誠子が綴る『社長エッセイ』第40弾!
最近、高校時代の専攻科で一緒に学んだ同級生とミニ同窓会をしました。
出会って29年、月日は流れて私たちも歳を重ねましたが、話しはじめると一瞬であの頃に戻って楽しい時間を過ごすことができました。
何も考えずに笑って楽しむことって本当に大事だなと改めて感じることができました。
さて、これまで「私の人生に大きな影響を与えた人」ということで病院編・施設編と書いてきましたが、今回から学校編をお届けしたいと思います。
私が看護学校で働こうと思ったきっかけは、自分の教育に対しての知識が圧倒的に足りておらず、自分流で教育をしていることに気づいたからでした。
専任教員の研修もあっというまに終わり、1年生の担任を任せてもらえることになったのですが、毎日新しいことの連続で仕事を覚えるのに必死だった私は困り果ててしまい、途方に暮れていところを支えてくださったのが、ベテランのD先生でした。
D先生は教員歴も長く、学生さんとの関わりもすごくて、いつも勉強させていただいていました。
1年生の担任を務めるようになって初めて気づいたことがあります。
それは、今まで私がしてきた教育は「ある程度の知識を持った人に対して知識を伝え、学びなおす環境を整えていただけ」なのではないかということです。
看護師の「学びたい!」という「意欲」が大きく、そこに助けられていたのです。
しかし、1年生はこれから看護を学ぼうとする学生です。
学生さんたちの「興味関心がどこにあるのか」を見極め、それを「どう刺激し、どう学びに変えていくのか」ということの大切さを、一緒に入らせていただいたD先生の授業を通して学びました。
私はどうしても「教えたい」という気持ちが強く、押しつけのような教え方になっていたと思います。
しかし、D先生の授業ではその「押しつけのような教え方」を感じません。
その違いを振り返って考えると、私は「学生の背景を理解する」ということが足りていなかったんだな、と気づきました。
どのような学生さんが、何を学んできたのか。
そこの理解が足りないことで、私の教えは受け取りにくいかたちになっていたのではないか、と。
そこをしっかりと理解することで、学生さんとのコミュニケーションがスムーズにとれるように変わっていきました。
D先生の考えの中心にはいつも学生がいて、「学生がどうしたら学びを深められるか」を第一に考えていることが伝わってきます。
私もそうなりたいと思いました。
それからは、演習のお手伝いや授業の相談を重ねながら、一緒に学年を担当させていただきました。
D先生からは、学生を知るためのさまざまな方法も学びました。
D先生はどのような学生の姿を見たいのかを考えたうえで、時間を作り、ラウンドし、そして、そこで見た姿から学生への理解を深めていらっしゃいました。
自分中心に「学んでほしい」という気持ちを押しつけていた私にとって、学生への理解を深めることの大切さを気づかせてもらいました。
そうして少しずつD先生の真似をしながら学生と向き合っていると、次第に学生たちの反応が変わってきました。
ある日学生さんに「先生、最近しんどそう。大丈夫?」と聞かれました。
今までであれば「しまった! バレないようにしてたのに!」と思っていたでしょう。
でもそのときの私は「そんなふうに見えた? 私のことよく観察してくれてるのね。さすが看護学生!」と言っていました。
すると学生も「毎日先生を見ているからわかりますよ」と言ってくれました。
相手のことを知ろうとして行動しないと見えないことってあるなと感じた瞬間でした。
教育って、教えることだけではなく、自らも学ぶことが大きいなかで、その根本には相手の背景、現状を知ることが大事であると実感しました。
私たちが「教える」だけではなく「共に学ぶ」からこそ「教育」であると感じた私は「教育」ではなく「共育」だと考えるようになりました。
ここには「ケアリング」の要素もあると感じています。
看護として大切なことを看護学校の教員になって考えることができるようになりました。
学びたいという気持ちはだれにでもありますが、その表現は人それぞれです。
だからこそ自分の価値観だけで相手の学びを評価してはならないと感じています。
目的や目標を明確にし、それに基づいた評価「基準」と「規準」があるからこそ、学びがあると思います。
その難しさと大切さを知ることができました。
さあ、次回は看護学校で出会ったもう一人の方について書こうと思います。
あの方がいなかったら私はどうなっていたでしょう。
楽しみにしていてください。
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