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【社長エッセイ】Vol.67 私にとって大切な友人との出会いと私の後悔|Mr.Childrenの擬態とともに振り返る

くるみの社長エッセイ精神科訪問看護とは誠子さんシリーズ

大阪市全域を訪問区域とする『訪問看護ステーションくるみ』の代表、中野誠子が綴る『社長エッセイ』第67弾!

 

あっという間に12月も中旬になりましたね。

先日、友人と「大人になったらサンタは来ないね。いい子にしてたのに」と、笑いながら話をしていました。

今年はいろいろと頑張ったので、サンタさん、私のところにもきてください。

一応、窓は開けておきます(笑)。

さて今回は、今年最後に、これまであまり語ったことのなかった、私の人生に大きな変化をもたらした友人の話をしたいなと思います。

 

大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象

“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」

06-6105-1756 06-6105-1756

平日・土曜・祝日 9:00〜18:00 
【日曜・お盆・年末年始休み】

※訪問は20時まで
対応させていただいております。

 

◆Facebookで始まった、不思議なご縁

彼との出会いは、2013年。

Facebookの「好きな本」をきっかけに集まるコミュニティでした。

同じ作家さんが好きでやりとりをするなかで、途中から「Mr.Childrenが好き」という共通点がわかり、自然と連絡をとるようになりました。

気づけば私は、あれよあれよという間にFacebook上で全国にある「Mr.Children好き」が集まるグループの管理者3人のうちの1人になっていました。

 

◆打ち明けられた、彼の病気

そんなある日、彼から突然、精神疾患を抱えていることを打ち明けられました。

私が看護師であることを知っていた彼は、さまざまな相談をしてくれるようになりました。

気分の波があって苦しいこともたくさんあるはずなのに、それでもそれを表に出さない彼に私は聞きました。

「どうしてそんなにニコニコできるの? イライラしたりするでしょ?」

すると彼はこう言うのです。

「誠子、それは相手に関係ないでしょ?」

あぁ、確かにな。本当に人ができているな、と心からそう思いました。

 

◆「擬態」を歌う彼の姿

みんなの前ではニコニコ笑顔で対応している一方で、たくさんの葛藤を抱えていた彼を見て、私はいつも「自分に何ができるだろう」と感じていました。

あるオフ会で、初めて彼に直接会う機会がありました。

そこで彼が歌ったのがMr.Childrenの「擬態」でした。

彼の歌を聴いて自然に涙が出てきたのを今でも覚えています。

 

 

どうして泣いているのか、自分でもわかりませんでした。

それでも彼に、彼の歌を聴いて涙が溢れてきたことを伝えると、

「僕がこの歌にかける思いは他の人とは全然違うからね。

自分が病気になって初めて『障害を持つ者はそうでない者より不自由だって誰が決めんの!?』ってところの意味が本当にわかったんだ。

そして何回もこの歌を聴いてたら自分のこと歌ってるような気がしてね。頑張れるんだ」

と話してくれました。

きっと今までたくさん苦しい思いをしてきた彼にとって、この歌のすべてのフレーズが沁みていたんだろうと思います。

 

◆「調子いいねん」と言っていた、あの日

その後も彼とは長い間グループの管理人として関わりながら、いろんな話をしました。

彼に彼女ができて、3人で通話をすることも増えました。

彼女ができたと聞いたときは自分のことのように嬉しかったし、彼も「気持ちが軽くなった」と喜んでいました。

 

そんなある日の会話で、彼が言いました。

「今、調子いいねん」と。

「よかったね〜」と話しながら、通話を終えたんです。

それが、彼との最後の会話でした。

 

次の日、彼女から泣きながら連絡がありました。

彼が「亡くなった」と。

衝撃でした。

昨日まで、あんなに元気に話をしていたのに。

 

◆精神科看護師としての、深い後悔

私は精神科看護師なのに、なんで気づけなかったんだろう、わかってあげられなかったんだろう、私は何をしてたん? と、自分を責め続けました。

彼女と一緒に、気持ちが落ちるとこまで落ちました。

もう立ち直れないかもしれない、そう思っていたとき、もう一度『擬態』を聴くことにしました。

『アスファルトを飛び跳ねるトビウオに擬態して 血を流し それでも遠く伸びて 出鱈目を誠実をすべて自分のもんにできたなら もっと強くなれるのに 現在を越えていけるのに』

最後のフレーズを聴き終えたあと、ふと空を見上げました。

その日は、雲ひとつない青空でした。

彼が「誠子、泣いてばっかりじゃダメだよ」って言った気がしました。

 

◆空を見上げる、今の私

その話を彼女にすると、なんと彼女も同じことをしていました。

それがわかって、少しだけ元気が出ました。

あんなに毎日やりとりをしていたのに、わからなかった自分を責め続けても、彼はきっと喜ばない。

そう感じたんです。

だから私は、雲ひとつない青空の日には、空を見上げて彼と話をします。

「私ね、今こんなことやってるんだ」

「聞いてよ、ムカつく!」

どんなときも、彼はニコニコしながら「どうした?」って言ってくれている気がします。

 

◆看護師として、人として

彼と出会って、病気があることは決してマイナスな面ばかりじゃない。

人をこんなに優しくできるものでもあるんだと感じるようになりました。

彼は、私にとって偉大な存在であり、今の私の周りにいる大切な友人たちとの縁をたくさんつないでくれた人です。

 

それでもやっぱり、今、これを書きながら涙が止まりません。

後悔しかないから。

あのとき私が察することができていたら、彼は今も……。

でもね、そう思うたびに彼はきっと「誠子、それは違うよ」と言ってくれていると思います。

 

彼と出会い、人としても、看護師としても、私を成長させてくれました。

私は彼のことを、人として心から尊敬し続けています。

 

今度彼と会うときは、私が空に行くときだと思っています。

そのときは笑顔で「久しぶり」と言おうと、今から決めています。

 

私が訪問で「また来ますね」と伝えること。

大切な人に会った帰り際に「またね」と言うこと。

それは、また会いたいと思っているからです。

彼とのこのエピソードがあって、私はその言葉をより大切にしたいと思うようになりました。

 

人との別れはいつ訪れるかわかりません。

だからこそ、大切な人にはきちんと言葉を想いを伝えてください。

想いは言葉にしないと伝わりませんから。

 

今回は少し長くなってしまいました。

皆さんもぜひ『擬態』、聴いてみてください。

次は、今年の振り返りかなー?

では、また。

この記事を書いた人

中野誠子

株式会社Make Care 代表取締役社長

中野 誠子

看護師 / (元)重症心身障害児者認定看護師

精神科病棟勤務・看護学校教員として経験を積み、「こころに寄り添う看護」を志す。石森・濱𦚰とともに株式会社Make Careを創業。現在は訪問看護ステーションくるみの代表として現場に立ちつつ、メディアにも積極的に登場し、地域精神医療の啓蒙とアップデートに挑む。

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